美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

2017.2月3月の記録

20170204 皇室の御寺 泉涌寺 京都国立博物館
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20170204 富士を描く、涅槃図、ふたつの遊行上人絵巻 京都国立博物館
20170204 日本の表装 京都文化博物館
20170204 祇園祭「岩戸山」 京都文化博物館
20170208 近代画家の描く近松作品 その3 「大近松全集」付録木版画より 園田女子大
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20170211 紙で遊ぶ世界 折紙とおもちゃ絵 天理参考館
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20170211 白描の美 図像・歌仙・物語 後期 大和文華館
20170211 旧・大阪電気軌道富雄変電所、旧鴻池家表家 建築探訪
20170211 大阪版画百景 江之子島大阪創造芸術センター
20170212 名品コレクション 香雪美術館
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20170212 M氏秘蔵コレクション パリに生きる パリを描く 小磯良平記念美術館
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20170216 鈴木其一 細見美術館
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20170217 シュポ― 走れ!蒸気機関車 新橋停車場
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20170217 マティスとルオー 汐留ミュージアム
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20170217 美しい人、東洋のやきもの 松岡美術館
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20170217 小川千甕ヨーロッパスケッチ 目黒区美術館
20170217 並河靖之 東京都庭園美術館
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20170217 コレクターの眼 サントリー美術館
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20170217 ティツィアーノとヴェネツィア派 東京都美術館
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20170218 金沢八景愛された風景 金沢文庫
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20170218 時を超えて ハマの史跡の物語 横浜開港資料館
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20170218 増田彰久写真展 アジアの近代建築遺産 横浜都市発展資料室
20170218 金春家伝来の能面 東京国立博物館
20170218 春日大社 東京国立博物館
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20170219 十二ヶ月図の美の世界 野間記念館
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20170219 明治・大正の本郷を訪ねて 「新撰東京名所図会」展2 文京ふるさと歴史館
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20170219 死してなお―鴎外終焉と全集誕生 鷗外記念館
20170219 近藤ようこ個展 物語る絵2 ビリケンギャラリー
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20170226 アドルフ・ヴェルフリ 二萬五千頁の王国 兵庫県美術館
20170226 ハナヤ勘兵衛の時代デェッ 兵庫県美術館
20170226 金山平三 芝居絵 兵庫県美術館
20170304 安野光雅 御所の花 東大阪市民美術センター
20170304 花の美術 大和文華館
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20170304 お水取り 奈良国立博物館
20170305 船場の雛祭り ギャラリー
20170305 明清・近代の書画・天神様の美術・富本憲吉のデザイン 大阪市立美術館
20170305 拝啓ルノワール先生 あべのハルカス
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20170309 敦賀市博物館・敦賀鉄道資料館 建築探訪
20170309 雅の系譜 敦賀市博物館
20170311 ウォルター・クレインの本の仕事 滋賀県立近代美術館
20170311 近江の古美術 滋賀県立近代美術館
20170311 古田織部と慶長年間のかぶきもの 古田織部美術館
20170312 熊谷守一 おまえ百までわしゃいつまでも 香雪美術館
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20170312 香雪美術館 建築探訪
20170312 神戸開港150年 神戸ファッション美術館
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20170312 漆芸讃歌 石本愛子漆芸展 竹中大工道具館
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20170318 化粧 KEWAI 舞台の顔 逸翁美術館
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20170319 江戸時代の源氏物語 見立てとやつし 宇治市源氏物語ミュージアム
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20170319 宇治十帖 宇治市源氏物語ミュージアム
20170319 薫風 北村美術館
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20170319 描かれた茶の湯  後期 茶道資料館
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20170320 武田五一 建築標本 INAXギャラリー大阪

20170320 春の息吹と夢みる乙女 小林美術館
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20170320 美しい扇 宮脇賈扇庵所蔵 さかい利晶の杜
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20170320 利休と堺 与謝野晶子の堺 さかい利晶の杜
20170324 超絶入魂!時代劇画の神 平田弘史に刮目せよ! 弥生美術館
20170324 華宵 傷だらけの美少年、麗しの美少女 / 夢二の春夏秋冬 弥生美術館
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20170324 江戸と北京 18世紀の都市と暮らし 江戸東京博物館
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20170324 渡邊省亭 加島美術 ギャラリー
20170324 茶碗の中の宇宙 東京国立近代美術館
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20170324 近代日本の美術 東京国立近代美術館
20170325 歌川国芳 21世紀の絵画力 前期 府中市美術館
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20170325 大衆芸能を彩った女性 魔術の女王 松旭斎天勝 国立演芸場
20170325 高麗仏画-香りたつ装飾美 根津美術館
20170325 更紗の魅力/再会 興福寺の梵天・帝釈天 根津美術館
20170325 DAVID BOWIE is 寺田倉庫
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20170326 カッサンドル・ポスター展 グラフィズムの革命 埼玉県立近代美術館
20170326 近代の日本画 埼玉県立近代美術館
20170326 三井家のお雛様/三井家の別荘・城山荘の想い出 三井記念美術館
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20170326 古唐津 大いなるやきものの時代 出光美術館
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20170326 オルセーのナビ派 三菱一号館
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人によりそう ―中山太陽堂にみる販売促進・営業活動―

もう5/31で終了するがクラブコスメチックス文化資料室の今期の展示はやはり面白かった。
既にツイッターでいくつも挙げているのでご覧になった方もおられるかもしれないが、ここでもまとめたいと思う。
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中山太陽堂の創業者・中山太一の偉いところは、人を喜ばせようとしたところにある、と常々思っている。
お客・代理店それぞれに親切をした。
その親切が究極のところで利益になる。
親切、と一概にくくれるものではないが、しかしわかりやすい言葉でいえばやはりそれは「親切」に他ならない。
中山太一の言葉でいえば「共存共栄」である。
製造メーカー・愛用者・代理販売店、三者がみんな喜べるように、中山太一は努力した。

この三方ニコニコのシステムは別に中山太一が思いついたわけではなく、先達に河竹黙阿弥がいる。
狂言作者の彼は「お客に親切・役者に親切・座元に親切」の三親切を心がけ、死後百年以後の今も愛される芝居を数多く残した。
中山太一もその考えを懐き、化粧品業界にそれを持ち込み、「化粧品業界の近代化の父」と謳われるようになった。

さて中山太一の賢いところは、宣伝の力を知り尽くしており、それに力を入れたことだった。
商品の品質はよく、なんら恥じることもない。
そこで近代的な化粧法を広めるにはどうするかを考えて、大がかりなイベントに積極的に参加していった。
今回の展覧会はその中山太陽堂が参加してきたイベントの紹介であり、そこでの存在価値を見せてくれるものだった。

以下の写真は主催者の許可を得たものです。

展示室風景
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上の青い長いのは天神祭を描いた緞帳の再現。
水の都・大大阪の祭。
下部に「クラブ白粉」の文字がある。調整は松坂屋。

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映像コーナーと読める資料もある。

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実業之日本社から出た大正博覧会写真号とそこに掲載された広告。
水面に「クラブ白粉」の文字が浮かび、上部には古代から近世を代表する美人の紹介がある。

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平和記念東京博覧会の会場図。中央に絵と周囲に当時の写真とで構成されている。
噴水像も中山太陽堂が提供している。

この上野公園での博覧会では特設感を設置している。
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ステキな建物…

更にそこで美容部員が、やってきたお客さんにプロの手でメーキャップを施す。
人気は上々。
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建物には応接室もあった。
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公園の噴水の写真と絵。
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カテイ石鹸の文字が見える。

博覧会だけでなく、中山太陽堂は劇場の緞帳を贈ることも多かった。
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大阪歌舞伎座と中央公会堂の緞帳
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松坂屋の調整。

この時代の松坂屋はもしかすると堺筋のだろうか。

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こちらは城崎温泉地蔵湯の前にあった中山太陽堂の名入塔。
地蔵湯、洋風建築だったのか。
貴重な資料である。

他に当時の社員が着用した法被やプレゼントの団扇などがある。
そして当時の新聞もあり、広告に力をいれていたことがよくわかる。

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大事に残されていたのだ。

三者に親切、共存共栄、宣伝効果。
知れば知るほど中山太一と中山太陽堂は面白い。
かれは多くの人とつきあったが、芥川龍之介の随筆にもその名が出てきもする。
いつでも闊達だったようだ。
そのあたりのことも面白い。

展示された優雅な化粧品セットと共にそのあたりのことを大いに楽しませてもらった。

次の企画展示は来春になる。
どんな展覧会が行われるのか待ち遠しい。

2017.4月5月の記録

20170401 大商大商業史博物館 建築探訪
20170401 入江泰吉旧宅・旧大阪電気軌道富雄変電所・旧鴻池家表家 建築探訪
20170401 花の美術 大和文華館
20170402 手塚治虫の美男美女展―優艶  梅田阪急
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20170402 池田理代子―「ベルばら」とともに― なんば高島屋
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20170408 シャセリオー 19世紀フランス・ロマン主義の異才 西洋美術館
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20170408 スエーケン:デンマークの芸術家村 西洋美術館
20170408 雪村 藝大美術館
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20170408 帰ってきた浮世絵動物展 前期 浮世絵太田記念美術館
20170408 絵巻マニア列伝 サントリー美術館
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20170409 横山大観と木村武山 野間記念館
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20170409 長沢節 弥生美術館
20170409 夢二 大正ファッション 華宵  弥生美術館
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20170409 渡邊省亭 加島美術 ギャラリー
20170410 ミュシャ 国立新美術館
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20170410 草間彌生 わが永遠の魂 国立新美術館
20170410 茶の湯 東京国立博物館
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20170413 人によりそう中山太陽堂にみる販売促進・営業活動 クラブコスメ
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20170413 奈良ホテル 建築探訪
20170415 勝部如春斎 西宮大谷美術館
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20170416 杉浦非水 細見美術館
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20170416 京都市美術館 建築探訪
20170416 芳年 えき美術館
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20170420 柳瀬正夢・真鍋博・福田平七郎 愛媛県立美術館
20170420 秋山兄弟・正岡子規 坂の上の雲ミュージアム
20170420 近現代日本画と洋画 セキ美術館
20170420 山口晃x道後温泉 道後温泉
20170421 子規の生涯 正岡子規文学館
20170421 鍵谷カナ頌功堂・愛媛県庁・日土小・梅美人酒造・川之内小 建築探訪
20170422 萬翠荘・某汽船会社本社・今治市役所・公会堂・市民会館・ラヂウム温泉・白滝山荘 建築探訪
20170429 東山・北野遊楽図屏風、鬼切丸 北野天満宮宝物殿 寺社
20170429 いつだって猫/京都だって猫 京都文化博物館
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20170429 大津絵 京都文化博物館
20170429 ゲゲゲの人生 水木しげる 京都大丸
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20170429 ウルトラセブン 京都高島屋
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20170429 海北友松 京都国立博物館
20170430 太子絵伝 四天王寺絵堂 四天王寺宝物殿
20170430 近代絵画と四天王寺 四天王寺宝物殿
20170430 リサとガスパール なんば高島屋
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20170430 ふるさとのねこ 梅田阪急
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20170503 花*Flower*華 琳派から現代へ 山種美術館
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20170503 帰ってきた浮世絵動物展 後期 浮世絵太田記念美術館
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20170503 挿絵本の楽しみ 響きあう文字と絵の世界 静嘉堂
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20170503 「こどものとも」60年記念 二子玉川高島屋
20170504 バベルの塔 東京都美術館
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20170504 雪村 藝大美術館
20170504 鷗外の庭に咲く草花 牧野富太郎の植物図とともに 鷗外記念館
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20170504 茶の湯のうつわ 出光美術館
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20170504 茶の湯 東京国立博物館
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20170504 五月の浮世絵 東京国立博物館
20170505 樋口一葉と錦絵 周延が描いた「別れ霜」挿絵と錦絵の世界 樋口一葉記念館
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20170505 奈良西大寺 叡尊と一門の名宝 三井記念美術館
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20170505 見世物大博覧会 現代編 国立歴史民俗博物館
20170505 デジタルで楽しむ歴史資料 国立歴史民俗博物館
20170505 ウォルター・クレインの本の仕事 千葉市美術館
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20170506 歌川国芳 21世紀の絵画力 前期 府中市美術館
20170506 日本油彩画の流れ/明治大正昭和の水彩画/牛島憲之名作選 府中市美術館
20170506 絵で見る日本のものがたり 伊勢・俵藤太・大江山・竹取 國學院大學博物館
20170511 阿武山観測所 建築探訪
20170520 没後300年 古礀 大和文華館
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20170520 人によりそう中山太陽堂にみる販売促進・営業活動 クラブコスメ
20170520 いつだって猫/京都だって猫 京都文化博物館
20170520 大津絵/放下鉾 京都文化博物館

20170520 海北友松 京都国立博物館
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20170527 作品は深く語る 中国・日本美術の地平 白鶴美術館
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20170527 悉有仏性 磨滅の美 香雪美術館
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20170527 祈りとかたち 知られざる建築儀式の世界 竹中大工道具館
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20170528 中国古代の青銅貨幣、円山四条派の絵画、刀剣と刀装具  黒川古文化研究所
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20170528 映画ポスター 神戸ファッション美術館
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20170528 夢二ロマン 神戸憧憬と欧米への旅 神戸ファッション美術館
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20170528 アカデミー・バーの壁画を描いた作家たち 神戸ゆかりの美術館
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黒川古文化研究所名品展 中国古代の青銅貨幣、円山四条派の絵画、刀剣と刀装具

阪急の苦楽園口前から送迎バスに乗せてもらって黒川古文化研究所へ。
とにかく眺めは素晴らしい。



ここの展覧会は特に古代中国の文物に関して非常に勉強になる。
白鶴美術館同様、眼を開かされることが多い。
今回も中国古代の青銅貨幣について初めて知ることが多くあった。
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春秋戦国から秦そして前漢までの青銅の貨幣が並ぶがそれらの大半は「刀銭」だった。
何故刀の形をしているのか、その時点で謎なのだが、そのあたりの回答はここにはない。
ないことでわたしの妄想というか推理は無限に巨大化する。
それがまたとても楽しい。そして調べてみよう。

春秋戦国時代の青銅貨幣が中心なので当時の国家地図が壁面に色分けして掲げられていた。
さらにその色分けは展示品にもおよび、どこの国のものかは展示物を見る限り一目瞭然となっている。
方向音痴なわたしの言い方でいくと、左奥が秦、右上に燕、下の中央に韓がある。
国名を見るうちに様々な事件が思い浮かぶ。

燕の太子丹が秦の仕打ちを恨んで暗殺を企てる。
荊軻がその任を負うことになり、彼は悲痛な歌を残す。
風蕭蕭兮易水寒 壮士一去兮不復還

いつ思い出しても瞼が熱くなる。

さてお金の話。
貝銭から青銅になった時代。その青銅自体に価値がある「実物貨幣」として流通する。
とはいえ地域により貨幣の形の違い、重さの違いがある。
始皇帝が度量衡を統一化したのだったかな、しかしこと貨幣は斉の国の方がうまく<統一>したそうで、重量も均一化している。
ただ、ここでわからないのが「四字刀」「三字刀」「六字刀」といったものたちで、それが何を意味するのかがちょっとわかりにくい。
刀銭のことだとすればどのあたりを見るべきなのか。

中原は農業が盛んでそのために鋤形をしたおカネ「布」銭を流通した。
一方黄河流域周辺は農より漁業が盛んで、そのために刀が活きたそうな。
なのでこちらは刀形の銭。
丸くて中心にお金が開いたものも流通。
鋳造して作られた。

これらのことを踏まえて展示物を見るとやはり面白い。
そして泉屋博古館からもお金が来ていた。
これが本当の借入金かな。
いや、あの、すみません。
黒川さんはもともと証券会社だったことを考えるとやはり貨幣コレクションは面白い。

古代中国の貨幣についてわかりやすい説明を書いたサイトがあった。こちら

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次は刀剣と刀装具。
本体+鞘のセット展示。
あいにくわたしはとうらぶのヒトでないので、刀は刀としてしか見えないので、ある意味残念。

刀の来歴を知るのも面白い。
綱吉が自邸に来るたびになにかと賜っていた吉保。58回も来ている。そのあたりはまた色々ややこしいのでここには挙げない。
それで賜った刀がある。拵えは葵が三つ連続のもの。

刀装具もなかなか凝ったものが多い。粟をモチーフにしたものがなかなかよかった。
萩にうさぎ、おたまじゃくし、追儺図としてイワシの骨に柊が絡まったものなどなど。
遊び心があるものが好きだ。

鉄、銅、真鍮、赤銅、朧銀(四分一)、七宝、蒔絵…さまざまな構造体の刀装具。
七宝の小柄というのは初めて見た。
朧銀は松下幸之助に支援してもらっていた工芸作家の良い仕事を思い出させてくれた。
成分で色が変わる金属というのも面白い。

最後は四条円山派。
渡辺南岳の鯉図屏風がそのまま展示されていて、畳の上からの鑑賞になっていた。
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しっかり身が着いた鯉たち。目が案外可愛い。
左はところどころ緑の葉がみえる。松葉も青い。淡彩の良さがある。

山本守礼 美人機織図 円窓美人。窓の外には柳。彼女の髪飾りにもビーズがある。
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守礼 群鶴図 中は呆然と周囲を見る鶴たち。左右は二頭身サイズの鶴たちが優美に飛ぶ様子。可愛いな。

山口素絢 靭猿 珍しいことにこれは手の込んだ拵え方をされたよう。
無邪気な猿と踊るシーン。どこか幻燈の種板にも似ている。
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松村景文 桃に白鹿図  青桃の木の下に白鹿。背中にちょっとだけ鹿の子がのこる。カシコソウ。景文は四条派と円山派のいいところを持っていて、ごく穏和に明るい世界が開いていた。

西山芳園 雪中竜安寺  鏡池かな、雪にまみれてシーンとしている。

森徹山 連翹に雀図  細い枝には黄色い花がいっぱい。その隙間に止るスズメと、その木の上下に、おしゃべりに余念のない雀たちがいた。可愛い表情の雀。

森狙仙 雪中上猿猴図 気に掴まる猿たちの様子がいい。

森一鳳 鯉図屏風  岩躑躅の横にいて、何か遠くを見てそうなサル。

最後に面白いものをみた。三幅対のようになされているのだ。
橘公順 夜楓図 「有明のわきてあかきは いくしほのもみぢや月の匂ひ そふらむ」 月に楓のシルエット。
このヒトは大和文華館所蔵の「東山第一楼」にも参加。

鈴木其一 暁桜夜桜図 この対幅を中と右にしているのが巧い。
そしてこの絵は没骨で、それが「琳派」ではなく四条派風だということを記してある。
京都情緒、それを好んだわけだが、実はそのあたりは琳派ではなかった、という面白い話が書かれていた。

実際暁桜の薄墨のシルエットはどうみても四条派風な詩情がある。
夜桜は黒桜で、これらは向い合せると同じ桜だとわかる。
・・・なるほどなあ。

面白い展覧会だった。
最終日に行けてよかった。
次も楽しみ。

白鶴美術館「作品は深く語る 中国・日本美術の地平」展をみる

二日続けて阪神間へ出向いた。
北摂と阪神間は近いが、それでも阪急宝塚線から阪急神戸線に乗り換えると、心持がだいぶ違ってくる。
関西は近接した地域が、それぞれみんな個性を別にしているのが面白くもある。

今回は御影の白鶴美術館と苦楽園の黒川古文化研究所で見たものの感想を続けて挙げる。
二つの展覧会に共通点が色々とあるので、一日のうちに挙げる方がいい。
それぞれ記憶が混ざり合うこともないのだが、分けて挙げるより一緒にした方がより楽しさが増すように思っている。
共通するところがいろいろある、ということが大きい。

この二つの美術館は共に山の上にある。
白鶴はまだそれでも歩いてゆけるが、黒川は土日のみだが送迎バスを出してくれるようになり、本当に助かった。
このバスがなければ市バスで栢堂からあの坂を上って…クラクラする。
相当な斜面なのである。
行かれる予定のある方はご好意に甘えて送迎バスのある日に行かれることをおススメしたい。
なお、白鶴は市バスが阪急ではなくJR住吉から出ていて、ほんの近くにバス停があるので、歩くのがつらい方はバスで往来することを勧めたい。

先に白鶴へ行ったのでそこから始める。
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知らない作品よりも見知った作品の方が多く出ていて、再会に喜ぶ。
じっくりと眺めた。

唐三彩鳳首瓶 これも以前からのなじみもので数年前にはチラシのTOPを飾った。
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色垂れの具合がハーブソースのような感じで、鳥の丸焼きハーブソース添えに見えるのが楽しい。
「不易流行」

白地黒掻落龍文梅瓶 出ました。山中理さんの発見した肉球のある龍ね。
外線がけっこうとげとげしいのが、タコを食べない文化圏の人が描く悪魔の蛸ぽい。
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うまいことこのチラシには今回登場の作品が出ている。

白鶴美術館は十年ばかり前から解説も一新し、読み応えのある内容になり、とても勉強になる。
あんまりキャプションは読まない方なのだが、ここまで詳しいのはただただ勉強となる。
それは黒川古文化研究所でも同じで、特に中国青銅器、古陶関連のそれは、非常に勉強になり、知らないことを教わることも多いので、熱心に写す。
そこからまた自分でも調べたりするので、本当にいつも有難く思っている。
つまり自分なりに不思議に思ったり、興味を持ったり、疑問を懐いたりする要素があり、知的な愉しみが生まれてくるのだ。
そそのかされる喜びが大きい。

