美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 **自宅でログイン出来ないので、現在「遊行七恵、道を尋ねて何かに出会う」で感想を挙げています。

追悼水木しげる ゲゲゲの人生

大丸京都と高島屋京都、同じ四条通にある二つの百貨店で同時期にすごくいい展覧会が開催されている。
烏丸の大丸では「追悼水木しげる ゲゲゲの人生」展。
河原町の高島屋では「ウルトラセブン 放送50周年記念 モロボシ・ダンの名をかりて」展。
どちらも昭和の子どもたるわたしを直撃する、いい展覧会。

道順で先に大丸に行ったのでそこから。
とにかく大混雑。老若男女でぎっしり。
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水木サンの子供時代はいくつかの著作から「ああ、こういう子供だったのか」と知ったわけだが、そのあまりの絵の巧さにびっくりした。
童画が特に素晴らしい。文字の大きさをあえて変化を付けるとこらは武井武雄や初山滋の世界に近い感じがした。
絵そのものは川上四郎のノスタルジックな雰囲気もある。
しかし絵柄の多彩さにも驚いた。
小学生で個展をした(教頭の勧めで)ときに新聞に取り上げられたのも納得。
チラシの絵はパステル画だが水彩画とペン画が特によかった。

コレクションの一端も出ていた。へその緒入りの箱がある。それをみて初めて歌舞伎や文楽の「ほぞのお書き」というものの実態がわかった気がした。
あとスクラップブックの凄さにも驚いた。
中でも様々な新聞のロゴマークを集めたものは一見の価値ありだと思う。
こういうコレクターだからこそ、無限の知識が集まるのだ。

展示は生涯の紹介と作品展示のみならず、水木サンの言葉を折々に挙げていて、それがポイントになっている。

やがて戦場へ。
このあたりの絶望感がひしひしと伝わってくる。
すっきりした男性二人の軍装姿の絵がある。少尉になったお兄さんと二等兵の水木サンである。
ラッパ兵としてだめだと思い転属を願い出たがために、国内から南洋へとばされることになった。戦後にそのことを知る水木サン。
人間の運命なんてどこでどうなるか知れたものではないのだ。
水木サンの手記、英和辞典、ゲーテの本などがある。
ゲゲゲのゲーテなのだ。

戦後しばらくしてから描いた戦記マンガと「総員玉砕せよ!」の原画がある。
基本的に原画は2頁展示である。
しかしこの「総員玉砕せよ!」はもう少し多い。
展示の多いことの意味をよく考えねばならない。

またパプア・ニューギニアでの現地の人々との交流を描いた絵もある。
気に入られて歓待された、という話は以前にも読んだが、これも水木サンの人徳というか魅力がなせるわざだろう。

奥さんとの新婚時代の貧しすぎる住処の再現があった。
水屋には軍艦の模型がある。
夫婦で仲良く模型作りに励んだことは「貸本末期の紳士たち」にも描かれている。そして小さなちゃぶ台には黒くなったバナナが大量に…
水木サンはバナナを食べる時の擬音が「ガーッ」だったように思う。
なんでやねんと思いながらもそれが意識に残り、バナナを見る度「ガーッ」と食べる水木サンの絵を思い出す。
食べ物への執着は今のグルメマンガとは一線を画し、よりリアルなナマナマしさがある。
水木サン、杉浦茂、この二人の「ものを食べる」シーンはとても印象的。
ああ、どちらもしげるだ。

貸本時代の作品がずらり。
まさかのバレエマンガまであるがな。
すごい幅広いが、それはあくまでも「描かされたもの」だそうだ。
いくつかは読んだものもある。

さて「墓場鬼太郎」がある。可愛くないが、これが可愛くなるのは「ゲゲゲ」以降である。
それにしてもすごい貧乏暮らしである。
ドラマ「ゲゲゲの女房」にもよく描かれたが、さすがにドラマは華やかな美男美女で演じられた上、当時の貧乏さはちょっと再現できないようだった。
とはいえ、新婚ほやほやの水木サンの写真を見ると、TVで演じた向井理に似た感じがあった。その一枚だけそう見えた。
貧乏な中でも奥さんは偉かった。そして水木サンは奥さんと二人の娘さんを大事にした。
そのあたりがとても好ましい。

