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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

ひろしま美術館所蔵・フランス近代絵画展

えき美術館では月末まで「ひろしま美術館所蔵・フランス近代絵画名作展」を開催中。
ひろしま美術館は素敵なコレクションを持つと評判だったが、ここが公立ではなく広島銀行による記念事業の私立美術館だと、今回初めて知った。開館30年になるそうだ。
広島の復興と平和への祈りと文化振興のためにと建てられたことを知り、少しばかり胸に満ちてくるものがあった。
「愛と安らぎのために」をテーマとして作品を収集しただけに、眺めていて朗らかな気持ちになる作品が多かった。
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ゴッホ ドービニーの庭 これは「晩年の名作」とコピーがあるだけに、確かによい作品だと思う。緑の野が、木々が、建物が、目に優しい。
塗り方にもある種の抑制が効いていて、安堵する。
激しさのないゴッホの絵と言うのは、なんとなく尊いような気もした。
最近仕事に追われ神経がささくれ立っているところへ、この絵を見、なんとなく穏やかな心持ちになった。療養をしているような気分、と言うのが正しいかもしれない。

チラシにはゴッホの下にフジタの三枚続きがある。
フジタ 三王礼拝・十字架降下・受胎告知 '27年の作だからまだ藤田嗣治なのだが、表記はレオナール・フジタである。
キリストの生涯を描く絵画のうち、わたしは東方の三博士をモティーフにした作品が特に好きだ。ここでは牛や馬の姿もあり、彼らとベツレヘムの星を立会いにして、三人の王が聖母子にまみえている。
フジタはこの三枚の背景に金箔を使う。日本画のような技法での作品である。
中の悲嘆絵の描線の美しさ。しかしながら常に思うことがある。フジタの色彩はどうしてか心惹かれることがない。特に色の種が増すほどにその感が強くなる。
抑制された色調と言うより、なにかしら鬱屈を感じてしまうのだった。

コロー 花の輪を持つ野の女 コローは女性像に良いものを感じる。美人画として眺めるわけではないのだが、コローの描く女にはどことなく魅力がある。
彼の死後にアトリエから大量の婦人像が現れたことと関係があるのかもしれない。
女は腕にピンクのカバーをつけている。布の質感がわかるような。
しっかりした首、きちんと対称的な顔の造形。身体をやや傾けていても顔だけは真っ直ぐなのが、女の存在感を強く示している。

レジェ 踊りmir580-1.jpg

普段はあまりレジェに関心がないのだが、この絵には惹かれた。多分左側の女の表情に惹かれたからだ、と思う。「踊り」自体はちょっと何をしているのかよくわからないが、追求するのはやめよう。
シンプルな絵であればあるほど、ちょっとした眉の動きなどに引き寄せられるものなのだった。

ルノワール パリスの審判 ルノワールはこのエピソードを描くのが好きだったのか、どこかで別な作品も見ている。充実した肉体の女たち、輝くばかりの肌。黄金のリンゴを手渡す瞬間の、パリスとアフロディーテの表情。彼女だけが顔の色艶が明るい。
左上のヘルメスはやや重たそうだが、構図を引き締めている。

クールベ 雪の中の鹿の戦いmir584.jpg

この画家は本当に鹿の絵の多い人だ。オス同士の争いを眺めるメス。優良な遺伝子を伝えたいから、メスは冷静に二頭の戦いをみつめている。

ピカソ 酒場の二人の女 「青の時代」の作品にはどれにもせつなさがつきまとう。
明日どころか今日ですらわからないような二人の女。二人でいても一人ずつ。

ゴーギャン ブルターニュの少年の水浴mir585.jpg

とても可愛らしい少年たち・・・♪ 構図的にはセザンヌ先生を思い出す。

マネ バラ色の靴(ベルト・モリゾ) 前身黒ずくめのモリゾが椅子の前に立つ。裾から右足だけを出す。バラ色の靴がのぞく。画家の望んだ構図なのか、モデルが画家と観客とを挑発するために取ったポーズなのか。
バラ色とは言え決して明るくない色合い。モリゾは黒ずくめと言ういつものパターンだが、こうしたところにバラ色の小物を使っている。

ピカソ 子羊をつれたポール、二歳 画家の息子 mir583.jpg

長いタイトルに子供への愛情がにじんでいる。ピカソは40代以上になってから子供をこさえているが、中でも最初の子ポールを描いた作品に名品が多い。
色彩をペンで封じたような描きようが、子供と子羊の柔らかさを強調している。
ポールの頬、ポールの腹、ポールの足、きょとんとしながらポールのそばにいる子羊。

パスキン 緑衣の女 いつものように曖昧なぼかされた色調なので、女が緑色の衣装を身につけている、と言われれば「そうなのか」としか言えない。セピア色というより濁る川の色。そこにイブニングともチュチュともとれる服を着た女がソファに座る。
表情からは何を考えているか読み取れない。どこも見ていない女。