黒釉銹斑文茶碗 先の龍同様北宋の磁州窯の産だが、これは北方のもので「河南天目」というくくりの中に入るそう。
浅く開いた碗。銹斑は一名「銹花」とも呼ばれ、その呼び名は可愛い。

口当たりの良いように銀覆輪のついた禾目天目茶碗、見込みに1つ、周囲に12の梅花が咲く玳玻梅花天目茶碗、この辺りはおなじみ。

水色系の南宋の青磁鳳凰耳花生の兄弟は「千声」「萬声」。
オリーブグリーンの巨大な青磁鉄鉢は元代。
この二つが同じケースに入っている。

東洋陶磁には青花の魚藻文壺の良いのがあるが、ここには五彩のそれがある。
鯉はみんなオレンジ色。
壺の上の空間に、開放された窓から差し込む緑の影が拡がる。ガラスは戦前のもので、綺麗なひずみを見せている。
それが風と光で揺らぎ、水面のように見えた。
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2010年のチラシに睫毛獅子が現れたが、かれが住まうのは明代の大壺。
金襴手獅子牡丹唐草文八角大壺 胴部分と首回りの地模様はそれぞれ違う。七宝繋とそれからこれも連続文。

五彩武人図有蓋壺 出ました、好きな壺。
明代のこれを見ると、それより時代の古い北宋が舞台の水滸伝を想ったりする。
今回丁寧に眺めましたわ。
チラシにある位置を正面として、身分のある人の前で武人二人が演武を見せる。周囲には文武官。彼らをじっくりと観察した。
正面から向かって右へ逆時計回りにみてゆく。
・椅子に座る武官の獅子噛みバックル、その獅子にも睫毛があり、この獅子は左側で行われている演武を見ようと横目になっている。
・そこからずーっと行くと、城壁らしきものが見えてくる。三段くらいの段差のあるやぐら状のものが整然と並ぶのが遠目にわかる。
・正面の真後ろ。白馬を御す人はターバンを巻いて目が鋭い。胡人かもしれない。彼らを先導する若者は旗を持ち、なにやら嬉しそう。その若者の被り物には山鳥の羽が一本ささる。蛮夷の将兵のようでもある。
イタリアのベルサリエーリはワサワサとつけていたな。
・どんどん兵が増えてゆく。やがて正面の向って左辺りに来ると、衛兵らしきものがいるが、その手にしている棒先の斧の背には龍が噛みついている。
龍もまた演武が気になるような顔をしている。
・壺の下段の青獅子たちは時計回りに走りながら後ろを見ている。みんな睫毛が長くて、のんきそうな顔つき。

そう言えば模範演武といえば、今ではハリウッドスターのジェット・リー。彼は北京育ちの人だが、9歳の時ニクソン大統領(当時)の前で素晴らしい武術を披露したそうだ。
時々凄すぎる人がいるが、彼を見ていると本当に抜身の刃のようで、息を詰める。
この演武はけっこうのんびりしている。
「駿河城御前試合」とは違うのだよ。

鍍金獣型隅金具 戦国時代 これはちゃんと角を正面に見てみると、獣の顔がはっきりとわかる。そしてこの獣たちは「スキタイの影響を受けた動物文」ということで、なるほど確かに羊風な角を持つもの。胴は二つあるが顔を共有している。
「スキタイの黄金」を集めた展覧会は90年代にしばしば見ている。
京都文化博物館91年「南ロシア騎馬民族の秘宝」、92年「スキタイの黄金」などなど。

同じ辺りから出土した金銀象嵌飾軸金具は豹を貼り付けていた。細い象嵌で直線と豹の柄文@@を表現。

硬玉勾玉付金鎖頸飾 福岡の古墳から出たそうだが、非常に巧妙精緻な鎖で、説明を読んでも理解できなかった。とても複雑な構造の鎖。
中央で絞り、8の字に折っていったのを重ね折りして、同様に…
あああああ。
まあだからこそ綺麗なのだな。こうした構造は数学的要素で構成されている。
緑の勾玉は5つ。

物凄く細密描写なものを続けて観る。全て唐代
鍍金龍池鴛鴦双魚文銀洗
鍍金花鳥獣文銀杯
鍍金狩猟文六花形銀杯
ミリ単位の表現ですわ。凄まじい技巧。
怖いことに凝視し続けているとその細かい描写がくっきりと見えてくるのだよな。
寝そべる鹿、走る猪、小さな植物…
鏨でやる「蹴り彫り」という技法があるそうで、「楔形の彫りを連ねて線にする」とか。
こんな細かいものを彫るだけでもクラクラものなのに、更にそんな技巧が…
花鳥獣文の方は33匹の獣がいるそうで、見た限りほんと、みんな自由自在。
唐代の異常なまでの技巧に唖然とするばかり。

鏡を見よう。
白銅海獣葡萄鏡 銀色で綺麗。ここでこの金属の構成物質とその成分が紹介されている。
表面には葡萄、柘榴といっためでたい果実が巡り、その輪の中には狻猊がそれぞれ好き勝手な様子でくつろぐ。狻猊は何科か知らんけど、ネコ科の幻獣だろうから、やっぱりちょっと気まま。とはいえ獅子吼してるのもいる。
よくよく見ると爪も出てますな。牙も歯並びも見える。
裸眼でこんなけ見えるってわたしすごーい! と言っておこう。
じーっと凝視してたら見えてくるもんですなあ。
麒麟、天馬、鸚鵡らもいる。羽もシャギシャギしている。

銀貼海獣唐草文八稜鏡 鈕はうずくまる一角獣。周囲に8つの輪上の花びらが列び、それぞれに狻猊がたむろする。なかには親子連れもいる。その外には鴨、鶴、インコ、カササギがいるそうだが、そこまでは確認できなかった。

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二階に上がり青銅器を楽しむ。
饕餮くんがたくさんいるのが楽しいですよ。
犠首も羊角をつけたものからちょっと違うものまで。

尊で、犠首の上に向かい合う四足獣がいるのがある。
四隅に角付き犠首くんがいて、大きな目を開く。饕餮の目も大きく丸い。
この尊で学んだことがある。
「中に『亜』の字が」あるそうで、亜〇となっているらしい。
他のにもそんな字があったことから、それは葬送儀礼の職能集団の名称かもしれないようだ。
こういうことを知るのがとても楽しい。
このことから、「他の青銅器に残る文字を知りたい」と思うし、調べたくなるのだから、本当にいい導きだ。

饕餮文斝 この器の口べりに二つの飛び出たものがついているが、遠目には明治製菓の「きのこの山」の大きなのがある、という感じ。そしてその茸の笠には6の字を回転させていったような文様が入っている。

今回、ゾウさんが三点。
象頭兕觥 ゾウトウ・ジコウと読むのだったかな。取っ手の犠首は角付きで胴長。ゾウさんは耳がロバっぽい。

象文卣 ここのゾウさんはあれよ、ちょっと様子が違うのだよ。
「くまのプーさん」で言うと「ゾゾ」、「指輪物語」でなら「オリファント」ですわ。少なくとも現行のゾウさんとは別な生命体ですな。

あと尊もある。その尊の出土場所からはゾウさんの骨と象使いの人の骨とが出て来たそうな。

象柄で一番好きなのは出光美術館のゾウさん。
しかしここのゾウさんたちも可愛い。
哀しいのは藤田美術館のゾウさんたち。
ザザビーズでどこかに引き取られていったようだ…

法隆寺の金銅小幡もあった。目ヂカラ美人の飛天三人組。

賢愚経もある。やっぱりいい手蹟やな。
軽くそんな感想が言えるのもありがたいことです。

楼閣人物文螺鈿盒子 元 ここの楼閣は婦人や子供らもいて、みんな色々楽しんでいる。巻物ひろげる人もいれば、琴弾こうかというのもいるし、操り人形を見せる子供に、それを差す子供もいる。

こういう風に色んな人が楽しそうなのはいいのよ。働く人から遊ぶ人まで。
山水画や禅画がイヤなのは、おっさんの身勝手さが絵になってるからなんよね。

伝・住吉如慶 源氏物語画帖 薄い金と薄い墨の落ち着いた画帖でこの温和な様子、いいなあ。

薬師如来画像 敦煌出土 これは初見。五代時代 どうやら仏画(供養としての)制作集団がいたそうで、パターンを決めておいて受注製作していたみたい。
なるほどなあ。
敦煌の仏画と言えば大谷探検隊が真っ先に思い浮かぶけど、実は映画「敦煌」で柄本明が廃人になり、絵を描くだけで生きているシーンを思い出すのよ…
あれは怖かった。

伝・狩野元信 商山四皓図 大きな松のそばで世から逃れてきた四人組。侍童の背負う籠には金色の霊芝がたんまり。いくらでも長生きできそう。

冷泉為恭 石清水臨時祭屏風・年中行事騎射図屏風 桜の頃で右はのんびり。
左はちょっとトラブルもある。この絵も二年ぶりか。

円山応挙 楚蓮香 三年ぶりの再会。最初に白鶴美術館のチラシを手に入れたとき、この美人に惹かれたのだよなあ。もう随分前の話。震災前かな。
甲寅仲冬とあるから1794年
楊貴妃以前は細身美人が人気だった。
スカートは亀甲花柄、腰巻は白地に金で花柄、袖や襟の飾りは青地にモクモクと白雲のようなもの。見ようによっては刃の紋。これは他の応挙唐美人に共通するものだそうで、好みだったのかも。
髪飾りは金製の小花寄せ。ビーズの飾りも左右にある。
白い蝶々がひらひら。

最後に別館の絨毯。
20世紀半ばの絨毯もあったが、あれは初見。
花柄のものも羊の小さいのが歩くのもいい。幾何学的なものよりちょっと可愛い目が好きだ。

ああ、今期もいいものを見たなあ。
次は秋からだが、ほんと、楽しみ。
いい季節の頃に向かいたい。

初夏の白鶴美術館

白鶴美術館は春秋それぞれ3か月間展覧会を開催する。
春季展は間もなく終了する。
昨年12月には、白鶴美術館を撮影させていただいたのをこのブログ上で挙げている。
白鶴美術館の建物
その1
その2
その3

今回は初夏の白鶴美術館の外観や庭園を紹介したい。
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青天の白鶴美術館。

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ここへ来るまでの道のりがしんどいのだが、たどりついて風に吹かれた時の心地よさ、ちょっと言葉に出来ない。
日本一居心地の良い美術館ではないかと思う。

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一階外部部分の金具だが、タコに見えるのもご愛嬌。

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サツキがまだ愛らしさを見せる。

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鯉が波を揺らす。

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カラーが咲いている。青紅葉が水面に映える。

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ああ、きもちいい…

茶室へ。
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シダが可愛い。
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変わった様子を見せるのも愛しい。

展覧会の感想も近々。

祈りとかたち 知られざる建築儀式の世界

いつも行くのが遅くなって会期末になってしまい、まことに申し訳ない。
竹中大工道具館。
「祈りとかたち 知られざる建築儀式の世界」展
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チラシのこのお道具は実際に使うものではなく、上棟式の儀式用具だそうだ。
なるほど蒔絵を施した美麗な様相を見せていた。

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上棟式、棟上げ式。
今も見かけることが少なくない。
個人的な話を一つする。
今の家はわたしが高校に入ってすぐの頃に完成した。
母が建てた家。
当然ながら上棟式を行っている。同じ敷地内にオジも家を建てたので共同の上棟式。平日の昼。
母がどちらの家の施主として臨み、棟梁と職人の皆さんも古式ないでたちで粛々と執り行ったそうだ。
その後は直会もした。
この話は今さっき確認したところ。

その上棟式、竹中工務店は初代が大隅流と言う祭式を創始したそうで、その紹介がなされていた。
チラシ上部の大隅流祭式の上棟式祭壇の説明をよむ。
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祭壇背後の浅黄幕、四神旗(五色旗)、三つの幣串(扇車)、緑の神籬、五幣と三幣、鯛や餅や果物、野菜、塩、お菓子や清酒などの神饌。
向かって左には儀式用の槌と当板、右には蒔絵で装飾された儀式用の大工道具。

そして写真はないが、巨大なカブラ矢とカブト矢とがあった。どちらも魔を祓うものである。
前者は鬼門に向けて矢を、後者は病門に向って矢を、それぞれ三度ずつ引く。
カブラ矢は蟇目矢(ひきめや)、カブト矢は雁又矢。
矢の震えは聖なるものなのだということを改めて想う。

竹中工務店の大隅流は手置帆負命(たおきほおいのみこと)、彦狭知命(ひこさしりのみこと)、天津国常立尊(あまつくにのとこたちのみこと)を三祭神として奉る。
上棟式で着用する直垂が展示されているが、これも立派なものだった。
その様子が映像で流れるのを見た。

今回は上棟式の祭壇を展示していたが、地鎮祭の時もやはり丁寧な儀式を行うのだろう。
いつかその様子も見てみたいと思う。

コーナーは違うが、地鎮祭の盛砂も展示されている。円錐形の砂が盛られ、その前にドーナツ状の盛砂がある。
その穴の部分にしずめものを埋めるそうだ。

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番匠の始祖として聖徳太子の像がある。
成人後の太子の立ち姿図で、その前の卓上に大工道具がある。

建築祖神像も興味深い図像を示していた。
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最上部の恐ろしげな様子の人は神武天皇、中段には手置帆負命、彦狭知命それぞれの孫たち、そして最下段には聖徳太子。

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資料もこのように残っている。

くだけたところでは、幕末から明治の大工仕事の様子を鯔背に描いた錦絵も数点。国貞、国周などがかっこいい大工たちを描いている。

他に伊勢神宮内宮の模型があり、先年の式年遷宮の手順が紹介されていた。
神様は数十年ごとに移られねばならないのだ。
常設展示の西岡常一棟梁の紹介コーナーではこの企画展に合わせての展示があった。
神仏への尊崇の念が活きているのを感じる言葉が出ていた。

5/28まで。

「茶の湯」展にゆく

東博で開催中の「茶の湯」展の感想を挙げたい。
「茶の湯」と究極の言葉を使ったタイトルの展覧会である。
これに対抗できるタイトルはもう「茶道」しかない。
知ったことだが、1980年に「茶の美術」展が東博で開催されて以来37年ぶりの特別展だという。

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サイトに展覧会の狙いが記されている。
「禅宗寺院や武家など日本の高貴な人々の間で浸透していきました。彼らは中国の美術品である「唐物」を用いて茶を喫すること、また室内を飾ることでステイタスを示します。その後、16世紀(安土桃山時代)になると、唐物に加えて、日常に使われているもののなかから自分の好みに合った道具をとりあわせる「侘茶」が千利休により大成されて、茶の湯は天下人から大名、町衆へより広く普及していきました。このように、日本において茶を喫するという行為は長い年月をかけて発展し、固有の文化にまで高められてきたのです。
本展覧会は、おもに室町時代から近代まで、「茶の湯」の美術の変遷を大規模に展観するものです。「茶の湯」をテーマにこれほどの名品が一堂に会する展覧会は、昭和55年(1980)に東京国立博物館で開催された「茶の美術」展以来、実に37年ぶりとなります。
各時代を象徴する名品を通じて、それらに寄り添った人々の心の軌跡、そして次代に伝えるべき日本の美の粋をご覧ください。」

わたしはこの展覧会に二度で向いた。最初は内覧会である。
内覧会は興奮するもので、わたしなども血が沸き立つのを感じながら会場へ入っていった。
心を鎮めるための茶の湯ではなく、心が勇躍する茶の湯展だった。
二度目に行ったのは夜間開館の夜だったが、こちらも熱気が凄かった。
感想は期間が入り混じり、既に展示終了したものもある。

第1章 足利将軍家の茶湯─唐物荘厳と唐物数寄
第2章 侘茶の誕生─心にかなうもの
第3章 侘茶の大成―千利休とその時代
第4章 古典復興―小堀遠州と松平不昧の茶
第5章 新たな創造―近代数寄者の眼
この章立てを見ただけでも気合が満ちてくる。
茶の湯で心を鎮めるのは、わたしにはムリそうですな。

第1章 足利将軍家の茶湯─唐物荘厳と唐物数寄
静嘉堂の曜変天目と東洋陶磁の油滴天目が同座している。
これだけでもなんかもう凄いなと。
わたしは地元っこひいきで油滴さんが好きだが、比べることの無意味さを改めて知りましたね。
違う宇宙、別々の銀河がそこにある。
しかも360度近くを観まわすことが出来て、本当に嬉しい。
これはさすが東博という見せ方。
阿修羅の展覧会以来、多方面から見せてもらえるようになり、それが今や定着している。ありがたいことだ。

会期を変えて牧谿の絵が続く。
室町時代、最も牧谿が尊ばれたことを想う。
三幅対の観音猿鶴図がある。大徳寺からきた。
丸顔の猿たちが可愛らしい。

展示期間が違うので一堂に会するということはないが、伝・牧谿の名画が何点もラインナップされている。
そしてそれらを収めた図録がいい。
布袋、叭叭鳥、竹雀、みんなスヤスヤ眠る様子を描いていて、その図版が名がよく並ぶのもいい感じ。

禅宗の六祖図、寒山拾得図もここに集まる。
描き様も様々でそこがまた面白い。

東アジアは花や虫を愛してきた。「死を思え」ではなく、精一杯生きるはかない命を愛した。
彼らを描いた絵は悉く優しい。
南宋時代のいい絵が配置よく並ぶ。

丸顔でない、ニホンザルのような猿もいる。
伝・毛松の猿は物思いにふけっているような顔つきをしている。

作品とその所蔵先を見るのも楽しい。
そこから「以前にあの展覧会でも見たな」と思い出すことになる。
更に私設美術館、個人コレクションで名を明かしているものだと、その人がどのような経緯で名品を得たのか、どのような逸話があったのか、そのことを思い起こしたり、想像するだけでも楽しい時間が過ぎる。
そして自分はそれらと最初に向き合った時、どのように感じたのか。

こうした記憶が次々と湧いて出るのも「茶の湯」に関する展覧会ならではかもしれない。
茶の湯では連想、追想を大切にし、そこからお道具の銘をつけることが多い。
そうして考えると、やはり茶の湯というものは人間の精神の在り方と非常に深くかかわっていることを、改めて思い知らされる。

南宋から元のよいやきものが現れる。
一点だけよりも、いくつも並んでいる壮観さに惹かれる。
中でもやや釉薬の厚めにかかった元代のやきものなどは特にいい。

やがて趣向を凝らした、あるいは意図せぬ様相をみせるやきもの群が現れた。
天目茶碗たちである。
かれらに再会できる喜びは深い。
東博、三井、東洋陶磁、京都の龍光院…
わたしは龍光院の油滴天目とは初対面かもしれないが、そのつつましい愛らしさに微笑んだ。

手の込んだ木彫の天目台、漆を重ね重ね彫り込んで作られた堆朱、堆黒。
南宋時代に生まれたのに、時折ウィリアム・モリスの商会から現れたようなものや、アールデコの作品としてパリで愛されたように見えるものがある。
不思議な一致だとおもい、それが楽しい。

慕帰絵 巻五、不動利益縁起、祭礼草紙などの絵巻の一部も出ていた。酒食と喫茶とが描かれている。

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第2章 侘茶の誕生─心にかなうもの
古人の心のありようをおもう。
彼らの愛した茶器、掛物などを見ることで追体験したいと願う。

…のだが、実際のところ、わたしは侘び寂びがわからない。
ある種の抑圧を感じて苦しくなる。
たぶんその抑圧こそが心の平安を齎す何かなのだろうが。

シックな、という表現をしていいのかどうか、地味な味わいの唐物が続く。
そして禅僧の書。

大井戸茶碗 銘・喜左衛門  これを見ると必ず思い出すのが溝口健二のエピソード。
映画「西鶴一代女」制作の最中、プロデューサー児井英生が孤篷庵と縁があることを知り、茶碗に触らせてほしいと希う。
児井が席を設けると、さすがの溝健も緊張し、非常な感激をあらわにしたそうだ。
近年の根津美術館の井戸茶碗展の時にもそのことを思い出していた。

さてその中でわたしの「心にかなうもの」がみつかった。
飛ぶ烏を表面にうかべた釜。形も真形。しかも大好きな尾垂ちゃん。
ういやつよのう。
芦屋の真形釜で尾垂、というのはもう本当に可愛くてならない。
ほかにもいくつかあって、とても嬉しくなった。

そう、自分の心にかなうものが必ずどこかにある。

第3章 侘茶の大成―千利休とその時代
正木美術館から利休像が来ていた。
正木美術館に所蔵されている絵画のうち、肖像画がとても面白い。
非常に価値があるというか珍しいというか他にないものがここにはある。
存命中の利休、一休禅師と森女、なかなかかっこいい六祖慧能。
この三点が一緒に出た展覧会は未見だが、その機会があればと思う。
そして今回生前の利休と六祖慧能とが東博に来ているのだった。

利休の拵えた竹一重切花入を見ることが出来たのもよかった。
かれの愛した長次郎の茶碗も有名なものが集まっていた。
東近美に出ていないのはなんでだろうと思っていたら、こちらに出ていたのだ。
東京に長次郎の名品が集まっているのだ。

