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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

京博のコレクション展でみたもの やきもの編

特別展はハレであり、所蔵品展はケなのだが、そのケである所蔵品展がめちゃくちゃに良い所が数多くある。
しかしそれをどういうわけかあんまり宣伝しない。
しなくても必ずお客さんが集まって満足して、口コミでますますそこの所蔵品のファンが増えるのは東博など数えるほど。
京博も奈良博もリニューアルしてから大いに人気が高まって、とてもめでたい。
他方、市民からの寄贈で素晴らしい所蔵品を持つ大阪市立美術館などは、首長とその一味が文化破壊をもくろんでいるので、その素晴らしいコレクションを展示はしても宣伝できないようである。
二週続けて京博、奈良博の所蔵品展を楽しんで気分が明るくなったので、そのあたりを記したい。


京博の所蔵品と新収品とを見に行ったが、当然というか予想以上と言うか、とても良かった。
出ているものの良さに息をのんだりため息をついたり。
やはりこれは層が厚いからだと改めて思った。

やきものからゆく。中でも好きなものだけを集める。
お寺の所蔵品が大半。

色絵蓮華香炉 いかにも仁清の拵える香炉、その配色。派手派手仁清の代表みたいなもの。
銹絵水仙文茶碗 天寧寺  こちらは逆にたいへん色の少ないもので、やはり仁清でないと、のような作品。
白灰色の肌に横寝の水仙が一輪。シンプルさの極み。

奥田頴川の形は古代中国の青銅器モチーフのやきものが二点
三彩兕觥形香炉  猛禽に花のが可愛い。建仁寺と両足院とに所蔵先名が違っている。
同じ建仁寺でも本坊と塔頭の違いか。
img842.jpg
 
青磁貼花牡丹唐草文瓢形瓶 龍泉窯 曼殊院  なかなか濃い色が好ましい。

あまり見ない猿投窯のやきものが二点。 
灰釉四足壺 伝清水寺音羽山出土 清水寺
灰釉三筋壺 観音寺
なにやらイキモノぽいな。

青白磁刻花雲文瓶 一対のうち1口 談山神社  いい色。談山神社には子供の頃に行ったきり。また紅葉の頃に出かけたい。
その時にはこの瓶を思い出そう。

青白磁刻花雲文百合口瓶、青白磁唐子蓮華唐草文百合口瓶、青白磁如意頭文香炉 海住山寺  どれもいい色、いい形。
大体百合口好きだな。特に向付。
変なこと言うと、青白磁は実は自分の眼球の色に近いというのもあって、妙にごひいきなのだよ。

このお寺の界隈にはまた自然が濃く残っている。
だいぶ前に阪神百貨店で村田製作所の社長さんが趣味のカメラの作品展をされていた。
それが村田さんとは知らずに見に行き、このお寺の裏山で撮影したという蝶の綺麗なのをたくさんみて機嫌がよくなったことがある。
その写真が印象深く、それ以来このお寺と言えば自然豊かな裏山があり、そこに蝶の楽園がある、というイメージがある。

紫泥罐 宜興窯 京都・萬福寺  可愛い形。これでお茶を入れていたのかな、可愛いな。急須もポットも今は大好き。

紫泥松竹梅文獅子紐茶瓶 宜興窯 京都・正伝永源院  蓋の上にいる。獅子が可愛くて可愛くて。

白磁八仙人文八角杯 徳化窯 京都・両足院  一面一仙。わたしが中国の八仙を知ったのは水木しげる「悪魔くん」から。
松下一郎の方の悪魔くんが蓬莱の八仙にポートレートを描かれ、魂の半分を保存される。後にヤモリ男の裏切りにあって一斉射撃を受けて即死した悪魔くんが復活できるわけだ。
(「悪魔くん千年王国」の復活とはまた違う)

餓鬼腹茶入 京都・本圀寺  ははぁ。造形がな。なかなか怖いネーミングやがな。
ところで餓鬼と言えば餓鬼草紙がもちろん決定的なヴィジュアルなんだが、わたしのなかでは「暗黒神話」の餓鬼たち、「小栗判官」の餓鬼阿弥がまず浮かぶ。あの体型だよ、これは。

赤絵十二支四神鏡文皿 奥田頴川 京都・大統院  おお五年ぶり。このお皿は以前から好きで、画像を手に入れたときは嬉しかった。
イメージ (45)

頴川の皿と香炉、それから乾山の氷裂皿もその時セットで出ていた。
この展覧会。
京へのいざない 第一期  彫像と工芸
当時の感想はこちら 

色絵花卉南天図手焙 仁阿弥道八作・谷文晁ほか画 京都・両足院  コラボと言うより、みんなで楽しんで拵えたという感じだな。

白磁毘沙門天坐像 初代伊東陶山作 京都・両足院  これは近代に入ってのもので、毘沙門天が寛いで足投げ出す姿というなかなか珍しいもの。

これを見てふと思い出したが、芥川の短編に「黒衣聖母」という底意地の悪い小説があるが、あの像などもこれくらいのサイズなのかもしれない。
 
色絵氷裂文角皿 尾形乾山  5枚そろって並んでいるモダンなお皿。
mir604.jpg
この画像も使いまわしで長くなる。2008年のものなのでサイズも小さい。

つづく。

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2019.7月の東京ハイカイ録

まさかの台風予報の中、新幹線に搭乗し東上し登場。
いや、要するに疲れてるのです、わたしも。
いつものロッカーに荷物を放り込んでから上野へ。
今回はSuicaが故障中なのでICOCA使用。

地下鉄日本橋駅構内は工事中のためよくわからんことになっている。
少しうろついてから目的地に。
チケット購入してから上野広小路へ。
そう、蓮を見るのだよ。

今年は地元の蓮がイマイチでようやく不忍池の蓮で満足できましたわ。
やはり蓮は素晴らしい。
時折ベトナムがうらやましくなる。
蓮はベトナムの国花。水上人形も蓮を抱っこしたものがある。

さて弁天堂の方へ回り、そこから階段で上野のお山に。
道のりの関係上、先に上野の森美術館へ。
ここでは「金の船・金の星」展開催中。

例によって展覧会の感想は後日詳述する予定。

わたしは戦前の児童文学に多大な関心があるのでこの展示もとても楽しみにしていた。
出だしから心を掴まれる内容で、素晴らしかったなあ。
思っていた以上に面白く、良い内容。短期間なのが惜しい。
撮影コーナーもあり、パチパチ撮っていて気付いたが、戦前のエキゾチシズムとはアラビアンナイトだったのだ。
そうした作品が実際多い。
童謡・童画・童話。素晴らしい時代の素晴らしい作品群。
色々グッズも買ったわ。期間は7/28まで。

