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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

『液晶絵画』を眺める

国際美術館で『液晶絵画』展を見てきた。
三重県立美術館から巡回し、大阪の後は東京にゆくそうだ。写真美術館で8/23から。
スティル/モーション。
正直な話、現代アートはよくわからないのだが、たまには出かけよう。
mir702.jpg

地下3階に映像が設置されている。
渡されたリーフレットと係員の誘導を頼りに歩く。
映像を絵画として眺めるのか、絵画の映像化なのか。
意味もわからないので、ただ見たことだけを書く。

ビル・ヴィオラ プールの反映  大きなスクリーンの表裏にそれぞれプールの映像が映っている。
水の動きがナマナマしいが、しかしそれは大きな動きではない。見ている内に苛立ちが生まれる。
水音。緑の中にあるとは言え、このプールは汚れていそうだ。
しかしそんなことをわたしが考えること自体、作品に意識が向いている証拠でもある。
動くものを(ヴィデオ・アートを動きのない画像に押し込めて)ここに表示してもどうにもなるまい、という虚無感が湧いてきた。
ただ、一枚の動くことのない画像としてそれを見たとき、ふとコローの世界を思い出した。
コローの世界が動き出したかのような映像だった。

シャープのアクオスだったか、世界の名画が動き出すシリーズがある。
最新のは東山魁夷の森の中の白い馬に吉永さゆりが寄り添うものだが、つまりこういうことなのか。
理解力の低いわたしはそんな解釈をした。

それで思い出した。
わたしはコミックは常に読み続けているが、アニメは見ない。
特にコミックのアニメ化は見ない。原作至上主義と言うことが大きな要因。
しかし友人はコミックよりアニメが好きだと言うのが多い。
「動くからいいのよ」
・・・そうなのか。わたしは「動かなくてもいい」のだが。
尤も最初から純然たるアニメーション作品なら別にそんな意識はないのだが。

ミロスワウ・バウカ Blue gas eyes  床面に二枚のスクリーンがあり、ガスコンロの青い火が燃え続けている。
その上を踏んではいけない。いけないが、踏みたくなる。または逃げたくなるのか。
踏めばどうなるか。・・・焦げそうだ。しかしこれは<eyes>なのだ。青い眼。揺れる眼差し。しかも燃えている。

サム・テイラー・ウッド ピエタ  階段に座る女が腕に男を抱えている。ピエタだから聖母マリアとキリストなのだが、それにしては死体ではなく生きていて寝そべるだけだから、却って力が必要だ。腕の筋肉のこわばりがよく見える。男もなまじ意識があるから、変な力が身体にある。非常にしんどそうに見えた。死んだという見立てだから、楽なことは出来ない。・・・なぜか妙なことばかり気にかかる。

ブライアン・イーノ ミステイクン・メモリーズ・オヴ・ミディーヴァル・マンハッタン  デヴィッド・ボウイやミック・ジャガーにときめくわたしだが、アンビエント・ミュージックの先駆者である彼が、こうしたインスタレーション作品を製作する、と言うのはとても自然なことのように思えた。
マンハッタンの一部が切り取られ、そこにある。夕日が差しているのか。
静かな情景が続いている。固められた不動の時ではなく、少しずつ変化する時間。
それを見たような気がする。しかしそれも実は定かではないのだった。

ジュリアン・オピー イヴニングドレスの女  一目見て「あ、やまだないと・・・」的人物だと思った。やまだないとが描くある種のキャラに似ている。そして何故か、この作家の作品だけ「動きがない・・・」ような気がした。

これらの作品の意図は一切わからない。しかしそれでいいのかもしれない。わたしがわかるような作品ではどうだろうか。
わからないままそれでも眺めてゆく。傲慢なことを書くが、意外と飽きないものではある。
興味がないからすっ飛ばす、ではいつまでも歩み寄ることは出来ない。
わからなくてもいいのだ、見ることから全ては始まるのだ。
理解するよりも、何かを感じればいいだけのことかもしれない。

ただしいやなものを見た、と個人的に思うものもいくつかあった。それが何かを書くことはしない。どういやか。それも書けない。ただただ「・・・いやだ」としか言いようがない。

特別室のような空間分けされた二つの場に、森村泰昌氏のフェルメールがある。
二つの作品のうち、特に惹かれたのは『フェルメール研究/振り向く絵画』
青いターバンの少女に身をやつした森村氏の姿が暁闇から静かに静かに、そしてゆっくりとカタチを見せ始める。
手元の照明の光に目が慣れるにつれ、そこに青いターバンの女がいることを知る。
暁闇から光へ、光から再び暁闇の中へ戻る・・・
mir702-1.jpg クリックしてください。
それを見ていて思い出したこといくつか。
「生命とは果てしなき闇から闇へ飛ぶ白羽箭の、一瞬の電撃を受けてチラと矢羽を光らせた、その瞬間のようなものではありませんか」 横溝正史『蔵の中』
そして、ロシアの切り紙アニメーション作家ユーリ・ノルシュテインの『霧の中のハリネズミ』・・・先日東山魁夷展の感想の中で白い馬を見て、わたしはノルシュテイン作品を連想していたが、その映像を再び頭の中で再現すると、白い闇に見え隠れする生命たちが見えてくる・・・