安土桃山の美意識はわたしには少し肌が合わないのでさらさらと見て歩いたが、ふとその先に古めかしいガラスケースが見えた。
東博所蔵の展示ケースのうち、特に古いものである。
わたしはこのガラスケースがとても好きなので嬉しくなって寄って行った。
可愛らしい香合がちんまりと並んでいた。
黄瀬戸根太香合、志野重餅香合 どちらも三井でみては「可愛いなあ、美味しそうやなあ(後者ね)」と愛でているものたち。
織部さげ髪香合 ポニーテールですがな、かわいいな。
そしてリストにはないが、急遽展示されたミミズク香合。織部木菟香合。
毛並みが可愛く描かれていて、あまりにかいらしくて、撫でたくなった。
これは有楽斎から予楽院に伝来したものだそう。

ああ、可愛いものが好きだ。
ワビサビから離れてほっとしたわたしに更にプレゼントがあった。

田中丸コレクションの名品・絵唐津菖蒲文茶碗と目が合ったのだ。
可愛く咲く菖蒲。いいなあ。

光悦の赤樂・毘沙門堂と黒樂・時雨、そしてかれと深いかかわりを持った道入の黒樂・残雪がある。
とても嬉しかった。

第4章 古典復興―小堀遠州と松平不昧の茶
好きなものがたくさん出ていたので再会の喜びがある。

ここでも香合の可愛いのを特に愛でた。
古染付辻堂香合、祥瑞蜜柑香合、交趾台牛香合、白呉州台牛香合
みんな可愛らしい。
仁清の色絵鶴香合、色絵玄猪香合、乾山の銹絵染付鎗梅文香合
作家性が強いものも等しく愛らしい。

つつくづく思ったことがある。
平和な時代の茶の湯は、茶人たちがそのことにのめり込む、つまり「茶の湯狂い」をしており、一方戦国の世では茶の湯は生き死にの境涯にある地点で楽しむものとなっている。
どちらがいいとかよくないということではなく、時代の違いをつよく感じたのだ。

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第5章 新たな創造─近代数寄者の眼
近代の名高い数寄者が愛した茶道具が会期ごとに現れる。
この趣向はすばらしいと思った。

藤田香雪の愛した茶碗、彼が死の床でも望み続けた大亀香合、そして美少年の牛飼いを見守る黒牛の「駿牛図」。

五髻文殊像の少年像の可愛さにも惹かれた。右手に剣、左手に花を持つ美少年が吠える獅子に乗る。

益田鈍翁の愛した蓮華残片(東大寺三月堂不空羂索観音持物)は菓子皿に使われていたそう。

黒樂・鈍太郎は太郎庵の披きに使われたとか。
ここで思い出すのが鈍翁の長男が「益田太郎冠者」と名のっていたこと。
彼は実業家であったが、帝劇の役員となって「コロッケの唄」を拵えている。

茶の湯の深みに落ちることはないのだが、深い満足感と、不思議な焦燥感とがある。
茶道具を見るのが好きなくせにきちんと習っていない、そのことを悔やむ気持ちが生まれている。
それはやはりこの「茶の湯」展で素晴らしい名品に囲まれたからだと思う。

もうこの規模の茶の湯の展覧会はあと数十年はないと思う。
行ける機会のある方はぜひ。そうでないともったいない。
6/4まで。



「茶の湯のうつわ」 ―好きなものに会おう―

出光美術館、東博、東近美が茶の湯の特別展を開催している。
東近美は「茶碗の中の宇宙 樂家一子相伝の芸術」として樂家代々の名碗を並べ、特に三代道入ノンコウの茶碗の中の宇宙にクラクラさせられた。感想はこちら
そして東博は「茶の湯」と大きくシンプルなタイトルでの展覧会で、既に二度ばかり見たが、それでもまだ全容が明らかでない規模となっている。

出光美術館では館蔵の茶碗を中心とした展示を行っている。
好きな人が好きなものを愛でる歓びを味わえるような、そんな展示となっている。

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副題が「和漢の世界」とあるだけに唐物・和物とりどりの良いうつわが集まっていて、一つ一つを見る愉しみだけでなく、全体を楽しむことも出来る内容となっている。
こうした展覧会は理屈抜きで本当にいい。
そしてそこに良い解説があることで、見る側に指標を与えてくれる。
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第一章 一萩 二樂 三唐津
いい茶碗が集まっているから、優劣などの話は最初からない。
これはもう完全に自分の嗜好にマッチするかどうかくらいしか言葉に出来ない。
ただただ気持ちよく見ているだけ。
見ながら妄想するばかり。
・・・にんまりと笑いながら。

例えばこんな感じである。
・山道風な口縁の樂茶碗を見たときなどに、自分の上唇と下唇をかすかに動かしてみると、その口縁の様子が実感として伝わってくる。
・わたしはノンコウが好きで好きでどうにもならないが、ガラス越しに眺めながらそんな妄想に耽っているといよいよ楽しくてならない。口縁は彼の指が微妙な調整をしたのだ。
何世紀かの隔たり・ガラス越し、といった障害を超えて妄想は自由だ。
・わたしは目と唇と指とで、実際に触れることのない茶碗を味わうのだった。

なんともいえず官能的な存在ではないか、うつわというものは。

樂を楽しんでから萩をみる。
萩は使い込むと色が変化すると聞いている。
自分の色にゆっくりと変わってゆく萩焼の茶碗を観るのはさぞ楽しいことだろう。

面白いものをみた。
萩割俵形十字文鉢 厚みのあるやきもので、まずそれに驚いた。「十」を白でゾウガンしているのだがえらく厚みがある。断面を見ても1cmはあるぞ。なんだかすごいな。

これの親戚みたいなのもある。
筆洗水指 むしろ近代的な風がある。中はシマシマでどうも湯たんぽの断面にも見える。
金継ぎもはっきり。

桃山時代のやきものは実はあんまり好みではない。
これは個人の嗜好の話だから、作品の善し悪しではない。ええものであっても単に好みではない、と言うだけの話。
とはいえ、多くの人が素晴らしいというものをそうとは思わない、と言うのも実はどんなものだろう。
その時代そのものを否定するわけではないのだが。

奥高麗茶碗が二つばかり。
無銘の方は円満な様相を見せるが、もう一ひねり欲しい。

斑唐津茶碗 銘・山雀 寂蓮法師の歌から銘をとったそうだが、山雀の様子と茶碗の景色が響きあうような気もする。

ほかに九州の上野焼の茶碗、高取焼の茶入や水指のいいのがあった。
そして高取焼の砧形花生の後ろにセンガイの可愛い利休の絵が飾られていた。
△の帽子をかぶり、にこにこ。

特集展示:雲州蔵帳とその美
松平不昧公の茶道具ノート。
茶道具を特に多く集める畠山記念館だったか、逸翁美術館か、要するに大正から昭和の大茶人の所蔵品を見せる美術館で、以前やはり雲州蔵帳に掲載されていた茶道具を集めた展覧会をみた。
茶の湯に無縁なわたしでさえときめくのだから、この中に書かれたものを集め得た人はどんなにか嬉しかったろう。

その雲州蔵帳が数冊並んでいた。現存茶道具目録、とある。

堆朱四睡文香合 出た、虎。
赤樂兎文香合 光悦 こっちも出た、兎。
どちらも可愛い。

遠州茶箱 銘・桜 祥瑞の可愛いのなどがセットにされていた。
茶箱の構成は本当にその人の趣味がでる。

第二章 京焼ー古典へのまなざし、そして前衛的うつわへ
仁清、乾山のよいのがずらり。
耽溺するばかり。
仁清は色絵の華やかなのもいいが、白釉や色数の少ないものはモダンで、どちらもとても魅力的。
どちらかと言えば小品の方が好きだが、今回はそのわたしの好みにぴったり合うものばかり。

乾山で黒樂があった。ノンコウを思わせるような口縁の薄さとか。
銹絵絵替扇面形皿 五客分みんな違う植物絵があるから、何にあたるか楽しめる。

仁清より乾山が好きだが、やっぱりそれはただの嗜好。
眺めながら楽しい妄想にふけるばかり。
そして言うわけだ。
「やっぱり乾山はええ喃」
殆どよだれをたらさんばかりにして。

第三章 愛でられる漢のうつわ ―唐物・高麗・安南
これがまたよろしい。

唐物茶壺 銘・羽衣 広東系 景色がね、山脈の上にいっぱい星がひろがっているように見えるのですよ。
天女が上ってゆくのは真昼だと思っていたけど、夜に天に帰る天女がいてもおかしくはないかもしれない。

絵高麗梅鉢文茶碗 磁州窯系 外に梅が。見込みもいい感じだし、梅色に見えるのも可愛らしい。
こういうのが手元にあると嬉しい。

餌袋茶碗 朝鮮王朝時代 八幡名物 なかなかええ色ですなあ。松花堂、さすが。
吹墨茶碗 銘・鉢子成 朝鮮王朝時代 なんとなくういろうを思い出した。それも抹茶味の。ぬめーとしたところがかな。

わたしは手触りのがさがさしたのはニガテで、つるつるがいいので、イラホもイガもあんまり関心がない。
それだから陶器より磁器が好きなんだが、その中でもたまにしっとりしているとしか思えないものがあり、そういうのに会うと嬉しくなる。

同じ形の水指が二つ。輪花形盒
五彩と青花と。どちらもいい感じで、しかもこうして並ぶのが楽しい。
ちょっと何かの練り物のようにも見えて美味しそう。

古染付手付香合 銘・隅田川 柳があるよ…木母寺の梅若の塚のイメージかな。実際には碁を打つ二人と少年が立つもので隅田川と名付けるところが和の意識ね。

古染付横唄香合 横唄という形のもの。妙に可愛い。オカリナの小さいものにも似ている。

第四章 懐石、宴のうつわ
古染付御所車文六角手付鉢 こういうのもいいなあ。明に御所車の形とかちゃんと伝わってたかどうかは別として。

古染付詩文手鉢 科挙合格の少年が馬に乗る。玉の鞭か。詩文に「姮娥愛少年」の一文がある。

五彩柘榴文角皿 景徳鎮窯 ざくろはめでたい。

そして凄いのを見た。
織部亀甲文向付 ウルトラアイをつけてるようにしか見えん。しかしウルトラセブンやなしに、怪人・怪獣がウルトラアイを勝手に付けてる、そして悪の限り暴れる。それやわーーーーー!すごいーーー
・・・こうして妄想はとめどなく広まるのであった。

高取焼や上野焼の割山椒形向付がある。可愛いな。

乾山 染付白彩流文鉢 これまたいいなあ。クリーム色と青で構成されてるが、形が可愛い。で、わたしが簡単にメモを取ると、どうも変な泡泡オバケみたいになるんよね。

木米、頴川らの鉢もある。東京で彼らの作品をみるのはやっぱり出光さんでかな。
嬉しくなる。

さて青木木米と言えば煎茶。
ということで煎茶の世界。

第五章 煎茶の世界

白泥蟹形涼炉・焼締湯鑵 上田秋成  上田秋成は色々ペンネームを持っていたが、カニを意味する「無腸」というのもあった。
これが蟹形なのもそこからか。
秋成の展覧会を思い出す。
当時わたしはブログにこんなことを書いた。
「秋成のお墓の台座は若冲ゆかりの石峰寺から持ってきたもので、どうやら若冲が彫ったものらしい。カタチはカニ形。
「無腸」さんらしくお墓もカニのカタチだったのだ。」


白泥煙霞幽賞涼炉・炉座 木米  以前から好きな一点。何度か見ているが、いつも不思議な感じがする。

急須やヤカンの愛らしいのが続く。
こういうのを見ると以前ここで開催された山田常山の展覧会を思い出す。
当時の感想はこちら
あの展覧会、本当に良かったなあ。

五彩十二ヵ月花卉文杯 十二客 景徳鎮官窯  これはまた小さくて愛らしい上に…本当、可愛いなあ。月ごとの植物。
小さなうつわの中に四季がある。

文具もあり、煎茶文化が文人好みだということを改めて知らされる。

とても楽しめる展覧会だった。
好きなものを好きなように見て、好きなことを想う。
こういうのがやっぱり幸せやね。
6/4まで。

ウォルター・クレイン展で見たコールデコット、グリーナウェイの絵本と挿絵本

千葉市美術館のウォルター・クレイン展で途中の第二章に
・カラー絵本の仕掛け人エヴァンズとコールデコット、グリーナウェイの絵本と挿絵本
という章立てがある。
ここではクレイン以外にエドマンド・エヴァンズの木口木版多色刷の仕事をした画家たちの紹介があった。
とにかくエヴァンズの技能の高さがなければ、ここまで素晴らしい本は世に出なかったのだ。

『ありふれた路傍の花』 挿絵:マイルズ・バーケット・フォスター トーマス・ミラー 1860年  蝶々と花が。綺麗な絵。

『英国年代記』挿絵 :ジェームズ・E・ドイル ジェームズ・E・ドイル 1864年  古代からリチャード三世までの1500年間を記す。
ブリテンのアーサー王もあるのかな?
リチャード三世と言えば今連載中の菅野文さんの「薔薇王の葬列」が素晴らしい。ずっとドキドキしている。

『妖精の国で』 挿絵:リチャード・ドイル ウィリアム・アリンガム 1870年   蝶々たちが引く葉っぱ車に乗る妖精。
この絵はとても好き。蝶たちの繊細な表現と色彩が魅力的。

・ランドルフ・コールデコットの全トイ・ブック 
名前を知らない画家だが、絵を見て「あー!」な人だった。
『ヘイ・ディドル・ディドル/ベイビー・バンティング』 1882年
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猫が機嫌よくバイオリンを弾き、みんなにこにこ踊りだす。

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お皿とスプーンも。
このお皿を見て「あーっ」となったのですよ、わたくし。
1991年の「子どもの本の黄金時代 1920年代」展。これで見たのだ。
絵はがきは当時購入したもの。

『かえるくん 恋をさがしに』 1883年  猫が出るらしいがここではいない。

『6ペンスの唄をうたおう』 1880年  明るくていいタイトルが多いね。

しかし、けっして明るく楽しいばかりではない。ゴーリー「不幸な子ども」同様、救いのない話があった。

『森の中の子どもたち』 1879年  ストーリーなどについてはこちらのサイトに詳しい。
16世紀には既に成立していたバラードだそうだ。
良心を無くした幼い兄妹が財産目当ての叔父により森の中で殺されかける。
以来を受けたならず者たちのうち一人が子供らを助けようとする。
食べ物を町に取りに行くから待っていろと言われても子供らは動かずにはいられない。
そして男が森へ戻った頃、子供らは迷い込んだ森の奥で餓死する…

滋賀では3点の絵が出ていたが千葉では一点のみだった。

・ケイト・グリーナウェイの創作絵本と挿絵本
彼女の展覧会を見たのは93年の大丸が最初だった。とても可愛らしい絵で、当時も大ヒットし、子どものファッションに大いに影響を与えたということだった。ヴィクトリア朝時代でありながら、そのひとつ前の時代の衣裳をつけた子供らを描く。それが優美だということで、とても好まれたそう。

彼女は絵だけでなく詩も書いた。
なので当時の展覧会のタイトルも「絵本の詩人ケイト・グリーナウェイ」だった。

『窓の下で』 詩:ケイト・グリーナウェイ 1879年  この詩と絵の本が大ヒットした。当時としては爆発的な売れ方をし、10万部出たそうだ。

マザーグースでも巧い絵を付けている。綴り方読本もいい。

『ウィギンズおばさんと七匹のすてきな猫』 編集・詩:ジョン・ラスキン 1885年  コミカルでリズムがいい。モノクロ。

『マリーゴールド・ガーデン』 詩:ケイト・グリーナウェイ 1885年
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小さな絵がとても愛らしい。

『ハメルンの笛吹き』 ロバート・ブラウニング 1888年 男の笛の音に魅せられて子供らがずらずらとついてゆく。
普通はここか、この後の残されたハメルンの住人たちの嘆きで終わるところだが、彼女は違う。
どこかの草原、大きな木があり、そこで大勢の子供らが楽しそうに遊んでいる。笛吹き男も機嫌よく笛を吹く。
グリーナウェイは子供らが幸せの国に行った、と仮定してその絵を描いたのだ。
この絵本は彼女が尊敬するラスキンに捧げられ、彼から絶賛された。

彼女のバースデイブック、絵暦であるアルマナックはいずれもミニサイズで買い求めやすく、その可愛さ・手軽さがとても好まれた。
わたしもほしいわ。
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しかし彼女は水彩画家として認められたがり、1890年に絵本作家であることをやめてしまう。
水彩画が二点ばかりここにあるが、やはり絵本をやめたのは勿体ない…
彼女はラスキンの死の痛手から立ち直れず、55歳で亡くなるのだった。

クレイン展の一隅だが、これもまた素晴らしい展示だった。
5/28まで。

ウォルター・クレイン展に溺れる その1

ウォルター・クレイン展。
滋賀で見て千葉で見て、展覧会閉幕の今になってようやく何らかの感想を挙げることが出来そうな気がする。
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なにしろ美麗。
あまりの美貌にただただ耽溺するばかり。
こういう展覧会は実はわたしは書きにくい。
スキ・キレイ・ステキ
と思うキモチが沸騰するからだ。ドキドキするばかり。
しかし先に滋賀で見たことはよかった。今回、千葉では猫の種類を確認できたのだ。
動物好きなクレイン、とても多くのどうぶつたちがいる。
中でも猫が多いのが楽しい。黒猫とそうでない猫とに分けて調べた。

ウォルター・クレインのキャリアの始めからの展示。
最初は安価なトイ・ブックスからだった。
巧い人は若いうちから巧いので、既に魅力的な絵を世に出している。
そして絵の巧さだけでなく、その時代の印刷技術の素晴らしい向上こそが、かれの絵の美しさを保った。

『おかしなネコ』 1865年 木口木版、多色刷 戯画、猫の奥さんがお出かけ前におしゃれしている様子。なにか風刺があるそうだが、あんまりそちらは関心がない。
ここで気になるポイントは針山クッションに刺された待ち針。アタマが猫の顔なのだよ、スゴく可愛いし欲しいわ!

クレインはヴィクトリア朝に生きただけにたいへん美麗な絵を描いた。
彼の交友関係や作画の変遷などは他に詳しく書かれた方もおいでだから、わたしは措く。
自分の好きな作品にのみ言葉を注ぎたい。

英国人にとってのマザー・グースとは何かといったことを思いつつ、わたしはその言い回しや本当の意味が底の底までは理解できない。
表面的な理解しか出来ないので、マザー・グースものはあまり面白くはない。

クレインは幼児向けの教育本も描く。絵はやはり丁寧だが、幼児向けと言うことで簡単にしたりはしない。
幼児はクレインの絵をどこまで楽しめていたのだろう。

『おしゃべりジャック』 1867年 木口木版、多色刷  欧州ではいい家の子は、幼児期は男女ともに女児の服装で過ごすと聞いていたが、このジャックも可愛らしい女児の衣服を身に着けている。
ジャックはもう本当におしゃべりでおしゃべりで、お母さんの時間を奪い、みんなのやる気もなくさせる。あまりにうるさいのでみんなが困り切っているとき、カササギが見るに見かねたか、ジャックをさらってゆく。
ジャック、カササギの巣で暮らすことになる。カササギの子らと共に巣にいるジャックだが、さすがにショックを受けたか、口を開けたままである。
ご飯はもちろん鳥の餌。ジャックも相当参る。
ようやく懲罰期間?も過ぎたか、ジャック再び帰宅を許されると、家族が温かく迎えてくれる。家族は家族で一応心配していたらしい。
ジャックは以後は落ち着いた賢い子どもになる。

「皆が困ることをしない」と言う教育を絵本から始める。
とてもいいことだが、なかなかショックな内容でもある。
東アジアでのカササギと欧州でのカササギの存在意義の違いを知ると、いよいよ面白いのだろうな。

『アニーとジャックのロンドン見物』 ルーシー・クレイン 1869年 木口木版、多色刷 ロンドンでの1週間のお楽しみを素敵な絵で紹介します、と紹介できそう。
こうした様子を描くのはロシア民謡「一週間」から現代の「リサとガスパール、東京へ行く」まである。
ここでは当時の最新鋭の人気スポットが紹介されている。
マダム・タッソーの蝋人形館、動物園、水晶宮、ケンジントン公園でのスケート、パントマイム見学、デパート…
クレインは流行のファッションに身を包んだ人々を描くので、そこから当時の社会の様子を見ることにもなる。

いよいよクレインの様式が確立されようとしていた。
孔雀好きな彼が描くと描き込み過ぎて真っ黒に印刷されていたりしたが、そうならなくなったりと、技法も新しくなり、印刷技術も向上した。

『妖精の船』1870年 木口木版、多色刷  ネズミの船である。よく働く水夫もみんなネズミ。船から真っ先に逃げ出すのはネズミ、現代ではネズミ避けに内航船で暮らす「カンパチ船長」もいるというのに、ここでは船をメンテするのもネズミである。
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『パフィーの冒険』 ルーシー・クレイン 1870年 木口木版、多色刷  手のかかる室内犬で奥様お気に入りのパフィーがさらわれ、ようようの思いで帰宅する。アメショーらしき猫と共に出迎える奥様だが、いくら洗っても汚れの取れないパフィーに愛想を尽かし、パフィーは家を追われる。
しかし次の住まいでパフィーは町の人気者になり、イキイキと暮らす。

この話で村上もとか「龍 ―RON」での映画「人販子」を思い出す。
はるき悦巳「じゃりン子チエ」に現れる洋犬もそう。テツのせいで頭の一部が凹み捨てられるが、後に別な主人に飼われ、溺愛される。
汚れて戻ってきたら受け入れない奥様、その一方で主人公は新しい仲間・家族と出会い、そこで幸せを掴む。

