FC2ブログ

美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

宮廷のみやび  近衛家1000年の名宝

'96年3月に裏千家の茶道資料館で『陽明文庫の雛』展を見ている。
五摂家の近衛家のお雛様が見れると言うので、喜んだ展覧会である。
そのときお雛様より御所人形に惹かれるものが多かった。
元々御所人形が好きなので、いよいよ目が離せなかったのかもしれない。
茶道資料館の近所には和宮ゆかりの門跡寺院・宝鏡寺があり、春秋には人形展が開催されそこでも多くの雛や御所人形を見ているから、この時は随分楽しかった。
昨秋、いつもお世話になる京都の画廊・思文閣さんから『陽明文庫見学会』のお誘いがあったが、気後れして参加できなかった。東博で見るからいいか、ということで諦めたものの、やはり今更ながらの後悔がある。
今、その東博で『宮廷のみやび 近衛家1000年の名宝 陽明文庫創立70周年記念特別展』が開催されている。


第1章 宮廷貴族の生活
お出迎えくださるのが、
藤原鎌足像 1幅 室町時代
彼一人やなく長男次男の三人図で、これはよく見かける構図。ちゃんと藤の花も描かれている。次男から脈々と藤原家の栄光が始まる。

賢聖像 狩野常信筆 3幅 江戸時代・宝永6年(1709)
太公望、蕭何など。親分を補佐して帝に押し上げた功臣たち。

春日鹿曼荼羅図 1幅 鎌倉時代
これも藤原家には多く伝わる図像。鹿の目が凛々しい。mir483.jpg

不空羂索神呪心経(藤原高子願経) 1巻 平安時代・元慶5年(881)
パッと見た瞬間眼に飛び込む文字は大抵こんなもんです。
「衆人愛敬 身穢・・ 亦得除愈」
なんとなくわたしはいつもお経に対して強迫感があるな。

御堂関白記 寛弘四年下巻 藤原道長筆 1巻(自筆本14巻の内) 平安時代・寛弘4年(1007)
これが国宝で、展覧会のキャッチコピーにもあげられているもの。
「―見たことがありますか? 道長自筆の日記。」
一応ここで「ハイ」と答えよう。Becouse次の作品を見ているから。
紺紙金字法華経(金峯山埋経) 藤原道長筆 1巻 平安時代・長徳4年(998)
これは去年京博で見ましたによって、「ハイ」はうそではないのさ。
だから
国宝 金銅経筒 伴延助作 1口 平安時代・寛弘4年(1007) 奈良・金峯神社蔵
などは「お久しぶりです?」という気分です。

国宝 白氏詩巻 藤原行成筆 1巻 平安時代・寛仁2年(1018)
白居易はわりと好き。というか、わたしは漢詩・唐詩がかなり好きなのだ。
たぶんわが国の百人一首より好きだと思う。

源氏物語 20帖(54帖の内) 鎌倉時代
流通しているのを感じたが、見ているほかのお客さんが「わーコンパクト」と言うのを聞いて、納得。確かにそう思う。読みふけりやすそうな本だった。

書状や消息にはあまり関心を向けなかったので、ここはおわり。


第2章 近世の近衞家
柿本人麻呂像 後水尾天皇賛 聖護院道晃法親王画 1幅 江戸時代
いつものポーズの人麻呂氏。確定されたパターンと言うのは崩せない。
近衞信尹は賛だけでなく画も描いていた。文字で身体のアウトラインを描いている。能筆家の遊び心か。

渡唐天神像 近衞信尹画賛 1幅
こちらもそう。考えれば渡唐天神というのはSFなのだった。

源氏物語和歌色紙貼交屏風 近衞信尹筆 6曲1双 安土桃山?江戸時代
実は今回楽しみにしていたのが信尹の手蹟。寛永の三筆の一人、三藐院(さんみゃくいん)の直筆をこの眼で見たかった。書に興味がないと言いながら、見たいものは見たい。
いつもお世話になる思文閣さんから出版されている研究書に惹かれているが、マジメに学ぶほどの気合はない・・・。
屏風にぺたぺたと良い間合いに貼り付けられているが、金地に白菊と、波の屏風自体も見事なのだ。
三藐院 近衛信尹―残された手紙から三藐院 近衛信尹―残された手紙から
(2006/04)
前田 多美子


和漢色紙帖 近衞信尹筆 1帖
なかなか大きな文字で書かれている。なんと書いてあるかはよくわからない。

和歌六義屏風 近衞信尹筆 6曲1双
「なにわ津に 咲くやこの花・・・」この詩歌が書かれているのは嬉しい。

和歌懐紙「侍 行幸聚楽第」 近衞信尹筆 1幅 天正20年(1592)
春日侍と書かれている。これはまだ信尹が三藐院以前の書で、京都から出奔する直前に書かれたそうだ。
そんなエピソードがなかなか興味深く思える。