西洋美術館、科学博物館があまり大混雑で、中に入ったが展示を見るゆとりもランチも何もできなかった。
空きませんのであきまへんわー。
(ダジャレばっかり)
これはもう来月に夜間開館で見るしかない。諦めい。

台風はまだ影響が全然なくておかげでハレバレ。暑いわ。
上野を脱出することにして駅前まで戻ったら、JR上野公園口の建物の二階にあった「ぶんか亭」が消失しておる。
先般初めて入った時も空いててこれは楽だなと思ったが、空きすぎて成り立たなくなったのか。

パンダ橋を上り始めたとき、足がもつれて膝を打った。
ひえーーーー
もうあかんなあ、わたしも。
橋を渡ったところの駅構内の「のもの」で群馬のうどんを食べる。
前に群馬に行ったとき、食べようとして食べる機会がなかったのね。
うどんもキノコの天ぷらもごまだれもええねんけど、しょうゆベースのツユがアカン。
これは昆布を使ってないから仕方ない。そのために飽きるのが早くなる。
大阪の人間はやはり昆布が必要。鰹節だけではだめなの。

三井記念美術館。今回は「日本の素朴絵」展。
これがもうたいへんよくてね。数年前に日本民藝館でみた「つきしま」などの素朴なのが集まっていて、図録も手ごろで、喜んで展示を見、本を買うのも嬉しかった。
物語絵が好きなので、楽しいというのもある。
ああ、いいものを見た。

二時間かかったのでおなかがへり、高島屋の地下へ。
非常に久しぶりにキッシュを注文した。実に22年ぶりでしたわ。
オルセーの時計のところのカフェで食べて以来。

というわけで次は竹橋へ。
東近美。高畑勲展。
これは最初から覚悟を決めて見に来たのだが、混み具合は丁度良かった。
適度に見ていられる混雑ぶりだったのだ。
膨大な資料、高畑さん自身による企画書、「思考のプロセス」、恐るべき内容だった。
実際その仕事の概要をみ、改めて作品と向き合ううちにそのあまりに凄まじい実験精神に圧倒された。
最後の「かぐや姫の物語」に至っては完全に狂気の沙汰としか思えない。
だが、「狂気の沙汰ほど面白い」ともいう。
めまいがする内容であるからこそ、凄いのだ。

予定よりオーバーしたが、それでもまだ足りない。
しかしこの日は隅田川の花火大会を見ることにしていたので、ついに七時過ぎに退出。
三時間いても足りなかった。

宿に荷を置いてから浅草へ。
最初は駒形堂の辺りから見ていたが、押されて前へ前へ。
「前へ」といえば今は懐かしき明大ラグビー部監督・北島忠治さんの色紙に書く言葉は常に「前へ」だったな。
フォワードを重視しつつ、よいバックスのタレントが出た明大。

花火は放射線状のものからラムネをばらまいたようなものまで多種多様。
とても明るくて華やかできれいだった。

終了後、早い目に電車に乗れて人形町でごはん食べてから宿へ帰る。
今回一泊しかしないが、台風でどうなるかわからなかったからなあ。
そして真夜中三時半、結構大きな地震が来たのであった。


日曜、あまり寝てないが、いつものことなので別に何とも思わず起きる。
宿に荷を預けて西馬込へ直行。
久しぶりに大田区郷土資料館へ。
二階の大田区の考古遺跡からの出土品とか面白かったわ。郷土玩具の海関係のおもちゃも。
三階で文士たちの展示と渡邉版画店の展示をみたわけです。
スポット展示みたいなものだが、けっこうよく出ていた。
全然知らない絵師の版画もあったし、出てくると思わなかったものもあるし。
見に行って良かった。

三田で早めのランチ。しんぱち食堂で焼きハラス定食。おいしいよなあ、ハラス。
干物大好き。
しかしかなり脂が多かったので、あとあと苦しむ。

丁度来た三崎口行きに乗って横浜へ。
打った膝が痛いし、台風がどうなるかわからなかったので横須賀は諦めていた。
だって観音崎やん。予定から抜いた。
脂がまだよみがえるのでコーヒー牛乳で削ぐ。
分量は少なくていいので、店で飲むには量がこまるのよ。

みなとみらいで地上に上がるとやっぱりはればれ。
もう台風は来ない。
原三渓の美術展。
偉大なコレクターなのは知っていたが、本当にすごかった。
びっくりしたなあ。
西洋美術館の松方コレクションと言い、原のコレクションといい、凄いものをみせてくれてるわけだな。
なんしか知ってる作品がとても多い。
これらは原の手元から世に出たのだが、収まるところに収まって、いい名物としてその美術館の顔になる。
原の目の高さに感嘆するばかり。
本人の絵の巧さもよかったなあ。

所蔵品展ではキャパや沢田教一ら戦場カメラマンの写真が並び、そこにあった。
ブレッソンの収容所内で自分を密告した女を糾弾する写真を見る白人の母娘がいた。
母親はきちんと娘に説明していた。こうしたことをきちんと伝え続けるのはとても大切だ。

みなとみらいから銀座にゆくのに渋谷経由でなく中目黒経由にした。
というのは乗り換えがこちらの方がストレスがないからだ。

いよいよ松屋銀座での「ポーの一族」展へ。
入り口の贈花がまた素敵。
波津彬子さんのは「ポーの一族」に合わせたクラシックローズ、池田理代子さんのは蘭でした。
これだけ多くの「ポーの一族」原画を見せてもらえるとは思ってもいなかった。
ああ、70年代少女マンガの美の粋。

わたしは「ポーの一族」は大学になってから読んだ。
色々と理由があるけれど、「ポー」の熱心なファンではなかった。
萩尾さんの作品は「アロイス」から入り、「百億…」「スターレッド」「11人いる!」へ向かった。
今でも萩尾さんのSF作品は絵で表現するSFの至高だと思っている。

いくつか。
波津さんの提供した素敵な原画のうち、お姉さんの花郁さんのために萩尾さんが描いた作品がある。
花郁さんの若い死はせつない。
場内には宝塚歌劇の舞台衣装や小道具が展示されていた。
すばらしい。
グッズは阪急に巡回後に集めたいと思う。