『ラッキーボーイ王のパーティー』 1871年 木口木版、多色刷  絵の綺麗さを堪能する。
クレインとラファエル前派の関係も深いので、ステンドグラスのルネ王のシリーズを思い出した。
とはいえやってくるのは擬人化された12か月たち。
これはアンデルセンの「馬車で来た十二人のお客さま」とも通じる。

『私のお母さん』 アン・テイラー 1873年 木口木版、多色刷  子供の頃から壮年期へ。そして今度は老人となったお母さんを息子の僕が看ます、と言う展開。

よく知られた内容の絵本が続く。

『アリババと40人の盗賊』 1873年 1873年 木口木版、多色刷
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女奴隷モルジアナが賢く胆力と力があるからこそ、アリババは難を逃れたんですよ。ここにも黒猫いた。

『三匹のクマ』 1873年 木口木版、多色刷  森のクマ親子の家に勝手に上り込んだ少女が家の中をめちゃめちゃにして、挙句は飛んで逃げる話。
子供の頃から不条理な話だと思ってきたが、絵を見てると、クレイン描く熊たちの表情の厳しさで、改めて「う、わー」になった。
ステンドグラスの入った綺麗なおうちが荒らされまくりですわ。

『シンデレラ』 1873年 木口木版、多色刷  シンデレラの傍らに黒猫。なついてるのが可愛い。赤い紐をつけて。
ラストが面白い。結婚が決まった二人の乗る馬車に向けて、パレードを見に来ている女たちから綺麗な靴が大量に投げつけられる。これはあやかろうというつもりなのだろうな。決してヘイトではない。
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『長靴をはいた猫』 1874年 木口木版、多色刷  完全な黒猫ではないようだ。のどの辺りに白が見える。
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日本では「ペロ」という名を与えられて冒険活劇アニメーションの主役も張ったが、ここではやはりトリックスター。
この黒さんはアタマはいいわ・恐喝も得意やわ・ハッタリも巧いわで、たよりない飼い主をあれよあれよとご領主に仕立て上げたよ。
諸星は更にこれに一ひねり加えた話を書いたが、実際このボンクラの若造が一人で何にも出来そうにないのはまあ確かですわな。

『赤頭巾ちゃん』 1875年 木口木版、多色刷  そういえば随分前の赤ずきんちゃんだけの展覧会があったときも出てたかな。

『ジャックと豆の木』 1875年 木口木版、多色刷  巨人のおっさん、虎の毛皮敷いてる。豆の木を必死のパッチで駆け降りるジャック、髭生えてるやん。けっしてお子様ではないわけか。周囲が「なんじゃこりゃー」な人々なのもいい。

『青ひげ』 1875年 木口木版、多色刷  イブとリンゴの絵があるところに鍵が。そう、最初から誘惑は払いのけられないものなの。
お城は孔雀の飾りや壁画も素敵。大勢のお客を招いてのパーティもわるくない。
だけど彼女の好奇心は止まらない。
これが是が否かはわたしにはわからない。
妻を次々に殺すような男に嫁した以上は早くにこうなるのが良かったのか、知らん顔で見ないままの方が良かったのか。
しかしとうとうこの青髭は妻の兄弟たちに殺される。
やはり悪い噂のある男と近づくのはよくない。

調べて知ったことだが、国立国会図書館デジタルコレクションにこの『青髭』『赤ずきん』『ジャックと豆の木』『幼子自身のアルファベット』が収録された絵本があった。
こちら

『眠り姫』 1876年 木口木版、多色刷  大変豪奢。そしてここでは魔女の黒猫がいる。眠りにつく人々の間にもいる。
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三分割して絵を眺める。
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衣服などの文様も丁寧。柱頭飾りも綺麗。槍がブドウなど蔓草に巻きつかれている。
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孔雀も黒猫も犬も花も眠る。
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カーテン、団扇、クッションそれぞれ文様入り。眠り姫の奥にいるのは彼女に仕える魔女なのか、それともあの錘のようなものは…

最後には錘を持った老婆がこそこそと逃げ出す。

他に知らない物語がいくつか。
『ヴァレンタインとオルソン』 1874年 木口木版、多色刷  神官に騙された皇帝が妊娠中の皇妃を森に追放する。
いくら誤解だと言っても聴こうとさえしないバカな男。
森へ捨てられた皇妃はそこで双子を生むが、オルソンは獣に連れて行かれ、ヴァレンタインは皇妃の兄のフランス王に運よく拾われる。しかし皇妃のその後は?
獣の皮を身にまとい成人したオルソンと王子として成長したヴァレンタインの出会い。意気投合して共に戦ううちにやがて真鍮のファラオ像が(金ぴかだった)二人に出生の秘密を話す。
既に成人した生き別れの双子の出会い、はあんまりわたしの萌えではないな…もっと少年がいい…
しかし母上はどうなった?
この物語はディケンズ「クリスマス・キャロル」にも出ている。
若い頃の自分が読んだ本のことをスクルージはこう叫ぶ。
「正直なアリ・ババの老爺さんだよ。そうだ、そうだ、私は知ってる! ある聖降誕祭の時節に、あそこにいるあの独りぼっちの子がたった一人ここに置いてけぼりにされていた時、始めてあの老爺さんがちょうどああ云う風をしてやって来たのだ。可哀そうな子だな! それからあのヴァレンタインも」と、スクルージは云った、「それからあの乱暴な弟のオルソンも。あれあれあすこへ皆で行くわ! 眠っているうちに股引を穿いたまま、ダマスカスの門前に捨てて置かれたのは、何とか云う名前の男だったな! 貴方にはあれが見えませんか。それから魔鬼のために逆様に立たせて置かれた帝王サルタンの馬丁は。ああ、あすこに頭を下にして立っている! 好い気味だな。僕はそれが嬉しい! 彼奴がまた何の権利があって姫君の婿になろうなぞとしたのだ!」
ディケンズのこれは1843年刊行。この絵本は30年後のものだが、この物語は当時既に知られていたものであり、この頃も人気があったのだろう
しかし今、わたしの探し方が悪いのかなんなのか、資料を他に見つけることが出来ない。

他にこの章では『ハバートおばさん』に黒猫、『ウォルター・クレインの幼子自身のアルファベット』の戸棚にゲジガラがいた。

・円熟期のシリング・トイ・ブックと合本
こちらもまだまだ物凄く濃い世界である。
 
『かえるの王子』 1874年 木口木版、多色刷  山吹色のドレスが素敵。そこに花柄が入る。そしてカエルを招いての食卓。食事中のカエルの凶悪な面構えに笑ってしまう。テーブルには猫の文様。そのテーブルクロスにもなにやら暗喩が。
それにしてもこの「カエルの王子」は姫の愛を得るのではなく、姫に壁に叩きつけられて人に戻る、と言うのがスゴイよな。
ソ連のアニメーション「カエルになった王女様」も「美女と野獣」も愛により呪いが解けるのだが、これはなんなんだ。
尤も、キスして魔法が解けるバージョンもあるそうだが、ここでは壁に叩きつけ。
切り抜きを挙げる。
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追記:7/4 こんなの発見
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拡大する。
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猫の絵柄のテーブルクロス。

『靴ふたつさん』 1874年 木口木版、多色刷  孤児の少女が努力して一人前になり、教師として世に出た頃、天気予報をしたことで魔女扱いされるという…賢い女をそうやって魔女扱いするダメな男たち。
しかし堂々と論理を述べて身の潔白を果たす。
こういう話は厭だな、ハメた連中を糾弾したくなる。←説経節的発想。

『美女と野獣』 1874年 木口木版、多色刷  滋賀のチラシの表にも選ばれた。
これも隙間なく細密画。細部細部に素晴らしく丁寧な描き込み。
二分割する。
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チェンバロの横のダヴィデ王らしき図様、竪琴らしき形を見せる、リュートをたてかける台、薔薇を活けた壺の文様はおそらくウィロー・パターン。
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野獣とはいえ元は高貴な彼はきちんとした身なりをしている。
ブーツの先が割れているのは京都のsou-sou社のか。←チガウ。
彼の背後の壁画には恋の矢を射ようとするキューピッドがいる。

『森のめじか』1876年 木口木版、多色刷  ある年齢になるまで日に当たってはいけないと戒められた王女だが、婚約者の王子が待ちきれずに彼女を迎えようとする。自分の娘を王子にめあわせたい悪者が王女の馬車の窓を開け、日光を入れた途端、王書は人から鹿に変身し、驚いて馬車から飛び出してしまう。
このあたり、長谷雄草紙にも似ている。百日を待たずに美女を抱いたために美女が溶けて流れてしまうのだ。
王女と自分の娘とを入れ替えて婚礼させたが、王子はその妻に絶望し、森へ逃げ、そこで鹿と出会う。
伏線として鹿狩りの絵が装飾にあったり、女ケンタウロスのタピストリーがある室内が描かれている。

『ベル・エトワール姫』 1876年 木口木版、多色刷 兄や従兄弟の誰彼よりも強いのは、男装した姫。
森の中の彼女の立姿がいい。

『古いお友だちのアルファベット』にそっと現れる黒猫、『黄色い小人』では黒猫に乗って戦う。

『アラディンと魔法のランプ』 1875年 木口木版、多色刷  これは以前から知っていたが、この絵を見て初めてアラディンが西洋では中国人だという設定なのを知った。知らなかった。
わたしの持っている切り抜きと絵ハガキを挙げる。
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アラディン少年。
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欧州大陸での東アジアのイメージなのだろうなあ…
他のシーンをみる。
色町なのか、女たちは清長の浮世絵に出てきそうな長身ばかりで、それがなよなよとあちこちにいる。
日本と中国と風俗ごちゃまぜ。素人も玄人も同じ。

クレインの本がたくさん並ぶ。ここまで挙げた作品が本の形をとってそこに在るのを見ると、わたしもやっぱり欲しくなった。


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『古いお友だちのアルファベット』1874 SからVの間にそっと黒猫がいた。
クレインのこのデザイン力・構成力の高さにはただただ感嘆する。

続く。

ウォルター・クレイン展に溺れる その2

ウォルター・クレインは絵本製作だけでなく挿絵本でもよい仕事をしている。

・初期の児童文学の挿絵
『ギャッブ王のお話袋』 ヘラクライタス・グレイ 1869年 木口木版  話術でのし上がる・成り上がる王様のお話。くっきりした線の頃。
『フィオリモンド姫』 メアリー・ド・モーガン 1880年 木口木版  求婚者たちを首飾りの珠にする怖いお姫様。
『城の子どもたち』 モルズワース夫人 1890年 木口木版  ちょっとばかりおどろな雰囲気。
『四方の風農場』 モルズワース夫人 1886年 木口木版  ラファエル前派の影響が大変強い絵。
これは国会図書館デジタルコレクションで見ることが可能。

なお国際子ども図書館の「ヴィクトリア朝の子どもの本」というサイトは素晴らしく充実しており、今回調べものをしていてしばしばそこにたどり着き、大いに助けられた。
まことにありがたいことです。
サイトはこちら

・ 「幼子」3部作と『パンの笛』 エヴァンズとともに
『幼子のオペラ』 歌曲編纂:ルーシー・クレイン 1877年 木口木版、多色刷 現在も復刻されて販売が続いている人気本だそう。
シンプルで可愛らしい。
チェロを弾く黒猫、鳥を噛む猫などもいる。
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『幼子の花束』 歌曲編纂:ルーシー・クレイン 1878年 木口木版、多色刷  蝶が一匹舞う。天使から花束を貰う女がいる。そしてその家のタイルは猫柄。可愛い。

『幼子のイソップ』 1887年(制作1886年) 木口木版、多色刷   坊やがゲジ柄猫を抱っこ。「お話お聞きよ!」のところかな。

『ウォルター・クレインのぬり絵本』 1889年 木口木版、多色刷  イメージ (356)
坊やはゲジ柄猫を抱えているが、その周囲にはたくさんのどうぶつたちが。

・子どもの本のデザイン
富裕層向けの本があった。
そして1880年代以降は画風もかなり変わり、背景に余白を入れるようになった。
そのシンプルさも悪くはない。

『三つのRの物語』 ウォルター・クレイン 1886年 リトグラフ、多色刷  大きなキジネコと一緒にいる少年、大ぼらを吹く。
けっこう楽しい展開。

アメリカに行ったクレインはフロリダの明るさに影響されたそう。

・白と黒の世界 挿絵本の傑作
『ヘラスのこだま-ホメロスによるトロイとアイスキュロスのオレステス物語』英訳・序文・ソネット:ジョージ・C・ウォー作曲:マルカム・ローソン、ウォルター・パラット他 1887年 1887年 リトグラフ、2色刷(赤・黒)  大人向けのオデュッセイア。劇にはレイトン、ワッツらも加わっていたそうな。

シェイクスピアの戯曲の挿絵も。
『テンペスト』(8点組) ウィリアム・シェイクスピア 1893年 ダラスタイプ・プレスNo.5
『ヴェローナの二紳士』(8点組) ウィリアム・シェイクスピア 1894年 1894年 ダラスタイプ・プレスNo.5
『ウィンザーの陽気な女房たち』 ウィリアム・シェイクスピア 1894年 1894年 ダラスタイプ・プレスNo.5
少し異なる印刷。とてもややこしい方法だという。
ふち飾り付き。モノクロの細かい挿絵。

以前にモリサワさんで見た物凄いのがあった。
『妖精女王』全6巻  エドマンド・スペンサー編集:トーマス・J・ワイズ1897年(制作および分冊による刊行:1894-96年)木口木版
とんでもなく綺麗な本。とにかくすごかった。
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『羊飼いの暦』 エドマンド・スペンサー 1898年 木口木版 モノクロでここまでやられるともう…

晩年は濃厚な緻密さはなくなり、背景も余白を愉しむようになった。
これはもうファンとしては好みの問題。
『フローラの饗宴』 ウォルター・クレイン 1889年/1895年(第2版)1889年 リトグラフ、多色刷
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可愛らしい花の妖精たちがずらーり

晩年までクレインはとてもよい仕事を残し続けた。
絵の教育書もあり、また家庭内の手製絵本もある優しい人だった。
そしてモリスらとであったことで社会主義の普及活動にもいそしんだのだった。

『美しい家』口絵「奥方の部屋」:ウォルター・クレイン クラレンス・クック 1881年(第2版)
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これは以前に二度ばかり展覧会で見ている。

最後に彼が愛した本が参考として出ていた。
『伝神開手 北斎漫画』初編〜十四編(14冊)
『楳嶺百鳥画譜』天・地・人(3冊)
『省亭花鳥画譜』(3冊)
なんとなく納得も行く。

最後まで本当に素晴らしい世界だった。

5/28まで。

海北友松展 後期にみたもの

今日で終了の海北友松展の後期展示を昨夜見てきた。
前期の感想は最近あげたばかりで追記にしようかと思ったが、例によって案外長くなるので別項で挙げる。
この凄い展覧会ももう終わりである。この日も多くの観客がいた。
忘れ難い展覧会になるだろう。

通期展示だが、やはり最初に現れる菊慈童には心惹かれ、なにかしら書きたくなる。
赤地に金の瑞雲模様の上衣を着て岩に足を軽く組んで座る少年。眉根を寄せ、黙って物思いに耽る淋しい顔。
「いつまでここに一人でいないといけないのだろう」「なぜあのとき帝の枕をまたいでしまったのだろう」
悔いは無限に続き、この地で少年は永遠に少年のままでいることを強いられる。

上杉景勝の歴代年譜に、聚楽第近くの上杉家に太閤を招いたら、おみやげに友松の「濃彩松鳥図」をいただいたとのこと。このとき友松62歳。友松、天下人にチェックされてたのですね。

彼が学びにいった狩野派の総帥・永徳の襖絵がある。
花鳥図襖 聚光院 前期の琴棋書画図襖の裏表かな。
右下に五位鷺かちょっと黒いような鷺がいる。鴨ップルが仲良く泳ぐ。松に向かって鶴の一声。白椿も可愛く咲いている。

・建仁寺の塔頭に描く
琴棋書画図屏風 いい天候の頃か、松の木の下に出した猫足の卓に片肘ついて居眠る侍童、琴を弾かずにぼーっとする高士もいる。
左では石橋をわたした先に亭があり、特になにもしていない高士らがいる。書画を今からみるのか雑談しているのか。

次は掛け軸の観瀑図だが、これも先の続きというか、高士らこっちにスライドしたのではという状況。松のあるお休み処に高士と少年、右幅は大人しい滝。
なんとなく茶店のような雰囲気がある。
「高野聖」のあの場所のような。

松竹梅図襖 松に叭叭鳥 梅図の裏。薄墨で松と二羽の鳥が描かれている。
鳥たちは揃って→向き。
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・建仁寺大方丈障壁画
竹林七賢図 にんまり親父と立ち話の二人がいる。「でさー」「ふーん」こんな感じ。

・変わりゆく画風
飲中八仙図屏風 これは前期でもお酌する少年にときめいたのだが、今回も変わらず。
可愛いなあ。
冒頭の菊慈童と双璧。

楼閣山水図屏風 楼閣というと塔があったり棟が多かったりとかが多いのだが、ごくシンプルな平屋が雪に覆われているのがいくつか。絵の剥落が降る雪にもみえる。停めた小舟が何艘かあるが、それも白い。
静かな情景。

禅宗祖師図がいくつかあるが、やっぱりケッタイな人々ですわな。
しかもあれだ、南泉なんかこっちが斬ってやりたいわ。
しかしどう見ても猫ではない絵ですな。

野馬図屏風 おおお、肥えすぎやがな。
白馬は袋人物と同じく豊かな外線、黒馬は没骨。ほんまに奔馬なポーズもあり。

この絵と対だったと言われるのがこれ。
牧牛図屏風 毛むくじゃらな黒牛たち。えーと毛長牛?
川から上がろうとするのもいたり、それを見てるのもいる。
角はたいてい跳ね上がる半月形なのだが、一頭だけツインテールがいた。ウルトラの母のあれのようだ。

四季山水図屏風 所々に建物が。左には杉林のシルエットも。ちょっと等伯ぽい。

・大和絵金碧屏風を描く
浜松図屏風 改めて眺めると、観念的な浜やな。
色鍋島の絵柄にもあるがはらはらと降る桜が籠に収まるのとかと同じような不思議さがある。

網干図屏風 細かい網、胡粉をかけたのもある。浜の奥の海では数隻の帆掛け船がみえた。
西洋のフレスコ画にも通じる静謐さがある。
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・妙心寺の金碧屏風
今回改めて寒山拾得図や三酸図を見て、2009年の妙心寺展にこれらが出ていたことを思い出す。前期で見たときは思い出さなかった。
これだけ特徴ある表情なのになあ。

花卉図屏風 牡丹の花びらの縮れ具合、左の白梅、白椿、たんぽぽの愛らしさ。いいなあ。

龍の間はやはりおどろおどろしくて、龍の生臭さを感じられてよかった。

・最晩年期の押絵制作
呂洞賓図 雪村のとは全く違う。白髭の老人姿で巨大な傘を背に刀を踏んで空を飛ぶ。
気概がある。雪村のが壮年期だとすれはこちらはその後なんだが、絶対に丸くならないぞという想いが聞こえてきそう。

芦雁図 二羽の雁が大人しくその場にいるが、宗達の雁とは違い、こっちの雁の方が映画「雁の寺」の襖絵に近そう。

最後に月下渓流図屏風をみて、穏やかで和やかな心持ちになって、会場をでる。

豊かな夜だった。
海北友松展は本日を以て終了。

今治市の丹下健三の建造物

煌びやかな装飾の建物が続いたので、今度はその対極にあるモダニズム、モダンムーヴメントへ。
丹下健三はお父さんが今治市出身で、自身も小学校・旧制中学をここで過ごしたそう。
そして今治市は丹下の設計した市役所・公会堂・市民会館が一堂に会している、丹下ファンには嬉しい場所なのだ。

まずは公会堂をみる。1958年竣工
なんだかよくありそうで、しかしやっぱり個性的な建造物である。
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視点を変えて眺める。
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・・・かっこいいな。

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見学と撮影をさせていただく。
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確かに「モダン」ではある。装飾を排したことである種のカッコよさも生まれる。
とはいえ、劇場空間は無表情ではない。

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舞台の袖にも。
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音楽も演劇も落語も演説もなんでもゆけそうだ。
歌舞伎と能はちょっと似合わないが、狂言と文楽は案外よさそうである。
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丹下の紹介もある。
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こちらは市民会館 1965年竣工
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間違いなく夏は暑く冬は寒い…

ここから見る公会堂
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市役所 1958年竣工
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他に愛媛信用金庫今治支店も丹下作品。

丹下けんぞーぶつ。
うむ、叱られるぞ。

暑い日だったので、今治特産の今治タオルを使いながら歩くのもよさそうだった。

愛媛県庁 その3

前日に引き続きます。
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見上げると七宝繋。

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よく見ると手裏剣つなぎ??

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周辺の装飾を追う。

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フランス式の壮麗さが満ち満ちる正庁
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鷲がところどころにいる。
獅子と鷲とだと鷲の方が新しいのだったかな…

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素晴らしい…!

