FC2ブログ

美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

片岡愛之助の代々

池田文庫は阪急・東宝・宝塚歌劇・歌舞伎などの資料を多く収蔵する、図書館機能を持つ資料館である。
「西の池田、東の演博」と呼ばれるように、演劇関係全般での所蔵品の豊かさと資料の深度は、池田文庫と早稲田の演劇博物館以上のところはない。
その池田文庫の所蔵品のうち、春秋にテーマを決めて展示がある。以前は四半期ごとの展覧会だったが、最近は春秋。
今回のテーマは『片岡愛之助の代々』・・・歌舞伎役者・片岡愛之助の歴代資料の展示である。
mir643.jpg

当代の愛之助丈、つまりラブリンの講演会もあるが、こちらは既に即日満員御礼。
行ける人がうらやましい。
さて展示室に行くと、いきなりVTRで愛しのラブリン愛之助丈のご挨拶が始まる。
この展示のためのご挨拶。いいなぁ。見るだけで嬉しい。
そのご挨拶に送られて、会場を廻る。

初代からの番付、ビラ、役者評判記のほか、錦絵もある。
これらを見るのが元々好きなので、楽しい。

初代は寛政から文化年間まで活躍。
『けいせい高砂松』という芝居のビラを見ると、満月姫と娘お此の二役。そそられるシーンは、生首を持つ男が岩上に立ちながら、刃を歯で噛むところへ、ガンドウの光が当てられる・・・
この芝居がどんな筋かはわからぬが、こうしたワンシーンだけで、わたしなどはうずうずする。

二代目は化政期のひとで、中の芝居と角の芝居と京都の北側芝居、名古屋などでも活躍したようだ。演目の外題を見ると今日にも人気のものが多い。大体わたしは化政期の頽廃が好きなので、それだけでわくわくする。役者評判記ではこの二代目さんは「雪を花と見まごふ君の艶色はきれいをきれいにした水垂」と書かれている。
だからか、菅原ではかりや姫、伊賀越えでは傾城若紫、一の谷では敦盛と小次郎と菊の前という可憐な役を演じている。

三世は天保から文久年間が活躍期か、江戸の森田座にも出ている。
錦絵では法界坊のおくみの一枚絵が可愛い。二十四孝の濡衣、加賀見山では尾上なども演じているようで、役柄だけ書けば、まるで七世梅幸さんのような役どころが多い。
南北の三国一夜の書き換え狂言にも出ているが、当代ラブリンは三国一夜では、スケールの大きい敵役を演じていた。(閻魔堂で染五郎を焼き殺していた)
芳滝の錦絵にも多く描かれ、亀山の仇討ちの書き換え・敵討優曇華亀山の錦絵はことに綺麗だと思った。
わたしは幕末の芝居錦絵が特に好きなので、ホクホクしている。また時代が時代なので、頽廃の極みに来ていて、濡れ事や殺し場なども実に扇情的で、よかったようだ。やっぱり芝居はそうしたところにこそ、華があるものだ。

数えられはしないが、明治の愛之助さんはいい娘役だったらしく、番付や絵看板を見てもなかなかそそられる役者だった。
濡衣娘清玄の辻番付(ビラ)などは、清玄ものだけに凄まじい執心があるが、オバケは出るし、帯は解かれかかっているは、笛吹く美少年はいるは、とゾクゾクするようなシーンがあったらしい。
それで、チラシ真ん中の丸囲みのmir643-1.jpg荒れ寺のオバケたち、これは絵看板で、話は仇討ちもの、市川斎入の出た芝居だという。
江戸東京の絵看板は鳥居派だが、こちらは違う。東西の違いを楽しむのは、番付や絵看板がいいかもしれない。

四代目は大正10年の見立て番付に写真も載っているが、「麗朗」と書かれ、なかなか綺麗な人だと思った。しかしわたしは同時代の十五世市村羽左衛門のファンなので、ついついそちらにニッコリしてしまった。
とは言え、弥作の鎌腹(まったく珍しい芝居で、今では全く演じられない)のレコードが残っているらしく、ヘッドフォンで少し聞いてみた。・・・聴いて、泣きたくなった。芝居がどう、とかそんなことではなくに、昔のそれこそ本当に大昔の大阪弁での会話が流れているのだ。祖母以前の大阪弁・・・柔らかくてきれいで、そのくせ常にどこか諧謔の混じったような。
もう今ではこんな言葉遣いも言い回しも聞くことは、ない。

五代目は吉右衛門一座にもいたようだが、丁度歌舞伎が一番死んでいた頃の役者さんなので、かなりお気の毒な気がした。
この20年ほどでよくもこんなに隆盛した、と呆れるばかりだ。

さて当代。襲名披露は平成四年で、そのときの配り物の扇子などがある。ポスターなどを見ても美少年である。
わたしが最初に見たのはいつだったか。秀太郎さんがエエ子を養子に貰わはった、と聞いたのがいつか・・・最初の頃の印象に残っているのは国立での因果小僧の娘役だった。
ここにあるのは随分昔のものからつい最近までのポスター類。素敵だなあ、どれを見ても・・・。
初舞台の写真を見ると、当時まだお元気だった辰之助さんの弁慶に太刀持ちのちびこで出ている。
大人気の役者になっても、愛之助さんはいつも謙虚でとてもさわやかだ。どのお役でも懸命に演じ、感動を与えてくれる。
二枚目でも悪役でも、とても深い味わいがある。ますますこれからも活躍なさることを信じて、これからも応援したいと思う。

関連記事
スポンサーサイト



コメント
コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する
最近の記事
月別アーカイブ
カテゴリー
全ての記事を表示する

全ての記事を表示する

フリーエリア