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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

目黒美術館の「美女の図、美男の図」

目黒区美術館には「もっと展示して」と願いたくなる所蔵作品がたいへん多い。
今回の展覧会も言えば蔵出し。
「美女の図、美男の図 ?藤田嗣治、高野三三男から現代作家まで?」
このタイトルで50枚ほどの洋画や版画を並べている。
むろん漫然と並ぶのではなく、それぞれ副題の下に区分けされている。

・横顔の美
藤田の絵が四枚ある。レオナールではなく嗣治の頃の作。
特によかったのは『赤毛の女』と『君代のプロフィール』。君代はアオリ構図で描かれ、赤毛の女はややモディリアーニ風だった。後者は1917年に描かれているから、「エコール・ド・パリ」そのものを感じたりもした。

・殉教
ここにはキリストがいる。わたしはどうしてかこのタイトルを見て三島由紀夫の作品を思い出していた。『殉教』は見事な短編だった。
高野『嘆き』 あるだけの彩色で描き止められた姿。
藤田『殉教者』 『ジーザス・クライスト・スーパースター』の映画を見たが、そのときのジーザスとこの青年は似ている。その一方で『デスノート』の夜神月にも似ている。
考えようによっては、月は当初は「正義感」そものへの殉教者の部分も持ち合わせていたのだった。月やジーザスを思い起こさせる美青年がそこにいた。

・美少年
青年の次には少年が現れる。
高野『うたたね(ねむる金髪の男の子)』 ちびっ子。少年というより男児という感じ。フランス人の子供のような愛らしさがあった。
藤田『メキシコの少年』 二人の少年がいる。メヒコだけにやや浅黒い。兄と弟くらいに見える。座る兄と立つ弟。この少年たちは藤田を誘惑せず、藤田もそそられはしなかったろう。
高畠達四郎『少年青帽』 キュービズム風
里美勝蔵『少年』 バンダナをする少年、濃い顔。
どうも近代日本洋画にはわたしの好む「美少年」は少ないように感じる。というより、この子達を「美少年」の範疇に分類してよいのか。

・女優
高野による高峰秀子と京マチ子の二枚の肖像画。五十年以前の二人の女優がイキイキと描かれている。デコちゃんの赤いドレスの裾がとても長く、髪と胸元と靴の黒とが全体を引き締めている。この絵の翌年に彼女は『二十四の瞳』の大石先生を演じている。
わたしは高峰秀子は『浮雲』がいちばん好きだ。
京マチ子はバレリーナのような衣装を着て、ソファにもたれている。肉感的だった。OSKの頃のダンスシーンなどを見てみたい気がした。彼女の演じる肉感的で妖艶な女はなかなか好きだった。
『雨月物語』『羅生門』『鍵』・・・
mir559.jpg


・芝居・衣装
アルルカンやピエレットの絵が並ぶ。三枚は高野、一枚は矢橋六郎。どちらかと言えばわたしの嗜好から外れる。

・猫と化した魂
高野『赤と黒のエチュード』 赤地を背景に黒猫と黄色いドレスの女がいる。どの猫も「猫である」時点で魅力的だが、就中、黒猫の魅力は抗し難いものがある・・・
今井俊満『黒猫と少女』 こんな少女のうちから黒猫の魅力に憑りつかれてはいけないのに。ふと岸田今日子の小説『暖炉の前で聞いた話』を思い出した。
コラージュとドローイングで拵えられた作品。
中川紀元『女と猫』 へんなくろねこととらねこがいる。女よりも猫に気合が入った絵。
藤田『猫のいる自画像』 この人が出ないと、この展示は成り立たない。猫は藤田に顔をこすり付けている。藤田の猫たちはいつもいつも誰も彼もひどく魅力的なのだった。

・ミステリアス(誘惑)
田中保『金髪の裸婦』 田中の裸婦は以前から好きだが、ここにも所蔵されていたか。白すぎる肌はハレーションを起こしかけている。髪と同じ金色がのぞく。決して陶器のような感触ではなく、湿り気があるようにも思う、そんな肌だった。
池田永治『平和の女神も案外殺風景なものだこの献物をなんと見る』 タイトルが長いとすぐに『愛のままにわがままに僕はきみだけを・・・』のメロディが流れてくる。
船上、首を盆に載せる女・・・サロメではなく、タイトル同様ちょっとシュールな絵。
高木由利子『イジィーと鏡、ポートベロー通り’88』 二十年前のゼラチン・シルバープリントの写真は、その隣に並ぶ小野佐世男『やみの女』墨とカラーインクで描かれた絵と似た空気がある。どちらも純粋に綺麗で、そしてムードがある。
司修『エデンの園に連なる森』 司は装幀の仕事を多く見ているが、こうしたタブローにも深い魅力がある。