ここでタイムアップ。宿に荷を取りに行き、また戻って日本橋から東京駅へ。
また来月までサラバ。

家の中のごたごたはまた別の話。
なんだかんだと忙しかったなあ。

また来月…

「遊びの流儀 遊楽図の系譜」を愉しむ その3

のっけからなんだが、わたしはゲーム類とほぼ無縁だ。
子どもの頃にしなかった・させてもらえなかったという事情があり、それが後々まで尾を引いて今に至るまでゲームとは無縁だ。
理由は後述する、かもしれない。

第6章 双六をめぐる文化史―西洋双六盤・盤双六・絵双六

南蛮屛風 伝 狩野山楽 六曲一双 桃山時代  右は船出の支度中。黒人もいてよく働く。舳先で楽しく双六対戦中。道には白犬だっこの子供とぶちを歩かせる散歩の姿。
左は南蛮寺。バーデレは先の右から続いている。床面の表現が素敵。孔雀も歩き、婦人もいる。

清水・住吉図蒔絵螺鈿西洋双六盤 一合 桃山時代  構図はともかく螺鈿が綺麗。
これはバックギャモンの盤らしいが、そもそもわたしはバックギャモンとは何ぞや?な人なので説明できない。

子どもの頃からとにかくゲームはしないようにと育てられてきたので、本当に何もできない。
実はそれが高じて実際の卓球もテニスもしたことがない…
しかし絵双六は別。学年誌の正月付録についていたのもあってよく遊んだ。
見てきた中では98年の江戸博「絵すごろく」、16年の昭和館「双六でたどる戦中・戦後」といった素敵な展覧会のほか、兵庫歴博の入江コレクションなどが楽しくてならない。

東海道五十三駅双六 一枚 江戸時代 文久3年(1863)  これは国立歴史民俗博物館のだが、他でもどこかで見ている。
この東海道の双六を見ると思い出すのが石森章太郎(当時)の江戸もの「さんだらぼっち」。
吉原の始末屋とんぼがともだちと連れ立って小田原に行くが、メンバーに幇間がいて旦那衆から餞別をもらっていた。
かれは絵双六でなら東海道を何度も行き来していたが、品川から先へは行ったこともなかったのだ。

男女振分婚礼双六 五湖亭貞景 一枚 江戸時代  幕末のいわば人生ゲーム。職業選択の自由はないと言われる封建社会だが、まあ大枠は決まっているが、中はな…
イメージ (2098)
いそうろう、きむすめ、かみゆい、かんどう、ほうこう、ちょぼくれ、ようし、挙句は男でも「よとぎ」があるのが面白い。
ちょぼくれは舞踊の「うかれ坊主」のあれ。死んだ富十郎が最高にうまかった。

御大名出世双六 一枚 江戸時代  これまた面白い。要するに仕事の肩書を集めている。佐渡奉行、長崎奉行、甲府勤番、作事奉行とか色々。

長崎奉行は色々おいしかったそうだ。

後期には千葉市美の「動物第一 獣類一覧双六 桜斎房種」が出るそうだ。これは12年の展覧会のチラシにもなった。

第7章 カルタ遊びの変遷―うんすんカルタから花札まで
わたしが「うんすんカルタ」を知ったのは、近藤ようこさんの作品と滴翠美術館の所蔵品と清方の絵とをほぼ同時に見たからだと思う。
今回の図録の裏表紙はそのうんすんカルタ。
イメージ (2094)

これまたわたしのアタマでは全然わからない。花札もわからないが、トランプくらいならまだ出来るが、もう何年もやっていないなあ。

カルタ美人図 一面 江戸時代  大名時計の前で二人の女がうんすんカルタをする。大名時計と言えば谷中に博物館があり、随分前に行ったことがある。

そしてそのうんすんカルタの現物がいくつか。滴翠美術館のは75枚もある。
絵柄を見るだけでも楽しい。
イメージ (2092)

絵と言葉を合わせるカルタもある。
伊勢物語かるた 伝 葛岡宣慶 書 一揃 江戸時代 なんと418枚もあるそうな。
いろはカルタは上方と江戸とは違いがあるのでどちらも展示。楽しい。
実に色んなカルタがあって楽しいが、わたしの幼稚園時代のカルタは交通安全カルタだった。
「おっとあぶない赤信号」「一旦止まって右左」など。
そして「北斗の拳」カルタで面白かったのが「あたたたたた 北斗神拳秘孔つく」「ひでぶ おまえはもう死んでいる」…

第8章 「遊楽図」の系譜③―舞踊・ファッションを中心に

婦女遊楽図屛風 二曲一隻 江戸時代  桜の下で三味線。 

輪舞遊楽図屛風 四曲一双 江戸時代  蹴鞠もやり、花見の宴もあり、弓も引いたり、キセル咥えたり。

踊り絵巻 一巻 江戸時代  どんな踊があるかの一覧。小町踊り、お伊勢踊りなど。
あんまり踊に関心がないのでよく知らないが、今に伝わるものもあるのだろうか。

舞踊図屛風 六曲一隻(四面現存) 江戸時代  よく残ってくれた。かむろもいるね。
サントリー美術館の舞踊図六面のうち三面が出ている。華やかでいいなあ。

綺麗な着物を見よう。
誰が袖美人図屛風 六曲一双 江戸時代  根津美術館のこれを最初に見たのは98年だったか。絵ハガキも購入したなあ。
誰が袖図屛風も色々趣向が凝らされていて、人の全くいないものもあれば、人がいるのもあり、女物だけでなく男物もあったり。
ここには双六が置かれているのもあった。
どこの所蔵になったか忘れたが、(多分女子大のになったと思う)絵ではなく本物の小袖を貼り付けた誰が袖屏風を見たこともある。
こういうのも贅沢で面白かった。

こちらは7/24から展示の分。
イメージ (2100)

江戸時代の女性用着物の変遷についても大きな展覧会が出来るほど面白いのだけど、その流行り廃りを形にした本もある。
とはいえ歴史書ではなくファッションブック。流行りもの・人気ものを描く。それが時代を経ると古くなるので、流行り廃りと言うわけさ。
新板小袖御ひいなかた 四冊 江戸時代 延宝5年(1677)  この時代のものはこの時代の流行り。今となっては歴史なんだが、やっぱり見るのが楽しい。

本多平八郎姿絵屛風 二曲一隻 江戸時代  徳川美術館の人気ものが来ている。チラシにも登場していた。高級武士と貴婦人とその周辺がモデルな割に市井の若い衆ぽく描くのが面白い。
イメージ (2099)

イメージ (2101)
ちょっとばかり冨樫義博「レベルE」の「サキ王女・ムコ探し編」を思い出したり。

江口の君(文使い図) 一幅 江戸時代   小袖姿の女が文をもらう様子。意外と見ない趣向である。見立てものでも大抵もう文を開いている。
所蔵先の大阪・寂光寺というのはその江口の君堂。とはいえ全然わたしは知らない。
わたしからは中途半端に行きづらいので、全く知らない土地でもある。

