美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 **なお現在コメント欄を閉鎖中です。

驚きの明治工藝

モノモウスなチラシ。この裏表に物凄い情報量が。
しかも感想というか素直に思う言葉までが書かれている。
「すごい!びっくり!かわいい!」
ここまで描かれたチラシ、他に知らんなあ。
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東京藝大美術館。
なんと今回のこの展覧会、写真撮影可能。
それで「#驚き 明治」のタグ付けすればSNS可能と言う、どないしたのだというほどの鷹揚さ。
皆で盛り上がろう、ということなのかな。

というわけで好きなものをぱちぱち。
自在ものが大量にあったことをお伝えしましょう。
なお本当の作品名ではないのを書いているので、あんまりあてにはなさらないでください。

3Mの龍。影もカッコいい。
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衝立のきれいなこと…
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裏はアールヌーヴォー風
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竜頭鷁首な花生け
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瓦に雀IMGP0143_20160929002300b76.jpg

「文句あるのか」と言いそう。IMGP0144_20160929002302eca.jpg

大人しいシカ
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カエルがいるのです。IMGP0146_201609290023209f5.jpg

鯱やと説明があるが、どうもわたしはあれを思い出す、飾り物の顔が龍で体が魚の(まんまやがな)、能装束や大津祭の曳車の飾りにもなるような。
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いやげものを思い出したもの二つ。







江戸時代から昭和まで続いているよね。








さて自在などカナモノはここまで。
次からはやきものなど。

「グラスの底に顔があってもいいじゃないか」のご先祖かもしれない。
いや、あれはよくよく考えると小泉八雲「茶碗の中」が直接のご先祖かな。

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宮川香山の綺麗系のやきもの。
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名古屋の安藤の七宝花瓶だったかな。小鳥が可愛い。
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明治の新しい釉薬が可能にした表現。
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このやかんのわんこの可愛さ。ぐぬぬぬぬぬ 海野珉乗
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こちらは鳥獣戯画というよりペルシャ絨毯などにある動物闘争文ぽい。
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とはいえこのファンキーさはやっぱり近代的。


いよいよ真打登場?!お狸さん。
色んな角度から見てみます。
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狸の坊さんの話はわりとよくあるのだが、11世片岡仁左衛門(今の仁左衛門丈の祖父)が語った中に、語りの巧い狸の話があり、仁左衛門も源平合戦か何かを見せてもらったそうな。
資料を取り出すのがちょっと難しいので出典のタイトルが出ないが、川尻清潭がインタビューしたものだったかな…
「萬松庵」だったか「萬松軒」夜話だったか、ちょっと忘れた。
明治ではまだまだ狸も狐もヒトを化かせたらしい。

サルカニらしいが、光が入り込んでわからなくなったな。
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月下に狸の硯箱、木だったりする。
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木象嵌かな、可愛い…IMGP0168_20160929002442d0e.jpg

最後はお猫さん。
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ああ面白い展覧会だった。
明治の工芸品の面白さを堪能した。

なおこれらは台湾の宋培安氏の個人コレクションなのである。
これが本当の驚きだ。今回初めての里帰り。

地域情報誌「うえの」に展覧会の紹介がある。いい記事なので機会があればぜひ。
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11月からは細見美術館にも巡回するそうだ。
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明治のクール・ジャパン 横浜柴山漆器の世界 金子皓彦コレクションを中心に

漆器のうち、螺鈿細工されたものがとても好きだ。
蒔絵もいいが、ニガテな表現のものも多くて、それらより螺鈿を見ると嬉しくてならない。
一方、芝山細工がまたとても好きだ。
これは思文閣で小さい箪笥を見て一気に沸騰したのだが、それ以来ずっと芝山細工を追いかけている。
これね。



その後、「華麗なる輸出工芸」展でもいいのをたくさん見た。
当時の感想はこちら
清水三年坂美術館でも芝山細工の展覧会があった。なかなかよかった。
色も伏彩色だったりでほんと、綺麗。

横浜開港資料館で芝山細工の展覧会が開催されている。
「明治のクール・ジャパン 横浜柴山漆器の世界 金子皓彦コレクションを中心に」展である。
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ちょっと時間がなくて困っていたが、日美で紹介された映像を見て、やはりムリを押して見に行くべきだと思い、朝早くから横浜に行った。
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横浜が輸出の拠点として華やいでいた頃を舞台にした大和和紀「ヨコハマ物語」はいい作品で、これを読んだおかげで明治の横浜に関心が向くようになった。
作中では工芸品の扱いはなかったが、あのマンガで明治の輸出を知り、そこから調べたり展覧会で見たりして色々なことを知るようになった。
大抵のきっかけは常にマンガからだ。

