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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

ガレとジャポニズム

サントリーミュージアムに『ガレとジャポニズム』の巡回が始まったから、でかけた。
東京のサントリー美術館の評判がよかったので、わくわくしている。
今回嬉しいことに、わたしの加入するASA友の会のおかげで、無料ご招待をうけているので、展示換え全てを見ようと思えば機嫌よく見れるわけだった。
尤も展示換えの対象は北斎や光悦の絵画系で、工芸品の展示換えは少ない。
開幕三日目だが、既に繁盛している。
mir694.jpg

「綺麗なものを見た」という感想が頭に浮かぶ。
ガレの作品を見るのは『美の壷』展以来。チラシはトンボの杯。これは遺作の一つだと言うが、この作品は京都での『美の壷』にも出ていた。大阪では記憶がない。
今回の展覧会にはそのモティーフが随所に見える。
ガレはトンボが好きだったそうだ。
ドラゴンフライ。SF作家アーシュラ=ル・グィンもそうだ。
西洋ではトンボはあまり愛されなかったそうだが、日本人は大昔からトンボを秋津と呼び蜻蛉という美しい文字を充てた。
トンボの東西での捉え方に関しては、lapisさんの美しい記事がある。

ガレの展覧会と言うと、大阪では北澤美術館の名品展がしばしば開催されている。
大丸心斎橋のアールデコの建物の中で拡がるガラスの美の競演に、多くの観客が囚われる。
そこでの印象は多くの場合、花と蛙だったろう。
今回はジャポニズムというコンセプトの下、ガレが影響を受けた北斎や広重らの浮世絵も展示されている。

花器『鯉』 mir695-1.jpg

北斎の魚藍観音からインスパイアされた画像。
こうして工芸品になるとキュートな感じがある。
そして本歌の北斎のその絵を見ると、妙な違和感があった。
北斎の絵というより山口晃氏の絵に見えて仕方ないのだった。

それはこの作品に限ったことではなかった。
鉢『カエル』などもまた北斎より本歌取りしているのだが、そのガレ作品を見てから北斎を見ると、北斎作品ではなく山口氏のプロデュースしたものとか、そんな感じにしか見えないのだった。
この錯誤はどうしたことか。
わたし一人の錯誤なのかそうでないのか、比較できない。なにやら三重の面白さをそこに見出すことになった。

ガレより一世代前の作家の陶芸品がある。
ルソー 脚付鉢『虫、花』 雀もいるが、どことなく並河靖之の有線七宝を思い出した。
同じ作家で花器『富士山』 これが面白い。表には三保の松原からの富士山、裏には満月が昇っている。これはこのまま小さくなれば鼻煙壷になりそうな風情があった。

以前から好きな作品があった。
ガレはタイトルを『日本の怪物の頭』としたが、その本歌は『獅子頭』である。怪獣と霊獣の違いが面白い。透明ガラスの怪獣と、トボケた茶色い備前焼の火入れ。優しい気持ちで眺める。
メモには<例の「んがっ」の奴>とわたしは書いている。mir693-2.jpg


星型花器『かまきり』 どう星型かと言えば、上から見れば六芒星の形をしているのだ。五稜郭ではない。中国の青銅器からの発想だと言う。しかしこれは緑青色ではなく琥珀色。

海野美盛 『蝙蝠図手板』 08060501.jpg

満月を背に飛ぶ蝙蝠の型抜き。鍔を造っていた日本人のセンスが、明治にもこうして活きていたのか。藝大所蔵。こういうものがわたしもとても好きだ。

アールヌーヴォーとたいへん縁の深い高島北海のスケッチ帖も展示されていた。
『欧州山水奇勝』 仏蘭西、伊太利、蘇格蘭・・・文字を見るだけでときめく。
『花卉図・菊に梧洞』 二羽の小禽が愛らしい。

大英博物館にはまだ行ったことがないが、時々展覧会を眺めたりすると、ここのコンセプトと言うのは、「美を蒐めるのも大事だが、ナゾなものも大事なのだ」ということかも、と解釈することがシバシバある。
正阿弥勝義 『瓜型花器』 1M大の瓜に虫や鳥や花がまとわりついていて、いずれもリアリズムなのだった。19世紀末の作品なのだが、江戸の感覚が活きているのを感じる。

そして明治のハマ焼として諸外国に輸出されていった宮川香山の花瓶を見て、1/1スケールのフィギュアぽい、と思った。浮き彫りで、蓮に白鷺に翡翠・・・などが所狭しと巻きついているのだが、どうしてもフィギュアに見えるのだ。いいもわるいもなくに。
他にも実物大のワタリガニが貼り付いた水鉢があり、西洋人はこれを見て喜んでいたのか、となにやら感慨深いものがある。

小川破笠 『貝尽蒔絵硯箱』 硯箱が6/1まで6/2から6/16まで料紙箱が出る。黒漆の上に散らばる貝たち。サントリー美術館で以前にみたのはいつだったか、本当に素敵だ。

