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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

知られざるドイツ建築の継承者 矢部又吉と佐倉の近代建築

佐倉市立美術館のチラシを見て、急遽行くことにした。
これを見て同時期に都内にいるなら、やっぱり無理算段して佐倉に…と思うでしょう、わたし。
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この佐倉市立美術館、千葉市美術館のさや堂、大阪の堺筋倶楽部などを設計した矢部又吉の展覧会。




デ・ラランデの設計を実際に施工したのが父・國太郎であることから又吉も大いに刺激を受け、建築家になった。
かれは英国ではなくドイツに留学した。妻木頼黄つまき・よりなか に学んだことも大きかった。
そのドイツで学んだことを日本で実践するのだが、師匠ともいえるデ・ラランデの導きで川崎財閥と付き合いが生まれ、そこから全国に展開する川崎銀行また川崎貯蓄銀行の設計を一手に担った。

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これまでにわたしは知らぬ間にいくつもの矢部又吉の設計した建物をみていた。
大阪の旧川崎貯蓄銀行は今では人気のレストランとなっている。


以前見学したまとめはこちら。
堺筋倶楽部 旧川崎貯蓄銀行 1
ここで使われている巻貝のような照明は富沢町の旧川崎銀行のとほぼ同形である。




内部の様子はこちらにまとめている。
千葉市美術館 さや堂ホールをみる。

この二日間で旧川崎銀行を3つ回った。
佐倉、千葉、富沢町である。














この照明が堺筋のとよく似ていた。

展示にはいくつものマケットがあった。木製、紙製など色々。よく出来ている。
特に装飾の部分は手描きなんだが、こういうのを描けるのはいいなあ。
古写真と模型があるだけでも「失われた建造物」の面影をしのぶことが出来るのはありがたい。

昭和初期の金融恐慌があるまでは順調に支店の数を増やし、後の日本興亜損害保険も設立した川崎財閥。
その銀行建築を一手に担い、各地に魅力的な白い銀行を作り続けたが、いい作品ばかりなので、今日にも少なくない数が残され、リノベされ使われているのは、まことにめでたい。
イオニア式の列柱、ジャイアント・オーダー、この様式の銀行建築は本当に素敵だ。
合併後の第百銀行の一連の写真もあり、中には絵ハガキも作られていて、往時の魅力を今に伝えている。

こういうのいいよなあ、というものがいくつもある中で、装飾の現物が現れた。
御影石製の外壁装飾。いい感じ。これは矢部自身の設計ではなく内井進という人のデザイン。
石がキラキラしている。
横浜で今も使われている建物の元々の一部。

他方、時代が悪化するにつれ、装飾もへる。モダニズムのさきがけのような外観の銀行が出てきた。
第百銀行出町支店 1940年の竣工で、他の銀行に比べてシンプル。現存しない模様。イオニア柱が可愛い。

銀行ばかりでなく商店建築もある。
特に泰明商会が素晴らしい。1930年。京橋にあったようだが、惜しいことに30年ほど前に失われた。

森市商店が面白い。構成主義的な外観である。
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どこか村山知義のバラック建築を思わせる装飾性がある。
ここは会社案内を見ると1919年に「欧米諸国より各種機械・化学材料を輸入する販売商社として合資会社泰明商会を創立。」というだけに、こうしたモダンさを求めたのかもしれない。

個人住宅も手掛けている。
現存する邸宅の現状写真を見て、その素晴らしさに感嘆の声が漏れた。
一般公開されていない邸宅写真だが、これが本当に素晴らしい。
浴室が時に好ましかった。
ステンドグラスとモザイクタイルと。
船、双魚、鹿、猿らしきもの…
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千駄木の島薗邸も矢部の仕事。第1・第3土曜日の11時~16時、入館料一般300円で一般公開中。
ここは行ってなかったので、年明けには行きたいと思う。

他に佐倉ゆかりの建築家の仕事が紹介されていた。
堀田家別邸、佐倉高校記念館などである。今では記念館は非公開らしいが、わたしは2001年に訪ねたことがある。
明治末の堂々とした建造物だった。

