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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

ルノワール+ルノワール (ジャンの映画)

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わたしが最初に映画監督ジャン・ルノワールを知ったのは、小学生の頃『大いなる幻影』をNHKあたりで見たからだと思う。
ルノワールの息子さんかぁ、という意識で映画をみたが、フォン・シュトロハイムの魁偉なイメージばかりが意識に残った。
ここで話が少し脇にそれる。

中学生のころに戸板康二『ちょっといい話』にハマり、不意に世界が広がった。
歌舞伎役者の屋号や血筋に詳しくなれたのも、昔の芸談を読むのが大好きになったのも、全て戸板康二のおかげなのだった。
さて、その本の中にこんなのがあった。ほんの小話。
ジャン・ルノワールの表記が誤ってジャンル・ノワール(暗黒もの)になっていた、というもの。
昔、アラン・ドロンとジャン・ギャバンのコンビでそうしたフィルム・ノワールものが多く作られ、たいへん人気だったが、カントクも自分の名前が暗黒ものにされるとは思わなかったろう。

そのジャンの映画作品が少しずつyoutubeにあり、わたしは嬉しがってここに貼り付ける。
一応、展覧会に出ていたものに限った。


『ピクニック』

この映画は『ぶらんこ』との関連があるが、間に60年の歳月がある。
若い女の心の流れが映像の中から届く。ボートを漕ぐシーンにも父の絵画からの影響、というか父の絵画への懐かしみ・親しみが伺えるのだった。

『河』

インドを舞台にした若い人たちの心のふれあいと言うか、色んなアフェアがある。
『バナナ畑』の巨大なバナナの葉っぱがこの映画にもあるが、オリエンタルなエキゾティックさに、父も息子も少しだけときめいていたのだな、と思った。

『ゲームの規則』

狩猟シーンが続く。ジャン15歳の肖像画。そして父が描き損ねた地での撮影。こんなに父親思いの息子と言うのは、偉いものだと思う。歳が離れていたこともその要因なのだろうか。

『トニ』

イタリアのネオレアリスモの先駆的作品。確かにそんな感じがする。海に身投げした女房を引き上げる男。なんとなくロッセリーニの『マン島』だったか、そんな映画を思い出した。

『フレンチカンカン』

ハデハデで楽しかった。実は小学生の頃、この映画をTVで見た翌日、クラスでマネをしてみんなで踊ったことがある。スカートを何枚も履くだけでなく、シーツかカーテンか何かも使い、それで大変叱られたのだった。

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ジャンが現役の映画監督だった頃は、無声映画とトーキーとの境目から、更にはモノクロから総天然色へ移行する、二つの大きな流れがあった。
これは技術的なことだが、それだけでなく内容的にも大きな変化があった。
古典的作品のよき時代が終焉を遂げ、新しい波が押し寄せてきたのである。
そのヌーヴェルバーグの旗手たち・・・トリュフォー、ゴダールら。
ジャンはヌーヴェルバーグの監督たちのいわば親父さん的存在として、眺められていた。
アメリカに移住してからの心の支えはそのことだったそうだ。
必ずしもジャンの映画は商業的には成功していないようだ。
当時の資料を見ると、作品的にはよくても・・・というのがよくわかる。
せつないなぁ、わたしはカネにならない作品が好きなので、せつなくなる。

『黄金の馬車』 これは映像はないが、’91年頃に初公開があり、そのときのチラシが手元にあるはずが、今回どうしてもみつけられなかった。消えたチラシはどこにあるのだろう・・・
雰囲気的にフランス映画と言うよりイタリア映画的なのは、なにもアンナ・マニャーニが主演だからと言うだけではなさそうだった。映画の中で、マニャーニが自分の綺麗なネックレスを闘牛士に投げ与えると、闘牛士がそれを額にかざす。闘牛士だからこそ似合う情景。

『恋多き女』 先ごろ亡くなったばかりのメル・ファーラーとバーグマンのダンスがなかなか素敵だった。
色彩設計はどうなっているのかよくわからないが、総天然色という感じの映像。色調よりも人物配置などが父親の絵と近いのを感じる。1901年の独立記念日のお祝いに浮かれる人々。楽隊の一人に帽子を投げると、それをかぶって演奏するシーンなどが、なかなか素敵だった。背景は書割で、それがまたどことなくいい感じ。
わたしはバーグマンで一番好きなのはアナトール・リトヴァク『追想』なのだ。『ガス燈』『カサブランカ』ではなくに。そして演技派女優としての彼女のベストはベルイマン『秋のソナタ』のピアニストだと思う。