数年前、天王寺の大阪市立美術館にフェルメールの描いた『真珠の耳飾の少女』が来たとき、町中にこの絵が貼られていた。
森村氏のお母さんは息子に尋ねたそうだ。
「なんで岸田今日子のポスター貼ってんの」
・・・・・・今、お母さんは息子さんに「なんで岸田今日子さんのコスプレしてんの」と問われるだろうか。(勝手に想像して楽しくて仕方ない)

鷹野隆大 電動ぱらぱら  顔、胸、下腹部のモンタージュ。何人もの男性や女性たちが服を着脱する様子が延々と続く。顔と下腹部と胸とが一致するかといえばそうでもない。
性は一瞬の横線が入ってはっきりとは見えない。
色んなカタチや状況が見える。見続ける内に妄想が湧き出してくる。飽きることがないが、一通り見てから席を立った。
電動ぱらぱらとはしかし、うまいタイトルだと思った。

やなぎみわ Fortunetelling  例により老女と少女の組み合わせ。遊んでいるのか諍っているのか。三つの画面からは微妙な時間のずれたその情景が延々と流れている。
ショジョの老女とショウフの少女のような組み合わせに見えて仕方ない。
中身は等しく少女なのだが、アカラサマな仮面をかぶるだけで一方は老女となり、もう一方は少女のままでいる。深い不条理をそこに見るのは私の勝手にすぎない。

千住博 水の森  湖と森。湖水の水面が静かに揺れる。水音がする。風の音も。木々が揺れている。これを見たときに初めて、「動くからいい」と言った友人の感覚が少しだけわかるような気が、した。

大阪では6/15まで。
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コメント
こんにちは~(^^)
私も、遊行さんは現代アートにあまり興味をお持ちでない印象を持っていたので、この展覧会にお出かけになるというのが意外な気がしました。
好き嫌いや興味の度合いは人それぞれですが、私にとってこの企画展はかなりツボでした♪(笑)
ビル・ヴィオラの作品は、以前にも個展をしていたのでかなりの数のものを堪能しましたが、見ているうちにどんどん彼の世界へ引き込まれていく・・・という感覚になるのが快感でした。
私も千住さんの作品を前にしてしばし癒しの空間に浮かんでいました♪
映像作品に限らないですが、私は作品を前にして色々考える、ということをしない超感覚人間なので(汗)気に入るか気に入らないか、だけで判断しています。
ブルース・リーのせりふの「考えるな。感じるんだ」の通りと申しましょうか(笑)
大阪展はやっぱり人が多かったですか?三重ではかなり人口密度が低くて鑑賞しやすかったです(笑)

2008/06/12(木) 11:09 | URL | tanuki #s.Y3apRk[ 編集]
☆tanukiさん こんばんは
>現代アートにあまり興味をお持ちでない印象を持っていたので
その通りなんです。
でも、tanukiさんが三重でご覧になって楽しまれた、と言うのが意識にありましてね、「たまには私も」と思って出かけたんです。
tanukiさんに背中押してもらったようなもんです♪

>ブルース・リーのせりふの「考えるな。感じるんだ」の通りと申しましょうか(笑)
はははは、実はわたし、何するにもまず「考えろ」なもんで、それでエレクトーンの運指がダメでやめたんですよ・・・トホホな記憶です。
2008/06/12(木) 21:48 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
遊行さんこんばんは。お返事遅れて失礼しました。

やはり森村さんが一番だったと思います。東京展は、既にチラシからして他を圧倒していた感さえありました。
あのフレームにハマった瞬間、何とも言えない表情をされるのがまた楽しいですよね。

大阪での客入りはいかがでしたでしょう。国際美は話題の中之島線も出来てまた便利になりますね。恵比寿は随分と混んでいました。
2008/10/22(水) 21:00 | URL | はろるど #-[ 編集]
☆はろるどさん こんばんは
森村さんの表情は本当によかったです。
オートマタで凄く繊細なものがあるのですけど、ある意味それに通じるようなものを感じました。

お客さんの入りはかなりよかったと思います。説明イヤホンを借りる人も多かったみたいですし。

中之島線、土曜日に乗ってきます。
国際美術館から古美術の藤田へそれで向います~~
2008/10/22(水) 21:24 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
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