愛媛県庁 その4

いよいよ大詰め。
再び階段。
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ドーム遠望
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配線も素敵だ。
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戻ってきました。
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電話室、可愛いな。
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ではまたサラバ。
よい建物、これからもずっとあってほしい。

愛媛県庁 その1

過日、愛媛県庁に出かけて撮影と見学をした。
「かじつ、えひめ」と打ちながら、わたしのアタマの中には水気の多いミカンやポンジュースが思い浮かんでいた。

1929年、木子七郎の設計。
見た目がまず可愛らしい。そう、ドームね。
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左右対称に広がる。
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門もいい。
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こんにちは
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ごきげんなお顔である。
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外観、玄関周りだけでも大いに楽しい。
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ホネ…

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いよいよ
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やっぱり装飾はいいなあ。

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床を見るのもいい。
どこかにアンモナイトが隠れているようだし…

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階段がまた素晴らしくて、ここだけでもと、なついてしまったよ。
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昔の電話室
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風情があるなあ。
今も使用可能なのだね。

続く

愛媛県庁 その2

昔の写真がある。
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秋山兄弟の紹介もある。

「坂の上の雲」の感動が蘇るなあ…

さて階段。
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そのステンドグラス

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左右対称の建物の廊下
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再び階段。
装飾の紹介
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踊り場の装飾
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三階の表示
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エレベーター
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装飾が過剰なのをいやがってモダニズムへ行ったキモチもわからなくはないが、何もないよりやっぱり装飾があると嬉しい。

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貴賓室へ。

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撮りたくて仕方なくなるのだよ、細部を。
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細部までていねい。

続く

「海北友松」展をみる

京博の「海北友松」展もいよいよ終盤を迎えた。
関西だけでなく首都圏からも多くのお客さんが見に行かれては感嘆の声を挙げている。
早く感想を挙げねばと思いながらバタバタしていてとうとうこんな時期になった。いつものパターン「既に終了した展覧会だが」で挙げるわけにはいかない。
とはいうものの、前期は見たが、後期は今週末に行く予定のわたしなのだ。

サイトに紹介がある。
「海北友松(1533~1615)は狩野永徳や長谷川等伯と並び称される桃山画壇の巨匠です。近江浅井家の家臣の家に生まれた彼は、若年を東福寺で過ごしましたが、主家や兄が信長に滅ぼされるに及び、還俗して狩野派の門を敲き、画の道に進んだと伝えられています。いま遺る作品のほとんどは狩野派から独立して以後の晩年期(60歳以降)のものですが、鋭い筆遣いが駆使された気迫溢れる水墨画や詩情豊かな大和絵金碧画などは、ほかの誰の作とも似ていない、まさに友松ならではのものといえましょう。
最晩年まで絵筆を握り続け、83歳でその生涯を終えた桃山最後の巨匠の世界を、心ゆくまでご堪能ください。」

かいほう・ゆうしょう
耳だけで聴くと気分が大きくなる。字面もいい。いい名前だ。
観たものだけの感想を挙げる。後期だけの展示はまた後日に。

第一章 絵師・友松のはじまり―狩野派に学ぶ―
83歳という、当時としては長い生涯のうち、本当に絵師として働いたのが60歳以降と言うのは凄い。
それも僧侶として人々を啓蒙しようとして絵を描いたら人気が出た、と言うのではなく、当時の最高機関の一つへ正式に学びに行ったのだから、相当な覚悟だったろうと思う。
後で絵の領収書が展示されるのだが、きちんと職業として絵師を選択したのだ。
とはいえ、本人はそのことを色々と苦渋の選択のように記しているが。

歌舞伎の先代雀右衛門丈は長く戦争に取られ、映画俳優として人気を博し、ある程度の年になってから女形になった。
その時舅から言われた言葉が「60代になってからでないと本当の女形にはなれないよ」だったそうだ。
若い頃の準備がないのでその年からしか開花しないということだった。
実際、雀右衛門丈が大輪の花を咲かせたのは確かにその年周りからだったが、それからは自分の息子世代どころか孫世代とも濃厚な濡れ場を演じ、長年にわたりいつでも魅力的な女形を演じ、最後まで素敵だった。
友松もまた雀右衛門丈の先達だと言えるだろう。

狩野派の門をたたき、そこで修業したころの絵は当然ながらその影響下にある。
まだオリジナリティを出せるほどではない。
だが、それだけにしっかりした絵を描いている。

菊慈童図屏風 赤と白の菊が綺麗に列を成す。菊慈童は赤衣を身にまとう。
物憂い顔で俯いている。自分の境涯を思うのか、穆王を想うのかはわからない。
淋しい。たった一人で菊の中で生き続けている少年。

山水図屏風 松に始まり視線が右から左へ動くにつれパノラマが広がる。衝立のある亭がみえた。色のない笹、松が続く。字のない伝言板みたいなものがある。田圃の雀払いみたいなあれ。
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柏に猿図 黒、白の猿が四匹。右幅の猿はアクロバティックなことをしている。白猿が横に伸びる枝を鉄棒のように掴み、黒猿はそれを支えに花を取ろうとする。 左幅は黒猿が二匹、機嫌が良い。
柏は猿に頼られても大丈夫。
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西王母・東王父図屏風 侍女が鉢に桃を入れたのを持つ。白に青緑のとりあわせの上衣に黒金の短いものをまとう西王母。白梅の頃、松の流れる幹に座る。まだまだみすみずしい。一方の東王父は頭巾をかぶって左端にいる。あまり面白くはない。

友松の書が残っている。源氏物語絵詞に彼の手が残っているものがある。


第二章 交流の軌跡 ―前半生の謎に迫る―
史料がよく残っていて、感心する。この時代を生きた人々の逸話はとても興味深い。

夫妻像もある。妻は春日局より拝領した着物を着ていた。
その縁は、春日局の実父・斎藤利三の首を供養したからだった。
明智光秀の重臣である斎藤は処刑されたが、彼と友松は友人だったそうだ。
情義に厚いな。戦国の世にこうした逸話はあるが、やはり知るとこちらも感銘を受ける。
老夫婦の肖像画は息子や孫が賛も含めて描いたもの。めでたい。
揃って絵を見る老夫婦。
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海北家の由緒書き・系図などもある。なかなかの家柄。しかし戦国の世で信長に関わって滅ぼされた家の子で絵師になる、と言うたらもう一人いてはるよなあ…
絵師になる、と言うのはどういう意味合いを持っていたのだろう。

春日局像 探幽 上畳に座す、緋袴の凛とした老女姿。
彼女を描いた作品で好きなのは大和和紀「イシュタルの娘」。
主人公・小野のお通の教えを懸命に学ぶおふくさん。

琴棋書画図襖 永徳 聚光院 大柳が印象的なのだが、それよりもその引手、水木しげる描く妖怪ヌリカベの目にそっくりではないか。

友松はこの師匠の死後に独立する。
思えば京博では2007年に永徳展、その「三年後には等伯だ!」と看板にあった通りに2010年に等伯展、そして冒頭にある通り「狩野永徳や長谷川等伯と並び称される桃山画壇の巨匠」友松が満を持しての登場である。
その間に狩野山楽・山雪展、永徳の後継者たち展といった次世代の絵師たちの特別展覧会があったが、これでもう大がかりなプロジェクトに参加した大物絵師の大回顧展は、あと数十年はないのかもしれないな。


第三章 飛躍の第一歩 ―建仁寺の塔頭に描く―
サイトから
「六十歳を過ぎて頭角を現わし始めた友松の活躍の舞台となったのが建仁寺でした。大方丈の障壁画をはじめ、大中院や霊洞院、禅居庵などの塔頭にも障屏画や掛幅が伝わっており、いつしか建仁寺は「友松寺」とあだ名されるようになりました。」
近い割に案外行かないお寺なので、本当にあんまり知らないのだ。
昨夏ほぼ初めてと言うてもいいレベルの訪問をしたくらいかな。
当時の感想はこちら

山水図襖 太中院 薄墨で静かな世界を表現。
花鳥図襖 霊洞院 彩色がなかなか。白椿、金蕊白牡丹、くっきり松。
唐人物図襖 霊洞院 「袋人物」のハシリ。友松キャラがいよいよ。
松竹梅図襖 禅居庵 わたしが見たのは梅図。薄墨だが力強い。厳しい梅。


第四章 友松の晴れ舞台 ―建仁寺大方丈障壁画―
全52面!そのうちの50面が現存するが、保存のために掛軸に変身。
建仁寺は確か今では所蔵する絵画類はデジタル複製品にしたのを展示・使用して、本物は京博に委託していたのだったかな。

雲龍図 8幅 ベロを出す龍、大きい。力強い。礼の間の絵らしいが、迫力あるなあ。とはいえ、雪村えがく呂洞賓、彼が乗るのもこんな龍だわな。
目が活きている。だからナマナマしさがある。

花鳥図 激しく鋭い。孔雀と牡丹なのだが、この孔雀はヤマタノオロチくらい食べてしまいそう。すごい勢いがある。

竹林七賢図 「袋人物」登場。もさっもさっとした衣。この衣の膨らみ方で「袋人物」と言うわけだが、近衛信尹が天神様を描いたのと似た感じもある。
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山水図 玉澗の画法に基づく早体画による図。山水と言うても山は見えない。見えないがそれは即ち己がその山の中にいることだと知る。そんな絵。薄墨で山の空気が表現されている。しかし人間を拒絶する峻厳さはない。
なにしろあちこちに小さい建物がポコポコ建っている。
旦那の間にあったそうだが、なるほどおっちゃん向けですな。

琴棋書画図 真体画法だとある。色んな画法を使いこなせるようになったのだ。
絵はきりりとしている。欄干の彩色もいい。侍童もいる。敷物、椅子に座る高士たち。とはいえ、ヌリカベの前にいるようで、そこに何か書くのだろうか。


第五章 友松人気の高まり ―変わりゆく画法―
実に様々な絵があった。

瀟湘八景図も5点あるが所蔵先もそれぞれ。頴川美術館の洞庭秋月図は観たように思う。

おお、三藐院近衛信尹の書状。わたしは彼のファンなので、何が書いてあるのかわからなくても嬉しい。
付き合いがある、と言うのがこの時代らしくていいな。

山水図屏風 山中とはいえヒトの住まうところでもある。二階建ての建物がある。山際には道もある。これくらいならほっとする。
山から出てゆくことも出来るし、ゆくことも叶う。

飲中八仙図屏風 ここに描かれた少年たちの可愛らしいこと!壺の蓋をあける少年、お酌をするロン毛の少年、特に可愛い。飲んでグデグデのジイサンらのお世話を細々しく焼いている。
左端のはなにやら耳打ちされている。
「もぉあれだ、飲んでも誰もわからん、水に入れ替えてしまえ」とは言わないだろうが。
今回の作品中、いちばんニコニコしてしまったよ。可愛い少年でしたわ―

達磨図 あら白衣のだるまさん。なんだか困った顔で右下を見ている。「うーん」という感じでぼさぼさの眉も困った形に寄っている。

婦女琴棋書画図 絢爛な彩色。ツリ目の女、タレ目の女、様々な顔も描き分け。
向こう鉢巻の少年もいる。おっとりした風情もあり、白梅も咲いていい感じ。

鷹図 2幅共に動きがある。左はおる・右はくる。ごくシンプルな様子。

放馬図屏風 よく肥えた馬だな。ようけいるがのんびりしていていいな。
白馬は雪村風、黒馬は没骨、みんなのたのた。

群仙図屏風 やっぱり変なんは変なんよ。巻物開く呂洞賓をのぞき込む柏ケープは誰かといえば彼の師匠の鍾離権。恋文らしきものを見ているような女仙もいる。何仙姑かな。


第六章 八条宮智仁親王との出会い ―大和絵金碧屏風を描く―
目にピカーーーッ 全て目に鮮やかな金ぴかである。

檜図屏風 なるほど「金碧画」とはこれのことかと納得。大変鮮やか。この檜の強そうなこと、花粉を物凄く飛ばしそうである。

浜松図屏風 千鳥が飛んでいる。青海波風な海面。その波の様子はセイウチの群れのようにも見える。これは妙に近代的な様子もあるのが面白い。
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扇面貼付屏風 土佐派の扇面を貼るその下地は友松の絵。こういうコラボは楽しい。

第七章 横溢する個性―妙心寺の金碧屏風―
今度は妙心寺で漢画の金碧屏風。名声恣!めでたい。
なので前章とはまた作画の趣が違う。

花卉図屏風 豪華絢爛とはまさにこのこと。フルカラー。牡丹が物凄く態度大きく咲き誇る。将に華。金の背景、緑の岩が牡丹をいよいよ盛り立てる。
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一方左はハクセンコのような梅も貼り付けられたようにそこに咲く。白椿、薄紅の椿、とても愛らしい。この違いがいいな。
寒山拾得・三酸図屏風 仲良し二人組と酸っぱいのを共有した三人と。
珍しく二人組の歯並びがいい。
三人組は「すっぱ!」「う゛」「ぬぅぅ」。
大きめの瓶に寄る三人。
わりと人物が大きく描かれている。

わたしが最初にこの画題を知ったのは横溝正史「八つ墓村」からだった。
あれは田舎の素封家での話だが、先年国立歴博で「ニセモノ大博覧会」を見て、田舎では来客や宴会のためにニセモノだと知りつつもあえて立派な名前の絵師のこうした絵を購入していた、ということを知った。
なので、本物のこうした絵を見た旅絵師が田舎で似たのを描いてそれが残ったりしたようだった。
山水画や道釈人物画が田舎のニセモノに多いのはこうした事情もあるかもしれない。

琴棋書画図屏風 碁盤に琴を置いて居眠り中。傍らの人も侍童もぐーぐーぐー。それを見る人もいる。
巻物を持ってきたよーの人々もいる。
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妙心寺宛の屏風画料請取状がある。案外安価だそうだ。わたしはおカネのことがわからないのだが、そうか安かったのか。 
しかしこれは友松の戦略かもしれないとある。なるほど。
以前の知人に聞いた話だが、某庁に納入する仕事をとれたそうだが大変安価だった。しかしその省庁とつながりをもてたことが大事なので、安価でもいいという話だった。
高村薫「李欧」にもそんな話がある。


第八章 画龍の名手・友松 ー海を渡った名声ー
凄い龍の絵ばかりがある。みんな雲龍図。
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北野天満宮、観修寺の屏風に霊洞院の一幅、個人蔵の一幅。
不穏で生臭いような黒雲が広がり、そこに巨龍がうずくまる。
そしてこの展示室はこれらの龍の見せ方が心にくいばかりにうまい。

うろうろと歩き回りながらうーんうーんと唸るばかりになった。

朝鮮でも友松の龍に唸っている。
朴大根という人の書状に「東海の神龍」と記されていたそうだ。
凄い表現。


第九章 墨技を楽しむ ー最晩年期の押絵制作ー
押絵貼りの絵が色々。当時としては長命の友松。晩年まで衰えることなく旺盛に制作している。

禅宗祖師・散聖図押絵貼屏風 シンプルなポーズの高僧たち。

白鷺図 可愛い。岩の上にいるがシンプルな描線でささっと描いた鷺がとても可愛い。

鹿図 李文長賛 体は没骨で、角はしっかりくっきり。こういう異なる技法で表現するのも面白い。

交友関係も広いのでいろんな人の書簡がある。
豊臣家滅亡の年まで生きた友松は素晴らしい絵師として大きな仕事を遺した。


第十章 豊かな詩情 ー友松画の到達点ー
60年ぶりの帰国を果たした屏風で締められる。
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月下渓流図屏風 薄白い中、白梅と槍梅があり、墨の濃淡のみごとな松、途中で消える草花、土筆のみ少し色は濃いが皆静か。
椿の葉の緑は明るい。月は左5面に浮かぶ。
静かな静かな林の中、渓流のよい音が聞こえてくる。

よい展覧会だった。
振り返ると、極彩色の絢爛な世界より、濃淡の豊かな水墨画が心に残っていた。
特に愛らしい少年たちを思い出すと心が満ちる。
また週末、最後の展示を見にゆこう。
行けて本当によかった。
5/21まで。

雪村 奇想の誕生 後期

藝大美術館の後期にも行きましてな、感想を挙げよう挙げようと思う間にもう早や残り数日と言う状況に。
いつものパターン「既に終了したが良い展覧会だった」という言葉を使わず、とにかくなんとか終了前に挙げようと思います。
前期の感想はこちら

この展覧会のおかげでかユキムラではなくセッソンと間違われなくなったと思うが、実際のところ雪村と変換させるには前者で打ってたりします。人生こんなもんやわな。

1.常陸時代 画僧として生きる
薔薇、葦に猫図  茶斑のすばしこそうな猫。身を潜めているのは何かを狙うているからなのか。
「薔薇と猫」の取り合わせと言えば千露さんが思い浮かぶが、ここの猫は東アジアの猫だった。

叭叭鳥図 二羽いてる。焼き餃子のような目が鋭いのと、シウマイみたいな目の奴とがコンビらしい。

仙人や高士の絵が色々と並ぶ。
がけっぷちで琴を弾いてたり、雪村が描いたとはウソみたいなキリリッとした束帯天神もある。

風濤図  あー、強い風が水面を揺らす。小舟が揺れる揺れる。陸の木々も揺らぐ揺らぐ。
この絵は野村美術館所蔵。だいぶ前に見た記憶がある。
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2.小田原・鎌倉滞在―独創的表現の確立
叭叭鳥図 常盤山文庫  これは景初周随の賛入り。円覚寺の住持。きりっとした一羽のみ。

正木美術館の瀟湘八景図もある。横長のもの。リゾート気分になるわな。

琴高仙人・群仙図 三幅対 なかなか鯉も立派な顔つき。その髭を掴んでライドする。

仲間内で集まって楽しそうにしている絵が二点。
官女図  唐子らもいて、みんな和やか。子供らと官女らも楽しそうにしゃべったり。
竹林七賢酔舞図 こちらはどんちゃん騒ぎの宴会中。その様子を見に来ている近隣の女たちもいる。

新発見の鍾馗画は力強かった。
スゴイ福耳の布袋の絵も面白い。

百馬図帖 太線の墨絵淡彩、よく肥えた馬たち。丸々としている。

3.奥州滞在―雪村芸術の絶頂期
後期だけの呂洞賓図もある。瓶から子龍が出てくる。二匹も。上にもいてる。乗るのもいるし、多いなあ。
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官女図屏風 欄干のひと、落ちそうよ。なかなかええ感じ。けっこうにぎやか。

鍾馗図 これ、虎と遊んでるそうですわ。ほんまかどうか知らんのですが。手を取ってるのはおテテなでなでらしい。虎もにゃー。
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布袋童子図 後姿のしぐれてゆくか布袋どん ならぬ 子供らがまといついて楽しそう。袋に凭れたりくっついたり。

龍虎図屏風 右2の波は「おいでおいで」の手。左4には…虎の前歯が可愛い。
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4.身近なものへの眼差し
植物が妙な折れ曲がり方をするものが多かった。
実際の光景としては見ていても、絵画としてはあまり描かないような様子のものを描いている。

枯れ蓮も竹も菊も > や < に曲がる。そこに鶺鴒、鷺、そしてカマキリがいる。
自分のいる重みで細い茎がしなり、ぐにゃりとなる。

猿たちが手を伸ばして水の月を取ろうとする。よくある猿猴図なのだが、雪村が描くとクガタチでもヤラカシそうな雰囲気になる。

蔬果図 ナス、瓜、ナシ。ミズミズしくてておいしそう。

5.三春時代 筆力衰えぬ晩年
ぎっしりみっしりの花鳥図屏風、物凄い福耳の布袋のいる図、楽しいわ。

李白観瀑図 三頭身のよく肥えたかわいい李白じいさんと少年たち御一行。

光琳が愛し雪村
馬上布袋図 これは以前からときどき見かけるのだが、今回はもしかして朝鮮通信使の馬上才がモチーフかなと思った。
馬の背に立ち両手を広げる。どうもそれのような気がする。

琴高仙人 光琳の描く仙人はちょっと若いな。顔立ちは光琳と関係の深い中村内蔵助によく似ている…

6.雪村を継ぐ者たち
芳崖 牧馬図 おお、うまうましてる。シルエットの馬もいるが濃淡がきれい。

芳崖 枯木猿猴図 この猿の顔…「彼岸島」の雅に似てるな…

雅邦の山水画冊から三点が出ていた。
雪景図、山水図、湖岸図・・・いずれも絹本の良さを感じた。布がいいんじゃなくて、絹の上に描いた絵の良さ、それを感じたということ。

前期の方に好みのものが多かったが、後期もきちんと楽しめてよかった。
もうこんなに集めるのはなかなか難しいと思う。
それにしても楽しいチラシだった。
5/21まで。

おまけ。

挿絵本の楽しみ ―響き合う文字と絵の世界―

静嘉堂文庫の「挿絵本の楽しみ ―響き合う文字と絵の世界―」展は好みの展覧会だった。
大体が挿絵好きなわたし。この展覧会は外せませんわね。イメージ (304)
喜んで向かったが、乗物の都合で出足が遅れたのがちょっと残念。
なにしろ内容が深いので時間不足になりがちですわ。

・錦絵の中の文字
浮世絵の場合、絵が主体で文字は脇。
国貞 新版錦絵当世美人合 文化12年当時人気の女形の役者を気取る市井の美人を描く。
粂三きどり、杜若きどり 

・神仏をめぐる挿絵
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姚秦鳩摩羅什・訳 妙法蓮華経変相図 この名乗りがなかなか… 本自体は南宋の写本。仏も罪人も坊さんも動物もみんなチマチマと可愛い。中には、唐時代の人気フィギュアの「平伏さん」(!)もいたり。唐子も可愛く、なんだか動物園と遊園地が一緒にあるところのアトラクションの最中、という感じ。妙にみんな和やかだし。
これは頭が大きくて二頭身半のキャラだからかもしれない。

太乙集成 明代写し なんだか神仏のよこした軍隊みたい。神兵。

善光寺本地 1718 阿弥陀像を引き上げた兄弟が像をおんぶして向かう所。
もうこの頃はすっかり信仰の地として高名だし、この話も知れ渡っているから、異本もたくさんあったろう。そして買い手は自分好みの絵師の本を選んだかもしれない。

