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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

写真とは何か 20世紀の巨匠たち

既に閉幕しているが、梅田の大丸ミュージアムで「写真とは何か。20世紀の巨匠たち 美をみつめる眼 社会をみつめる眼」展を見た。
マン・レイから始まり、アンディ・ウォーホルをも含めて、キャパ、ニュートン、メイプルソープ、ユージン・スミスまでの14人の作品を展示していた。
mir586.jpg

チラシの幼児二人を捉えた作品はユージン・スミス『楽園への歩み、1946年』
幼い兄妹ふたりが暗い木陰から日の当る場所へ歩き出している。タイトルのつけ方が巧い。そして幼子二人の姿にそのタイトルをつけたこと自体の意味をも、考えさせられる。
原初の男女が兄妹だったと言う、各地に残る創世神話を思い起こす。
楽園から放遂される以前、どのようにして楽園に迎えられたのか。
そんなことを延々と考えていた。

少し前の話だが、どういうわけか駒場の日本民藝館でアーヴィング・ペンの写真展が開催されたことがある。「ダオメー」アフリカのダオメーの民俗を撮影した数々。’04,9。
その頃わたしはダオメーにある種のときめきを懐いていたので、初めて民藝館に出向いた。
何にときめいていたか。
ブルース・チャトウィン『ウィダの提督』を原作としたヴェルナー・ヘルツォーク監督作品『コブラ・ヴェルデ』がそのダオメーを舞台にしていた。
偏愛する役者クラウス・キンスキーが<貧者の中の貧者>から身を起こし、提督として栄光と破滅とを味わう物語。暗黒大陸にただ一人の金髪の白人男の生と死。
彼の子供は600人を超え、彼の愛人は千人に達するが、彼はこのアフリカの中で深度の高い孤独に苛まれる。彼の死にも無関心に歌い踊るアフリカの女たち、子供たち。
彼女たちの肉体に刻まれた不思議な刻印。
それを忘れられずにいたので、ペンの作品にゾクゾクした。
今回、そのうちの同種の写真を見た。彼女たちの膚を刺す刻印は刺青ではなく、瘢痕なのである。ScorDecorated。当時の私はそのことをこう書いていた。
「刺青にも増して酷愛の軌跡」と。それから三年半経ったが、意識は変わらなかった。

わたしの展覧会めぐりの始まりは大丸百貨店からの誘いだった。
20年もこうして楽しませてもらっている。
心斎橋では主に近代日本画・近代日本洋画の楽しみを教わり、梅田では写真などを見せてもらってきた。
だからメイプルソープもヘルムート・ニュートンもどちらも梅田の大丸ミュージアムで知ったのだった。
どちらも深い官能性こそが特徴だが、その視線は方角が異なる。
アメリカよりもコンチネンツの選ぶ快楽の方が、深く重いように思う。
見る側は沈黙しながら眼だけを動かして歩く。
挑発するのはモデルではなく、カメラマンの意識そのものなのだ。その眼に対抗、あるいは従順になりながら作品を眺める。観賞ではなく秘かに“It commits by an eye”。

マン・レイの作品もまた大丸で見たが、それより先にどうしてかなんばシティで見ている。
‘90年6月、その一週間後には中山岩太「上海から来た女」の写真を見ている。
マン・レイの作品よりも、その作品の生まれた背景、その時代に憧れがある。
『アングルのヴァイオリン』 女の背に描かれた<何か>に惹きつけられるのは、この作品と、文字で描かれたあるものだけだ。
「女の背中は燦然とした」この一文と、この写真とは全く違う地平に立っている。
しかしながらこの女の背中もまた、永遠に輝き続けているのだった。