男舞図 一幅 江戸時代  なかなかの美貌。烏帽子をかぶる若衆の美。

寛文美人図のいいのもある。やっぱり派手な小袖が素敵だ。

とりかへはやものかたり わかきをのこもわらハへなとゝ まり小弓なとをもて遊ひ給ふ 窪俊満 一枚 江戸時代 文化年間 (1804〜1818)後期頃   小弓などとあるが双六もあったり。
色々楽しそうでなにより。
これはあの「とりかへはや物語」からの情景なのか。
久しぶりに読みたい。

たいへん楽しい展覧会なので、明日からの中期も多くの人が楽しめると思う。
展示替えもたくさんあるので、行ける人はどんどん見に行こう。


「遊びの流儀 遊楽図の系譜」を愉しむ その2

続き。
梁塵秘抄「遊びをせんとや生まれけむ」のキモチでいたところへ閑吟集「一期は夢よ、ただ狂へ」が来た。
この言葉、どちらも最初に知ったのはマンガからだ。
先に知ったのは閑吟集の方。木原敏江の作品から。
木原さんは古典作品も多く、読者であるわたしたちはそこから目を開かされ、自分でも学んでいった。
「一期は夢よ」は木原さん「花草紙」の続編「王子様がいいの!」終盤に主人公が想う言葉だった。
他にも木原さんは閑吟集から「あまり言葉のかけたさにあれ見さいなう空行く雲の速さよ」を「摩利と新吾」に引用している。
後年、近藤ようこさんが室町時代を描くまでは木原さんだけがその時代を舞台にした作品をいくつか描いていた。
そして近藤さんも少女にこの言葉を使わせる。
少女のもどかしさにわたしたちは微苦笑を浮かべつつ、わかると思うのだ。

元に戻り展示へ。

第4章 「遊楽図」の系譜①―「邸内遊楽図」の諸様相
わたしにとって今回の展示の目玉は相応寺屏風。
じっくり見た。チラシがまた左右の屏風を二段に載せているので、二面ごとに挙げてゆく。

遊楽図屛風(相応寺屛風) 八曲一双 江戸時代
左右共に1と2から。
イメージ (2083)
左右共に水で遊ぶ。泳ぐのと船でやってくるのと。


3,4
イメージ (2082)
調理中のところに「南都諸白」の酒がある。うどん屋もあるのがいい。

5,6
イメージ (2084)

7.8
イメージ (2085)
三番叟か。

実は所蔵先の徳川美術館でも見ているが、やはりすごくいいなと思った。
細かくみて、当時の人々の生活や楽しみに想いを馳せる。

他の邸内遊楽図も愉しむ。

邸内遊楽図屛風 六曲一隻 江戸時代   出ました貝合わせが渦を巻く。これもう何度かみているが、不思議な表現で。
手水の石も巨大、花菖蒲の池がある。なんとなく時空間のゆがみありました!な感じの建物での人々。

妓楼遊楽図屛風 六曲一隻 江戸時代  一面ずつ違う様子のを貼りつけたもの。
「お好きな部屋をお選び下さい」ぽい…

ほかにも色っぽいおねえさんたちが気だるくカルタしたり、唐輪髷の後れ毛が艶やかなのが目立ったり、湯上りの女が立膝してたりとかいろいろなのありましたな。

婦女遊楽図屛風 六曲一双 江戸時代  こちらは個々の女たちが個性もはっきりしている。女ばかりの空間だが、庭の輪舞に二人ばかり男もいて、犬もいる。左の6では女同士のお愉しみにふけるようなのもいる。フランス風な感じがいい。

煙管がある。凝ったこしらえのもの。
肩付河骨形網代管銀煙管 一管 江戸時代 
牡丹分銅繋文銀煙管 一管 江戸時代 19世紀
煙管の細かい装飾などに凝る人も多かったのだ。

第5章 「遊楽図」の系譜②―野外遊楽と祭礼行事
昔も今も季節が来たらなんやかんやとお外へ繰り出します。

露殿物語絵巻 五巻のうち第四巻 江戸時代  あらめずらしや。逸翁美術館でもなかなか出ない名品。
大体を見たのは92年の「絵巻物に見る女性の姿」でか。新館で展示されてたなあ。
ここでは町中を歩くシーンで、かむろの文づかいがある。
露殿は島原の吉野太夫、吉原の太夫とも仲良くなる。

さて祇園祭。
細見美術館から 四条河原図巻が来ていた。
ケンカ、遊女歌舞伎、ところてん売り、相撲…なんでもありで楽しそう。

四条河原遊楽図巻 一巻  サントリーのこれは小さいものだが内容は濃い。人形芝居のコヤには虎が三匹ぐるぐるする幔幕があるが、墨絵なのでバターにはなるまい。
イメージ (2096)

ここには他に瓜売、鮒ずし売りもいて、なかなかの飯テロなのである。
またこちらは比丘尼だと思う。わんこもいる。
イメージ (2095)

三十三間堂通矢図屛風 六曲一隻 江戸時代  正月の行事として名高いが、これは他のと方向性が違った。
実は子どもの頃からこの通し矢に憧れているが、到底無理なのでちょっと忸怩たる思いがある。

サントリーの賀茂競馬図屛風は和やかだった。京博の寄託されてるあれとえらく違うものだ。
久しぶりにあれも見たいな…

続く。

「遊びの流儀 遊楽図の系譜」を愉しむ その1

さすがサントリー美術館、と思うのはこういう展覧会の時だ。
久しぶりに遊楽図を堪能した。
イメージ (2078)

やはり何が楽しいというても近世風俗画での遊楽図、月次図、洛中洛外図がいい。
「浮き世」ならぬ「憂き世」が背後にあるからこその楽しさだ。
「浮世絵」での遊びとはまた違う。
にじむ憂いとそれを払おうと頽廃的な歓びに耽る人々が溢れているのが面白さの根源にある。

前期、中期、後期といつものように細かく区分割りされているが、作品の出品状況を考えて何が何でも前期に行かねばならないと思った。
理由:相応寺屏風、蓬春記念館の十二ヵ月風俗図、渦巻く貝合わせのでる遊楽図、本多平八郎姿絵屏風などなど…この辺りの展示が前期にある。
後期に出る松浦屏風は秋に大和文華館で彦根屏風と共演するので、それを待てばいい。
関西の一得ということだ。