・辞書、参考書をめぐる挿絵
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景徳鎮の五彩のやきものの図像も展示。大魚の上に立つ人の図像は即ち科挙に首席合格という意味だそうな。そうだったのか。
竜に乗るのは呂洞賓、鯉に乗るのは琴高仙人、鵞鳥に乗るのは帝釈天、口車に乗るのは…

初代秦蔵六 青銅文昌星像 1887 おお、笑いながら走る姿で表現、黄金バットのご先祖ですな。←チガウ。
この星の擬人化さんは大抵筆と硯を持って走っている。北斎も描いたし、泉屋博古館にも像がある。

以下、作者でなく編者の名があるのだが、もうそこまできちんきちんと記せない。
適当な書き方で悪いが、それでいきます。

郭璞 影宋鈔絵図爾雅 晋代のを清代に刊行。日本国内では岡山や新潟や静岡の大学が違う版のを所蔵しているみたい。←今調べた。
内容はわたしには正直わからないのだが、ただ挿絵を見ると二重写しのような絵ばかり。
本体に寄り添う影身とでも言うべきか。

解縉 永楽大典 古い青銅器の図解などがあった。犠尊図など。犠首や饕餮くんがいるね。

三才図会 半裸で体操する図が出ていた。
今調べると、この「三才図会」のDBを制作された方がおられました。こちら
ただし、DBは清代の絵。展示は明代に刊行されたもの。

和漢三才図会も並ぶ。

欽定古今図書集成 顔が9つある開明獣がいた。わたしは諸星大二郎「孔子暗黒伝」と佐藤史生「ワン・ゼロ」の開明獣のイメージが強いので、この顔が9つのはどうも違和感がありすぎるな。

中村惕斎 訓蒙図彙 寛文年間から刊行された図解本。絵と解説がセットで様々な分野にわたっている。わたしが見たのは松や杉の絵など。国立国会図書館デジタルコレクションで見ることが出来る。
こちら

元禄年間には「人倫訓蒙図彙」として職業の紹介本も出ている。

・解説する挿絵
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万暦年間に出た墨のカタログもある。なにしろ明の文房具はオシャレなのだ。
芥子園画伝、本草図譜などの綺麗な植物図鑑もある。こんなのは見ているだけでも楽しい。
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やまつばき。丁寧に写生し、その特性を記す。

桜も石楠花もみんな丁寧。
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明から清に出ている本の三顧の礼図、雲南美人図なども楽しい。
谷文晁が模刻したのもある。

宋応星 天工開物 1637年刊行の、どう見ても1960―70年代の少年雑誌のグラビアにある「未来の生活道具」みたいなものが描かれている。不思議な面白さがある。一種の開発ものなのかな。
調べたら産業技術書だそう。なるほど、それで未来感があるわけか、楽しい。
平凡社の東洋文庫から今も出ている。

馬琴の歴史考証本もある。
その馬琴の息子で早く死んだ宗伯と渡邊崋山は仲間だったそう。

崋山 芸妓図 静かな美人である。賛があり、その翻訳を静嘉堂は別摺りで配布。
読んだらけっこうナマナマしいことを崋山は書いている。
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・記録する挿絵
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紀行本、漂流記など一括して「旅先スケッチ」の本が集まっている。
長久保赤水 東奥紀行 これはタイトルしか知らない。 水戸から松島などを巡ったそうだ。文化財オンラインにもある。

司馬江漢 西遊旅譚 なにやらシュールな挿絵だなあ…

菱屋平七 筑紫紀行 どこやらで清人の揮毫を見たところが出ていた。
こういうのを見ると思い出すのは谷崎「瘋癲老人日記」で老人が昔見た風の中で拓本を取る中国人の姿。
そう、とても上手だという話。

山本清渓 あたみ紀行 温泉本。四角い浴場が二つ。熱海は人気でしたからなあ。
そうそう、「鬼平犯科帳」でも長谷川平蔵が骨休みに熱海に行き、事件を解決する話がある。

間宮林蔵述/村上貞助記 東韃紀行  交易の様子をカラーで描く。一人乗りのカヌーが描かれている。

松浦武四郎 天塩日誌 アイヌの人々の絵がある。
面白いのは「知床日誌」の挿絵。四頭のゴマフアザラシ、白アザラシなどが丁寧に描かれたページ。
種類色々。

漂流記が三種。
大槻玄沢・志村石渓 環海異聞 アジア、アメリカの地図があっさりと。なんか変なパーティ図もある。

大槻玄幹(玄沢の子息) 広東漂船雑記「続海外異聞」巻6 聞いた話をまとめるのもなかなかたいへん。

前川文蔵・酒井貞輝/守住貫魚 亜墨新話(初太郎漂流記) メキシコ漂流記。地図もあり、三階建てビルや船の絵もある。

漂流記と言えばジョン万次郎が思い浮かぶが、異国ではみんななかなか親切にされているようだ。
大黒屋光太夫もエカテリーナ二世から「おお、可哀想に」と同情され、よくしてもらったというし。
鎖国してあんまりよそさんとお付き合いがないと、情報を得る存在として向こうでは貴重な扱いになるよね。

・物語る挿絵
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この「琵琶記」は蔡邕と趙五娘の物語だが、その展開と挿絵を見ていると、蔡を罵りたくて仕方なくなる。
流されて生きている。そしてその場その場でにやにや笑いやがって。
元の妻の苦労、今の妻の健気さ、どちらもこんな男のために尽くすな、勿体ない。

隋煬帝艶史 タイトルだけ見てたらあれだが、要するに煬帝がいかに遊び過ぎでむちゃくちゃかを記している。なにしろ暴君で有名だからやることも本当にめちゃくちゃ。だから絵はけっこう華やか。

唐書志伝通俗演義 隋から唐建国の話。煬帝の妻・蕭皇后が突厥へ送られる辺り、李世民の戦闘シーンなどが出ていた。
ここらはとても面白くて好きなのだよ。

邯鄲の夢、豫譲、三顧の礼など江戸時代によく知られたエピソードが根付や印籠のモチーフになっていた。
江戸時代はこうした話を多くの人が共有していたのだ。

伊勢物語 水無瀬で花見するシーンがある。

羅生門 奈良絵本 これは「大江山」の後日譚ということで、黒鬼は牛鬼らしい。綱の兜を掴んでますな。
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大織冠 フルカラーのミニ本仕立て。豪勢な本。

他に「雨宿り」「住吉物語」なども出ていた。
京伝、北斎らの挿絵の狂歌本もある。

西廂記図のある青花瓶もきれい。
粉彩封神演義図缸。太公望が変な獅子に乗り軍を向かわせるところ。三軍司令は馬に乗るがなかなかの美丈夫ではないか。
誰だったかな、これ。

とても楽しい展覧会だった。
こういうのをまた見たいし、見ててその本を読みたくなった。
調べものをするのも楽しかった。
後まで残る、いい展覧会でした。
5/28まで。

「バベルの塔」展に行く その2

バベルの塔にだんだん近づいてきたぞ。

第六章 ボスのように描く
しょーむないことを言うと、わたしのアタマの中で「ボス」と言えば「太陽にほえろ」の石原裕次郎が浮かんできたが、もちろんそうではないし、山田孝之が宣伝してる缶コーヒーでもない。
ヒエロニムス・ボスに違いないのだが、なにせわたしは御幼少の砌、クラナッハ、ボッシュ…と聴いてきたからなあ。

ボスの絵に沿った様々な画家たちの絵がある。
みんなどうしても真似したくなるのだろうなあ。
それも画力が高い人ほどその傾向があるみたい。
これは後世のミュシャの絵を女性マンガ家の特に画力の高い人たちがアレンジして、というのと同じだと思う。

聖アントニウスの誘惑、東方の三博士の礼拝、最後の審判…
キリスト教の人気モチーフが色々。
版画の技術も向上して、すばらしくなったのも数点。

ボス 樹木人間 エッチングで再現されている。この絵は確かに「奇想の画家」でないと思いつかないような絵で、いつみても面白い。
そしてこれまた画力の高いマンガ家・三浦建太郎が「ベルセルク」で、世界が一新されたシーンを描くのにボスの絵をモチーフにした生物を丁寧に描いている。

ボスの模倣者 2人の盲人のたとえ話 どうも何やら見知ったようなのがいるなと思ったら、石ノ森章太郎「佐武と市 捕物帳」の市によく似た盲人だった。仕込杖を持ってそうなタイプ。

第七章 ブリューゲルの版画
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一言で言えば『ブリューゲルの不思議なランド』というテーマパークに入り込んだような気分。
何が現れるか知れたもんではない世界。
タイトルも内容もみんな違うのに「変な世界」という共通項がある。
別にみんながみんなシュールな絵柄ではないが、あまりにそんな印象が強すぎて、みたものがみんなバケモノに関わるものに思えてしまうのだった。

第八章 「バベルの塔」へ
いよいよやってきましたバベルの塔、最上階!
いや、別に最上階ではないか。
上がった途端に巨大パネルがあって、たぷんそれがリアルサイズくらいなのかも。
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本当の絵はそんな巨大なものではない。
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細部の紹介を新聞でみた。
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塔のそばの湾には船が行き交う。この塔はランドマークであり、商業地としても活きていて、住民も暮らしている。
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窓の形が少しずつ違ってゆくのも様式の一つ。
煉瓦がリアル…!ただし何積みかはわからない。
建造物として観るのも楽しいが、基礎をどれほどにしたのかなどとそんなことも考えたり。

横山光輝の「バビル二世」によると、宇宙人バビル一世が地球に不時着し、土地の王に図って祖星へ連絡を取るために塔を建てたのだが、土木技術などが劣っていた当時の地球人では完全で正確なものは作りえず、崩落してしまった…という設定だった。
この説明の方がわたしなどは納得がいったなあ。

絵本体は縄で観客を分断する。間近で見る人向けと、離れてもじっくり見る人向けに分けられている。
わたしは歩きながらだが一応最前列で見た。モノスゴイ細かさとそのリアルさに驚くばかり。

ローマのコロッセオを段々に重ねていったような構造だが、やはりそれがブリューゲルのアタマにあったそうだ。
これともう一つのバベルの塔の絵が生まれる十年ほど前には他の画家によるコロッセウムの眺めを描いた絵もある。
バベルの塔の崩落と人々の離散の絵もある。
みんなショックだったんだなあ。

それでここの地域はともかくとして、ローマでは紀元前4世紀くらいには立派なローマ水道が完成して使われ出しているから、もしかするともう300年ほどバビロンでも待っていれば、ローマ水道レベルの堅固な建造物としてバベルの塔は無事だったかもしれない。
失われた塔のことを想う。
浅草の凌雲閣は関東大震災で、谷中の五重塔は放火で、斑鳩寺の塔で上宮王家は…
そんなことを想像させてくれるバベルの塔。

あとは降りてゆこう。
面白かった展覧会のことを想いながらミッションを完遂したことに満足してわたしは建物から離れた。

妄想と空想が心の中で爆発するこの展覧会、面白かったわ。
7/2まで。



「バベルの塔」展にゆく その1

ボイマンス美術館所蔵 ブリューゲル「バベルの塔」展 16世紀ネーデルラントの至宝ーボスを超えてー
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なんでもブリューゲルの「バベルの塔」が来日するのは24年ぶりらしい。
当時のチラシはこちら。


ボイマンス美術館所蔵の展覧会は大阪にも来たが、「バベルの塔」は来なかった。
来たのはレンブラント描く息子の肖像画などだった。
この子ね。イメージ (301)

大丸ミュージアムの話。

さて今回わたしはいよいよ本物に会うこととなりましたが、実はバベルの塔と言えばこれですよ、横山光輝原作の東映動画「バビル二世」、これに尽きますわ。
OPの歌と映像がもう完全にわたしの魂を掴みましたからねえ。
♪砂の嵐に隠されたバビルの塔に住んでいる超能力少年バビル二世
♪コンピューターに守られたバビルの塔に住んでいる正義の少年バビル二世
♪宇宙の知恵を蓄えたバビルの塔に住んでいる勇敢な少年バビル二世
1番から3番の冒頭の歌詞をあげたが、いずれもそこには「バビルの塔」があった。

バベルでもいいし、バビルでもわたしはどっちでもいい。元々は言語崩壊の話もあるからなあ。
旧約の方はどうだったかな、バビロンの・・・とここまで来たら今度は細川智栄子「王家の紋章」のバビロンのラガシュ王が浮かんでくる、わたしはマンガ好きなヒト。

さて、その塔にたどり着くまでにはいくつかの難関がある。
まずは入場の行列である。

東京都美術館の一隅で入場行列に並び、繊毛運動のような動きをしながら動いてゆくと、大友克洋の描いたバベルの塔が現れる。
これがまた面白い。
さすが大友さん、スゴい絵でした。
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いよいよ入場。
まずは16世紀ネーデルラントの彫刻から。
これが第一章で、LBFをぐるぐる回って四つの章を見てから階上へ進むことができる。
塔は昔のものだから一挙に上へ進む、と言うわけにはいかない構造なのである。
1Fではボスや彼の追随者たち、ブリューゲルの版画を楽しみ、そこから上がるといよいよバベルの塔にたどり着くように出来ている。
そこまでがかなりの分量であり、面白くもあるので、塔にたどり着く頃にはぐったりという状況なのだった。

そう、塔の上にゆくまでには難関が並び、しかも上へゆくほど敵は強くなるのが王道、マンガ「リングにかけろ」でも影道の塔は上がるほど難敵になっていた。

・・・と全て昔のマンガを挙げたところで、いよいよ本格的にこちらも展示を見て回ることになる。

第一章 16世紀のネーデルラントの彫刻
大方は作者不詳の木彫がずらり。オークか菩提樹で、細部までとても丁寧に作り込まれた木像が聖人の姿をとる。

中で1510年頃の「ニコデモ」。この像は変な帽子をかぶっているのだが、どうもその顔がクラウス・キンスキーそっくりなので、ファンであるわたしは嬉しかった。

第二章 信仰に仕えて
なかなか興味深い絵が多い。

ディーリク・バウツ キリストの頭部 これはよくしられた顔だが、改めてじっくり眺めると免許証写真のようだ。

ヤン・プロフォースト アレクサンドリアの聖カタリナの論争 ローマ皇帝が左側にいて、その側仕えのものたちが並ぶ。
わんこを連れた小人もいた。その犬が聖カタリナを見ている。

名前が失われてあだ名だけが残る画家もいる。

枝葉の刺繍の画家 とても納得のゆくあだ名だと思った。
聖カタリナ、聖バルバラの絵が並んでいるが、ドレスや細かいところがとても緻密なのだ。細密な作画できれいだった。
二人の聖女はそれぞれ祈祷書を開いている。

ヘラルト・ダーフィット 風景の中の聖母子 授乳中の母子。おっぱいが丸いりんごのようだ。

AMのモノグラムの画家 ピラトの前のキリスト 人体のバランスがわるいような。わんこがいる。シュールレアリスムの画家レメディオス・バロの絵の世界もここに近い感じ。

ヤン・プロフォースト周辺の画家 受胎告知 窓から鳩が勢いよくビューッ マリアは「知りません、そんなこと」カブリエルは「えーと・・・」
なんだかここで話が終わりそう。

作者不詳 庭園に座る聖母子 そう、そして離れたところで二人を養うために大工のヨセフが働いている。井戸のある庭園。このままうまいことゆくのかな、と心配な。

第三章 ホラント地方の美術
わたしは全くこのあたりの画家のことは知らない。
宗教画がずらりと並ぶが、なかなかドラマチックなシーンの絵が多い。

コルネリス・エンゲブレフツ 良き羊飼いとしてのキリスト 羊をだっこするキリスト、それを指さす誰か、しかしながら誰一人として視線の交わらない人々。

磔刑 周囲の人々の様子が目に付く。もう早や大きな鍵と本を持つペテロ、右端の女の金刺繍のドレスの綺麗さ、細かいところがいい。

ヤーコプ・コルネリスゾーン・ファン・オーストザーネン 聖母子たちと奏楽天使たち 
幼子キリストが天使たちと遊ぼうとしてよってきた。可愛いなあ。

彼による二枚の肖像画があるが、全く他人さん同士なのによく似ている。
男女だが、双子みたいだ。画力の問題ではなく。

ルカス・ファン・レイデン ヨセフの衣服を見せるポテパルの妻 旧約の人々はセクシュアルな事件をよく起こしている。
使用人ヨセフを口説いて拒まれたことを恨み、夫ポテパルにヨセフの讒言をする妻。
動かぬ証拠はこの衣服、とばかりに。
アクションを起こしていても静謐にみえる情景は不思議な時の流れの中にいる。

第四章 新たな画題へ

作者不詳 風景の中の聖母子/本と水差し、水盤のある静物画  表裏に絵がある。授乳中の聖母子は真っ向向き。タオルまである。妙なリアルさもあり、しかも1970年代のイラスト風でもある。実際は1480年頃なのだが。

ヨアヒム・パティニール ソドムとゴモラの滅亡がある風景 おーっ赤い空に大きな岩、破滅ダーッこれはあれだ、1970年代初頭の少年雑誌冒頭グラビアの絵のようだ。大伴昌司あたりが解説を書くような。

その彼の周辺にいた画家によるロトと娘たちの絵もある。 どうみても娘らの誘惑を最初から期待しているかのような、もしくは自分から誘惑しているようなロトである。

マールテン・ファン・ヘームスケルク オリュンポスの神々 ローマ神話である。この画家は「ロマニスト」と分類されたそうだ。
なるほと。オリュンポスの神々らが寛ぐ様子が描かれている。中には小さい孔雀もいるし、三つ首のケルベロスものんびりしている。薄絹をまとった神々が思い思いの様子でその場にいる。
なにやらのんびりしていていいな。

第五章 奇想の画家ヒエロニムス・ボス

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放浪者(行商人) おいおい・・・男の売り物にはなんとひどいことに猫の毛皮もある…
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キジネコ…ひどいよーーーっ

聖クリストフォロス 幼児キリストを背負って川を渡る人。
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これで一つ思い出がある。
図像学の話だが、子供を負うて川を渡るのはこのクリストフォロス、なので西洋で子供をおんぶしてたらこれだという決まりがあるようだが、日本だと芝居の「渡海屋の段」の安徳帝を抱きまいらせん姿がある。
大日本住友製薬の大昔のマーク、これはどちらを元ネタにしているのだろうか。

長くなるので一旦休止。

帰ってきた浮世絵動物園 後期

四月に続き「浮世絵動物園」展に行った。
今回もどんな動物が現れるか楽しみである。
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肉筆画をみる。
北尾重政 美人戯猫図 太夫の飼い猫らしく好き勝手に暴れている。太夫もちょっと困りつつ楽しそう。

月岡雪鼎 髪すき図 頭は人任せ、こたつに足を入れながら巻物を読む。その端で三匹の猫が暴れている。

三畠上龍 狆をつれた美人図 眉を落として笹紅の上方美人。縞柄の着物。すっきりはしていないが、艶な美人。

尾形月耕 甲子之図 対幅でネズミの花嫁と猿公家を描く。
もう明治の半ば過ぎの頃の絵で、なんらかの意図があるのだろうがわたしにはわからない。

落合芳幾 猛虎之写真 真を写す、というわりに虎ではなく豹が吠えている。西洋女性が手前にいるが、取り合わせがまたよくわからない。万延元年のフットボールならぬ万延元年のナゾな猛虎図。

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面白い絵はまだある。
広重 東都飛鳥山の図 王子道狐の嫁入り ちゃんと狐雨の最中の嫁入り。桜も満開。

広景 青物魚軍勢大合戦之図 コレラの流行っている頃で、風刺もきかせているそうだ。
そんなことを思わずに見てもとても楽しい。タコのビーム、小タコもいっぱい出てきた。「南無妙法蓮華経」の幟を掲げる南瓜もいる。野菜軍団も魚類軍団も一歩も引かない。

芳虎 家内安全ヲ守 十二支之図 出た、十二支合体生物。キメラとかヌエの親戚とか言うたらあかんのです。こういう掛け合わせは絵師の才能やわな。面白いしなにより可愛い。

次にウサギが出てくるが、ウサギの浮世絵と言えばボローニャから里帰りした「浮世絵の死角」展の時に見た「道行旅路花婿」お軽と勘平が最初だった。
当時の感想はこちら

ウサギは猫と違い目にハイライトがないので、擬人化するとけっこう怖い顔になるが、手先が可愛いので、妙なアンバランスがあるのが面白い。
目だけ見てたら初代ウルトラマンみたいな感じ。

明治初期に兎と万年青のブームがきた。そのころの狂騒の様子を大仏次郎が小説に書いているが、とにかく何が流行するか知れたものではないというのが明治の話。(兎と万年青の次には絵はがきのブームがきた)

芳藤 兎の相撲 筋肉隆々たるウサギの力士たち。四股名もこれまた力強いが、皆ウサギ関連のもので、柄も四股名になる。
しかし手先が妙に可愛いのでキュンとなる。
太田美術館の公式ツイには絵の一部がある。

四代国政 兎の草履打 「鏡山」をウサギで演ずる。「今ぶち」と「卯のえ」。(岩藤と尾上)
この文言がまたいい。
「根が野ウサギの育ち故」てか。
町民=野ウサギというのがええわ。