『草の上の昼食』 タイトルはお父さんのお友達のヒトの作品から採ったが、裸婦や自然のあり方はお父さんの絵ですね。50年前の福々しく瑞々しい若い女。行き逢ってしまい、ちょっと紳士的に身を避けるけれど・・・の教授がいい。

『女優ナナ』  ナナの動きを見ていると、ドイツ表現主義的なものを思い出す。ヴァンパイアのように貪欲なナナの目がギラギラする・・・思えばゾラの『ルーゴン=マッカール叢書』のうち『ナナ』と『獣人』をジャンは映画化しているのだった。

『小間使いの日記』 タイトルだけならてっきりスペインのブニュエルのそれかと思った。あちらはジャンヌ・モローが小間使いで、例によってなかなかCible immoraleな感じ。こちらは純愛ぽい。小間使いもポーレット・ゴダードなのだった。

書くうちに映画が見たくなってきた。わたしは古いヨーロッパ映画が大好きなのだ・・・

この展覧会は見どころの多い展覧会だった。反目ではなく互いへの愛情あふれる作品を生みだした父と息子との、和やかな展覧会だった。
ますますわたしはルノワールが好きになった。誰がなんと言おうと、やっぱりルノワールはいい。
オーギュストも、ジャンもすばらしかった。

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コメント
映画に夢中だった若かりし頃、まだ今のように
ビデオなぞなく、ミニシアターで、昔のフランス映画を
何本も見ました。その時は、ジャン・ルノワールが、
あの画家の息子だとはまったく気づきませんでした。
その後は知識としては知ったのですが、
この展覧会ではじめて親子の親密さを知って、
とてもいい気分になりました。
2008/06/17(火) 05:54 | URL | 一村雨 #-[ 編集]
☆一村雨さん こんばんは
神保町や新宿、そして目黒などのミニシアターでは今もよい映画が多いですね。
わたしも昔のフランス映画が好きで、そんなのの専門上映会によく出かけました。
ルノワールと言う名前、ここの家族以外知らないので、それで勝手に目星つけてたのですが、あれがもしよくある名前なら、知らないままだったかもしれません。
いい父子関係だなぁとわたしも嬉しくなりましたよ。
2008/06/17(火) 22:15 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
こんばんは。
You Tubeの短編、楽しませて頂きました!凄い凄い。
私も、このルノワール親子のステキな関係にほんわかしました。
映画もとても健気でロマンティック。
展覧会最後の展示に息子から、パパへという手紙があって、じ~んとしました。
父子の愛情が満載でした。
2008/06/17(火) 23:19 | URL | あべまつ #-[ 編集]
イングリッド・バーグマン!
遊行さん
こんばんは

この展覧会はとても楽しく観ることができました。
東京展は興行的には芳しくなかったそうですが、
クラシック映画と絵画を上手に魅せていたと思います。

久しぶりにイングリッド・バーグマンの姿も拝めましたし...

だけど私のバーグマンはカサブランカあたりなので、
カラーのちょっとやさぐれた色気は刺激が強かったかなぁ...(^^;

個人的に一番好きなバーグマンは『イタリア旅行』です。
緊迫感のある道行きと最後のカタルシス...う~む。
2008/06/17(火) 23:48 | URL | lysander #f8kCkkcg[ 編集]
☆あべまつさん こんばんは
映像が気に入られてよかったです。
けっこうこういう数分間だけ、と言うのってソソラレるんですよね。続きが見たくなる・・・。
パパへの手紙、ラストに置かれているのがまたニクかったです。
愛情を互いにそそぎあったからこそ、あんなにも豊かな世界なのだな、と思いましたよ。


☆lysanderさん こんばんは
ブンカムラでは会場が不評だったようですが、収益が上らなかったのですか。うーん、ムツカシイですね。関西人は特にと言うていいと思いますが、ルノワール好きな人が多いです。他の画家は見なくともルノワールは見たい、という感じですね。
>『イタリア旅行』
お~さすがlysanderさん、シブイ選択ですね~~~b
2008/06/18(水) 00:13 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
You Tube楽しみました。会場でタチンポで見た映画のシーンをネットで想いだすことの出来る良き時代になっているのですね。
絵画と映画、父と子の両者に目配りのきいたお洒落な展覧会でした。
2008/06/20(金) 08:00 | URL | とら #8WYMted2[ 編集]
☆とらさん こんばんは
今の時代、わるいばかりではないな、と思うのがこういうところですね。
全篇は見れずとも、嬉しい気分が湧くくらいのものが見れる・・・
そういうのがyoutubeの良いところです。
この展覧会は本当によい内容でした。
ルノワールだからこそのほんわかムードなんでしょうね、
2008/06/21(土) 21:44 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
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