イメージ (2079)

入るといきなり白い蹴鞠がある。
きちんと鞠挟みに挟まれて鎮座している。
蹴鞠と言えば、平安貴族の楽しい和風サッカーであり(無論それだけではないが)、「源氏物語」では重要なシークエンスの小道具となり、蹴鞠命の貴族の前に鞠の精が現れる話もある。
もっと古いことを言えば大化の改新の立役者・中大兄皇子と中臣鎌足が謀議を凝らすようになるのも、皇子のキックで沓が飛んだのを鎌足が持ってきたことからだという。
あとずっと年代を過ぎて幕末、埼玉の血洗島で澁澤家の当主がその地に蹴鞠を教えて世過ぎする公家を招いて、粗雑な者たちに京の遊び・蹴鞠を学ばせようとしたそうだ。
田舎わたらいで埼玉まで行った一行が、その地で蹴鞠を教えるというのも、その手配をした澁澤家の当主も、傍目には酔狂だが、まぁ遊びの本質を衝いているのかもしれない。
「狂気の沙汰ほど面白い」と福本伸行が「アカギ」でキャラに言わせている。
遊戯が命がけの娯楽になって、身体を損傷して後の言葉なのである。
なお澁澤の本家の逸話は子孫の澁澤龍彦が著書「玩物草紙」に記している。
あの随筆もまた「遊び」の本質を突いたものだった。

蹴鞠の現物を見るのは何度かあったが、改めて「遊びの流儀」での冒頭展示の意味を想った。

さて「遊楽図」には「月次風俗図」も含まれる。
げつじではなくツキナミである。
毎月毎月何かしら行事があり、それを実行する人々を描いた絵がいい。
山口蓬春記念館所蔵の桃山時代の絢爛な作品である。
パネル展示もあり、全体の様子もわかる。
絵はそんなに大きいものではなく、人々の様子をトリミングしたような構図で人物の表情もはっきりしている。

歳旦、鶯合、蹴合、花売、菖蒲飾りに印地打ち、衣替、祇園会…
金地に華やかな彩色で月次の行事が続く。1シーンにいくつかの行事が取り込まれており、軒先に花菖蒲がある五月には街中で少年らが印地打ち、その斜め下では女たちが衣替え。
それぞれの様子がよくわかるのも楽しい。
こちらは正月の様子である。
イメージ (2080)
羽根つきで遊ぶ女達、ぶりぶりぎっちょうを引きずる少年たち、向こうの路地からは万歳と才蔵も来た。そしてあちこちに若松が飾られている。

第2章 遊戯の源流―五感で楽しむ雅な遊び
ここでは様々な遊びの姿を捉える。

源氏物語画帖 住吉如慶 画 園基福 詞書  わたしが見たときは「若菜上」が二点。例の蹴鞠シーンと管弦の様子と。
平安貴族の遊びはセッションが大事なのだね。

源氏物語図屛風 須磨・橋姫 土佐派 六曲一隻 江戸時代  左が須磨、雲の隙間に月が見える。5,6では光君が笛などを吹いている。
右の橋姫では琴を演奏する姫君たちをのぞく薫君の姿がある。

浄瑠璃物語絵巻 三巻のうち上巻 室町時代  姫君の琴と御曹司の笛のセッション。
女房達は篳篥、笙、琵琶、太鼓などを演奏している。
この時代は和歌と楽器演奏の上手さが非常に重要なモテ要素になっていた。
紅梅の垣根らしきものがあるが、ちょっと唐突な感じがある。

草花蒔絵双六盤 一具 江戸時代  台の横に蒔絵でスミレなどがみえる。白と黒のコマがいい。
実際にどのように遊ぶのかよく知らないが、大河ドラマ「平清盛」で清盛の松山ケンイチくんと後白河の松田翔太くんが双六で真剣勝負をするシーンを見たことがある。

徒然草絵巻 海北友雪 二十巻のうち第九巻 江戸時代  あっさりした絵である。110段の双六の名人についての話。

ところで展示の章ごとにいい配置に細見美術館の遊楽図扇面がある。
ばらで置いて、そこでは何の遊びなのかを伝えるナビゲーターの役目を果たしている。

邸内遊楽図 一帖(十二図) 江戸時代  主役は若い男たちで、彼らが楽しそうに遊ぶ姿を捉える。
カルタをしたり蹴合をしたり…

雀小弓 一具  これは子供用につくられた弓遊びの一式。ちいさいので「雀」なのだ。
他に羽子板などがある。

菊折枝蒔絵十種香箱 一具 江戸時代  これは綺麗なものばかり。幕末に近衛家の福君と言う姫が尾張徳川家に嫁いだときの婚礼道具の一種。可哀想に随分と若く亡くなっている。

第3章 琴棋書画の伝統―君子のたしなみ
高士というのはニートなのか「人生の楽園」なのかはしらないが、大抵騒動を起こしてしまったりする…

琴棋書画図 伝 趙子昂 四幅対 中国・明時代  奇岩のあるベランダて゛くつろぐ人々。
優雅な退屈という感じもある。

三星囲碁図 朱氏 一幅 中国・元時代  碁盤を囲む三聖人。

琴棋書画図屛風 遮莫 六曲一双 室町時代  じいさんたちを世話する侍童たち。まあ色々と…
チラシの下のあれ。まつぼっくりがけっこうたくさんある。
 
面白いものを見た。
三人将棋盤 一面 中国・漢時代以降 紀元前2世紀以降   どうやって遊ぶのか想像もつかない。

遊女図巻 宮川長春 一巻 江戸時代  ずらーっ いろんな様子を描く。双六をするのは店に来た色子かな。

続く。


三原順カラー原画展 札幌からようこそ ―「花とゆめ」表紙絵など

カラー原画の美も堪能したが、カラー原画と雑誌表紙絵になった時の違いなどを見ていきたい。
また、掲載号についての思い出話も挙げる。

まずは前日既に挙げていたロナルドとその愛娘。
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上東側にオレンジと白のチックが入り、雰囲気が変わる。

この号には山岸凉子「スピンクス」が載っている。
単行本が出た時に購入したが、話を本当に理解したのは掲載号を見てから数年後だった。
「アホ先…」は単行本化されなかったが、面白い作品でたまに脳内再読している。


こちらの原画も既に挙げている。
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縦書きの「ガラスの仮面」「スケバン刑事」「いただきま~す」と「チリリンふたりのり」は覚えているが後の記憶がない。
巴里夫さん、活躍されていた頃か。