そういえば同時代の英国ではポター女史が一見二見したところ愛らしいとしか言いようのないウサギや猫たちで、けっこうエグい話を描いていた。
ピーター・ラビットのパパはウサギパイにされ、家系図にもパイの姿で紹介されている。子猫のトムは強欲なネズミ夫婦に危うく生春巻きにされて食べられかけている。
このセンスは浮世絵にはないものだった。

貞秀 蛸踊り 四匹のタコが浜辺で渋団扇を持って踊っている。どうも浮かれ坊主のような様子である。一人は傘を開いているから、太神楽か何か芸人のようでもある。

ところでこれは江戸の浮世絵なので蛸踊りというてもタコたちの擬人化なのだが、いつから始まったかしらんが、大坂の蛸踊りはこれとは違い、タコのかぶりものをした人が戦う姿を複眼レンズで見せる大道芸があった。
「たこめがね」または「数めがね」と言うそうだ。
春秋のお彼岸の時の四天王寺でよく見られたらしい。
このことについては小出楢重が詳しく書き残している。それを以前に紹介もした。
こちら

芳幾も師匠国芳同様「似たか金魚」を描いている。こちらはナマズが中央にいて、それは坂東村右衛門という役者だとあるが、わたしは知らないなあ…調べるとけっこう名前を変えていることを知る。
そしてそのナマズ、怖い顔なのだよ。

四代国政 しん板猫のそばや これはまた好きな絵の一つで、中でも蹴躓いてお客のにゃんこに盛りそばを上からぶっかけてしまう猫と、やられて「にゃあぁぁっ」な猫の様子が特に好き。いい表情してるわ。

芳藤 しん板猫のたわむれ踊のをさらゐ 踊りの温習会はなかなかたいへんなの。ここの坂東三毛治一門もそりゃ券を売りさばかなあかんし、あちこちに愛想せなあかんしで、しかもちゃんと弟子たちがええように踊れるかたいへんやし、終わった後も御馳走せんならんし… という様子をうまいこと描いている。

北尾重政 虎 竹に柱巻してるぞ、こいつ。多分モデルは虎猫がニャアとしながら竹筒にぐるりぐるり…

広重 獅子の児落とし 白獅子の親と青獅子の児。白が年配、青が若者なのは白秋・青春だからええのだが、雰囲気的に仮面の忍者赤影の青影が崖から上がろうとしてるところに見えるよ。それで上から白さんが「どうしたーっ」青ちゃん一言答えて「ダイジョーブ」あのポーズをやってくれそうです。

芝居や説話をモチーフにした絵が並ぶ。
芳虎 西海蜑女水底ニ入テ平家ノ一族ニ見 そうミタでなくマミユ。だから海女さんも土下座。海底の亡者でも身分は高い。

国芳 牛若鞍馬修業図 烏天狗らと稽古中なんだが、ヒト形でなく完全に鳥形ですがな。それで棒もって襲ってくるから、さすがの烏天狗。水飲んだりもしててリアルやな。遠くに鬼三太が上ってくるのがみえる。
ヒトの姿やなしにトリというかガルーダみたいな感じで描くところがさすがの国芳。
誰もほんまの烏天狗なんか知らんもの、「あっカラスが闘う!」と言うのは面白いよ。

国芳 五十三駅 岡崎 はい、化け猫です。そういえばこのヒトの「猫飼好53匹」シリーズの岡崎は「おがさけ」の化け猫だったな。ぴったり。

二階に上がるとまたちょっと雰囲気の違う絵が並んでいた。

服部雪斎の博物画もある。
サンショウウオ、オサガメ、アサノハガメ。
ナマナマしさのにじむ水棲動物たち。

作者不詳の「いつかく」は一角の水棲動物。
本当にいるのかどうかは知らないが、なんだか面白い。

国芳の「尽くし」がいくつか。
蝦蟇手本ひゃうきんぐら、道化なまつ尽、どちらも大真面目に蝦蟇なりナマズなりが気張ってキメてるのが面白い。
そして弟子の芳藤はたぬき尽くしを描く。

桃太郎と金太郎を競演させるのが好き、という向きは多い。
明治初期の浮世絵、寺田ヒロオのマンガ、auのコマーシャル。
ここで改めて気づいたが、桃太郎の所にはイヌ・サル・キジ。金太郎には
クマ・サル・ウサギ、時々シカと言うメンバー構成。どちらにも縁があるのは猿なのだった。

国貞 豊国揮毫奇術競 須美津冠者義高 なかなかかっこいい。着物も脚絆も同色の水色、帯は前結びで群青色、片肌ぬぐと赤地の着物。そして巨大なネズミに乗る。
これを見ると亡くなった勘三郎が「手鎖心中」で「ちゅう乗り」をしていたことを思い出す。冥土に行くのに大ネズミに乗り、宙乗りならぬちゅう乗り。

有名どころの動物たちもぞろぞろ。
北斎漫画、江戸百の浅草田圃、窓辺で外を向く猫、国芳の山海愛度図会の猫たち、北斎の狆などなど。

擬人化ではなく、日常の中のあるあるな日常のヒトコマを描いた絵もある。
国芳 教訓善悪 小僧揃 猫が喧嘩するのを止めようとする小僧、それをぼーっと見ていて、手持ちの荷物を犬にやられる小僧。
どちらの立場にもなりそうだ。

広重 紫陽花に川蝉 色合いが綺麗。広重の花鳥画は90年の花博記念の展覧会でかなり多く見たが、これもあったように思う。垂直落下するカワセミ。顔つきが「コブラ」に出てきたロボット使いのマリオに似ている。

2代広重 鰈の天日干し なかなか壮観。ずらーっと並ぶ。買いにいきたくなったわ、産地直送の鰈。おいしそう。
そしてやっぱりこの人の名を見ると一ノ関圭「茶箱広重」を想うのだった。

風景に存在する動物たちの絵も多い。
浮世絵や18世紀の京都画壇の絵には和やかな心持になるものがたくさんある。
これは西洋の絵ではなかなかないものだと思う。

ナンセンスなのも大好き。



そうそう、八犬伝の毛野の着物がわんこ柄と言うのもあった。

どこを見ても楽しい浮世絵動物園でした。
こんな企画は言葉がわからなくても楽しめるから、外国人や子供のお客さんもみんな楽しめる。
また数年後さらなるグレードアップした「またまた帰ってきた浮世絵動物園」に期待している。
5/28まで。





 

帰ってきた「浮世絵動物園」前期 :転載

「帰ってきた」と言えば、まずウルトラマン。それから「帰ってきたヨッパラッイ」という歌もあったし、「帰ってきたヒトラー」という映画もある。
海外流出した日本の美術品の里帰り展だと「帰ってきた」とつくのが多い。
今回の「帰ってきた」はそうではなくて、「前にやったぞ、またやるぞ」という意味での「帰ってきた」浮世絵動物展。

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太田記念美術館が動物園になってましたわー
このチラシは表の方の、裏面は来月の後期の時に挙げよう。
前後期総入れ替えだからちょうどいいよ。

近年の太田のチラシの面白さ、いいね。
今回もうまいことはめこんで、これを見ただけで楽しいてしゃーない。
真ん中の黒いゾウさんは幕末に日本に来て全国巡回したそうで十年ばかりおったそうな。雰囲気的に「オツベルとゾウ」ぽいが、それだけ優しそうということ。
あと左斜め上のわりと大きいウサギの草履打ち、これは「鏡山」のパロだけど、以前「浮世絵の死角」展ではウサギのお軽と勘平を見ているから猫以外にもけっこう人気があったのだろう。こちらは後期展示。

畳に上がり肉筆浮世絵を見る。
珍しいな、ここで祇園井特の絵を見るとは。
しかも普通に美人。笹紅の美人の裾にすごい小さい狆が乗る。

重政の見立て普賢菩薩もいい。白象に乗る美人の薄紫地に白い桜の打掛が素敵。

笑ったのは雪鼎の猿かに図。ここでは女装した猿が縁側歩くところへ蟹がその裾引っ張ってギャッな図。描表装で青桃が周囲にあるのも可愛い。
猿の奴、なかなか太い足でした。

暁斎 目白に蛙図 こっちへ来る鳥もいれば、下にはカエルもいる。

前述のゾウは歌川芳豊。どうやらインド象らしい。マラッカを越えてきた、よく働くゾウさん。
文久三年だから本当に幕末なんだが、この大評判で暁斎もゾウの戯画を描いている。チラシの「帰ってきた」のところで大杯に手酌ならぬ鼻酌するゾウ、あれなどわらわらとゾウの芸達者な様子を描いている。

芳藤 廓通色々青樓全盛 吉原のどこぞの廓なのだが、遊女と幇間は人間だが客は全員、上客から居残りまで揃って鳥類。三枚続のそのちょうど真ん中では大騒ぎ。廊下の所で職人かな、客同士で大ゲンカ。燕に烏に鷺に…
それに巻き込まれて御馳走も台無し、揃付けの大皿に盛りつけられたカツオのアタマが宙を飛ぶ!床にはお造り散乱、ああもったいない…
離れた上客はちらりと見るだけ、布団部屋の居残りは一応慎ましく控えている。
これがみんな鳥やからなあ。面白かったわ。

芳幾 諸鳥芸づくし こちらはいろんな鳥たちが自分に関わるようなことをモトデにして商売したり芸を見せたりしている。
チラシで前期を告げる鳥、あれは鶺鴒で尻振りしているところ、蝙蝠は三番叟、鸚鵡は声色、梟は目鬘をつけて、目白は押し合い、山雀のかるた、雀も…
こういう発想が好きだ。

世相をつついた絵もどうぶつでやるとソフトに…なりません。
国芳の吉原の大通りがにぎわう雀で埋もれているのや、暁斎の蛙の大合戦などはそう。

国芳 道化十二支 十二支のみんなそれぞれ自分に関わりのあるもので商売中。
うさぎの団子屋なんかやたらと鯔背。蛇の目寿司のトラは逃げてますがな。

明治の浮世絵にも楽しい戯画はある。
むしろ新しい文化が入ってきたことでネタが増えた。
しんはん猫つくし カード形式のようなのが楽しい。
ねずみのたわむれ 仁木ネズミもいれば大黒の威光をかさにするのもいる。

珍しいものを見た。
英山のトラ。コワモテな虎。赤い口は可愛い。英山も動物を描くのだなあ。
これまで英山の展覧会と言うのを見たこともないので、いつかやってほしい。
英山描く美人はけっこう今の女性マンガのキャラに近いと思う。

芳艶の袴垂は大蛇に座り、国貞の岩鉄法印は蝦蟇の前に立つ。
蝦蟇と言えば自来也(児雷也)が思い浮かぶが、この破戒坊主も蝦蟇使いなのか。

国貞の化け猫絵がある。忠臣蔵と世界が混ざっていて、化け猫を捕まえている。
手ぬぐいを頭にかぶる化け猫たち、耳の形に手ぬぐいが膨らむのが可愛い。

国芳の勇壮で面白いのがあった。
源頼家公鎌倉小壺ノ海遊覧朝夷義秀雌雄鰐を捕ふ図 頼家公が鎌倉の海で遊覧してるとき、ちょっとしたお遊びを思いついた。それで朝比奈が海へざんぶと入るや、早速にワニザメを捕まえてポーンポーンと投げる。見物の侍ども、大いにウケる。歓声が挙がっていた。

明治の博物学。服部雪斎えがく魚類図がなかなか。163cmのマンボウですが…
海遊館に行きたくなってきた。

国芳 玉取蜑 海女が海中で追っ手のタコに追いつかれ巻きとられてしまうシーン。海女、がんばって逃げろ!ここで捕まるとホクサイの絵になるぞ!←こら。

芳藤 鳥づくし みみずくが可愛い。大きな目をむいて。

北斎漫画の魚類紹介。クジラ、ワニザメ、コノシロ、アナゴ、サメ…

ワニザメが人を飲んだというショッキングなニュースを芳幾が描いている。

国貞 江戸名所百人美女 四谷 子どもが猫をキャッチ!!毛並みの空摺りがいい。
丁寧な仕事。こういうのを見るのがやはり楽しい。

春信の猫に蝶もそうで、きれい。

芳年 風俗32相 うるささう 飼い猫にきゃっきゃっとまといつく美少女。猫は迷惑そう。この絵はシリーズ中で特に好き。

広重 月に兎 線でなく色と摺りのうさぎ。可愛い。ホワホワな感じがする。

二代広重 東海道 品川 馬車に乗る西洋人カップル、その馬車の前を洋犬がゆく。
この人は一ノ関圭「茶箱広重」のイメージがつよくて、西洋人を描くのを見ては色々と物思いに耽ってしまうのだ。

ネズミの相撲 これは以前の子年のときにここから届いた賀状に使われているのをみたのが最初。思えば相撲には徳俵、俵=大黒と色々連想がつながるから、ネズミの相撲というのはそうそうおかしくないものなのかも。

粋な美女、かっこいい男伊達の着物の柄に動物たちが躍動するものも多い。

来月の後期もとても楽しみな展覧会。

悲しき烏丸御池界隈

全体が悲しい町ではない。
にぎやかで結構な場所である。
ちょっと歩いたら日銀をリノベして繁盛している京都文化博物館もあるし、現役のレトロな中京区の郵便局もある。
老舗の和菓子屋さんも柚子味噌屋さんも達者でまことにめでたい。

では何が「悲しい」のか。
これだ。
平楽寺書店。
もう失われてしまうのだ…
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近づいて何か書いてあるのを読む。
淋しいなあ…
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あ、あ、ああ…
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しょんぼり。

更に商業施設としては終わってしまった新風館へ。
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昔の三条電話局
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これからどうなるのかなあ。

この日は写真の展覧会が開催されていた。
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そういえば商業施設が入っていた頃はなんとなく入りづらくて一度もいかなかったな。
そぉか、潜在的に避けてた客がいたから今日の仕儀に相成り申したか。

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窓回りの煉瓦も工夫を凝らしていたなあ。
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悲しみを共有してくれる人も少なからずおられることを知りつつも、やっぱり淋しいのだった。

「花*Flower*華 琳派から現代へ」展を楽しむ

山種美術館の「花*Flower*華 琳派から現代へ」展にいった。
まずこのチラシをご覧いただきたい。
田能村直入「百花」
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文字と花の絵とが塩梅よく配置されている。
右から左へ花を追い、左から右へ文字を追う。
そして段を下りてゆく…
最後まで来た時には続きが見たい気持ちになる。
いいチラシ。

なお、これより以下の全ての画像は特別の許可を得て撮影したものです。

渡辺省亭「牡丹に蝶図」のみ個人蔵。
それ以外は全て山種美術館の所蔵品です。


花の絵を見ると気持ちがなごむ。
これは多くの方に言えることだと思う。
木花、草花、庭花、瓶花、様々な状況で花は活き、そしてぐったりとしおれた姿でさえも、複雑な魅力がある。
色褪せ、花びらも散り、茎も葉も枯れ始めていても、そこはかとなく艶めいたものを見出したり、悲哀の想いを懐いてみつめることもある。
実際描かれた花の絵を陶然と眺めるお客さんも少なくなかった。

四季の花それぞれの美と、花のユートピア、そして牡丹の特集があった。
順に沿って歩くうちに季節の移り変わりを知り、豊かな喜びを味わった後には枯淡な静けさに心を鎮め、やがて花の楽園へと導かれる。
更に壁面全てに牡丹が咲きこぼれる一室を訪れ、ここで展示は終わるのだが、そのときには観た人の心に様々な花が咲いている。
大きな花から小さな花まで、その人の心のありようが、花を咲かせる。

最初に迎えてくれるのは、今が盛りの花菖蒲だった。
古径えがく菖蒲は見事な瓶に活けられている。
遠い季節の花でなく、今のこの季節に出会える花が迎えてくれたことで、自然と花に挨拶が出来る。
『よく来たね』『よく開いたね』
瓶花の花菖蒲は、やってきたお客に対し、精一杯身を乗り出している。

春の花から始まる。
第一章 春―芽吹き
近頃世の人に再び愛され始めた絵師の絵がある。
渡辺省亭 桜に雀 三羽の雀は今年の花見を楽しんでいるように和やかな様子をしている。
それぞれうっとりした目で桜を見ている。雀の花見。

大観の山桜もある。土坡が拡がる。優しくなだらかな線。木はノビノビと花を開く。
絵の大小関わらず、木花を始め、天然の姿を描いた大観の絵は好ましい。

小林古径 白華小禽 泰山木か木蓮かわたしにはわからない。痕で教えてもらったところ、泰山木だそうだ。
そこに瑠璃鳥がいる。葉の表裏の色の違い、何もかもが綺麗。


山種美術館と関わりが深い画家は多いが、奥村土牛は長命だったこともあり、特に長い時間よいつながりがあったそうだ。
以前にここでお話をうかがい、感銘を受けた。
土の牛と名乗り、「牛のあゆみ」という著書を86歳で刊行しただけに、才気煥発と言うタイプではなく、時間をかけてじっくりじっくり熟成し、ようよう世に出た、と思った頃にはもうみごとな絵を描いていた。
長い人生をかけてひたすら良い絵を生み出し続けたが、決して濫作ではなかった。
そんなことを思いながら土牛の絵の前に立つと、色・形・構図だけでない何かが絵にあることに気づき、ただじっ とみつめることになる。

奥村土牛 木蓮  深みのある紫の花がそこにある。人を誘う花ではなく、わたしはこの色で生まれてきたのです、とこちらをみつめる花だった。
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この絵を熱心に眺める仲良しさんがいた。
お二人で同じ喜びを黙って味わっている。静かな楽しさがそこにある。
少しだけお話をきいて、花の絵を眺める嬉しさを改めて想った。

やがて土牛の描いた中で最も人に知られる花が現れた。
奥村土牛 醍醐  素晴らしい枝垂桜。
わたしの従妹は何も知らずにこの絵を元にした切手を見て、それだけで醍醐寺の花を見に行った。
「ほんまの桜も綺麗かったけど、絵ぇの桜、すごいよかった」
そう従妹はいい、小さな切手を使うことなく小さな額に収めていた。
わたしは山種美術館で「醍醐」の絵葉書を購入し、彼女にあげた。
従妹はその絵葉書を切手の隣に並べた。
いつか本当の絵を見に行けることがあればいいね、とわたしは思っている。

奥村土牛 ガーベラ
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花も可愛いが、それを活けた瓶、まるで古代ガラスのような銀化がみえて、とても魅力的だ。


夏になった。
第二章 夏―輝く生命

ここでも土牛の鉄線花を描いた「初夏の花」があった。
上半分の余白がいい。
正直な所、この絵を見たとき、土牛よりもう少し昔の京都画壇の人が描くような構図だと思った。
栖鳳、麦僊、彼らの花の絵を思い出し、その仲間の様だと思い、ある種の親しみを感じた。
上方の古い町家の床の間に似合う、そんな風情がある、だが決して古くはない。
1969年の作だが、どうかすると大正から戦前ののびやかでモダンな時代に生まれたような、そんな良さがある。
そう思うのはわたしが芯からの上方人だからだろうか。

花の絵には様々な楽しみ方がある。

洋画家の花の絵もここにある。
梅原の派手で豪華でキモチが大きくなるような薔薇の絵。
彼より丁度5歳下で同じく長命だった中川一政の力強い薔薇の絵。
どちらも元気さが爆発したような明るさがある。
決して静かな絵ではないのが、夏の良さだ。
だから薔薇の傍らにミカンの美味しそうなのがあってもこの絵は夏の絵の仲間なのだ。
完熟したミカン、リンゴらしきものもある。
どれもこれもものすごく甘そうで、絵なのはわかっていてもその味が口の中に広がってくるようだ。
ああ、いいな。

福田平八郎、松篁さんの花菖蒲も咲き誇る。
今年は巡り合わせがわるく、桜は堪能できたが花菖蒲は会えそうにない。
画家の丹精した花菖蒲を愛でていよう。
わたしはどちらの花菖蒲も好きで、ただただうっとりと眺めていた。
都内で花菖蒲の名高い地と言えば堀北菖蒲園、根津美術館、そしてこの山種の展示室だ、と今なら言える。

山口華楊も山口蓬春もどちらもモダンさが好ましい。
華楊の芍薬はグレーの背景に豊かな花が開く。
蓬春の芍薬は色の取り合わせがいい。
時代も少しばかり違うし個性も違う。同じ花ではあるが別な美を見せる。
ただ共通することは、薄い花弁から仄甘い匂いが漂っている。
そんな錯覚が楽しい。
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山口華楊 芍薬

紫陽花は山口蓬春の「梅雨晴」で楽しもう。
胡粉がキラキラしているのは、日差しがそぉっと降りてきて、雨に反射して、紫陽花をより綺麗に見せるためだと知る。
本当に素敵だ。
この絵は山種美術館開館のために揮毫されたもの。とても綺麗な緑の絵。

この美術館が開館したときの画家たちの歓びと期待とを思うと、胸が熱くなる。
そしてこの美術館が存続してくれたことで多くの日本画の美術館が活きたと思う。
そのことへの感謝の念についてはこちらに記している。

日本の色の名前欄をみると、みどりを示す色の多さに驚く。多様なみどり。
古人は自然にあるものに名を付ける。みどりの名が多いのはそれだけ自然に様々なみどりが存在している証だった。

