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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

建築の記憶

いつからそうなのかはもうわからないが、わたしは日本にある「近代建築」と言う存在が好きである。
見たいものは見よう、という精神で以って、これまで本当にあちこちハイカイしている。
漂流するように見て回りたいと思うが、やはり情報と状況とを分析して出かける。
今、東京都庭園美術館で「建築の記憶」展が開催されている。
こちらもきちんと予定を立てて出かけた。

近代建築の写真ばかりかと思っていたが、そうではなく写真技術が日本に伝来して以降に撮影された「建築の記憶」写真の展覧会である。
熊本城の写真があった。朽ちている。随分傷んでいる。窓はガタピシ、障子も破れ、石垣には雑草が繁っている。
その前に佇む武士たち。侍の寄り集まる場であり、守るべき城がこんなにも朽ちているのは、その時代のせいなのかもしれない。
熊本城は天下の名城だと言う。
わたしは数年前熊本に遊んだとき、今では公園化している熊本城周辺を歩き、なるほど立派なものだと感心した。城を建てたのは加藤清正で、その後熊本を統治したのは細川侯である。しかしながら街の雰囲気では今も清正公を懐かしむような感覚があった。
いつ改修工事をしたのかは知らないが、ここにある写真では城は朽ちていた。

明治になり三人の傑出した建築家が生まれた。
辰野金吾、妻木頼黄、片山東熊である。
そのうちの片山作品を見る。
現在迎賓館である東宮御所の写真を見る。ここは八月に抽選で選ばれた人々に一般公開されている。わたしは数年前見学できた。片山の設計で現在も活きるものは、ここと東博の表慶館、京博本館、奈良博本館などである。
その東宮御所を百年前に撮影したのは小川一眞。これまで幾度が作品を見てきたが、古写真らしい優雅さの滲む作品が多い。
これは展覧会のチラシにもなった東宮御所大階段。
mir547.jpg


戦災で焼失した宮家などの写真もある。これらを見ると本が欲しくなるのだが、実は後半があまりよくなく、しかも色々ジクジたる想いが湧き出すので、本を買うのは諦めてしまった。

北京の紫禁城の写真などもある。伊東忠太の活躍した時代、その空気が感じ取れるような気がする。わたしは建築家では忠太と渡邊節が最愛なのだった。

そもそも朝香宮邸を舞台にした展覧会なのである。
箱そのものにも「建築の記憶」がある。
美麗な建物の中で建物の写真を見る行為は、入れ子細工の箱を開けてゆくような感覚に似ている。

総じて古写真は素晴らしくわたし好みだった。建築そのものも写真も。
しかし後半になるとちょっと趣味の範疇から外れるので、何を言うにも言葉が足りないのだった。それは興味が持てないからなのだが。

丹下建三の東京カテドラルを見る。渡辺義雄の撮影。これを見た翌日わたしはそのカテドラルの前に立っていた。
素人カメラマン遊行七恵の撮影。IMGP3169.jpg

それから杉本博司による安藤忠雄の光の教会写真。これらは写されている対象よりも、写真そのものが作品として活きているように思う。

終わりのほうの展示は少し急ぎすぎていたような気がする。
どう対応していいのかついにわからなかった。

不意に思い出したが、十年以前、MOTで「未来都市考古学」という展覧会があり、未構築の建造物をCGで作成する試みがあった。
なんとなくそれとこの展覧会はどこかでつながっているような気がした。
3/31まで。・・・古い建造物の、古い写真だけ、もう一度眺めてみたい・・・

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コメント
こんばんは。
最後の部分はもしかしたら「まとめ」に急いだのかもしれませんね。
仰るように、それまでの文脈からするとやや異質な感を受けました。

カテドラルや代々木の体育館を見ると、丹下の凄みを感じるように思います。
また、伊東忠太の調査研究などを見ることが出来たのも面白かったです。
2008/02/25(月) 01:33 | URL | はろるど #GMs.CvUw[ 編集]
はろるどさん こんばんは
やっぱり丹下建三の作品など見ると、「都市造営」ということを考えます。個々の建造物ではなく、それらが集合したときの調和とか、そういうことを思います。

忠太の研究成果は本当に面白いです。ワタリウムから'04年のときの本が出てますが、あれは忠太の脳髄迷路が明るく光っているような内容でした。
2008/02/25(月) 21:53 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
こんばんは。こちらにもお邪魔いたします。
埼玉で雪岱を見た日、こちらにも行きました。
私は鈴木理策さんなんかの写真に大喜びだったのですが、対象の一面を切り取って見せるやり方は見る人を選ぶ感じがしました。
2008/02/26(火) 22:11 | URL | ogawama #-[ 編集]
ogawamaさん こんばんは
>対象の一面を切り取って見せるやり方は見る人を選ぶ感じがしました。
そうなんです、それでわたし弾かれた(笑)。
後半の部分、あれはあれだけで別な展覧会で開催した方がいいのに、と思いました。なんだか勿体無いのです。
ちょっと急ぎ足になっているようでしたし。
難しい問題ですね。
2008/02/26(火) 22:48 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
こんばんは。
建築好きともなると、建物が写真家の写真とともに記憶にあったりするものですか。私は建物は建物、写真は写真でしか見てないことに初めて気がつきました。
全然関係ありませんが、途中で現存するものとそうでないものがごっちゃになってしまいました。代々木の体育館と上野の文化会館は年に何度も見ますが、東京カテドラルがどこにあるかも知りませんでした(えせ建築好きの名を欲しいままにしそうです)。
2008/03/05(水) 23:30 | URL | キリル #ZgLpcwNk[ 編集]
キリルさん こんばんは
>建物が写真家の写真とともに記憶にあったりするものですか
そのとおりです。頭の中で再構築したりもします。

>東京カテドラルがどこにあるかも知りませんでした
地下鉄江戸川橋で降り、目白通りの坂を上りきります。
ほぼ椿山荘のお向かいです。
野間記念館にも近く、永青文庫にも近いですよ。
2008/03/05(水) 23:59 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
こんばんは。

建築好きの遊行さんにとっては
たまらない展覧会だったのではないでしょうか。

伊東忠太のデッサンには驚かされました
2008/03/16(日) 01:05 | URL | Tak #JalddpaA[ 編集]
Takさん こんにちは
楽しかったですよ、ホントに。
夕方から閉館までいたので、我が物顔に見学してました。

忠太はやっぱり凄いです、ハイ。
こういうときに自分が忠太ファンでいてよかったな~と実感です。
ドキドキの展覧会でした。
2008/03/16(日) 12:02 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
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