さて真葛焼も芝山漆器も外国人向けに様相を改めて呼び名も変わり、横浜からどんどこ輸出されていった。
横浜芝山漆器、その名品を見る。

子とろ図飾額 これは七福神が加わった唐子の子とろ。子供らの楽しそうに遊ぶ様子を表現している。
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子とろといえば「八犬伝」の挿絵を思い出す。ゝ大法師と子どもの八犬士らで遊ぶ様子。信乃と毛野は女の子の姿をしている。

花鳥図、人物図などがある。いずれも綺麗に拵えられているが、面白い構図のものが多い。人力車が15台もずらーっとか。
正月、門付の女芸人(鳥追い)にお年玉をあげる図、農作業の人々の様子、
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外国人の喜ぶような日本の風景や風俗、生き生きした花鳥図というのも西洋にはないだけに大いに喜ばれたと思う。

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ところでこの横浜芝山漆器だが、もう一つ和古浜青貝細工ともども「横浜漆器」と呼ばれたそうだ。
芝山(千葉)、会津、駿河の職人たちが横浜に移住して、そこで拵えた細工ものがそれ。

会津漆器の聖書書見台、駿河漆器の角変わり箪笥、長崎青貝細工の小箱、様々な表現と技法で作られた品々。
現代の我々にしてもこうした作品は遠いものなので、当時の外国人と同じ視線で作品を見ることになる。

戦争によりもう外国へ工芸品を輸出ということはなくなったが、ここにあるのは明治のきらびやかな作品と、その遺風を受けて現代に通じる漆器を拵える人々の作品があった。

最後に昭和の横浜青貝細工。これもとても凝ったものだった。
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明治の工芸品の高いレベルを味わえる展覧会が近年こうして各地で行われるようになって、とても嬉しい。

よみがえれ!シーボルトの日本博物館

江戸博へ「よみがえれ!シーボルトの日本博物館」展を見に行った。
大阪ではみんぱくで開催だそうだ。
シーボルトが集めた日本の民具や彼の日本追放になった地図などの展示が中心で、そこからシーボルトがいかに日本に魅せられていたかを知る内容にもなっている。
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シーボルトの肖像というと常に老年期のものばかりなので、勝手に来日時既に老人だったように思いがちだが、実は27歳くらいの青年だったそうだ。
青年シーボルトが16歳のおタキと暮らすようになり、イネが生まれ、初めてパパになったのだ。
思い込みはいかんなあ。
琵琶湖疏水の田邊朔郎博士も数え23歳でそれに従事したばかりに、てっきり夭折かと思いきや、存外の長命で他に多くの功績も残していた。
シーボルトも若い頃に日本に来たが、肖像画が老人だったばかりに勝手に最初から老人だと思い込んでしまったのだ。

さてそのシーボルトの若い頃の肖像を初めて見た。ドイツの学生らしい、酒場で機嫌の良い一団の中にいる一人だった。
ビールを飲み、侃々諤々の学生時代を過ぎ、そうこうするうちに遠い異国、夢の国ニッポンへ行くことになったのだ。

シーボルトの周囲にいた日本人の肖像をみる。
イネは幼児なので芥子坊主の頭。愛らしい。
おタキさんをはじめ、おとみ、くまそ、こまきといった使用人たち。
風俗だけでなく、180年前の日本人は現代から見るとはるかな遠祖、直接の血のつながりが断たれたかのような風貌を見せていた。
つまり現代の我々はむしろ異国人シーボルトと同じ視線で当時の日本人の肖像を、風俗を視ることになるのだった。

シーボルトが日本の門人を集めて講義を行った鳴滝の家屋の模型というのがあった。
外側にも松の文様の装飾があり、なかなか手の込んだ民家である。いい感じの二階建て。
惜しいことに調度品はもう散逸している。

出島には活版印刷所がある。そこの活字見本が面白い。
「DESIMA」出島の単語を様々な書体で印字していた。
けっこうおしゃれなポスターになっている。
田中一光あたりが拵えそうな雰囲気。

