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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

ダリ版画展 もう一つの顔

京都文化博物館でダリの版画ばかりを集めた展覧会が開催されている。
初日に行ったのに閉幕間際に感想を挙げることになるとは、自分の怠惰にジクジたる思いでいっぱいである。

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ダリの絵のうまさはわかっている。基礎がいいからこそなんでも描けるのだ。
そのダリが物語を版画にしている。挿絵も物語絵もどちらもそこにときめきがなくてはならない。
ダリの絵にはそのときめきがあった。

選ばれた物語はダンテの神曲である。
地獄篇、煉獄篇、天国篇が100シーンで構成されている。
それからマゾッホ「毛皮を着たヴィーナス」、「トリスタンとイズー」「雅歌」などが続く。
版画の技法も物語により変えている。
丁寧な仕事を前にして、わたしはダリの新たな魅力を知る。

この「神曲」は1963年に木口木版で刊行されている。本来はフランス語版で1950~52年にかけて水彩画で制作された。
それを1959年~63年にかけてレ・ズールクレール社が版画化したそうだ。

正直なところ、わたしは地獄篇の前半部分までしか読んでいない。しかし本文は読まずとも様々な媒体から物語の概要をいつの間にか知るようにはなっていた。

このダリの作品のおかげで物語にいよいよ深く迫ることになっていった。
(がんばって本文を読もう)

旅をするダンテはパブリック・イメージから離れることはない。
地獄めぐりをするダンテ、行く先々で見る現象はダリの中のイメージである。
本当の地獄など誰も見てはいないのだ。むろん煉獄も天国もまた。

ダリの不思議な世界観がダンテの詠う地獄・煉獄・天獄を露わにする。
ケルベロスは@@@@と四つの渦巻きを持つ狛犬のような風貌を見せていた。
美しい女たちは美しいなりにどこかおぞましさをみせる。

煉獄篇の作品が最もシュールだと思う。
そしてイキイキと想像力がひろがる。

天国篇は案外退屈なのだが、ところどころ先人・ウィリアム・ブレイクの描く様子を踏まえたような作品が見受けられた。
「神曲」の中での天国のイメージはそうなのかもしれない。

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「15の版画集」は動物たちの絵とダリが好きな芸術家の肖像で構成されている。
ダリは「天才日記」のヒトで自分が世界一だと言いはしても、他に好きな人・リスペクトする人も少なくはない。

犀 装甲機獣としかいいようがない。
象 でた、あしながさん。

ナルキッソス 顔は見せないが美しい少年の身体を描く。花咲く美少年。

ロートレック、ダ・ヴィンチ、ゴッホ、ミケランジェロ、レンブラントら先人の他にシャガール、ピカソといった同時代人の絵もある。
映画「ダリ 天才日記」ではピカソもダリの才能に嫉妬する、だったが、ダリはルーブルに行く前にピカソに会いに行き、ピカソも喜んで迎えたそうだ。尤もどこまで本当なのかは知らない。

柔らかい時計  これを私と友人らは「めたった時計」と呼んでいる。
どこの方言か知らんが飴ちゃんが溶けてしもたのを「めたる」というそうで、あまりに語感がピッタリなのでわたしもお気に入りの言葉。そう、めたった時計。

「毛皮を着たヴィーナス」はエングレーヴィング。1968年、ダリは版画でいい作品を次々に生み出している。
官能性はむしろ薄い。男の悲哀感が漂う作品になっている。

中世の悲恋物語「トリスタンとイズー」はわたしも好きなのだが、全編フランス語か、ちょっとイメージが違う感じもある。
わたしのなかではやはりラファエル前派のイメージが強いからかもしれない。またはビアズレーの。
しかしところどころで妙なゆるキャラめいたものがいるのも楽しい。

いちばん綺麗だったのは「雅歌」である。
エッチングとステンシル。金粉もかかり、豪華な拵えになっている。
とても綺麗。「雅歌」というばモローのイメージが強いが、こちらもまた目の覚めるような美麗さがある。

シュルレアリスムの思い出 技術を凝らした作品で、内容はわからなくても蝶やダリの不思議な肖像など面白味のある連作。

他に妙に気になったのが「日本の民話」1976年のなにやらすごいようなもの。
花咲じじい 撒いてるわ。赤ずきんで。

湖山長者 これはまた珍しい。鳥取の民話で面白いのだが、よくダリもこんな話を知っていたものだ。
蝶ネクタイのオヤジと言うのも面白い。
山越の阿弥陀像を思い出した。

六地蔵 △○○の連中がキターーー

他にもたくさん興味深い作品がある。
面白い展覧会だった。9/4まで。

アカデミア美術館所蔵 ヴェネツィア・ルネサンスの巨匠たち

「アカデミア美術館所蔵 ヴェネツィア・ルネサンスの巨匠たち」展を国立新美術館で見た。
見たのは開幕直後だったが、随分出遅れての感想である。申し訳ない。
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1.ルネサンスの黎明15世紀の画家たち

ジュヴァンニ・ベッリーニ 聖母子(赤い智天使の聖母) セラフィムは首だけの存在で位が高いそうだが、どうもわたしのアタマでは飛び交う生首とか、よくても首の下の短い魚体の龍、彼らの仲間に見えて仕方ないのだ。
こんなことを思うのは失礼だとわかっているが、止まらない。

聖母は伏し目がち、くりくり髪の愛らしい幼子。

ラザロ・バスティアーニ 聖ヒエロニムスの葬儀  教会内、床に銀色の遺体が横たわる。1枚の布がその体に巻きついている。その周囲に十人の修道士がいるが、彼らの表情や容子は様々。泣くもの・端然と佇むもの・この先の事を考えているもの…
ヒエロニムスにいつも寄り添っていたライオンも静かに左端にいる。