伊東忠太、安井武雄らのミニ特集もある。
震災記念堂とそこに取り付けられている鳥飾りの紹介がいい。
どうもここを訪ねるのに抵抗があって未踏、
安井は高麗橋野村ビル、日本橋野村ビルの資料が展示されていた。

とても見ごたえのある展覧会で資料も豊富だった。
図面もたくさん出ているが、本当にすばらしい。

12/24まで。


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2018.12月の東京ハイカイ録

師走は気分が忙しいので、あんまり遠出もしないし遊びに行く時間も減らしている。
というわけでいきなり冬本番になった東京をハイカイした。
今回は一泊二日なのでギチギチの予定(←二泊三日、三泊四日でもギチギチ)なので、まずは新宿の損保に出た。
丸の内線が荻窪行きだったので西口下車。
どう損保が変わったのか期待したが、大差はなし。

スウェーデンの国民的人気画家・ライフスタイル提案者とでもいうべきカール・ラーションとその妻カーリンの展覧会をみる。これがもう実に楽しくて、予想外によくて、時間をかなり圧した。いやーびっくりしましたわ。
詳しくは後日詳述するが、参った。いいのから始まったよ。

地下へ降りてサイゼリアでランチ。本当は違うところへ行きたかったが、時間を考えるとこの方がよろしい。
サイゼリアは好きな店だが、メニューの選択肢をちょっと間違えたらしい。

時間短縮でJRで池袋に出たが、ここでミスって東口へ出ずに西口へ行ってしまった。
挽回するのにいらん時間を使い、無駄なことをした。
閉店する本屋へ行き、色々購入した結果、4千円が千円に。1/4になったよ、驚いた。
その後は定宿へ向かう。

荷物を置いて本八幡経由で京成線に乗り替え、京成佐倉へ。
佐倉市美術館で建築家・矢部又吉の展覧会を見る。
これが実に良かった。来た甲斐があった。
川崎銀行の設計を一手に担っただけに特徴もよくわかる。

その後も時間に追われながら千葉中央へ。
あら、工事中。
仕方ない、パン屋で軽く食べよう。
ライ麦パンにナッツ類入りのがかなりよかった。
それから近くの店舗でこんな袋物も買い、そこでもらった福引券で抽選に挑む。
前の人が白玉でティッシュもらったのを見て、なんとなく「赤出ろ」と思ったら、本当に赤が出た。
この辺りの商業施設で使える100円引きクーポン。
ありがたくもらう。



千葉市美術館で石井林響展を楽しむ。初期の神話関係の絵もいいが、後年の南画がよかった。
のんびりした面白さがいい。
それにしてもこの後の所蔵品展示がこれまたもう…十分に濃すぎますがな。

再び千葉中央に戻ると店の大半が閉まっていて「ひゃー」になる。
幸いダイソーが開いてたのでそれで一点購入。よしよし、クーポンがとても役立ちました。
何度か乗り換えて宿に戻り、ぐったり。

日曜日。朝ごはん食べてからちょっと富沢町へ向かう。あー、これか。矢部又吉の川崎銀行。
いい建物で今も大事に使われてるのがいい。

まずは皇居へ。とはいえ乾門ではなく三の丸に向かったのだ。
花が咲いていた。



乾門の一般公開に行くべきだったろうか。
明治の工芸品のいいのを堪能する。

皇居外苑を眺めるといろいろ面白い風景が見えた。



寒い中次は三菱一号館美術館へ。


フィリップス・コレクション。百年近い前から活動している個人美術館で、近代美術を集めている。
展示品の傍らにフィリップスさんの言葉が添えられているのがなかなか面白かった。
短文なのでよいのかも。