・たくましい体と心
藤田『レスリング』 グレコ・ローマン式のレスリングなのだが、どう見てもゲイにしか見えない。赤茶色い紙に水彩で描かれている、二人の美しい男たち・・・
人前で見ることが苦痛なくらい、ときめいた。じっくりと飽きるまで一人で眺めたい・・・
『裸婦』もあったが、こちらの二人の方が遥かに魅力的だった。

・知的美人
高野『緑衣』 なるほど賢そうでしっかりしている。

・あどけない少女
野田英夫『車中の少女』 不安そうな少女。img969.jpg

去年府中美術館の『動物絵画の百年』で栄紫山の虎と比較したりしていた。
その虎と大きな目がとても似ている。img968-1.jpg

クリックして拡大してください。

・都会的な風景の中で
昭和初期の都会。何故この時代はこんなにもモダンで、そして不安なのだろうか。

・流行の先端に立つ(ファッショナブル)
下川凹天『銀座はうつる』 この絵は以前から知っていた。モボとモガが並んで闊歩する絵で、日本のマンガの歴史の中に紹介されることが多い。宝塚の手塚記念館にもパネルで紹介されている。今回、初めて作者や色んな背景を知った。

なかなか興味深い展覧会だった。
特に久しぶりに高野の作品をたくさん見た。以前同じ目黒の庭園美術館で見ている。
それから頴川美術館には、全く珍しいことに高野の花の絵がある。
たぶんマグノリア。背景の臙脂色と花弁の白にときめいたものだ。
今度ここで再び回顧展でもしてほしい・・・

こちらも山本武夫展同様4/6まで。再訪するなら『レスリング』を一人でじっくり眺めたい・・・
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コメント
美女と美男
こんばんは。
美女としては高野の《緑衣》がマイベストでした。「知的美人」ですか。あと《高峰秀子》ですね。キリストも美男ですか?
でも「美人コンテスト」「美男コンテスト」という気がしないので、多分「美女の図、美男の図」という名前がミスノマーなのかな!と思いました。
http://cardiac.exblog.jp/8042456/
2008/03/03(月) 20:15 | URL | とら #8WYMted2[ 編集]
とらさん こんばんは
あの緑衣とデコちゃんはよかったですね。
緑衣の葉書がないのが残念です。
キリストはイメージ的にイケメンでないと。きゃっ♪(こらこら)
今回美少年が少ないのにちょっと残念でした。
2008/03/03(月) 21:34 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
いい情報ありがとうございます。
興味深い展覧会です。
高野三三男という画家知りませんでした。
ぜひ出かけようと思います。
2008/03/04(火) 06:15 | URL | 一村雨 #-[ 編集]
一村雨さん  こんばんは
これはいい展覧会でしたよ。
高野は明治三十三年生まれで三三男と言う名がついた、と何かで読みました。ちょっとロココ調な絵もあり、見ていて楽しめる肖像画が多いです。ぜひお運びを。
2008/03/04(火) 21:02 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
七恵さん、こんにちは!
こちら、数行で終わってしまってるのですが、一応TBさせていただきます~><
藤田を溺愛してるので、藤田しか目に入らず、それだけで満足してしまったって感じですが…。
レスリングは私もかなり見入りました!
2008/03/05(水) 19:29 | URL | はな #-[ 編集]
はなさん こんばんは
えへっ はなさんもレスリングに見入ってましたか!
あたしはついついfu-jyoshi妄想でニマニマしてました。
キリストは夜神月というより、藤原竜也に似てましたね。
(因みに私はLのファンです)
2008/03/05(水) 20:46 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
はじめまして。

田中保の絵画も展示しているのですね。

この絵画3年前から観たくてしょうがなかったのですよね~。

土曜日いこうかな~。

2008/03/06(木) 22:46 | URL | 鋼の戦士 #SFo5/nok[ 編集]
はじめまして
鋼の戦士さん こんにちは
田中保は埼玉近代美やサトヱ美術館にたくさん収蔵されているようですが、ここにもあるのを知って、わたしも嬉しかったです。
白い肌、柔らかな金の糸のような、そして。
こういう絵を見ると、ますます'20年代に憧れます。
2008/03/09(日) 11:58 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
どうも。

昨日見てきました。
金髪の裸婦は予想以上の出来でありました。

藤田嗣治は、ご存知かと思いますが、
愛知県美術館と笠間日動美術館の常設にもありましたよ。

また自分もブログ(停滞中)をもっておりますので、お暇がありましたらどうぞ~。
2008/03/09(日) 19:00 | URL | 鋼の戦士 #SFo5/nok[ 編集]
鋼の戦士さん こんばんは
おお御覧なさったようで。
きれいですよね、肌にときめきます。

笠間は遠いので予定が立たず、いつかと思うばかりです。魯山人の別荘も移築しているので、ゆっくり見物したいです。
また遊びに行かせてもらいます。
2008/03/09(日) 21:43 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
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