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いよいよスポットライトが当たる時代がやってきた。
「テレビくん」の成功である。原画は、インスタントデコレーションケーキを見たテレビくんが「今日のおやつにするか」とテレビに半分入り込んだときに足を掴まれるシーンが出ていた。
わたしは最初にこのマンガを読んだとき、マンガだとわかっているのに「おいしそう、いいなー」と思ったものだ。

「悪魔くん」は松下一郎の方のが紹介されていた。
山田真吾の方はイラストが出ていた。
話の面白さは松下一郎の方だが、可愛さは真吾に尽きる。
私見だが、水木キャラで唯一の美少年ではないかと思っている。
その真吾と百目の子とがいる図が出ていた。

集団絵の中で、真吾の方のメフィストと一郎とが一緒にいるのがあった。
パラレルワールドと言うか設定が違うから「悪魔くん」はけっこうややこしい。
タイトルを変えてくれたらよかったのに、とたまに思う。

「河童の三平」の表紙絵が並ぶ。
68年の第三回の表紙絵は可愛らしい森の中にいる三平、かんぺいらの絵だった。
この表紙絵の森はそれこそ童画風な雰囲気で満ちている。
色もパステルカラーで、なんとなく朗らかなキモチになった。
とはいえ、三回目というと話はちょっと暗かったように思う。
チラシのは五回目。こちらは細密描写の森と言うか関東のヤトのような所が描かれている。

短編の紹介を見ていると続きが読みたくてならなくなる。
中でも信州のどこかの神聖な土地と言うのが出てくるとドキッとする。
「悪魔くん」の中でも「入らずの森」というのが出てくるが、あの森の深さ、森の圧倒的な存在感、その存在の理由などを思うと、心にいくつでも謎がうまれ、知りたいような知るのが怖いような心持になる。

「ゲゲゲの鬼太郎」の紹介で「霧の中のジョニー」があったのがいい。
ジョニーの屋敷が出ていた。凄い建て増しに継ぐ建て増しで、とても魅力的な風貌を見せる建物になっている。
水木サン、初期の松本零士、宮崎駿、彼らの描く建造物は異様に魅力的なものが多い。それで思ったのだが、マンガに描かれた魅力的な建物の絵ばかりピックアップした画集があってもいいのではないか。
きっととても素晴らしいと思う。

このジョニーもいいキャラだが、とにかく強いので鬼太郎は「骨と肉が」離れ離れになった状態にされ、風呂敷に包まれてねずみ男に背負われて療養の旅に出る。これを考えるとモノスゴク怖い。妖怪だからなんでもありかもしれないが、「ゲゲゲの鬼太郎」ではたまに物凄く怖い怪我を負うことがある。
わたしなどはよく震え上がったものだ。

鬼太郎が高校生に変身している作品も出ていた。ああ70年代、という感じが強い。そしてこの時代に描かれた鬼太郎を見ていると、いつも思うことがある。
ガンバ大阪のヤットさん、遠藤選手、かれ、やっぱり鬼太郎に似ているなあ。
特撮でウェンツくんが演じたが、本当はかれよりヤットさんの方がいいキャスティングだと思う。風貌だけでなく、あのクールさがとても原作鬼太郎に近い。

いいアシスタントが揃ったのはいいが仕事のし過ぎだと水木サンが苦しむのがこれまた印象的ではある。
奥さんとの対話がすごい。そうか、と納得する。多忙な人間はやっぱり棺桶の中に入った時くらいしかのんびりできないのだ。