カルロ・クリヴェッリ 聖セバスティアヌス  矢プスプスに刺さっていて白目むいている。(実はここではまだ仮死状態)足指が変な感じ。既にニンブス(光輪)が。
このセバスティアヌスの矢の刺さり方にもときめくなあ。

アントニオ・サリバ 受胎告知の聖母 「待て!」のハンドサインと「何か来たな」の表情。本当は崇高な絵画なのだろうが、どうもそう見えてしまう。
この聖母は本当は拒否したかったのかもしれない。しかしとても冷静なヒトである。

ヴィットーレ・カルパッチョ 聖母マリアのエリザベト訪問  2人は確か親戚。告知後にここへ来たマリア。対立はしていない2人だが、絵の中に対立構造がいくつも見受けられる。こういうのも面白い。そして街中にいるから他の通行人もいて、中にはターバンを巻いた男もいる。
背景の建物も配置もどこかシュール。

ニコロ・ロンディネッリ 聖母子と聖ヒエロニムス  草花のかたまり。冠、幼子の小さなアクション。それをみつめる聖母のちょっとしたリアルさ。ややうつむき加減の綺麗な顔。

フランチェスコ・モローネ 聖母子 絖のように光る紅い衣裳。丸顔美人。

フランチェスコ・ビッソロに帰属 キリストの頭部  バストアップなのだが有元俊夫を思い出した。

2.黄金時代の幕開け ティツィアーノとその周辺

アンドレア・プレヴィターリ キリストの降誕 牛馬が息を吹きかけ温める。寝ころぶ赤子。水瓶などを持つ女たちが来る。羊飼いもいる。みんながお祝いの気持ちをいだいている。好奇心でぞろぞろ集まってきたわけではなさそう。

ロッコ・マルコーニ キリストと姦淫の女  かなり豪華な女だな。パールを頭にいっぱいつけて。
姦淫は相手あってのことで、ここの汚いおっさんらは自分らが相手してもらえなかったから訴えてるとしか思えんな。
画家のサインは柱に貼り付けた紙に書かれていて、浮世絵風で面白い。

ボニファーチョ・ヴェロネーゼ 嬰児虐殺 殺したおしてます。いっぱい死んでる。かばう母親を抑えつける男、王命だけを聞くようにできている男たちはアウトだな。悲惨な情景。
王とその周辺も冷然と見おろしている。後々の因果応報を知れ、と言いたいが、キリスト教には因果応報はないか。

ティツィアーノ 聖母子(アルベルティーニの聖母)  既に悲しげな聖母。綺麗な横顔。手を握り合う母子。

ティツィアーノ 受胎告知  巨大な絵、崇高さを感じさせる。上空から見守る天使たちの愛らしさ、マリアの驚き、ガブリエルの力強さ。ああ、大きな絵。
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パリス・ボネドーネ 眠るヴィーナスとキューピッド 堂々と裸婦を描けるのでブームになっていたそうです。
ぶりぶりのお肉がいい。ちびっこは眠るママから布を引っ張っておる。

3.三人の巨匠たちティントレット、ヴェロネーゼ、バッサーノ

ティントレット 動物の創造 これはいろんな動物が一斉に走り出している感じの躍動感がある。みんな←向いて走る。かっこいいな。どうぶつたちの生き生きした横顔。

ティントレット アベルを殺害するカイン  おー、鹿の生首転がる。まあしかしスゴイ殺意ムンムンですなあ。
兄弟のどちらかしか恵まれない、というのはお約束。それがいやならさっさと距離を置くべきなのですが、そうも言えないしねえ。

バッサーノ ノアの方舟に入ってゆく動物たち  いろんな動物たちがけっこう順序良く秩序を守って舟に乗り込む。
なかなかたいへんなのにしっかりしている。

ヴェロネーゼ レパントの海戦の寓意 雲の上では聖母と人々。かれらはヴェネツィア、ローマ、スペインの守護聖人。ライオンもちゃんといる。そして海戦。オスマン帝国に勝利するのですよ。

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4.ヴェネツィアの肖像画
その時代の上流階級の衣裳の好みなどがわかるのも面白いが、どちらかというとあまり肖像画に関心がないので、ただみているだけになった。

5.ルネサンスの終焉 巨匠たちの後継者
アンドレア・ヴィンチェンティーノ 天国  うわーっスゴイ人・人・人…手を挙げたら火火火になる。うごめく人々、天国は超満員。
まるで出勤時間の山手線。
「い、いんへるの」にも似ている…

パルマ・イル・ジョーヴァネ スザンナと長老たち  むっちりスザンナ。…爺ども、シバキ倒してやりたい。

ジョーヴァネ 放蕩息子の享楽、帰還  どちらもほんまにこいつは、という情景。兄貴が苦々しく思うのは当然で、この爺も甘いわい。そういうキモチになるような絵。つまり巧いんだよなあ。

レアンドロ・ヴァッサーノ ルクレティアの自殺  胸を開いて刺すところ。豪華な刺繍の衣裳。

ドメニコ・ティントレット キリストの復活  皆ねてる時に出てくる。このタイミングなのか。

パドヴァニーノ オルフェウスとエウリュディケ  オルフェウスは竪琴の名手の筈だが、背負っているのはヴァイオリンに見える。弦も持ってるし。それともギターなのか?いやいや違う。そばには地獄の犬がいてて、「あーあ、振り向いてるよ、このひと」な顔を見せている。犬も全然邪魔なんかしないで控えてるのにこういうことになる。

ああ、申し訳ないくらいまともなことを書いていない。
どうしてか最近洋画を見ても書けなくなっている。
ポンピドゥー、デトロイトの感想を挙げた後は、しばらくの間、洋画についての感想は控えよう。
日本洋画は書けそうなので書こう。


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