次は出光美術館に。近いわりに遠い。
山水画を見ていて目が回る。どうもほんまにニガテなのよな。
でも他にいいものが多いので楽しい。

風邪を引きそうなのでうどんに生姜とねぎを放り込み、レンコン天ぷらを食べる。
これでなんとか風邪にかからねばいいが。




最後にサントリー美術館。「扇の国 日本」。これがあまりに良くて長居しすぎた。
さらにあれだ、勘違いがあって、なんと新幹線乗り損ねた。ヒーーーっ
自由席に座る。まあなんとかうまいこと乗れました。

今回はタクシーやなしに自転車で帰宅。
楽しいのは遊んでる時までよな。
次は一月の三連休の予定。

グラフィックデザイナー土方重巳の世界

西宮大谷記念美術館で12/9まで開催中の土方重巳展はとても見ごたえのある展覧会だった。
何も思わずに出かけ、その多面的な活躍にときめいた。

土方重巳という名を聞いてもピンと来なくてもゾウのキャラ「サトちゃん」、人形劇のブーフーウー、ヤンボウニンボウトンボウの姿を見れば「あー知ってる」となる。
何十年経っても愛されるサトちゃん、レトロで可愛い人形たち、そのデザインをしたのが土方重巳なのだ。

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チラシ表は黒猫とそのしっぽが目立つが、裏面にはずらりと様々な仕事の様子が。
映画ポスターも手掛けていたようで、野口久光とはまた違う描き手だったことをこの展覧会で知った。

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最初に油彩画がある。
踊り子 1941 この綺麗な人は当時の東宝の女優・御船京子のちの加藤治子だった。
道理で綺麗なはずである。
頭上に薔薇のリング、チュチュの肩紐には赤薔薇、裾の何重にもなった様子。
優雅でとても綺麗。

絵とは関係ないが、加藤治子は晩年まで美しい女優だった。
久世光彦は自身の演出するドラマに彼女を「昭和のお母さん」役として出演させ続けたが、久世の随筆の中で「三四郎」を演出したいという話があった。しかしそれは叶わないし叶えない。
美禰子を加藤治子で見たいというのが久世の願いだったのだ。だが、悲しいことに演劇でならともかくTVでそれはもう出来ない。
それを読んで以来、わたしの中では美禰子は加藤治子になっている。

土方は岡田三郎助の勧めで東京美学校ではなく後の多摩美術大学に進み、そこで新井泉らに学んだ。
学科長は杉浦非水なので、それを考えると後の活躍も頷ける。

やがて東宝に入社した土方はポスターのいいのを次々に拵える。
当時のドル箱タレント・エノケンが主演するシリーズものなどもある。
輸入洋画の名品も多く手掛けているのを今回初めて知ったが、あれもこれもとたくさん現れて、それにもびっくりした。
野口久光だけが描き手ではなかったわけだ。
野口久光の展覧会の感想はこちら。
野口久光 シネマ・グラフィックス 黄金期のヨーロッパ映画ポスター
野口久光の世界

土方の洋画ポスターも気品がありすばらしい。
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かっこいいなあ。
ちょっとタイトルを羅列する。
海の牙、石の花、シベリア物語、北ホテル、大いなる幻影、二つの顔、乙女の星、田園交響楽、のんき大将、パルムの僧院、ヨーロッパの何処かで ・・・
みんな彼の仕事だったのだ。



また、文化映画なども多く担当した。綴り方とか色々。国策映画も変わりなく。

バレエと演劇との関係もとても深い。
エリアナ・パプロワの内弟子にもなっている。蘆原英了の本の挿絵も担当したのはそうしたところからか。
そして「伝説の舞姫」と謳われた崔承喜の帝劇での公演ポスターも担当した。
これは昔伝記映画を見たときに使われていたように思う。

それにしても実に守備範囲が広い。

飯沢匡と組んでブーフーウー、ヤンボウニンボウトンボウの仕事も素敵だ。
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絵本「ねずみの王様」もいい。
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可愛いな。
いぬいとみこ「北極のムーシカミーシカ」も彼の絵だったか。