こちらも。
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ああ「ピグマリオ」が始まったか。「パンと懐剣」「ぴとぴとぴっとん」が懐かしい。


この次の号からわたしは購入し始めた。「そして門の鍵」後編が載っている号である。
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もう一号早く買い始めていればこの表紙絵を見ていたのだなあ。

既に「結婚の条件」が始まっているのか。
次号での「ガラスの仮面」はマヤちゃんが「わたしは美登里さんになれない」と「たけくらべ」が難しいと泣くシーンから始まっていた。

わたしが最初に読んだ「花とゆめ」は1975年20号で、竹宮恵子「夏への扉」完結編と水野英子「ローヌジュレエの庭」後編が掲載されていた。「はみだしっ子」は19号に「だから旗ふるの」があるが、20号はなし。
これはオジが買ってくれたのだ。



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小さく四人がいる。

「瞳、ひらいて」と「エルベの王冠」があるか。「エルベの王冠」が未完なのは実に惜しい。
今思えば「瞳、ひらいて」はOfficeYouあたりで読みたい作品だったように思う。


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車輪に花の表現がミュシャ風でもある。
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「若さま」はいま読み返しても笑える作品で面白かった。
「なに、ほんの十億じゃがの」…いかにも魔夜さんらしいギャグもふんだんで。
「バカな女の恋物語」も面白かった。「ヤキソバ」を「ヤキンバ」と誤読した女子高生の破壊的な行動力が忘れられない。
作者、山本まゆりさんだったのか。びっくりした。わたしはこの人の同人誌の方をかなり所蔵している。


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珍しく和ものが一つ。オバケ提灯が可愛い。


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わたなべまさこ「百塔」がある。わたなべさんの原画展の際、「百塔」がどんなに待ち遠しかったかを話したかったが、「金瓶梅」の話になってしまい、しかしよろこんでいただけ、サインだけてなく色々かいていただいたことも宝の想い出だ。


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雑誌表紙とその原画はここまで。

次にほかのカラー原画をみる。

先般の「ロングアゴー」にまとめるべきだったが、こちらへ。
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ロナルドの眼がとても綺麗。

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ルーとソロモン
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実はいまだにこの作品とは無縁なままである。
わたしは犬や猫がちょっとでも憐れなのは読めないのだ。

壁面に飾られた家族写真、その表現の良さを堪能する。
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サイズは大きくないのにとても濃やかに描かれている。


画風の変化がはっきりしてきた。

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この当時、こうした表情は三原順、森脇真朱味のキャラがみせていたが、非常に魅力的だった。


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修復されたカラー原画
今回、その経緯やどのように修復されたかを知ることが出来てとてもよかった。

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カラー絵の繊細さを改めて知る。修復の大切さがもっと広まればよいのだが。

場内の展示の様子
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後期にも行きたいと思っている。

三原順カラー原画展 札幌からようこそ ―「はみだしっ子」その3

「はみだしっ子」原画は今回で終わる。

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ロングポスターの原画。
わたしは今もだいじに持っている。
ミリタリールックの四人がそれぞれかっこいい。
制服、軍服のカッコよさと言うものは厭戦主義者であろうと、抗いきれない魅力を見せる。


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原画とポスター

真正面から見るアンジーの顔の美しさ。
わたしの中で美少年の基準はアンジーなのだ。
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ロナルド父娘
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レースが綺麗。
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時計が素敵。
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こうした細部の描きこみの確かさが全体の構成を非常に魅力的なものにする。

「花とゆめ」表紙の様子
こちらは別項にも挙げる。
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原画と印刷物との差異が少ないように思えるものを挙げる。
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動物たちの表現が楽しい。

三原順が参考にした作品
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今回のチラシにも選ばれた作品
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絵の具を変え表現に起伏を持たせる工夫が素晴らしい。
玄関そばの観葉植物
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ざりざりした触感がいい。

グレアムの持つ花束
少しばかりリアリズム。
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背後の連中の所にある花はかわってファンシー
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そして今回のチラシである。
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こちらは展示されていなかったと思うがチラシから。
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チェリッシュギャラリーは当時のわたしは手に入れられなかった…

絵はがき集は四年前に偶然手に入った。
いきなり古書店で普通に出ていて、息をのんだ。
たまにこういう「わたしを待っていた」としか思えない本が手に入る。

いよいよ四人がクレーマー家の人になる。
養母パムの描写がとてもいい。
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その時代の上品な奥さんというリアリティがファッションに現れている。

そして四人の養子たち。
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どう見ても一筋縄でいかない少年たちである。
当時のわたしはかれらと同世代だったが今はパムの感情がわかる。
読んだ当時も思ったが、今は更にパムの善良な性質がよくわかる。

続く。

三原順カラー原画展 札幌からようこそ ―「はみだしっ子」その2

今回もまた「はみだしっ子」。細部を見てゆきたい。

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アンジーの袖口などのレースの繊細さと背後の棚のおおらかな描写の差がいい。

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学芸会なノリが可愛い。
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この絵を見るとあの当時の胸の痛みが蘇る…
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個人的な好みを言えば、アンジーの髪はこの長さが好きだった。
しかし現在は後の長髪アンジーもいいと思っている。

はるか後年、南蘋派の宋紫山『虎図』と、アメリカで生きた野田英夫の描いた少女の絵にこのアンジーの憂いを見出した。
動物絵画の百年 この展覧会の時にそう思った。
参考までに挙げる。
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ヴィジュアルが変わったのをはっきりと目の当たりに。
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四人の個性の違いがはっきりと描き分けられている。
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シマシャツが似合うサーニン
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アンジーの小粋さがでている。
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手前の硝子、よくみると妙な顔がみえる。


黒髪の少年、男性への偏愛が長く続いたのはやはりグレアムからだと改めて思う。
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エーベルバッハ少佐、リヴァイ兵長に至るまで。


お正月。
日本イメージに四人と言うのが珍しくも愛らしい。
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細部を見てゆこう。
お獅子の唐草文様
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アンジーの着物は唐桟かと思う。
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グレアムは地が紗綾形のいいのを着ている。
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元気なサーニンは赤い絣か。
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マックスは紅梅の振袖。それぞれのキャラの違いがきちんと着物にも反映している。