わたしは毎日新聞の読者だから、毎日新聞の特派員とキャパとの関係を連載読み物として楽しんでいた。数年前、彼の最後の作品、文字通り地雷を踏む直前の写真がプリントされたのを見た。
そして彼が属したマグナム・フォト・シネマの作品群も見た。
報道写真というものの本質を考える。考えながらも、そのときにはロバート・キャパの風貌が頭の中に広がっている。キャパは実にいい男だった。
彼の肖像写真はチェ・ゲバラのそれと同様、わたしの中では「いい男」の双璧なのだった。
それにしてもキャパ『ちょっとピンボケ』は本当に素敵だ。

他にも見ているのだが、書きようのない状況に入り込んでいる。
わたしは自分の望むものしか見ようとしないから。
写真展を見るといつも緘黙する。そして声にしない言葉が延々とあふれ出す。
感情も浮遊する。
それをどう宥めようか考えることもないまま、会場を後にした。
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コメント
七恵さん、こんにちは!
私の中でもキャパは相当いい男です。
かっこいいですよね~
あんな殿方、どこかに落ちてないかなあ…
2008/03/21(金) 23:29 | URL | はな #-[ 編集]
はなさん こんばんは
>あんな殿方、どこかに落ちてないかなあ…

落ちてたらワタシが先に拾うよ♪
きゃ~~キャパキャパッッ
・・・ああ、いませんかねぇ。
あと佐藤浩市とか。
2008/03/21(金) 23:59 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
あああああ~、行けなくて残念です!!!
私の好きな写真家ばかりが出展されてたのですね。。。
メイプルソープの写真は、16年ほど前に個展をしていたのを、時間の都合で閉館間際にササッと見た程度だったのですが、その短時間ですごく惹かれたことを覚えています。
彼の撮るパティ・スミスの姿は本当に美しいと思います。
もちろん花も好きですが・・・
マン・レイは、写真のほかに、絵画とかオブジェとか様々な作品を残していて興味深いアーティストですよね。
2008/03/22(土) 16:26 | URL | tanuki #s.Y3apRk[ 編集]
tanukiさん こんばんは
おおっ残念なり~(おじゃる丸かコロスケか、わたしは)
メイプルソープの写真を見ると、いつも白いエナメルを思い起こします。そんなイメージがあるんです、人物も花も。

マン・レイはコクトーやキスリングらエコール・ド・パリの時代の人ですから、そうしたところにも憧れがあります。
そうそうアンセル・アダムスは京近美にたくさんありますね。
2008/03/22(土) 21:49 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
大丸は関西か
この写真展ですね、もうすぐ東京に巡回するのは。
大丸さんは大阪は心斎橋と梅田、京都、神戸とあってフリーパス持たれている方にとっては便利でしょう。
もっとも京都は今年度開催はないみたいですがー。
キャパのカラー写真展は東京では日本橋三越でありましたがご覧になられましたか。
カラーになると同じ人物の写真でも印象が全く違うものと感じたのを覚えています。
2008/03/22(土) 22:00 | URL | oki #-[ 編集]
okiさん こんばんは
ぜひ大丸でご覧ください。
>大阪は心斎橋と梅田、京都、神戸とあって
みんなそれぞれ味わいが違い、楽しいです。
あと関西では高島屋がなんば・京都でそれぞれいい展覧会します。
キャパのカラーは見てません。
関西にきたら見たいものです。
2008/03/22(土) 23:10 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
東京の大丸で
こんばんは。先日東京の大丸ミュージアムで見てきました。写真史疎いのですが、大満足。早速アンセル・アダムスの写真集を買おうと思ったのですが、ショップは小さくてごく1部の写真家のものしか売っていませんでした。
2008/04/10(木) 21:25 | URL | ogawama #-[ 編集]
ogawamaさん こんばんは
アンセル・アダムスは京都近代美術館がコレクション自慢するくらい、いいのをたくさん蔵してます。
山岳風景がきれいですよね。
それで、東京近代美術館のショップで京都のを取り寄せれるかもしれませんよ。
わたしはやっぱりゼラチン・シルバープリント好きです。
2008/04/10(木) 22:14 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
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