詠草(身のうち茶) 後西天皇筆 1幅 江戸時代
このお軸の表装がとても綺麗だった。中廻しは花鳥の刺繍。

3と4とが家熙の世界。
イエヒロ表具と呼ばれるお軸の表装などを集めている。明清初の織文様・刺繍を使った明るく派手で優美な表装。見るからに豪華で楽しくなる。

百寿 近衞家熙筆 1幅 江戸時代
百個の「寿」の字を書く。様々な書体での寿は、時に変容し異なる様相を見せもする。

隷書心経 近衞家熙筆 1幅 江戸時代・元禄15年(1702)
隷書体で般若心経を書いているが、その隷書体を見て、峰倉かずや『最遊記』のロゴが実は隷書体に近いことを初めて知った。

消息 伝後鳥羽天皇筆 1幅 鎌倉時代
この中廻しにいる動物、どう見ても鹿とキリン。麒麟でなくジラフの方のキリン。
後鳥羽院は剛毅な方だという話だが、以前この天皇の掌判を見ている。朱を塗ったもので、とても大きかった。

書状 藤原為家筆 1幅 鎌倉時代
こちらのキリンはビールの方の麒麟に見える。ナゾだ・・・書については私がどうこう言う権利はないな。

和漢朗詠集断簡 伝世尊寺定成筆 1幅 鎌倉時代
こちらは牡丹、
消息 中和門院筆 1幅 安土桃山?江戸時代
こちらは揚羽。
近衞家熙は楽しみながら表装したのだろうな・・・。
わたしは蝶がとても好きなので、図案化されたそれも大好きだ。すぐ欲しくなる。
蝶と猫と山吹色と椿とが、理性も前後も何もなく純粋に欲しくなる種類だ。それらがなんであれ、見ればほしくなる。
mir484-1.jpg

表具裂がたくさん出ていた。
これがもぉ素晴らしいの一言に尽きる!
縫箔、錦、繻珍、模様、という文字を見るだけでときめくのに実物がずらずらずらっと列ぶのを見れば、ただただ動悸息切れ眩暈だ。
大胆な蝶、キリストの訪れたマルタの家の廊下、蝶・梅・蘭・菊・柘榴が等間隔にバシッと並ぶ、花盛りの様子…すばらしい図柄の布の海。
中に一枚面白いものがあった。
「IHS」これはイエズス会のマークだったっけ。Takさんの記事で見ていたが、改めてご対面するとなかなか感慨深いものだと・・・思った。
なにしろこれはキリシタンのマークなのだし、表に出たらどうしたろう、と色々考えたのだった。

宇治拾遺物語絵巻 詞書:近衞家熙筆 絵:狩野尚信筆(巻第一)/狩野探幽筆(巻第二)
これはたいへん面白かった。わたしが見たのは所謂「猿神退治」と「報恩雀」のふたつ。
猿神退治で一番有名なのは「光善寺の早太郎」伝説である。子供の頃から特別好きな伝説。
大抵この伝説のパターンは決まっている。
白羽の羽が立った家の娘は、棺に納められて社に送られる。娘は生きて帰らない。人身御供の根を断つ為にヒトと犬とが立ち向かう。
絵は丁度犬たちがヒヒを噛み殺すシーン。下っ端の猿たちは逃れる。
報恩雀は舌切り雀の別バージョン。ただし舞台は同じく丹後の国。文にもそのように書いてある。
つまりここには舌切るようないじわるばあさんはいなくて、米を与える家族があり、雀はそれを恩に着て、瓜のタネを持ってくる。その瓜からは尽きることなく米が溢れ続ける。家族はニコニコ、飼い犬もにこにこ。いい絵だった。

賀茂祭絵巻 詞書:近衞家熙筆 絵:渡辺始興筆 1巻 江戸時代
春日権現霊験記絵巻 巻第三・四・五・十二・十五 詞書:近衞家熙筆 絵:渡辺始興筆 5巻(20巻の内) 江戸時代・享保20年(1735)
これら二つの絵巻で目を惹いたのは、前者は大きな牛・後者はバンビたち。
渡辺始興の動物たちはなかなか賢そうだった。

最後に伝世の品として、御所人形、太刀、和歌色紙、書状などが随分沢山展示されている。
中でも御所人形や豆道具が私の目的だから、楽しく見て回った。
銀細工の雛道具などは思文閣で見たように思う。
本当に可愛らしくて、その繊細な造りにわくわくする。
かつての技巧は現在にも伝わっているだろうか・・・
mir484-2.jpg

