美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 **自宅でログイン出来ないので、現在「遊行七恵、道を尋ねて何かに出会う」で感想を挙げています。

ルノワール+ルノワール展を見る

『ルノワール+ルノワール』として父子の展覧会が京都国立近代美術館に来た。
既に渋谷で三ヶ月開催された人気の展覧会。
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どちらも『田舎のダンス』をチラシに使っているが、ブンカムラのは映画『ピクニック』の1シーンが加わっている。
平日朝の早い時間に向かったが、既に満員御礼。
‘93年だったか、ここのお向かいの京都市美術館で大々的な『ルノワール展』があり、あの時も大繁盛だった。それ以来の京都での大掛かりなルノワール。
のっけからなんだが、グッズ類も図録も高値なので購入をやめて、代わりにyoutubeの作品を挙げる。

ルノワールの映像にマリア・カラスの歌声が。

ジャンの作品については明日、別項をあげる。
今日は父親オーギュスト・ルノワールの作品への感想文(ほぼオマージュ)。

わたしは子供の頃からルノワールのファンだ。
‘93『芸術新潮』8月号『好悪を超えたルノワール』特集で初めて、ルノワールが嫌いな人がいることを知ったくらい、ルノワールのファンなのだ。
明るくて健全で気持ちいい、それでいいのだ、ルノワールは。
(と言いつつルノワールの多少あぶない絵も好きなのだが)
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1.家族の肖像
やせてリューマチで手がホネホネになってしんどそうなルノワールが絵を描く映像から、展覧会は始まっている。
若い頃の彼の友人で戦死したフレデリック・バジルによる、20代真ん中のルノワールの肖像画がそのそばにあるので、見比べる。
ルノワールは豊満でぴかぴかした肌の女たちを多く描いたが、ご本人は意外なくらいやせていたのがよくわかる。

ジャンの映画『牝犬』が流れる。ミシェル・シモンが日曜画家ルグランを演じている。
Mシモンはジャン・ヴィゴ『アタラント号』で知った俳優だが、画家の描く姿はルノワールを想起させる。たぶん、ジャンもそれを想っていたのだろう。

30代後半の自画像もある。なかなかオトコマエに見える。これは以前オルセーで見た。
彼の妻になる『アリーヌ・シャリゴの肖像』が並ぶ。フィラデルフィア美所蔵なのでサイトで見ている。つまり『田舎のダンス』のひとでもある。
父親はやせているのにジャンが福々しい理由は母からの遺伝なのだろう。
こうしてルノワールは周囲に福々しい人々を集めていって、福々しく瑞々しい膚を描き始めていったのだろう。

『ジャン・ルノワールの肖像』 この時代のフランスでは男児に女児の装いをさせるのが流行していたそうで、ルノワール家でも父親の意向も特にあり、子供らはみんな幼児期は女児の装いをしている。
愛児の絵。藍地を背景に金茶色の長い髪に水色リボンをつけ、ノド元に白の大きなリボンを結んだ幼女スタイル。

『赤ん坊ジャン』  指をしゃぶる赤ん坊。こうした絵を見るといわさきちひろを思う。ちひろは生命の幸せを願って、小さい子供らを多く描いたが、八ヶ月と十ヶ月の赤ん坊の違いを描き分ける画家だった。
この赤ん坊ジャンの肖像を見れば、ちひろは「ああ」と微笑むだろう、きっと。

『ピエール・ルノワールの肖像』  可愛いちびこ。この息子は長じて後に俳優となり、ジャンの『ラ・マルセイエーズ』にルイ16世役で出ている。映像を見ると、シモーヌ・シニョレを髣髴とさせる目鼻立ちの男優で、個性的である。

『ガブリエルとジャン』  オランジュリー展でのチラシにもなったのではないか。好きな絵。ルノワール家のなくてはならぬ人。見るからに幸せな風や匂いを感じる。
このガブリエルはちびこたちからいろんな呼び方をされたようだが、いちばん傑作なのは三男のクロードだと思う。「ガ」。ガってなんやねん、ガって。
まぁフランスにはギ・ラロッシュという人もいて「ギ」ですけどな。
関係ないが、ルノワール一家に関西訛りがあれば、ガはガァと発音されたろう、きっと。

『ココの肖像』  そのガ呼ばわりの三男坊は、この家には珍しく坊ちゃん刈り。絵か字かを書いている。子供の真剣なまなざしを画家は優しく見守り、それをキャンバスに残す。

『狩姿のジャン』  15歳の肖像。ジャンは猟銃を構えて立っている。等身大の肖像画。父親の温かな愛情がそこにある。息子も父の愛情を強く感じて、生涯この絵を手放さなかったそうだ。ルノワールはあんまり少年の絵を描かなかったと言われるが、それは女性に比べて、という意味だけで実際にはこうした佳品も多い。
関係ないが、父が偉大な芸術家で息子が映像関係というのは他に富本憲吉と壮吉、手塚治虫と眞氏などが思い浮かぶ・・・。
ジャンの『ゲームの規則』ではソーローニュという白樺の林のある猟場でウサギ狩りをしていた。