人形の行う様子を撮影したのを絵本にしたものも少なくない。
これらはわたしも大好きで、手間暇はかかるが、ファンは少なくないものだった。
トッパン絵本。ステキだ。

土方はキャラグッズでも活躍した。
こちらは撮影コーナー
佐藤製薬のサトちゃん









他のメーカーの仕事も多い。












ああ、みんなとても可愛かった。

この展覧会は土方重巳と言う多彩・多才なデザイナーを再評価させる良い機会になったと思う。
とても楽しめた。

またいつか見たいと思う。

12/9まで。

フルーツ&ベジタブルズ 東アジア蔬果図の系譜 その2

続き。

Ⅲ ふたりの蔬果図-若冲・呉春
青物問屋の若冲と稀代の食通・呉春の描く野菜と果物!! 
それぞれの長い絵巻は前半部・後半部と展示替えあり。
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菜蟲譜  伊藤若冲 江戸・寛政 2 年(1790)頃 絹本着色 1 巻 栃木県佐野市立吉澤記念美術館  大きいシイタケから始まる。ぬめっている。生シイタケだから乾燥してないのね。トカゲや青虫が可愛く、カエルはファンキー。本人はまじめに描いていると思うけど、なにやらそこはかとなく妙にユーモラスでもある。

果蔬涅槃図 伊藤若冲 江戸・18 世紀  紙本墨画 1 幅 京都国立博物館  いつみてもなんとなく好きな作品。大根の周囲に集まる野菜たち。どれもこれも描写が良い。
白黒なのがいいのかもしれない。
しかしここへ集まる野菜に果物、みんなまとめて鍋でぐつぐつ炊いたら、とんだ地獄模様になるな。
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蔬菜図押絵貼屏風 伊藤若冲 江戸・寛政 8 年(1796) 紙本墨画 6 曲1 双   やたらと大きい野菜たちで、妙にミスコンを思わせる…シイタケ美人、南瓜麗人、慈姑佳人、可愛いかぶら、キュートな里芋などなど。わりと

こちらは呉春。呉春は食通だったそう。京都から池田にきて「呉春」となったこの人は、その地でよい仲間に恵まれて美味しいものを食べる会をよく開いた。
なおその呉春の名をとった日本酒が池田にはある。逸翁美術館に行くがてらそちらもちらっと見学もいい。

蔬菜図巻 呉春 江戸・18 世紀 紙本淡彩 1巻 泉屋博古館  さらりとよい表現で空豆、筍、二種のナス、茗荷、シメジ、ゆりね、水菜、クワイ…美味しそうやなあ。

なんだかんだ言うてもやはり静物画とは違うわけですな、この野菜たちは。
こんなけ美味しそうでみずみずしいのは生命賛歌でもある。
静物画の「ヴァニタス」とは対極にあることがわかる。
ただし、どちらがいいわるいはない。考え方が違うので同じ対象を描いても比較はできない。

芋畑図襖 呉春 江戸・18-19 世紀 紙本墨画 4 面 京都国立博物館  やたら大きい芋の葉の襖絵。英語を見るとTaro Fieldとあるので、この芋はタロイモ系らしい。というかやっぱりあれだ、里芋だろうね。
タロイモといえばパプアニューギニアではかつて主食だった。芋文化も奥が深い。

南瓜画賛 呉春 暁台賛 江戸・18 世紀 紙本墨画 1 幅  でかっっ!ちょっとびっくり。

Ⅳ その後の蔬果図―江戸後期から近代へ

稲・菜花・麻綿図 松村景文 江戸・19 世紀 絹本着色 3 幅 泉屋博古館  この温厚な景文の三点セット。稲には蝗もいる。季節も春夏秋と。やはり景文はいい。

梅実図衝立 山口素絢 江戸・文化 7 年(1810) 紙本金地墨画 1 基 泉屋博古館  応挙門下の美人画の名手・素絢の梅はコロコロしていた。可愛い。

草花写生図巻 第四巻 狩野探幽 江戸・17 世紀 紙本着色 1 巻(5 巻のうち) 東京国立博物館  なんとトマトですがな。左端の赤い奴。食べずに鑑賞用だったそう。
「トマトが赤くなると医者が青くなる」のはまだまだ後世の話。
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筍図 円山応挙 江戸・天明 4 年(1784) 絹本着色 1幅  二本の筍がごろんと横倒し。ああ、この皮をはいで…いろいろ想像するだけでヨダレが湧くわ。