妖怪研究による一枚絵、このシリーズも好きだ。
そして場内では水木サンの仕事場の再現(オバケが出てくる!)と、水木サンのコレクションとが展示されていた。
妖怪ギャラリーである。古いものから近年のフィギュアまで。洋の東西を問わず世界中から集めたものたち。

そして水木さんの世界旅行の地図とスナップ写真とがある。荒俣宏さんの同行があるものが多い。いいなあ。
また、ファンレターの中に子供時代の山田かまちの自作妖怪つきハガキがあった。これにはびっくりした。

どういうわけかわたしは大人向けの作品を子供の頃からよく読んでいた。
水木サンでいえば「糞神島」だったか、あの単行本をオジが持ってたからだが。
これで思うのだが、原作のアニメや特撮をよく見ていたが、実際に最初に読んだマンガは大人向けというのはわたしの場合かなりある。
しかもそれが尾を引いたか、その作家の子ども・少年向けの作品より大人向けの作品の方が好きだというのも多い。それも今に始まったことではなく、子供の頃からそうなのだ。
手塚治虫、石森章太郎あたりは完全にそれ。

前述のとおり、水木サンの作品はかなり子供の頃から読んでいたが、リアルタイムに本当に面白く読み始めたのは90年以降のことで、水木サンが「東西奇っ怪紳士録」「神秘家列伝」「カランコロン漂流記」=のちに「わたしの日々」を描いている間、本当に熱心に読んだ。
今でもしばしば再読するのは「…紳士録」だが、どこを開いても面白い。
個人的に好きなのはそれらと大人向けの短編、そして真吾の方の「悪魔くん」、一郎の方の「悪魔くん」、「河童の三平」が特に好きだ。
「ゲゲゲの鬼太郎」は案外読んでいない。
これは手塚の「アトム」を読んでないのと同じような理由から。

ところで展示には水木サンの描いた設計図面などもあった。
水木サンは普請道楽なので自宅もとんでもなく建て増しされている。
いつかそっと遠望したいものだと思っているのだが…

妖怪から離れた作品の紹介もある。
近藤勇やヒットラーを描いたもの。
ヒットラーについては「…紳士録」でも取り上げていたが、彼がいなければひいては自分の腕の損傷もなかった、という結論が水木サンにはある。

ところで水木サンは挿絵も描く。
わたしが見たのは少年雑誌の口絵のものなどだが、そうした仕事の一つに1979年か、福島第一原発に勤務していた方のレポにつけた絵が凄まじかった。

最初に絵を見てからタイトルや解説を見るので、「うわー、御年90歳近くになられても、やはり正義のキモチが」と思ったのだが、そうではなかったのだ。
しかし現在と状況は全く変わらない。すごい先見性…
というより、、戦争体験がやはり人間への眼差しを鋭くしたのだろうな、だから何十年経っても古くならない意識があるのかもしれない。

最後に「ゲゲゲの女房」である奥さんのインタビュー映像をみた。
奥さん、どうかお体を大事に、もっと長生きなさってください。
そして各界の著名人による追悼メッセージ絵馬がすばらしい。
中でも池上遼一鬼太郎が可愛すぎる。ボブでキュートな鬼太郎。離れた位置にいるねずみ男の足元は池上らしさが強いけど、あの鬼太郎のキュートさ、尋常ではありません。ほんまに可愛い。
それからしょこたんの水木しげる猫の集団がたまりません。このヒトは楳図かずおも水木しげるも自在に描けるのだなあ…

この日、わたしは朝から晩まで洛中を這いずりまわったが、最後に訪れた海北友松展で見た襖絵、その引手がぬりかべの眼の形にそっくりで、ちょっと嬉しくなった。

水木サンの大きな一生、その一部の時間だが、同時代に生きてこれて、とても嬉しく思う。いい展覧会だった。
5/8まで。 

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名建築家の温泉大旅館をみる

少し前に唐津や武雄温泉などを巡ったが、その際に嬉野温泉の立派な温泉大旅館を見学した。
現代の名高い建築家が設計したもので、とても感じの佳い所だった。

わかるひとにはわかるという挙げ方しかしないし、場所もホテルの名も挙げないが、「ああ、素敵」というキモチを共有できたらよろしいなあと。

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中へも。
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お部屋のお庭をみる。
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素晴らしい。