シーボルトが刊行した「日本」誌が出ていた。日本各地の色んな昔話などを集めているようで、ちょっと違うゾな挿絵などがある。描いたのは日本の絵師だと思うが、彼らは「ちゃいますよ」と言わなかったのだろうか。
伊吹山のヤマトタケルと山神の化身の白猪(真向の猪突猛進中)、瓜子姫、トウモロコシ、首が八つではなく一つだけのヤマタノオロチとそれに対峙するスサノヲと隠れるクシナダ姫などの絵が見えた。

「日本植物誌」ではおタキさんから採ったオタクサ(あじさい)、紅色の山茶花などの絵もある。日本の植物は柔らかで愛らしい。
「動物誌」には巨大なイセエビの絵もある。

谷文晁の「日本名山図会」まではよかったが、海岸線などをはっきり描いた地図はやっぱり開国前なんだからヤバイでしょう。
伊能忠敬の地図、これが致命傷になりました。
本人の写した蝦夷図もいいなあ。しかし地図というものは鎖国中の国の場合そりゃやっぱりちょっとね。

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日本に惹かれたとはいえ、シーボルトもモースも外国人としての立場を保っていたので、結局比較民族学の手法というかその視点で日本人を見、日本の文物を見ていた。
ハーンやモラエスとはまた違う。
そしてシーボルトは日本博物館を拵えたかったが計画で終わり、収集品はミュンヘン五大陸博物館などに収蔵された。
その作品が一堂に会して「シーボルトの日本博物館」を見せてくれた。

花鳥図衝立 とても綺麗な衝立。華やかなものでやや手が込みすぎなくらい。

仏像も少なくない。
中に目立つのが厨子入りの蛇身弁財天像。
首のみ女の顔で体はとぐろ巻いてる。

亀形筮筒台 亀の背に台座が乗るもので、これは科挙などに合格してどーのという人の碑などでよくみかけるものかと思う。
こんな名称だったのだなあ。初めて知った。

これらを仏壇仕立てに配置。

香炉、銅水滴、香道具、それから蒔絵で彩られた医療道具。
花鳥螺鈿鍼箱 綺麗な色の拵えは「伏彩色」という技法で。

本もある。山東京伝や川原慶賀らのもの。
川原の人物画帳には全身刺青の男もいた。
駕籠かきか火消しか鳶か。
肌を見せることの多い職種を選ぶ男は自分を綺羅で飾るのだ。

コインもある。
寛永通宝、朝鮮通宝、二朱銀、天保大判金などなど。
欧州と東アジアとでは通貨の制作方法が違うのだったな。

モノスゴく手の込んだものがあった。
魚尽くし蒔絵鼈甲貼小箪笥 箪笥の構造そのものが見事なところへ魚類がペタペタ・・・
指物師も蒔絵師もすごいな.…

螺鈿ものも伏彩色と言う技法を使ったものが多く、これが本当にカラフルで綺麗なものばかり。
燈籠型弁当箱なんて1Mくらいあるやん。

わたしの好みは他に毛植え人形たち。猿、犬、虎、兎、羊。…あら、みんな干支やね。
可愛いわ。
衣裳人形もある。美人さんたち。

とにかくなんでもあり。

歯磨き粉、かるた、大森の麦藁細工、真っ四角な卵焼き器、長崎おくんちの衣裳、平戸焼に有田焼、なぜか美濃焼、淡路の珉平焼、清水焼まである。
伊吹山のもぐさ、漢方薬20種詰め合わせ(芍薬、附子、杏仁などがみえた)、おろし金…

ドイツにもイタリーにもオランダにもイングランド二もなさそうなものたち。実用品でも見ないものばかりだったろうなあ。

そして最後にシーボルトの死亡広告。
ドイツから再来日したけれど、妻子には会わなかったのだろうか。
ついついメランコリックな気分になる。

面白い展覧会だった。

伊藤晴雨幽霊画

伊藤晴雨と言えば責め絵・縛り絵の大家だが、風俗研究家としても功績がある。
また美人幽霊の絵は谷中の全生庵に収められてもいる。
風俗画の仕事は2009年に「蔵出し!文京ゆかりの絵画」展でいくつかみたが、構図も面白く、人間の内臓を見透かしてその神経の働きを凝視するかのような晴雨らしい良さがあった。
その感想はこちら

今回はジブリの鈴木プロデューサーが選んだ全生庵の幽霊画や風俗画の印刷物などを集めている。
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チラシはお菊さん。哀れさが背中に漂う。