モーリス・ドニ『ルノワールと弟子ジャンヌ・ボドーの肖像』  いつものドニ風の絵ではなく、装飾性のない肖像画。じいちゃんと弟子、という風情がある。
この頃に梅原も来たのだろうか、「ルノワール先生を見に来た」と言って。

晩年の陶器の絵付け作品もいくつか並ぶが、青色の目立つ、一見マヨルカ風の華やかさだった。

2.モデル
『小川のそばのニンフ』  ねそべり、こちらをみつめる白い女。ニンフだから生身の人間の女ではない。実際のモデルをした女とはその後別れたそうだが、白く魅力的な女だった。ただの裸婦ではなくニンフとして描くのに不足のない、モデル。

『女優ジャンヌ・サマリーの肖像』  後に大女優になったそうだが、赤いリボンの目立つ可愛い女だった。ちょっとDémenceな感じの顔立ち。背景は点描風。

『闘牛士姿のヴォラール』  画商の肖像画。ヴォラールと言えばピカソが彼のために描いたシリーズが思い出されるが、ルノワールにとってもヴォラールは恩人だったのだ。

『帽子をかぶった若い女性』  恣意に描いたものではなく、依頼品か、細身の美しい若い娘である。まるでフランス人形のようだ。緑を背景にしたこの娘を見ていると、リカちゃん人形のレディリカ・バージョンを思い出す。

『麦藁帽子の少女』  赤茶色にまとめられた絵。美少女。時々ルノワールの描く若い娘たちの絵の中に、胸を衝かれるような美少女がいるが、この娘もその一人だった。

3.自然
『アルジャントゥイユの橋』  鉄道のおかげでパリからたった15分で着くようになり、ルノワールは仲良しさんのモネにしばしば会いに行ったそうだ。
この絵自体は別にどうと言うことも感じないが、モネと仲良く描いていたのでは、と思うと色んな想像が湧いて、それだけで楽しい。

『陽光の中の裸婦』『バナナ畑』『風景、ブージヴァル』
これらの絵とジャンの映画との密接なかかわり。解説を読んで理解はいよいよ深まるが、そうでなくとも一目でわかる相似性があった。父の描いたものを息子がロケーションして映像化したのだ。父への愛情が伝わる作品たちだった。

『裸婦のいる風景』  明るい陽光の照らす街。木も南国風。右端に突然現れる裸婦。シュールな絵。どういう意図での制作なのか、ちょっとナゾだ。ソウマヤ美所蔵。

メキシコのソウマヤ美術館からの所蔵品がなかなか多く出ているが、それらの傾向を見ると、やや幻想的なタッチの作品が多いように思われる。メキシコと言うお国柄がそうさせるのか、メキシコにフランスの上流階級の人間が多く流出したのが、シュールなものを好む時代だったからか。そこらへんはよくわからない。

『カーニュのコレット荘』  これもそう。茶色い家。オリーヴ畑、働く人々。どことなくここの温度がこちらにも伝わってくる。乾いているようで、少し気だるいような。

4.娯楽と社会生活
『本を持つ少年』  賢そうな少年の立ち姿。リセエンヌの帽子をかぶっている。この絵はさる教育関係の所蔵だそうだが、大いに納得した。

『田舎のダンス』  今回初めて足元にいる(階下の)女に気づいた。日本扇子を広げているのがご愛嬌だ。
今回出ていないが、対の『都会のダンス』はヴァラドンがモデルだったそうで、あちらはムード音楽が流れている感じ、こちらは明るい笑い声の混じる音楽が聞こえてくる。

『シャルルとデュラン=リュエル』  なかなかオトコマエな二人の青年。薔薇がバックというのは、一昔前の少女マンガのようにも見える。

『アデル・ベッソン』 アップした髪に薔薇の花。ジプシー風のドレスをまとう女。
フジタの『アンナ・ド・ノアイユ』をはじめ、ドンゲンやキスリングも多くの上流階級の夫人方を描いているが、なんとなくある種の共通点があって、それが面白くもある。

絵自体は見て回るのに丁度よい数だが、人の多さに負けてしまい、ちょっと駆け足になった。ジャンの映像については明日また記事を挙げる。
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コメント
ごめんなさい~!!
TBいただいていたのにお返しするのがめちゃくちゃ遅くなってしまって…><

youtubeの動画もいいですね^^
ひさしぶりに音楽をゆっくりききたくなりました。
ルノワールの描く女性はばら色の頬という言葉がそのままぴったりします。
彼の目には女の人はみんな女神様にみえていたんだろうなあ…なんて思ったりするのです。
2008/06/22(日) 20:16 | URL | はな #-[ 編集]
はなさん こんばんは
バラ色の頬ってやっぱりシアワセの象徴ですよ。
わたしは黒くてバラ色にはなれない~~
youtubeは楽しいです。
いろんなのをみつけては機嫌よく楽しんでます。
自分が弱っているときは特にいいかも・・・
2008/06/22(日) 22:37 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
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