キスリング ルーマニアの女mir580-2.jpg

エコール・ド・パリやフォーヴの画家たちは、民族衣装を着た若い女を描くのがちょっとしたブームになっていたようで、幾枚もそうした女たちを見てきた。ここにいるのは黒髪の若い女で、ややメランコリックな眼差しをどこかへ向けている。キスリングの好む表情。ルーマニアのブラウスは刺繍が丁寧で、その華やかさが却って白い布地の清楚さを引き立てている。綺麗な口紅。白目の少ない大きな目。
やや丸顔の中にそれらが収められている。その彼女の影が薄いことが、ふと気にかかるのだった。

ヴュイヤール アトリエの裸婦 ヴュイヤールの室内風景は、多くの描きこみがあるが、ここではそんなに多くは描かれていない。黒髪の裸婦が立つ。肌はやや濃い色をしている。
なにがどうと言うこともないが、裸婦もまた室内に備え付けられた家具のようにも見えた。

フジタ 裸婦と猫mir582.jpg

藤田の、こうした作品ならいくらでも見たいものだと思う。グラン・ブランもさることながら、やっぱり猫だ。このキジネコはやや横広がりの顔で、目つきが鋭い。シッポの触感がリアルに伝わる。一方、裸婦の乳輪の薄紅色と、肉の陰が魅力的だった。
マティス 赤い室内の緑いの女 以前マティスの制作のプロセスを集めた展覧会を見た。
単純化された線描とシンプルな色調、その<完成>に至るまでのプロセスに驚いた。
一つのモティーフの変遷は30枚を越えていたのだ。
だからこの絵もサクサク描いたものではなく、選び抜かれた<極めつけの線・決定された色彩>で制作されたものに違いない。昔は簡略化しすぎだと思ったが、今はそうは思わない。絵画の究極と言うことを時々考える。

ル・シダネル 離れ屋mir580.jpg

意外なくらい大きな絵で、これ一枚が壁を占拠していた。
宵闇の深い頃、家に灯りがともる。庭の木花は満開で、優しい香に満ちている。
彼の作品については、てつりう美術随想録「ル・シダネルのやさしき不在」という見事な随想に深く書かれている。

なかなか行くことの出来ない場所の作品をこうして楽しむことが出来、嬉しい気持ちで満たされている。展覧会は月末まで。いつかひろしま美術館に行きたいと思っている。

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コメント
遊行七恵さん、こんにちは。
よくしっている画家達ばかりですけど、初めて観る作品ばかりのようです。
クールベもキスリングもピカソもレジェもそしてゴッホも私的には好ましく感じられる作品ばかりです。
特にゴッホの
>激しさのないゴッホの絵と言うのは、なんとなく尊いような
そういうことか、そうだよな~と、いたく頷かされましたよ^^
2008/03/21(金) 00:20 | URL | sekisindho #7JPwz3bk[ 編集]
sekisindhoさん こんばんは
ご同意いただけましてどーもどーもです。
この美術館の所蔵品は本当に安心して見ていられるものが多かったです。豊かな気持ちになるのは疑いありません。
なかなか遠くて行けない場所ですが、こうして出開帳に来てくださるのがありがたいです。
2008/03/21(金) 22:51 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
私、なぜかしらないのですが藤田を溺愛していて
なんでもよくみえちゃうんです。
なんでも大好きです。
晩年の色が増えてごちゃごちゃした絵とか、子供の絵も大好きです。
こういう贔屓の溺愛の作家もいてもいいかな、ということにしてます☆
2008/03/21(金) 23:31 | URL | はな #-[ 編集]
はなさん こんばんは
はなさんの藤田に対して、わたしは鏑木清方ですね。
清方の絵ならなんでも好きになって、失敗作なんかありえないと。
てか、失敗作でさえ愛しくて。
藤田の子供の絵はみんな口を硬く噤んでいるのがとても関心を引きます。去年の大回顧展はよかったですね♪
2008/03/22(土) 00:03 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
ひろしま美術館には過去何度か行きました。
決して大きな美術館ではありませんし、建物もあまり新しくはないのですが、心安らぐ雰囲気の場所です。

所蔵作品で私が一番好きなのはルドン『ペガサス』です。
真っ青な空と崖の上のまさに輝くような白いペガサスのコントラストの美しさが非常に印象に残っています。
2008/03/22(土) 21:36 | URL | 千露 #GyvMcuCk[ 編集]
千露さん こんばんは
やはり行かれてましたか。
>一番好きなのはルドン『ペガサス』です
美術館のチラシに出ていました。素敵な色調ですよね。
去年東京では「ルドンの黒」展がありましたが、わたしはルドンはパステルを使った美しい色調の作品の方が好きです。
2008/03/22(土) 23:07 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
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