幽霊画以外は撮影可能だったので、これ幸いとパチパチ撮った。
それを紹介したい。
先行してツイッターでも好きなものを挙げている。



「演藝畫報」などでも仕事をしていたようで、舞台を描いたものもいい。
 
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ページ左端のは先般、市川染五郎がラスベガスで公演した「鯉つかみ」。
外連味のある芝居は戦前特に愛されていた。
三世猿之助が復活させるまでの長い歳月、お蔵入りだったが、彼以降はこうして現代の名プロデューサーでもある染五郎も取り上げている。

「日本刑罰風俗史」上巻
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これはあれかな、不義の女の引き回しかな。
黄八丈なら白木屋おくま、振袖なら八百屋お七。

不義の女の引き回しは手塚治虫「シュマリ」で知った。シュマリは蝦夷地に入植以前は武士だったが、女房が男と逃げたのを追って維新後に蝦夷地へ来たのだった。

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さてこちらが白木屋おこま(おくま)
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なかなかコワいぞIMGP0106_20160927013105f9f.jpg
雰囲気的に六世梅幸のお岩さんの拵えのようにも見える。浴衣も斧琴菊だし。
吉川観方もこんな絵を描いているが、妙に楽しい。

何を拝むのだ、この女は。IMGP0107_2016092701310643b.jpg

「いろは引 江戸と東京風俗野史」から。
まず見世物
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先般みんぱくで大いに「見世物」を楽しんだが、やっぱり好きだなあ。

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作り物のゾウさんIMGP0114_20160927013140afb.jpg

玉菊燈籠かIMGP0115_20160927013141421.jpg

信仰と迷信
江戸時代は特に科学がなかったからなあ…
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縛られた娘を描く筆の潤うこと…
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あーコワイコワイコワイ
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こちらものぞきからくりや幻燈。庶民の楽しみ。
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わんこが可愛いなKIMG1027.jpg
自身番。

影絵する人々KIMG1028.jpg

維新前四季往来之図屏風
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こういうのを見ると矢田挿雲「江戸から東京へ」を思い出す。あの挿絵は橘小夢だった。

幽霊画は19点。
牡丹燈籠 2人の女がカランコロンと来るところ。
謡曲山姥 顔が怖いよ。上に蝙蝠が飛んでいる。

猫の怪談 座棺の上に座る黒猫。出て来ようとする死人を抑える力がある。
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姑獲鳥 羽がついている女、もう空を飛ぶ。
川で蘇る亡霊 ぶよぶよになり杭を摑まえている…
深川三角屋敷の場 例の水桶から細い手が櫛を掴んで伸びている。お岩さんの執念。
海坊主 徳蔵が対峙する。わかりにくい海坊主。
位牌を持つ幽霊 上から下へ来る。
累の盆燈籠 やっぱり怖いね…
毒婦小松 こわいな、狼に食い殺され首を・・・髪を噛む狼。
瀧夜叉姫 しゅっとした女がそこにいる。それだけでかっこいい。
盂蘭盆会の亡者 楽しいお里帰りの日。地獄の釜の蓋が開いて、キュウリやナスに乗ってる亡者たち。
猪熊入道 鎧の袖部分を咥える。

ここまでは同じ表装だった。五代目小さん師匠からの寄贈品。

他にも可愛らしい豆腐小僧、カッパのいる置いてけ堀、鬼婆の姿で空を飛ぶ茨木童子、鎌に髪が絡む累ヶ淵、そして髑髏と蛇の絵があった。

とても面白い展示だった。
しかしこれで「晴雨に対する世間の評価をひっくり返したい」という気持ちにはわたしはならない。
責め絵縛り絵よりこちらが上だとは決して思わないからだ。
ただ、不当に貶めることだけはやめばいいなとは思っている。

既に終了。見に行けてよかった。

めくらます奇術と写し絵の世界

国立演芸場のロビーの奥に資料室がある。
そこでいろんな展示があるのだが、今回は「めくらます奇術と写し絵の世界」展。
写し絵については何度かこのブログでも紹介しているが、わたしが写し絵に関心を持つようになったのはここで見た種板がよかったからだ。
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97年に「山本慶一コレクション」として奇術と写し絵の種板などの展示を見て、就中「小幡小平次」の写し絵には夢中になった。
あの当時下手ながらもシーンごとの様子を写した。
絵の資料が手に入らなかったので、何年もの間そのメモ描きをよく見直してはしのんだ。
今回はそれ以来の小平次の展示もあるというのでわくわくしながら出向いた。