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今度は宿泊したいものです。

半田市の赤レンガをちょっと見にいった

「半田赤レンガ建物」を見学した。
かっこよかった。サイトはこちら

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いいなあ。
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サイドへ回ろう。
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近寄ろう。
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ええ煉瓦ですわ。

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説明がある。
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煉瓦の建物の中は資料は撮影禁止。
なかなか面白い資料がありましたわ。

かつてのポスター。やっぱり美人画はいいな。なにしろここは元は「カブトビール」なのですよ。
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今度はここでお昼と言うのもよさそう。
物凄い雨の日に行ったが、着いた時に影響を受けなかったのがいい。

半田市で見た建物など

少し前に半田市に行った。
ところがあいにくなことに行った日はミュージアムも併設しているミツカンの本社と工場が休みだった。
をいをい…仕方ない。

とはいえ、今回の目的は半田赤レンガ建物。これは別項で挙げている。
さて、あちこち見て回ろう。
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古い建物が残るのはいいなあ。

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ここの壁面素敵だ。
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朱色なのは名古屋市の「揚輝荘」にも似ている。
なにか土地柄と言うのがあるのかな。
以前「揚輝荘」に行った時の様子はこちら

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大きいね。
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では庭園へ。
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今度は天気の良い日に一日いたいものです。

雪村 奇想の誕生 

「ゆきむらではなくせっそんです」
雪村と言うヒトの話。
この字でユキムラだと歌手に雪村いずみがいた。
それから「幽☆遊☆白書」にも雪村螢子という少女がいる。
で、セッソンはというと、室町時代に関東で活躍した雪村周継(せっそん・しゅうけい)このヒトくらいしか知らないし、現にこの人が対象の話になる。
「雪村 奇想の誕生」
東京藝大美術館で彼の大々的な回顧展が開催されている。
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既に後期が始まり、大幅な展示替えをしたというのに、今から挙げるのは前期の感想である。
例によってやることが遅いので仕方ない。

ところで今回のチラシ、キャッチコピーがなかなか楽しい。

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第一章 常陸時代 画僧として生きる
雪村は生涯が案外知られていない部分も多いそうだ。
生まれたのは常陸の部垂(ヘタレ)という場所だとある。
この時代で自分から僧になる人と言うのはどういった経緯・思考の末にそれを選んだのかとか、色々妄想が生まれるが、それはわたしの勝手な愉しみに過ぎない。
どうやら確かなのは「雪村になる以前、かれは廃嫡されたらしい」ということ。
それをどこかに含んでおいて、絵を眺める。

滝見観音図 雪村の描いたものと筆者不明のものとがある。
大体同時代。同じ茨城県、昔の常陸。
雪村はこの絵を手本に自分の絵を拵えたのか。
タネ本の方は、善財坊やは左下で拝している。観音はふっくらさん。
雪村はまず滝が違う。左から右下へ・次は左下へ、という流れを背後に描く。滝見と言いながら今はそれよりちびの様子を見てますよ、という観音。
浄瓶もある。坊は観音を見上げる。観音はやや細面。

先般「高麗仏画」の名品を鹿ケ谷の泉屋本館と根津美術館とで見たが、そこでも観音に面会に来た善財坊やの絵のよいのをたくさん見た。
あれらはカラフルで装飾も豊かだったが、時代が下がると表現も嗜好も変わる。
海を渡ってシンプルな方へ向かう、と言うのも考えれば面白い。