本草図説 岩崎灌園 江戸・19 世紀 紙本着色 4 冊(78 冊のうち)
東京国立博物館  ここにあるのは朱欒、唐辛子、苦瓜、甘藷。リアルな表現。

農作物・果樹類図 山田清慶・服部雪斎ほか 明治 5-18 年(1872-1885) 紙本着色 6 枚(107 枚のうち)東京国立博物館  これまたリアルな。里芋、鹿ケ谷南瓜、キャベツ、ニンジン、菜の花。みんな甘そう。

蔬果蟲魚帖 浦上春琴 江戸・天保 5 年(1834) 絹本着色 1 冊 泉屋博古館  かぶらを狙うバッタやウマオイらの大きさが妙だな。

扇面菜根図 富岡鉄斎 大正 12 年(1923) 絹本墨画淡彩 1 幅 泉屋博古館分館  青菜に里芋。鉄斎らしい墨のかすれがまた妙に美味しそうにも。大胆な構図。

文房花果図巻 村田香谷 明治 35 年 絹本着色 1 巻 泉屋博古館  なんでもあり。そこへ文具も加わる。更に絵は濃厚。ほんと、濃いわあ。金魚鉢もあり、最後にはだるまさん。

小特集 描き継がれる墨葡萄
ここでは東アジアの吉祥画としての墨絵の葡萄画が並んでいた。
黒い葡萄を見ると「巨峰かな、案外デラウェアかも」と思ってしまうのである。

野菜涅槃図 富岡鉄斎 明治-大正・20 世紀 紙本墨画淡彩 1 幅  
やはりここでも大根が主役。レンコンやニンニクが取りすがっている。
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蔬果図 幸野楳嶺 明治・19 世紀 絹本着色 1 面 泉屋博古館分館  なんだろう、多幸感が満ちているような。あれだ、ディオニュソス的な雰囲気なのか。
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果蔬図 田村宗立 江戸・元治元年(1864) 紙本着色 1 枚 東京国立博物館  これはまた明治初期の油絵と同じ雰囲気がある。
切ったスイカにビワと賀茂茄子に鹿ケ谷南瓜をはじめ色んなのが転がってて、なんとなく日光浴しているかのように見えた。

蔬果図 伊藤快彦 明治・20 世紀 板地油彩 1 面 星野画廊  これこそ明治初期の油絵なんだが、バナナ、桃、百合他と言う取り合わせが妙に面白くもある。

野菜盛籠図蒔絵額 池田泰真 明治 35 年(1902)頃 漆、金属、貝 1 面 泉屋博古館分館  朝顔に貝を使って螺鈿。凝った造りなのが素敵だ。

最後に岸田劉生の三種の技法で描いた野菜と果物。

冬瓜葡萄圖 大正 14 年(1925) キャンバス油彩 1 面 泉屋博古館分館  暗い中、巨大な冬瓜によりそう小さい葡萄たちの沈黙。

四時競甘図 大正 15 年(1926) 絹本着色 1 幅 泉屋博古館分館  南画風な面白味がある。青い桃にビワに瓜に柿に…宴会で酔っぱらったような風情が楽しい。

塘芽帖 昭和 3 年(1928) 紙本着色 1 冊 泉屋博古館分館  シンプルに茄子がちょこんと。隠元も少しばかり。日本画。古径の絵に近いものを感じた。

いいものを見たなあ。

最後にこの展覧会の図録について。
コンパクトでとても愛らしい。


泉屋博古館の学芸員さんの論考・解説があるが、それも面白い内容だった。
またお名前がこの展覧会にとてもふさわしくて、そのことがとても嬉しくなった。
実方葉子さん。
今後も素敵な企画展を期待します。いい展覧会をありがとうございました。