ガレ 花器『蜉蝣』 mir693-1.jpg
成虫の影を封じ込めた・・・そんなイメージがある作品。絵はがきは、現実の美に置き去りにされている。しかしそれでもその名残をとどめている以上、こうして手に入れてしまうのだった。命の短い蜉蝣が、この不透明ガラスに封じ込められたことで永遠に活きる・・・そんな幻想が湧き出してくる。

本阿弥光悦・俵屋宗達『鹿下絵新古今和歌集断簡』
なんとなくいい。説明してもしかたないキモチ。
mir693.jpg

始めにガレとトンボのことを少し書いたが、わざわざ<ガレと『蜻蛉』>というコーナーがあった。
蜻蛉と蝉と蝶はとても好きなので、嬉しい。
特に気に入ったのは家具である。
mir695.jpg

脚が巨大トンボなのはちょっとコワイが、木のモザイクで意匠が拵えられた違い棚などは、欲しくて仕方ない。鏡もついていて、見ていて飽きなかった。
アールヌーヴォーの家具はどれもこれも素敵なものが多い。

展覧会は713まで7時入館なので、気軽に再訪できそうだ。

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コメント
こんばんは。

私、山口晃さんが今ほどメジャーになる寸前に対談したことがあるんですが(なんだか可笑しい組み合わせでしょ)、学生の頃ミュシャが好きだったとおっしゃっていました。
私は山口さんの絵をぜんぜん日本風だと思っていないので、七恵さんの感じかたもわかる気がします。

この展覧会はサントリーで見ました。蜻蛉など昆虫が大好きなので、とても楽しかったです。なぜか香水をつけている見学者が多くて、会場にはいろいろな匂いが漂っていました。フランスの思い出を語る老婦人もいて、普段私が行く展覧会と客層が違うなーと思いました。
2008/06/05(木) 23:02 | URL | ひろすけ #-[ 編集]
こんばんは
TBありがとうございました。
また記事中で拙記事を御紹介いただき、感謝しております。
チラシの「トンボの杯」は、素晴らしいですね!
>北斎の絵というより山口晃氏の絵に見えて仕方ないのだった。
なるほど、確かにそんなイメージがあります。
異質なもが絶妙に解け合っているところがそう思わせるのかもしれませんね。
「んがっ」の奴も可愛いですね。(笑)
2008/06/05(木) 23:07 | URL | lapis #e8.b9ePc[ 編集]
☆ひろすけさん こんばんは
>対談
現在から見た過去の日本を描く描き手、そんなコンセプトなのでしょうか。(勝手に想像するわたし)
>感じかたもわかる気がします
嬉しいです、一度違う世界を通過した後に仮装したような、そんな感じを持ってます。うまく言えませんが。

トンボやカエルなどの小さい生物がガレの手にかかると途端に大物というのが面白いです。vipなトンボ。
>なぜか香水をつけている見学者
・・・フランス(のイメージ)だから、と言うよりむしろ、「虫寄せの香水ですか」とわたしは訊いてしまいそうです。←なぐられるな、わたし。
2008/06/05(木) 23:35 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
☆lapisさん こんばんは
あのチラシ、東京のは文字のみでして、それはそれで江戸趣味的なシブさがありましたが、大阪ではそうはゆきません。文字だけではお客さん来てくれないな、とサントリーも読んでるようです(笑)。

今の日本は江戸時代とは直結してなくて、間にジャポニズムが入ってる方が却って馴染みがある・・・のかもしれない、とか思いました。

<んがチャン>と呼んだってください(笑)。
2008/06/05(木) 23:41 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
こんばんは。
愉しいガレをすっかり思いだしました。素敵な記事、をありがとうございます。高島北海もよかったですね。
2008/06/05(木) 23:54 | URL | すぴか #-[ 編集]
☆すぴかさん こんばんは
コンセプトがしっかりし、あいまいにしなかったことがよかったようですね。ただ並べるだけでなく、何にインスパイアされたか、何を愛したか、何が愛されたか。
それらを楽しめる仕掛けなのが面白かったです。
北海のスケッチはすてきでした。
2008/06/06(金) 21:56 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
こんにちは。ガレ展よかったですね。展示に細かく気を使っていて、独立ケースが多用されていました。詳細なレポート有難うございました。
2008/06/08(日) 23:41 | URL | kazupon #-[ 編集]
☆kazuponさん こんばんは
私立美術館の中でも、サントリーは工芸品の蒐集に力を入れている方なので、見せ方・魅せ方がたいへん巧いと思います。ガラスの影まで楽しませてもらいましたね。
やっぱりいい展覧会にゆくと楽しいですね♪
2008/06/09(月) 21:44 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
こんにちは。
ガレの記事にコメントとTB頂いていたのに、反応遅くてスミマセン。
遊行さんの記事をTBできなくて、泣!ですが、ご容赦を。

今思っても、優雅な幸せな展覧でした。サントリーの企画の充実ぶりも嬉しかったです。
2008/06/13(金) 15:29 | URL | あべまつ #-[ 編集]
☆あべまつさん こんばんは
ガレのよさを堪能した展覧会でしたね。コンセプトも良かった。
あべまつさんはサントリーの会員さんですから、これからもいい企画が楽しみですね。
2008/06/13(金) 21:40 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
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