葛花、竹に蟹図 黒いカニである。つまり茹でられもせず生きて動いている。葉の緑がいい。葛の花と言えば二つのことを思い出す。
釈迢空「葛の花 踏みしだかれて、色あたらし。この山道を行きし人あり」
野坂昭如「骨蛾身峠死人葛」
カニはチクチク歩いている。

書画図 大和文華館 見た記憶があんまりないのだが、スルーしてたかな??三本に分かれた滝がドウドウと流れ、少年たちは立ち働く。その場にいる人々の顔立ちはわからない。

瀟湘八景図帖 雪村のには小さいけれど人がいる。人がいる自然風景。これはほっとする。
いくら「帰帆」があっても人の姿は見えないのが大半。
混み過ぎるのもいやだけど、適度なヒトの姿はあると安心する。
しかし雪村以外はなかなかそんな人の姿は描き込まないか。
そのあたりがもしかすると発想が違うのかもしれない。

柳鷺図 鷺たちがなかなかマッチョではないか。しなやかではなく筋肉の在り処を見た気がする。飛ぶのも佇むのもみんななかなかエネルギッシュ。

陶淵明図 柳の下で詩人がふと振り返る。琴を持ってついている少年が「ここでまた何か思い浮かんだのかな」と思っているのかもしれない。

白衣観音図 ぼてっと座っている様子がどことなく占いの人みたいにも見える。
描かれている人も神もみんななんとなく面白い。
蕭白ほどのケッタイなのはいないが、なんとなくアクの強い様子。

第二章 小田原・鎌倉滞在―独創的表現の確立
この辺りから本格的に面白い絵が出てくる。

蕪図 日々食べるものとしての姿を写したのか、何かしらそこに禅の悟りを反映させたのか、そんなことは知らないが、全く以て蕪である。
後世の徳岡神泉の蕪図が妙に思想の深淵を思わせるのとは対照的に、「この蕪は皮がちょっと堅そうやな」という感じがするくらいである。

高士観瀑図 右下に小さく滝。それ見てて「GJ!!」と指立ててるらしい??

列子御風図 中国の仙人で、風に乗って術をかけているところ。

こういう故事説話などを描いた絵は大抵がイキイキしている。

欠伸布袋・紅白梅図 三幅。左右に白梅、紅梅の絵がおかれ、中に気持ちよく欠伸をする布袋さん。

百馬図帖 鹿島神宮所蔵か。いろんな馬たちがあちこちにいて仲良くしている。可愛いなあ。外線のみ。シンプルな良さがいい。
そういえば日本固有の馬の産地と言えば木曽に相馬に・・・
茨城は知らんなあ。

古天明十王口釜 関東の釜で、「得月」のサインがある。

第三章 奥州滞在ー雪村芸術の絶頂期 
ここで奇想爆発!

呂洞賓図 チラシにもなったあれは大和文華館の名品の一つ。
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けったいなおっさんを乗せた竜のドヤ顔がなかなか。
煙から生成されたような竜もいてます。

こっちのは新発見。
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これ実は最初のチラシでは出てなかったのだよ。
下のチラシ見てわかるようにその場所には釈迦と羅漢たちが煙から出た竜を見上げる図が入ってたのだ。

へんな煙が出て来て何かが現れる、というのはもう近年では見なくなったけど、昔はランプの精とかそんなのがおったもんなあ。←ちょっとチガウ。

鍾馗図 ぎろりとした目玉のオッチャンとして描かれている。コワモテだけど妙な愛嬌もある。
結局そこがええわけです。

寒山も巻物半開きでニター。
唐子と遊ぶ布袋も嬉しそう、みんな見た目ちょっと変やけど楽しそう。
風景もただ山水ではなく、そこに生き物がいるのがいい。

花鳥図屏風 白椿に白梅に雁や鶺鴒などもいる。左にはガチョウに鷺にもいて柳や蓮もみえる。季節は廻らず同居する。
また別なそれには、木に止まる白鷺らの良さを描き、槍梅もあり、こいのぼりみたいな顔の奴までいたりする、
ほのぼのはしないが、こんな静かでそしてにぎやかな花鳥画はいい。