12/9まで。

フルーツ&ベジタブルズ 東アジア蔬果図の系譜 その1

泉屋博古館の鹿ケ谷本館で面白い展示が開催されている。
「フルーツ&ベジタブルズ 東アジア蔬果図の系譜」
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また見るからにイキイキしたフルーツ&ベジタブルズが画面に躍っている。

日本・朝鮮・中国のいわゆる東アジアでは花鳥図・蔬果図というのが昔から活きていて、長く親しまれた。
これは西洋絵画の「静物画」とはまた違うもので、「静物画」はスティルライフ、死んだ自然を描くものであるのに対し、花鳥図・蔬果図は活きてる様子を描く。
野菜も果物も根から抜いた時点で死んだといえば死んだともいえるが、ある程度の時間までは新鮮でみずみずしく、元気そうに見える。
東アジアの絵師たちも観客もそのイキイキ具合を喜んだ。
ここには西洋の静物画と違い、宗教性はない。
ただし吉祥画の側面はあるので、願い事を絵に託した点では一種の宗教画かもしれない。まぁあんまり深く考えなくていい。
ちなみに西洋の静物画について、一つ見事な論考があるのでこちらをご紹介する。
「静物画 ヴァニタス(人生の空しさ)」


さて泉屋博古館へ行くには京都市バスがよいが、紅葉のハイシーズンの最中に5系統に乗るのは避けた方がいい。
そこでわたしは203系統を選んだ。四条河原町から祇園を抜けるまでは渋滞につかまりバス内も混むが、それが過ぎてからは案外気楽に乗れる。
東天王町で下車して徒歩数分で泉屋博古館に到着する。
いわゆる鹿ケ谷にこの住友系の美術館があるのだが、鹿ケ谷と言えば俊寛を思い出す向きもあろうが、ここでは京野菜の「鹿ケ谷カボチャ」を念頭に置いていただきたい。
それはヘチマのような形で真ん中にくびれのあるカボチャである。
毎年7/25には近くの安楽寺でカボチャ供養が行われ、中風封じの祈願がされた鹿ケ谷カボチャの炊いたんをよばれる。
わたしも以前食べに行ったが、おいしかったですわ。
その顛末はこちら
「大雨の中を遊ぶのはだれだ」 もう9年も前か。
その鹿ケ谷カボチャもこの展覧会で活躍している。

青銅器館のロビーに野菜の設えがある。
北野天満宮の10月最初に「ずいき祭」がある。
天神様に秋の野菜をお供えするのだが、これが野菜の拵え物でずいき神輿というのを毎年お供えする。
わたしはちょっとそれを思い出したが、別にそれとは関係がなかったようだ。
一茶庵宗家の佃一輝さんという方が設えたそう。
どうやら本物のような…
まぁ超絶技巧の作り物なのかもしれないが。



Ⅰ 蔬果図の源流 草虫画・花卉雑画
14世紀から16世紀の東アジアの絵画が集まる。

草虫図 明・15 世紀 絹本着色 1 幅   地に蒲公英が咲き、瓜も転がる。薄黄色の黄蜀葵もよく咲いて、小さな蝶々や虻たちが飛び交う。

草虫図 呂敬甫 明・15 世紀 絹本着色 1 幅 東京国立博物館   赤い罌粟が何本も咲く。その花の周りを小さな蝶々が舞い、地には蝗もいる。

この二枚の絵は並んでいるので続き物のようにも見えるくらいだった。丁度絹本の色の変容も同じだから背景が一つに見えたらしい。
どちらも和やかな空気に満たされている。

瓜虫図 呂敬甫 明・14-15 世紀 絹本着色 1 幅 根津美術館  同じ作者の瓜と虫の図。こちらは白いままなので趣が違う。大小の瓜が生っていてそれが芳香を放つのか、モンシロチョウ、蜻蛉、虻、バッタらが集まる。中には実の上に止るバッタもいる。
英語の題は“Melon and Insects”なので、普通の瓜よりやっぱり甘そうなのか?…なんてね。