やはり楽しそうな四人をみると幸せな気持ちになる。
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続く

三原順カラー原画展 札幌からようこそ ―「はみだしっ子」その1

今回は「はみだしっ子」のカラーものを集めた。
40年以上前の作品であっても素晴らしい色合いを見せるものが集まっていて驚いた。
修復した作品についてはまた別項に。

短編集の表紙絵のための絵
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わたしはこの絵を長いこと勘違いしていた。
船内で、みんなは窓から海の様子を見ているものだとずっと思っていた。
そうではなく、室内の階段の踊り場に飾られた絵を見ているのだ。
船内だと思った理由はいくつかある。
・「だから旗ふるの」で四人は自らを船の乗組員に模していた
・船乗りには鸚鵡がつきもの
潜水艦の絵が迫真に満ちていた
…これくらいの勘違いが生まれる絵だった。

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それこそ高荷義之さんのような絵だと思う。



漆喰塗のこの質感。
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グレアムの服のワンポイントはグレアムペンギンでした。
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こちらは秋のある日。
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靴がいいよねえ。四人の個性に合わせた服もそうだが、靴がまたとてもいい。
蛍光ピンクのシャツ、今では張本、妹尾といったおじさんが楽しそうに着こなしているが、それ以前はアンジー以外の少年、男性は似合う人がいなかった。
ズボンの布質も伝わってくる。(のちにマックスもまたピンクシャツを着て出てくる)


こちらは青のグレアム
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「裏切者」
サーニンがメインキャラであるこの物語はなかなかサスペンスフルだったが、この原画もある意味その傾向を見せる。


クレパスかコンテらしき絵の具で描かれるサーニン
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その背景にはエルバージェがいるが、水彩で彩色されている。木々の表現はアールヌーヴォー風。
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違った素材での表現を同一画面に置くことで、とても印象的になる。


素材の違いを味わわせる作品は他にもある。
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マックスの背後の窓表現
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とてもいい。

どうも北海道を代表する銘菓の一つ・「白い恋人」を思い出させてくれもする。

続く。

三原順カラー原画展 札幌からようこそ ―「ロングアゴー」

四年ぶりに明大米沢記念図書館で三原順原画展が開催されている。
彼女が死んだなんて悪い冗談のようだと思うのは、この鮮やかなカラー作品群を目の当たりにしたからかもしれない。
何十年経とうとも鮮やかな魅力が画面から溢れ出している。

今回は「ロングアゴー」のカラー二色原稿だけを集めた。
少ない色彩だけでよくこれだけ違う色を表現できるものだと改めて驚く。

冒頭
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ロナルドのこの表情
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このページで描かれた煉瓦造りの学校建築の素晴らしさ。
かっきりした格好の良さがある。
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建築絵の素晴らしさも今新たに堪能する。


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世評高いランプの灯りのグラデーション。
プロの方がこれをどうやって彩色したかわからないとお話されたそうだ。


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クローズアップしたが、なるほどすばらしい。


さて物語が動く。
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ここでのガラス窓ごしのジャックがすばらしい。


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上村松園「楊貴妃」の御簾越しの楊貴妃の表現とこのガラス越しのジャックと、どちらもとても素晴らしい表現で、その技能に惹かれる。


ロナルドの母の愛玩犬たち。
毛並みの違いをきちんと描き分けている。
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複数の愛犬を飼うロナルドの母。
この仔犬たちとロナルドの母とジャックの位置づけが物語の終盤に活きる。
怒れるジャックはロナルドの母のわんこメンバーに「なる」ことで一つ成長するのだ。

原画展にはなかったが、チラシにある。
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「ロングアゴー」はわたしにとっても救いの作品だった。
「はみだしっ子」最終回に多大な痛みを受けたわたしはこの作品で立ち直れたのだ。
そして「はみだしっ子」のスピンオフと言う位置づけを超え、二人の少年の成長物語として「ロングアゴー」は純然たる名作なのだ。
この作品はまったく別個の作品として読んでもいいと思っている。
むろん、この作品を踏まえて「はみだしっ子」の大人になった二人を見るのもいい。

わたしはこの「ロングアゴー」とサーニンの存在があればこそ、後年の「Sons」が生まれたのではないか、と思っている。
研究者ではないのであくまでもわたしの想像にすぎないが。
とても好きな作品である。

七夕の翌日の東京日帰りハイカイ録

七夕の翌日、急遽日帰り東京しました。
元々この日は東博「三国志」展の内覧会で、封筒見ながら「さて…」と思案ロッポ。←ちゃうちゃう
しかしそこに三つの案件が湧いてきた。
・「はみだしっ子」カラー原画展の前期
・「摩利と新吾」原画展のラスト
・サントリー美術館「遊びの流儀」前期
これはもうこの日に行くしかないでしょう。
というわけで新幹線でGO!
ほぼぐったり寝てて気づいたら新横浜。

今日は行く先が全てメトロで行けるので、いつものメトロ&都営のチケットではなく、メトロ24hチケットにした。
600円。
これでまず霞が関経由でサントリー美術館へ。あっ霞が関は日比谷線の方が乗り換えが楽。乃木坂でなく六本木を目指せ。
まだ10時台についたのでガレリアからエレベーター使って三階へ。
「遊びの流儀」展、来ましたわ~

個別の感想はまた後日に挙げるけど、この展示はさすがサントリーという感じがあった。
配置が絶妙。
他館の名作をも自家薬籠中の物として見事に飾り付け。←こらこら用法が違うぞ
こういうところが誠に見事。

図録も購入。やたらと重い…
でもチラ見しただけで中身が良いのがわかる。

少し寒いので汁物系の中華をいただき、元気になってから電車に乗る。

日比谷~銀座へ。スパンアートギャラリー。
木原敏江さん「摩利と新吾」はわたしの中高時代の<仲間>でしたわ。
旧制高校でのヴェッテンベルク・バンカランゲンの諸君…
わたしたちは遠い地へ歩いてきたけれど、心は同じ。
木原さんの描く失われしものへの郷愁、これにヤラレてもう随分になる。

「夢の碑」のファイル二枚組購入。私見だが木原さんの絵の美麗さの極致はこの「夢の碑」シリーズだと思うのですよ。

時間も丁度いいタイミングで上野へ。
最近は9出口から地上へ出るのが習いになった。
つまりパンダ橋をゆく。
この方がストレスないのよ。
視界も広がるし。

東博へ。ああ、すごい人人人。
先に上がるのを諦めてティータイムに。
精養軒だけに紅茶はいつもおいしい。
特にレモンティーが素晴らしいのですよ。
クッキーとプチケーキをいただき、紅茶やオレンジジュースを楽しみ、少し空いてから場内へ。

三国志展、まずはイヤホンガイドを借りる。
以前は多少ストレスがあったが、今はそんなこともなく、とてもいい。
わたしのようにあまり耳のよくないものにもよく通るし、うるさくもない。
今回は俳優で歌手の吉川晃司さんがどすの利いた声で語る。
吉川英治「三国志」を引用してのガイド。