高山辰雄 緑の影 とても綺麗なみどりの絵。数多のみどり色が集まる絵。
爽やかで、そして思索的でもあるみどり。様々なみどりが世界を深める。

夏の花はほかに朝顔、向日葵、芙蓉が元気に咲いていた。

秋の七草―萩、桔梗、女郎花、藤袴、葛、撫子そして芒。
第三章 秋―移ろう季節

土牛の桔梗、御舟の桔梗。
5歳違いの二人の画家。御舟がその短い生を終えた頃、土牛はまだ埋もれていた。
舟足は速く、牛はゆっくりと歩んだ。

川崎小虎 草花絵巻 小虎のやさしい絵が好きだ。どの季節の絵もみな優しい。
いつかここで回顧展があれば、といつも思う。

何もないわけではない、冬。
第四章 冬―厳寒から再び春へ
現存の牧進から遡り酒井抱一、そして作者不詳の優雅な絵。

奥村土牛 早春
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そう、淋しくはない。寒いけれど花もある。冬の時間が少しずつうすれ、春へと入った頃にはこんな喜びがある。

牧進 明り障子  作者の自宅の庭に竹林があり、水仙が咲いている。そこに十羽ばかりの雀がいる。
それは牧家で可愛がられている雀のピー太の姿だった。
ビー太と友達が一緒なのか、ピー太の残影なのか。
そんなことを思うのも楽しい。

抱一 月梅図 この絵は今回の展覧会で撮影可能な作品。
光が入り込んでしまったが、それがまるで月光のようになった。
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花のユートピア
様々な季節の中に不意に顔を見せる花たち。

松篁さんの屏風絵と又造さんの屏風絵とが並んでいた。
壮観な眺めだった。どちらも屏風上に扇面を描いている。
松篁さんは「日本の花・日本の鳥」を、又造さんは華扇と名付けた花の絵の扇面を屏風を散らしていた。
どちらもとても優雅だった。
二人の出自は共に京にある。
四条円山派の血脈の末から生まれ、そこから羽ばたいた松篁さんと、琳派を現代に蘇らせた又造さんと。
その二人の屏風絵を並べる。
思えばとても豪華だ。

其一 四季花鳥図 金屏風に四季折々の花が咲き乱れる。
この屏風にはあるイメージが活きている。館長の山崎妙子さんが新聞のインタビューを受けたときの記事、和装のうつくしい館長の背景にこの屏風があった。
やさしくほほえみ、美術館の所蔵する名画についてお話しする館長。
いつまでも目に残っている。

山元春挙、小茂田青樹、速水御舟、彼らの描く「百花」。
絹に描かれた春秋の草花、紙に描かれたやさしい草花、御舟の写生したダリアと白木蓮または泰山木。
春挙の絵はそのままだが、青樹と御舟の絵とは会期途中でページが変わる。

最後の部屋へ向かう。
魅惑の華・牡丹
そこは牡丹園と化していた。
其一、省亭、春草、靫彦、小倉遊亀らの描く花の王。
小さな牡丹園にはいずれも絢爛な花が咲きこぼれていた。

渡辺省亭 牡丹に蝶図 クロアゲハが牡丹の薄い花びらにくちづける。

鈴木其一 牡丹図 よい香りが漂うようだ。

展示室はどこもかしこも馥郁たる様相をみせていた。
花を愛するきもち、花に愛される心持ち。
二次元のものであっても、何故か良い香りを感じ、心地よい逍遥を続けた身体は優しくしびれる。
この心地よさをぜひとも多くの人が味わってくれればいい、と思う。

地下の展示室から地上階へ上がる。日差しが心地よく入り込むカフェに入る。
展覧会ごとに新たに拵えられる和菓子たち。
一期一会の出会い。
この日のわたしは「夏の日」を選んだ。


山種美術館のカフェは和菓子がメインだけどケーキもあるので、選択肢が拡がって嬉しいツラサがある。
和菓子に緑茶・紅茶・珈琲いずれかのセットで千円、抹茶のセットもあり。レシートの店名の文字も床しい。

いい心持になる展覧会だった。
6/18まで。

なお、次の展覧会は川端龍子展。
大田区に川端龍子記念館があるが、この山種美術館でどのような展示がなされるのか、とても興味深い。
こうした興味と期待を抱かせてくれるのが、山種美術館の魅力だと思う。
「花」を楽しんだ後には「龍子」を待とう。

2017年5月の東京ハイカイ録 その2

五月五日端午の節句こどもの日 と俳句のような川柳のようなのから始まる。
展覧会の感想はまた個別に後日。
とりあえずいきなり三ノ輪へ向かう。朝の九時には着きたいぞと出かけたのだが、いつもと違う出口から地上に出て、この看板を見て当惑。
これはわからんわ。


地図を見るのが上手な月猫さんもわたしに同意してくれはりましたよ。
随分前の雪の日に松涛美術館への道が見えなくなったとき、たまたま外に出た奥さんに松涛美術館の道を尋ねたところ「山本富士子の家のところを」と説明されて以来の困惑。
註:山本富士子さんとは昭和の美人女優。ミス日本である。

さてどうにかたどり着いた一葉記念館。今回は「別れ霜」という新聞連載小説の紹介。挿絵ごと見れて嬉しかったわ。掲載されてた新聞そのものが行方不明だったのが近年になり発見されての展示。めでたいことよ。
挿絵の周延の錦絵もいくつも出ていて、明治の東京府の様々な様子を目の当たりにした感じ。

三井記念美術館で西大寺展。89年かな、高島屋でも西大寺展があって、その時のチラシの事とか色々思いだす。
実は西大寺にはまだ入ったことがない。隣接するケーキ屋さんには一度行ったことはあるが。ニュースでよく見る巨大なお茶碗の回し飲みの現物もある。奈良絵のある茶碗で大塩正人窯のかも。

柏餅を三越に買いに行く。三越は神田祭が始まるのを待っていた。
わたしはもっちりしたお持ちにアンの入った柏餅が欲しいのだが、近年は柏団子の方が多くて困っているので、コンセルジェにこそこそと相談し、某店の柏餅を購入。別な店の試食をしたとき、餡はいいのにやっぱり柏団子だったことを話して、大体の好みを掴んでもらったのだ。
その柏餅をお供に佐倉へGO!

暑いのでバスで入り口まで。しもた、坂を上るのだよ、これだと。暑い暑い言いながら歴博に到着。
柏餅、おいしかったが、もっともっちり餅のがほしいな…

昨夏のみんぱくの「見世物大博覧会」の巡回なのだが、ちょっとさみしいなあ。
これはコヤだけか。ううーん。のぞきからくりも元から在る分か。残念。
デジタルの企画展もあったが、これもまだまだかな。しかしここが始めたというのはいいことだと思う。

16:15のバスでJR佐倉へ向かう。そこから千葉へ出るが、本当に昔日の面影なしの綺麗な明るいエキナカで、例によって上がってすぐのところのカワシマパンのコッペパンになんだかんだはさむのをたのむ。今日は現地のピーナツにホイップ、コロッケにキャベツの2つとフルーツ牛乳。おいしうございました。
これで道も間違えずに千葉市美術館へつけたらよいなあ…

ついたよ、なんとか。28分かかった。バスなしでこの時間は、わたしの中では早い方。なんしかここはわたしには魔境だわな。
で、滋賀に続いて千葉でもウォルター・クレイン。
たいへんよろしい。とはいえ、前回の滋賀同様感想が書けるかどうかは別問題。
わたしはやはり絢爛な絵本作品と細密なケルムスコットプレス社の本とが好きなんだが、シンプルな作品も悪くない。あっさりと楽しい。

機嫌よく帰るが、今回初めて京成の千葉中央から帰ることにする。
きぼーる通りとかを延々と歩くと…おお、京成千葉駅よりずっと明るい。
これはいい。今度からこれで帰ろう。

宿についてから支度してたお風呂グッズもって稲荷町へ。
先月から気になってた寿湯へ。端午の節句と言うことで菖蒲湯。
ヤクルト貰いました、ありがとう。
キモチよくお風呂に入りまして、グタグタの体も癒えまして、帰りはうまいこと乗り継ぎも簡易で、本当にええ心持でございましたわ。
この日はここまで。

6日最終日。
さて東京駅のいつものロッカーに荷物を放り込んでから動きます。
いきなり府中へ。新宿から特急に乗り換えたら、競馬開催の恩恵を受けてこの特急は東府中にも停車というやん。助かるなあ。
隣席の人、確かに耳に赤い鉛筆を挟み、イヤホンを聴きながら新聞を熱心に覗き込んではったわ。

暑いので日影を選んで歩くけど、やはり暑い。
なんだか色々妄想が湧いてくる。

最終日一日前だからか、すごーーーい行列。ひえーーー
まあしかし快適な環境で見てほしい、と言う設定で入場制限してはるからなあ。
国芳展後期。楽しかったよ。

常設の油彩画も色々いいのが出ていたし、牛島憲之も好きな作品があったのは嬉しい。
それやこれやで出たのが13時前。
駅まで持たずモスに入るが、なんだか妙に食べたりない。
駅まで来た時にパン屋さんでちょっとイートイン。胡麻チーズのパリパリに焼いたパンがおいしかったわ。あんドーナツは半分だけ齧って持ち帰り。

乗り換えに手間取り、渋谷についたらもう3時。國學院に行くのに何番出口がいいか思い出せず、近くの案内の女性に尋ねると「ヒカリエを越えて15出口から」とか言う。
前に國學院卒の方々から教わったのとは違うなと思いつつその通りにすると、ヒカリエから外へ出るのにまず一苦労、しかもやかましいし、混んでる。
更に外に出たらこのあっついあっつい中を、歩道橋を渡らなあかんルートやんか!
もおおおおおっ
しかも出た途端、あっ16bだと思い出したわ!
これはあかんで、こんな道を教えたら、あの案内、イケズで言うたのか道を知らずに言うたのか適当に言うたのか知らんが、実際に歩いてないでしょあんた、と確信。

色々艱難辛苦の果てにようやくたどりつく。
國學院所有の伊勢物語、竹取物語、酒呑童子それぞれの異本の比較だった。
それから絹本の俵藤太絵巻を長――――く延ばしての展示。
異本の比較を見ていると、実際に自分が学生の時に「をぐり」と「平家」それぞれの異本の比較をマジメに取り組んでたことが思い出された。
わたしの比較対象は説経節の「をぐり」ではなく、「小栗一代記」関連だった。
平家も色々やったなあ。須磨歩きとか京都歩きとか…
そういうことを思い出したわ。

他に神田祭今昔というミニ企画もしてて、昨今のアニメかな、可愛い少女らの絵が祭を宣伝してた。
それから去年奉納のこち亀絵巻も一部開かれてたのは良かった。
あとは昔の祭の様子やナマズの山車の模型もある。
この展示、もっと宣伝したらよいのに。

ようやく涼しくなったのは5時でした。ここでもどこからかチャイムが。
16b出口から地下へ。
銀座線に乗り継いで日本橋から東京駅へ。
まあほんと、この日は2つしか行けなかったけど、それはそれでいいわ。

お土産やお弁当など購入し、グリーン車へ。かなり空いてる。
ほっとするわ…
ところでこの車内でTLを追いかけたわたしはギョッッッとした。
阪神、なんなんやーっ0-9で広島にボロ負けしてたのが9-9になり、挙句は12-9で大逆転勝利、単独首位やとーーーーーっ
ひえーーーっこんな車内でコーフンしたかてしゃあないけど、やっぱりコーフンしたわ!
ああーっっわたしはこれでまた阪神の歴史に残る名シーンを見損ねてしもたがなーーーっ
最初は1985年のあの栄光の年の優勝直前の10月10日、まさかの平田の満塁打にイヤハヤ鳥人の北村の大キャッチ!
これをようやく見たのは近年になって「虎辞書なる!」の放送でしたな。
そして今回の大逆転劇。くーーーーっ!
見てたらどんなに血が沸騰したことだろう、天井知らずの沸騰と歓喜があったろうに!
あああ、惜しいことをした…

タクシーで運転手さんとその話をするもあんまり盛り上がらず、惜しいな。
帰宅してからはスポーツニュースを見倒したが、やっぱり凄いわ、阪神。

ギラギラしたキモチで自宅菖蒲湯に浸かり、ぐったりとねました。
今回のハイカイはここまで。

2017.5月の東京ハイカイ録 その1

五月は大抵の場合、GWの頃に東京にいる。
ただしこどもの日には帰宅していることが多かったが、今年は三日から六日の滞在なので、こどもの日は東京で過ごすことになった。

わたしはぶらりとお出かけということは絶対にしない。するなら日曜の午後に珍しく家でぐったりしてて、片づけも家事もやめて逃げ出す、そのときくらいではないか。
それでも行く先はたいがい決めているので、ぶらりもフラリもぷらりも本当にはない。
なのでどこに行くときも綿密なコース作りをする。むしろその時間が楽しい。
かなりめちゃなコース設定・時間の使い方をする。
だから一人でないとそれが遂行できないので、やっぱり一人旅が好きだ。

・・・という前フリは何のためかというと、要するに、外的要因のせいでいきなり予定が狂うと困るのだ、という話。
柔軟に変えたくてもギチギチに予定組んでるから対処しづらいんよ。
今回は静嘉堂に行くので品川から大井町経由で二子玉川へ向かうつもりが、京浜東北線に乗ってから「大井町線の復旧は10時30分」とか言われてみなはれ、ほんまに困りますがな。
せめて品川駅内にいるときに言うてよ。
品川のロッカーに荷物を放り込んだので楽にはなったが、かないませんわ。

今回、とにかく混んでるのはわかってることだから、EXICのポイントを使用して往来をグリーン車にした。
大変楽でよろしい。
しかし楽になった分アタマが動かなくなったようで、予定の修正がうまくいかないところが出てきた。残念だが仕方ない。

というわけで恵比寿から。
この日は20度なのでカーディガンも暑くはなく丁度よろしい。
なお、例によって展覧会の個別の感想はまた後日に。

山種美術館へ来ましたよ。
4/24に開催された内覧会に参加できなかったので今日お訪ねしたわけです。
旧知の学芸員さんとお話し、腕に「PRESS」の腕章を巻いて見学に。許可を受けた作品をいくつか撮影したり、いろいろ。
花をテーマにした展覧会はやっぱり和むわ。
なにより楽しい気持ちになるからね。

お茶しながら気持ちよく見たものを思い出したり、次回のことを考えたりとよい時間を過ごして、恵比寿よサラバ。

今回は新しい帽子買いましてそれをかぶってあちこち歩いてます。
日傘も差さんと歩くのも、この帽子をメインにしたいがため。
で、大混雑の原宿へ。
入場も退場もスゴい制限されてましたわ。
この駅が建て替えという話も仕方ないわな。
しかもあれだ、この駅舎そのものはどうやら残るみたいやし。

太田記念美術館で「帰ってきた浮世絵動物園」後期をみる。
前期も楽しかったが後期も良かった。
面白いよ。花の後はどうぶつ、というのはええコースやな。自画自賛しておこう。

さてわたくしはやっぱり静嘉堂に向かうことに。明治神宮前駅から乗り継いで二子玉川へ。15:29のバスでギリギリ静嘉堂につく。
16;30までなのでこの展開は好みやないのだが、後日に回すわけにはいかない事情がある。ちょっとだけでも見れて良かったよ。
挿絵あれこれ。

時間配分が悪くなったのでもうどこにも行けないなと思いながら何の気なしに高島屋のチラシを見ると、「こどものとも」60周年記念展開催。これまで刊行された数多の絵本の紹介や撮影コーナーなどもある。
「消防車じぷだ」の現物があるのにはびっくりした。本物で廃車になったのをコレクションしている方のだそうだ。
えらいものだ。


わたしなんぞはトーマス世代じゃないから、機関車はやえもん、消防車はじぷた。

撮影コーナーでは他に「ぐりとぐら」の卵の殻の車に乗るというのがあった。
わたしは「ぐりとぐら」より「いやいやえん」に夢中になった子供で、今も「いやいやえん」は大好き。久しぶりに読むとやっぱり「いやいやえん」は面白い。
あとせなけいこ「ねないこだれだ」のグッズがあり、これはええなーと思った。おばけが可愛い。

予定外の展覧会に会えたのは嬉しい。
で、大井町に出ると「えん」が開店してて、肉うどんの文字が見えたので入る。
大井町もわたしがぶらぶらしてた頃とは大いに変わったなあ。
「えん」にだし茶漬け以外のメニューがあるのも初めて知ったし。
うどんも七味で味が引き締まる。

さて品川へ戻り荷物をとって東京へ。送迎バスに乗って定宿へ。
まだ八時過ぎなので出かけてもいいが初日だからおとなしいにしよう。
初日、これで終わり。

二日目。
宿の朝食担当のKさんと世間話。二人体制なのでなかなか休めないとのこと。
仕事がないのも困るが休みにくいのも困るわなあ。とはいえ、それでも交代交代で休めてはいるわけですし。
難しいもんだ。

上野に出たが都美の「バベルの塔」展、かなりの行列。
オランダというかフランドル絵画は犬は多いが猫は少ない。出てきてもキジ猫の毛皮売りとか(涙)、ろくなもんじゃねえ。

バベルの塔は見づらいけれど、パネル解説などが優れていてよろしいな。
大友さんのバベルの塔の絵もあり、面白かった。

芸大では雪村の後期をみた。
不思議なことにまた同じ場所で突然の睡魔に襲われて、しばらくぐったり。

そこから歩いて千駄木へ。いつもは根津まで歩くけど、たまには千駄木への道もよいがな。
歩くと懐かしい店があって、記憶が色々と蘇る。
二十代初頭、森まゆみさんの著書に惹かれて谷根千を歩き倒したもんです。
あの頃のカヤバは昔のご主人が存命で、ルシアン飲んで「うわぁ」だったのも懐かしい。
近くの「愛玉子」も健在。
しばらく歩くと三崎坂に出た。全生庵にもしばらく行ってないが、ここで本当の怪談があるが、まあ今回はパス。

レトロな看板もいくつか見受けられた。
あっいせ辰。懐かしい。
いせ辰も浅草の助六も、昔はよく出かけた。
菊見せんべいも店構え変わらず。乱歩も。
乃池、かつては持ち帰り専門だったと思うけど、今は普通に食べさせるのか。えらく行列してた。

さて団子坂下。あら、お目当てもいっぱい。
まあこう言うときは並ばず簡易な店に入る。
思った通りわたしの後から混む。

森鴎外記念館ではその草花好きな面がクローズアップされてた。
石川淳による言葉も紹介されてて、牧野富太郎の植物画もある。
面白い。今度は絵の入れ替えもあるのでまた行こう。

かなり暑い。坂を降りて千駄木から日比谷へ。出光美術館で「茶の湯のうつわ」をみる。萩、唐津のいいのが多い。
目の保養より修行をさせてもらう感じ。
随分前、まだ展覧会を見始めたころ、大原美術館とブリヂストン美術館で西洋絵画を、山種美術館と目黒雅叙園で日本画を鑑賞する修行をした。
今回はあの頃の心持ちで茶の湯のうつわをみる。なので鋭い目で見ていたと思う。

さて東博へ。「茶の湯」展。内覧会に来ているので展示替えはあまりないが、この時期の目当てはいくつもあり、大満足。

その後は常設展へ。こちらは21時まで。
楽しく見て回って写真も多少。

宿に帰ってから近くのスーパーでポッカのレンコンスープを買う。こういうの好みやわ。

二日目ここまで。



梅美人酒造を見学する

水とお米のいいところではええお酒ができるものです。
しかし、日本酒は不遇の時代が長く続き、やめてしまった酒蔵も多いわけです。

わたしの勤務先は社長は交代制なので様々な人が来たけれど、数代前のある方は、綾部辺りの造り酒屋の息子さんだという話だった。
「ぼんぼんでも後継がなかったのですか」と尋ねると一言、
「333で何もかもダメになって、廃業したんだよ」
333という言葉の意味は通じた。
つまり、社長のところは島原にお酒を納入していたのだが、法令が施行されて得意先の廃業が広がり、売り先を失くした結果、やめてしまったということだった。
色々と納得した。

さて、今回お訪ねした「梅美人酒造」さんは去年2016年、創業百年を迎えたそうだ。
おめでたい話だが、お話を伺い、ここも苦労をされたことを知った。
会社のコンセプトは以下の通り。

「少量手造りで心を込めて、お客様に永くご愛飲いただけます様に、社員一同真剣に取り組んでおります。
梅美人の酒は、緑深い四国の清らかな水と、伊予南予の明るくおおらかでキップの良い風土から生まれた清酒です。是非お付き合い頂きます様お願い申し上げます。」


ちょっとばかり試飲させていただいたが、舌の上に綺麗な水が載る、その感覚が爽やかだった。

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八幡浜の梅美人へ向かうわたしたち一行の目に素敵な煙突が見えてきた。
煉瓦で拵えられているのか、いい色をしている。
あれは日本の伝統色の名称とは違うが、工業用の色の名称で言う所の梅鼠色、NO.26番、そんな色に見えた。
どういう色かというとこちらにある。
仕事柄こういう捉え方をしてしまうが、わたし個人は「なるほど『梅美人』だけあるなあ」と納得がいく。

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正面へ回る。
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どう見ても洋館である。
しかし後に説明を受けてびっくりしたが、実はこれは石でもタイルでも煉瓦でもなく、木造なのだそうだ。

煙突を見上げる。
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お邪魔します。
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いい匂いがする。

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洋館の方へ上がらせていただく。
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こちらで宴会もよく開かれたそう。和の空間の良さを堪能する。
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立派なお皿も残る。宴席ではさぞや。
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窓から見る風景
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菊水。
梅波というのも見たいものだ。

階下へ。
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ここで試飲。お買い物なども。



いい感じやなあ。
なお「梅美人酒造」のサイトはこちら

再び外観を拝見。
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きもちのよいところでした。ありがとうございます。
化粧水もある、というのが素敵だ。
今度はぜひ…

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