仿沈周花卉雑画巻 張若澄 清・18 世紀 紙本墨画 1 巻 京都国立博物館  こちらは沈周の描いたのに倣って、という花卉雑画巻。薄墨でナス、大根、芙蓉、枇杷、青菜などが描かれている。
どれもこれもいわゆる「露地物」なのでおいしそう。

花卉雑画巻 徐渭 明・万暦 19 年(1591) 紙本墨画 1 巻 泉屋博古館  こちらにはカニ、魚、豆、筍がある。みんなおいしそうな様子に…まだ調理はされてませんが。

安晩帖 瓜に鼠図 八大山人 清・康煕 33 年(1694)  紙本墨画 1 冊 泉屋博古館  なんだかベレー帽でもかぶってそうなネズミが瓜を…  

瓜に鼠・蕪に蟹図 朝鮮・15-16 世紀 紙本墨画 2 幅 高麗美術館  二匹のネズミが仲良く喜んで瓜を食むはむ食むはむムハッ
それとやたらと偉そうな態度の蟹。
かぶらの蟹あんかけにして食ってまうぞ。←冬の味覚だ。

蔬菜図 栄存 室町・16 世紀  紙本墨画 1 幅 栃木県立博物館  丸々としたナスがコロコロ。これだけおいしそうに描かれた後、このナス自体の味てどうなるんやろう。
前に戸板康二の「ちょっといい話」にあったと思うが、ある洋画家が素晴らしい裸婦画を描いた後、モデルから味が落ちたとかなんとか…
まあ知らんけどやね。

蕪図 雪村周継 景初周随賛 室町・16 世紀 紙本墨画 1 幅 禅文化研究所  リアルにヒゲのあるカブラ…
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蕪菁図 「元信」印 策彦周良賛 室町・16 世紀 紙本墨画 1 幅 栃木県立博物館  こっちのカブラは葉が大きい。そして「心」の変字体のよう。小篆文字というやつ。
岩波から出た夏目漱石の「心」のあれね。祖父江慎さんデザインの。

枇杷蓮根柘榴柿図(果子図)の内から柘榴・柿 伝狩野元信 室町・16 世紀 紙本墨画淡彩 2 幅 東京国立博物館  英語で何というのか初めて知った。
(loquat, lotus root, pomegranate and persimmon)全然実感がないな。
柘榴 柿  それぞれ描写が細かい。食われてしまっているらしい柘榴と丸々した柿と。

Ⅱ 新旧の交差点―江戸前期から
様々な流派・描写の野菜と果実。

四季草花図屏風 「伊年」印 江戸・17 世紀 紙本金地着色 6 曲1 双 泉屋博古館  赤い茎の芋の葉が大きい。菊、萩、薄といった秋草から最後は冬の水仙。

茄子画賛  松花堂昭乗 玉室宗珀賛 江戸・17 世紀 紙本墨画 1 幅  おおーいい感じの茄子。

果物籠図 柳沢淇園 頴川美術館  去年の大和文華館での「柳沢淇園」展にも出ていた。
当時の感想はこちら
いつもは頴川美術館で見ていたが、別な場所で見るとまたこの絵の面白さがわかってくる。
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松に蔓茘枝図 鶴亭 江戸・宝暦 6 年(1756)  絹本着色 1 幅  Beach of Tarumi という英訳だった。これは先年の鶴亭の時に見ている。白い果実がべろんとなった具合がキモチ悪くて忘れられない。面白い絵。
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桃果綬帯鳥図  戸田忠翰 江戸・19 世紀 絹本着色 1 幅  栃木県立博物館   大きな桃と派手な羽色の夫婦。

桃果図衝立 山本若麟 江戸・寛政 12 年(1800) 絹本着色 1 面 泉屋博古館  かなり大きい桃が三つ、辺りを制するよう描かれている。

長くなりすぎそうなのでここまで。



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