んんんんん!!
なんとなんとまさかの全作品撮影可能とな!
びっくりしたわ…



バチバチ写し倒してしまった。
しかし自分の撮った写真は自分の楽しみだけのものだが、図録はそうではなく、誰もが楽しめるもの。
いい図録ですがなー
未知の知見がここに封じ込められている。
新発見も含まれ、一級文物も来日し、川本喜八郎の人形たちもいて、横山光輝のマンガ原画もある。
多くの人が愛した「三国志」がここにあるわけだよなあ…
いやーすごく楽しかった。
展覧会半ば過ぎくらいに(!!)また撮ったのを挙げようと思います。

ほくほくしながら重たい図録二冊抱えて今度は神保町へ。
この界隈へ来るといろいろとノスタルジーに噛まれるのだが、今日はそれを振り捨てて、明大の米沢記念図書館へ。
ああ、ここで曲がるのか。
四年前、三原順原画展を何度も見に来たが、いつも道に迷っていたなあ。

札幌で新発見されたカラー原稿や修復されたカラー原画を展示。これも全点撮影可能。
小学生の時に「はみだしっ子」に出会えたことは自分の人生にとって、非常に有意義なことだと思う。
「新八犬伝」と「はみだしっ子」から自分の実人生が始まったことを誇りに思う。
全点そして細部をパチパチ。いつまでも変わらず君たちを愛しているよ。

タイムアップ。新御茶ノ水から東京へ。
次は7/27に一泊。いろいろ忙しいけれどやっぱりここくると面白いことが多い。
ではまた。

それにしてもほんまにこの一日は充実してるなー

三岸好太郎美術館でみたもの その2

つづき。

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額縁も素敵だ。


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ここからは道化シリーズ
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道化を描く心持ちと言うのがあまりよくわからない。
ピカソもルオーも。


1932年、札幌での作品

北大のポプラ並木
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花ト蝶
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花弁も蝶も見分けがつかないくらいだ。
少しルドンを思わせる感じもある。。


最後はシュールな作品群

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海を渡る蝶の絵を見ると、コナン・ドイルのオジサンの妖精画とかしか描かない人を思い出したわ。

最後に彼の見出したものについて
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もう少し人生があればまた変身するかもしれない。

三岸好太郎美術館でみたもの その1

三岸好太郎はその短い生涯でなんどか画風を変遷させた。
わたしが特に好きなのは若すぎる最晩年の頃のシュールなそれだ。
なにより一番いい。
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飛ぶ蝶 そのタイトルからして好きだ。

1930年には黄服少女がある。
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この少し前1923-1925までの作品

花を持つ少女
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童女花持てる図
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こわいこわい


腕を組む男
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黄八丈の男
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その傍らの黒いのは犬かな。


裸体
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駕籠をもつ少女
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人物画はこんな感じ。

風景も少々

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1926年、上海へ。
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姑娘
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姑娘二人
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ヤーチーではないらしい。


場内風景
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まずはここまで

もったいないハイオク

ハイオクとかくとオイルの上等のやつみたいだが、これはそうではなくて、廃屋のハイオク。
旭川の某所にあった。
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使われていないのが実にもったいない。


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こういうのが東京、大阪、京都などにあれば即なんらかの店などになっていると思う。


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中をのぞいたがよくわからない。


いい装飾もあるのに。
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窓もいい感じなのに。
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こんな素敵な玄関、本当に活用しようよ…
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ため息が出る。
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屋根には何やらソーラー??
いえいえスレートでしょうな。
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大谷石なのかな
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「引」の字が可愛い。
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カバーに大黒様
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リノベーションされて使われ出せば、建物も生き返るのになあ。

三岸好太郎のアトリエデザイン

北海道立三岸好太郎美術館で1934年に描いたアトリエのデザイン画とその模型を見た。
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ラフの段階だが、外観がはっきりしている。

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砂漠のオアシスぽいな。

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よさそう。

内部 螺旋階段がある。
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螺旋階段自体は日本ではどのように受容されたのだろう。
こちらは応接室など

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キモチ的には前途洋洋

素敵な窓だ。この時代の新しさを取り込んでいる。
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鷺宮にあったのか…
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素敵だ。
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残っていればいつか見学したかった。

令和元年七月一日

令和元年七月一日となりました。

元から展覧会の感想を挙げるのがたいへん遅い遊行七恵さんですが、去年あたりから家庭の事情、仕事の関係で本当に挙げるのが時間かかるようになってしまいました。
以前は遅くとも大体なんだかんだと毎日挙げたり、多い時は一日二本挙げたりしたのも今や夢のまた夢。
は は は は は ←楳図かずお的笑い←コワい…

この先も「例によって既に終了した展覧会ではあるが」という前置きで始まる感想を挙げて往けたらよいのですが、なかなかに難しくなりそうです。
とはいえまあこのブログは基本「自分の記憶と記録のため」なので、元々あまり「情報を得るための手段」にはなりにくいものです。
展覧会の告知、宣伝は他の方の優れたブログがあるので、わたしのは落穂ひろいみたいなもんやと思ってくださるのがなにより。

今後は月二回土曜午後に往診の先生方が来られるので、土曜はこれまでの半分以下にしか動けそうになく、遠出にも制限がかかるだろうなあ。
十月まで予定を立てていただけにキャンセルとか色々していかないと困る状態で、無念も無念。

しかし出歩かないとわたしの心がアウトになるのでやっぱり出歩きますが、それをまとめるのにかなり時間がかかりそうです。
というわけでたぶん今後は事前告知キャンペーンの特別鑑賞などはもう不可能でしょうなあ。
…とりあえず来週は某内覧会に向かいますが。

雑な内容になるのも嫌なのでやっぱり書きたいだけ書きたいので、ますます遅くなるかもまたは逆に簡単にまとめるか。
ちょっと迷ってているところです。
簡単なまとめはツイッターでやれるのでそれは楽なんですが、せっかくブログしてるしねえ。

そう、わたしはブログに自分の見たものの感想を挙げているのだ。
改めてそのことを自覚する。
わたしにとってブログとは、やっぱり好きなこと・好きなものについてなんやかんや書くのが楽しくて始めた日記、あれの延長版なのだよ。更に゜展覧会の感想を挙げるのは「あくまでも自分の為の」こと。
「自分の記憶と記録のため」。

なのでこれからもやっぱりそれは変わらない。
変えようがない、

「ブログを続けなさい」と今は亡きとらさんに背を押されたことを忘れず行きたいと思います。


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