第四章 身近なものへの眼差しイメージ (242)

野菜香魚図 おいしそう。茄子や細大根などが描かれている。茄子は食べたくなる。

芙蓉にクンクンする百舌鳥とか丸々した瓜に三方に跳ねるカヤツリ草など、面白い取り合わせの絵が続く。
猫小禽図などは虎柄の猫が可愛いが、竹に止まる鳥はなんか憎らしそう。
コロコロに肥えた短足なところが可愛い大猫。

やっぱりコロコロに肥えた雀らが竹にいる図もいい。

第五章 三春時代 筆力衰えぬ晩年
面白い絵が集まっている。なんだか好きな題材を好きなように描いている雰囲気がある。

蝦蟇鉄拐図 3本足の蝦蟇はお約束だが、このガマ仙人の楽しそうな様子がいい。蝦蟇がビューッとしてるのを喜んでいるようだ。
鉄拐も負けじと芸を披露中。

猿猴図 こ、これは惨劇を予想させる図。チラシの「猿蟹合戦ファィッ!」のあれね。チラシだけ見てたらガチンコの1対1かと思ったが、そやなくて、なんとこの猿の後ろに猿軍団が控えておるのだよ。しかも「やれーやってまえー」とエキサイト気味。ヒーッ
やんきーな猿たちには困るで。カニ、恐らくアウト。これならそりゃ復讐・仇討アリですわな。

孔子観敧器図 これは中村不折も描いているが、水の入った器のバランスと政治のバランスとを示すシステムを孔子が見学する図。フルカラー。
ところでこの絵、大和文華館のだが、あちらでは見たことないなあ。

金山寺図屏風 これは名刹として有名な中国のお寺で逸話も多いのだが、ここではやたらと塔が多いように描かれている。
実際には時代の変遷があるので、本当にこんなに塔があったかどうか。今のは清のもの。雪村がいた時代はどうだったかは知らない。

それにしてもどんな風景にも人がいるのはいいな。
他の絵師だとヒトの姿を消すことも多かったり、点景の一つにすぎないのに、雪村は人もまた自然から現れたものとしてその風景画に描き込む。

なにやら囲い込む場があり、そこへ入るとちょっと違う展示があった。
テーマ展示 光琳が愛した雪村
光琳描く高士や仙人らは雪村の影響下にあるものが多いそうな。そうか、そう言われてそうだなと同意する。
例の小西家伝来の光琳関連資料にも雪村のなんだかんだがあり、光琳が雪村に夢中だったことがわかる。

第六章 雪村を継ぐ者たち
画僧だけでなく狩野派や他派の絵師たちの作品もある。

カラス図 以天宗清 室町時代 けっこう凶悪そうでいて可愛いカラスが二羽いる。目が△に尖っている。

狩野洞秀も呂洞賓を描く。好奇心旺盛そうな竜がいた。煙から飛び出す竜。

江戸時代、絵師の間には雪村ブームがあったのかな。
狩野派の絵師による鍾馗、布袋、蜆子図などがあるが、けっこう雪村の絵のイメージが強い。
明治になっても模写してた人もいるようだ。

狩野芳崖 竹虎図 おおーなかなか。がおーっなのがいい。
これは橋本雅邦に「雪村のこんなの観たよ」とスケッチしたのを見せたもの。

その本歌があるが、さすが芳崖、うまいこと捉えてる。ひしゃげたような頭の形と言い、じわじわなシマシマといい。目は枇杷の実のように丸くて可愛い。そして手の甲のふっくらさがいい。

昇龍図 橋本雅邦 飛んでくところ。こちらも目が可愛い。

雪村、どういう気分でどんな心持で描いていたかは知らないが、ファンキーなものが多くて、笑うに笑えないが笑ってしまうものが少なくなかった。
また後期もきちんと見て、大いに楽しみたい。
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