御所人形への愛情は自分でも深い方だと思う。これまでかなり多くの白肉さんたちに逢って来た。どの子もみんな愛らしい。凛々しい子・優しい子・賢そうな子・はにかんだような子。
撫でて撫でて撫で回してみたい。この愛しさが突き抜けて彼らに届けばいいと思う。
かつて茶道資料館で出逢った頭巾かぶりさんもいた。久しぶりに逢えて嬉しい。
猿回し・大名行列・兜を持つ・鶴をだっこする・手毬で遊ぶ・・・
本当に優美で、そして愛らしい。
mir484.jpg


見たことのある名品がほかに二つあった。
池坊専好立花図巻 1巻 江戸時代
四季花鳥図屏風 酒井抱一筆 6曲1双 江戸時代・文化13年(1816)
どちらも見知っている。再会はやはりとても嬉しい。
前者は京都文化博物館で見て、後者は’06ホテルオークラ「アートコレクション」が最近か。
春夏は鷺、秋冬は雉のいる風景。花を数えるのも楽しかった。
img259-1.jpg


本当によい展覧会だった。
こういう展覧会を見ると、やはり学ぶべきものは無限にある、と実感する。
とりあえず気持ちよく楽しめる展覧会だった。ありがとう、陽明文庫。
関連記事
スポンサーサイト



コメント
こんばんは。

>学ぶべきものは無限にある、と実感する。
遊行さんをしてそう言わしめますか!
うーーん、やるな~陽明文庫。

表具展を開催希望します。
2008/01/16(水) 22:09 | URL | Tak #8iCOsRG2[ 編集]
Takさん こんばんは
わたしも表具展開催希望します~。
これまでわりと多くの表装を見てきたと思っていましたが、
なんのなんの世間は広いぜ、でした。
ああ、いいものを見たなー。
やっぱり陽明文庫はすごいです。
2008/01/17(木) 21:23 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
京の雅
コメントとTBありがとうございました。
この展覧会のお昼は婿さんと一杯、夜はTakさんたち悪童と一杯ならず・・・という正月気分の鑑賞だったので、かなり忘れていましたが、詳細な記事を読んで大分思い出しました。
TB代わりに、http://cardiac.exblog.jp/7895644/
2008/01/17(木) 22:06 | URL | とら #8WYMted2[ 編集]
遊行さん今晩は。
この展覧会明日にでも行こうと思っているのですが、混雑具合はいかがでしたか?
最近やけに思うのは妙に混雑している展覧会とがらがらの展覧会の落差が激しいなと。
「北斎」も「小堀遠州」も大混雑と聞きますが、大丸の水野美術館コレクションはがらがらでした。
この落差はなんなのだろうか。
2008/01/17(木) 22:14 | URL | oki #-[ 編集]
とらさん こんばんは
わたし、とらさんの記事を読んで
「古文書や古手蹟に精通されてる~~」と声挙げてました。
お正月にふさわしいめでたい内容の展覧会でしたね。
見終えた後もいい気分です。←シラフなわたしですが♪
2008/01/17(木) 22:17 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
okiさん こんばんは
私が行ったのは金曜の昼イチでしたが、そんなに混みもせずいい具合で鑑賞出来ました。
しかし書には皆さん群がっているので、じっくり眺めるのは難しいかもしれません。
水野コレクションは確かにがらがらでしたが、そのおかげでじっくり楽しめました。
しかしちょっとミュージアムの受付がたよりないので、本店に修行に出すべきだと思いましたね。
2008/01/17(木) 22:23 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
はじめまして、はなと申します。
同じ展覧会を見ている方のブログを探してお邪魔しました。
私も蝶の文様が好きです。
記事の中でも掲載されている蝶の表具のもの、素敵でしたね。

TBおくらせていただいたのですが、うまくとんでいるかわかりませんが…よかったら私のブログにもお越しください!
2008/01/25(金) 13:17 | URL | はな #-[ 編集]
はなさん はじめまして
以前からお名前は拝見いたしておりました。

>私も蝶の文様が好きです
あの可愛いアゲハに倣ってあちこち飛んでいきたいものです。

あいにくTBが来ないようですので、今からそちらへ飛んで行こうと思います。
アゲハの気分で「はな」ことばさんへ・・・
2008/01/25(金) 23:05 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する
最近の記事
月別アーカイブ
カテゴリー
全ての記事を表示する

全ての記事を表示する

フリーエリア