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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

英国ドールハウス展

大丸心斎橋で開催中の英国ドールハウス展にでかけた。
ドールハウス好きな後輩Rと一緒。
入るとすぐに広がる夢の国。
たどり着く前、二人でこんな話をした。
「入り口にはお客さんがあふれてるのに、出口には誰もいてはらへんねん」
「それはどこかに消える…?てことですか」
「さっきまで無人やったハウスの中に新しいお人形が配置されてるねん」
「えっじゃわたしたちがお人形に」
「それでしばらくしたら、17世紀から19世紀末くらいのコスプレしはったような外人の人らが出てきはるねん」
「わ?それって入れ替わり・・・」
「会場の中ではぐれたら、Rちゃん人形になったと思うことにするわ」
・・・ファンタジーを装ったホラーである。
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メイプルストリートというお店の持つ17世紀からのコレクションが並ぶ。
実在の建物を再現したもの・その当時の風俗を忠実に再現したものなどがある。
チューダースタイル、ジョージアンスタイル、ヴィクトリアンスタイル、エドワーディアンスタイル・・・

劇場がある。筒型の劇場。裏から表へ回ると、内部が公開されている。
ドームには素晴らしい絵が描かれ、座席には赤いベルベットが張られている。
巨大シャンデリア!
文字だけでは追いつけない現実の楽しさがある。
ああ、本当にすばらしい・・・。

ハーフティンバーの邸宅がある。全ての部屋に繊細でリアルなしつらえが施されている。
素敵だ、本当に素敵。
わたしは階段が特に好きなので、嬉しい。塔屋にいたる螺旋階段。
ベッドも女部屋と客室とではインテリアが変わる。壁紙もそれぞれ違う。飾られた絵も素敵。地下室には糸巻き機がある。このツムで指を刺せば、百年の眠りが待っているだろう。

裏庭が素晴らしい邸宅にも向かう。私塾を開くか、少女たちが一室でアルファベットの綴りを学ぶ。猫とネズミの対峙。凝った暖炉、マーブル柄に塗られた柱は大理石を模している。天井の飾り。
わたしは日本の近代建築が好きで、これまで百を超える見学を続けているが、天井と暖炉とで、その洋館の価値判断が出来ることを学んでいる。
(わたしがそれらを好きになったのは、小さい頃愛したドールハウスの絵本や、リカちゃん人形のハウスから来ているに違いない。)
この建物は本当に素晴らしいものだった。

いちばん物凄いのは、再現されたある建物。
解説によると、
幅5.1m、高さ1.8mの“Wimpole Hall/ウィンポール・ホール”の大きな作品(1643年に最初に建てられ、何人かの貴族の手に渡り、最後の所有者からナショナルトラストが遺贈され保存している。)
ラドヤード・キプリング(ジャングル・ブックの作者)の娘さんから寄贈されたもの。
いくつか開かずの間があるのは、調査中(わぁ!)のためとか。
窓からのぞくと、ダンスホールがとても素敵で、見ていてため息ばかり。
こんな巨大なドールハウス、初めて見た。

それから各時代の台所などの再現がとても楽しい。これは見学に適していると言うか、保管にいいと言うか、巨大ブラウン管だと思えばいい。
大きな四角い箱の表面にガラスがはめ込まれ、その縁取りは素敵な額縁。窓からイギリスの建物が見える。煉瓦を貼り付けた建物もあれば、お菓子屋さんもある。
さすがイギリスと言うべきは、パイ屋さんの台所の血・・・。
『スゥイニー・トッド』『フロム・ヘル』の世界・・・世紀末ロンドンの猟奇的状況・・・。
どちらもジョニー・デップの映画で、陰惨な美をそこに再現していた。

明るく楽しげなパブもあった。パブにはお客の他に犬もいれば猫もいて、片隅にはねずみまでいた。

場内では休むことなく音楽が流れ続けている。
わたしの好きな音楽ばかり。
シシリエンヌ、亡き王女のためのパヴァーヌ、精霊の踊り、ロミオとジュリエット、沈める寺、新世界・・・・・・

テーマごとの部屋が続く。
音楽のある風景、原始人の居場所、教会。
『薔薇の名前』の舞台を思い出したり、ゴシック・ホラーを思ったり。
この辺りは正直あまり楽しくは感じなかった。ドールハウスと言うよりジオラマの世界。
しかしいちばん凄いのは、アメリカの死刑室の再現。ガス室。無人のその<ジオラマ>に掃除婦がいるのも怖い、怖すぎる。ところがコレクターの意図はわたしたちのその逆に「無人だからこそ、この人形を置くことで少しでもユーモアを」とのことだった。
文化の違いが激しい対立を生み出すことをちょっと実感もした。

小物一つ一つにも神経が行き届いている。イギリスではハウス・大道具・小道具・人形、と作り手は分別されていて、決して領土侵犯はしないそうだ。総合ではなく分業だということかもしれない。
気に入ったのは小道具の一つ、南宋の青磁壷。すばらしい陽刻の砧青磁には驚いた。
これまで実物の名品を色々見てきたが、もしかするとそれらと同レベルかも・・・

最後のコーナーは今回の監修もされたドールハウス作家・磯貝吉紀氏の作品が並ぶ。
これらは洋風の内装なのだが、そこはかとなく和の匂いも感じ取れ、和やかな気持ちになった。台所と寝間とが一続きというのは、現実にはつらいものを感じもするが、こうして眺めると面白い。何がつらいかといえば、実は修験道の某山の即身成仏を安置する場が、丁度こんな感じなので、それを思い出すのだ。
マッキントッシュの関わった図書館も再現されていたが、それも素敵だった。
巨大な図書室もある。
わたしは時々巨大な図書室の中に住みたいと思うことがある。
その部屋に自分の好きな本とコレクションとパソコンとを置いていれば、ヒキコモリになる可能性がある・・・
「そりゃやっぱりマズイですよ」Rは心配してくれ、こう言った。
「片付けられない女なんですから、そんなところにいれば次々本が増殖して、足の踏み場もなくなりますよ、今も机の上めちゃくちゃなんですから」
ほっといてくれ。

・・・とりあえず冒頭に書いたような事態にも遭わず、無事にヒトのまま会場を出ると、そこはグッズ販売コーナー。Rは自分で作るし、わたしはオマケやフィギュアを転用するヒトだから買わずに眺めるばかりだが、本当に楽しい。
ふと見ると「かに道楽」の店舗が売られていた。
ご年配の母娘が「かわいい?」と喜んでいるところへ声をかけた。
「惜しむらくはあれですね、看板の蟹が動いたら完璧でしたね?」
みんなで「ホンマやわーっ」と機嫌よく笑った。
本当に素敵な世界だった。
大丸心斎橋で4/6まで。
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