さてついたのは演芸の開始時間の少し前で、申し訳ない、観客ではないので、資料室のベンチにのんびり座っていたところ、受付の人をやきもきさせてしまった。
観客がワハハと笑っている頃、わたしは熱心に奇術と写し絵の資料を見ていた。

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明治21年の寄席ビラ、39年の松旭斎天一一座のビラ、大正11年の「少年世界」付録の「最新魔術双六」などなど当時の様子がしのばれる。
わたしとしてはやはり双六が楽しくて仕方ない。

この時代、印度の魔術に夢中になった人も多く、乱歩も「少年探偵団」などにその様子を採り入れている。
そうそう谷崎「魔術師」も芥川「アグニの神」もそうだった。
わたしもいまだに「印度の魔術」といえばドキドキするシーンが思い浮かぶ。

写し絵には投影機(風呂)がいる。それと種板。
当時、幻灯機を楽しんだ人は少なくなかった。
以前にここで挙げた主な展覧会またはイベントについて。
・鴻池会所でみたものはこちら。
・よみがえる明治の幻燈 四天王寺幻燈會はこちら
・幻燈展 プロジェクション・メディアの考古学はこちら。

奇術の道具に「お菊の皿」がある。そう、「いちま~い、にま~い…」のお菊さん。あのお皿は高麗青磁とも染付ともいろんな説があるが、割れたのには変わりはない。
奇術でどんなふうに使うのか気になるところ。

玩具絵 怪談写し絵 これは大葛籠の男が川へ落ちて亡霊になるらしいが筋はわからない。「庚申山」の石碑が不気味。
大体「庚申山」というと八犬伝だと化け猫の住処だったりする。庚申待ちといい、この「庚申」さんはなんとなく恐い感じがあるな。
「心中宵庚申」という芝居もあるしな。
「甲子」といえば「甲子園」が思い浮かぶが。

さてほんに久しぶりに「小幡小平次」の写し絵。ああ、自分のメモと変わらないのが嬉しい。
不倫相手のおちかから小平次殺しの相談を受ける太九郎。小平次を安積沼へ釣に誘う太九郎。突き落とし、棹で上からバシャバシャうち叩く。早速亡魂が出る。
帰るとおちかが喜んで酒の支度をしている。が、衝立の向こうに小平次が。
血しぶき、嗤う小平次の亡魂、ラストに再び「安積沼」が。

ああ、面白かった。何でわたしがこれにハマっていたかというと理由は簡単で、中川信夫監督の遺作「生きてゐる小平次」を偏愛しているから。そこから北斎の「百物語」の「小平次」にも入っていった。

一方、面白い写し絵もある。これは艶笑譚というべきもの。
「滑稽だるまの写し絵」というタイトルから既にあれなんですが。
お軸に描かれていただるまさんが突然抜け出し、手足をよく伸ばする。
オイッチニーの薬売りではないが、ちょっと運動してから表に出かける。
その間に軸からだるまさんが消えてるので家人びっくりする。
だるまさん、二八そばを無銭飲食。金払えと言われて手足を仕舞い、元のだるまに。わるいやっちゃ。
花火を見たりナンダカンダ遊ぶうちにヒトの家に入り込み、寝ている女房の蒲団の裾に潜り込む。
アレーッてなもんでバタバタする二人、そこへ亭主が帰ってくると間男がだるまやいうんで亭主も仰天。
あわてて逃げただるまが戻ってきてお軸に飛び込む。追いかけた皆の前でだるまは後ろ向きにお軸に…

なるほどこういうのを見ると噺家が写し絵をしていたのも納得。このおもろい絵にオモロイしゃべりをつけるのは楽しいわ。
先年実際にそういう活動をする噺家がいるのを知ったが、やっぱり見てみたいわ。

写し絵はストーリーのあるものばかりではなく、万華鏡のようなのもある。
これは四天王寺でも見たがぐるぐるばらばら動いて二度と再現しない美を見せてくれた。

見世物の様子を描いた錦絵もある。
鯉の滝登り、紙人形の子供、猫じゃ猫じゃ、雷獣…
これらは明治二年の浅草厩河岸での興行からのよう。

国芳の竹沢藤次の絵もあるし、剣の渡り、一流蝶の曲等々。
玉乗り浦島という不思議なのもある。
それから東芝の元となったからくり儀右衛門の大カラクリの絵。

ちいさい資料室だが好きなものが集まっているのでとても嬉しく深い部屋となっていた。
11/27まで。
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