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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

澁澤龍彦と堀内誠一 旅の仲間

去年の名古屋からの巡回がようやく渋谷に来たので、松涛のギャラリーTOMへ行った。
『澁澤龍彦・堀内誠一 旅の仲間』展。
IMGP4408.jpg

中に入ると「なにでこの展覧会をご存知になりました」と訊かれ、「お友達から」と答えたが、あんまり人は来てないのだろうか。
とてもフレンドリーなギャラリーである。

堀内誠一は『anan』の編集など色々マルチな仕事もされた人だが、わたしにとっては絵本画家である。
妹が幼稚園の卒園記念に貰った『リスのゲルランゲ』シリーズ以来だから、’70年代半ば頃。
その後に『ぞうのぐるんぱ』とか雀の子供の話など、色々な絵本を見てきた。
数年前には堀内の絵本原画展も見たが、やっぱりたいへん良かった。
ぐるんぱのようちえん (こどものとも傑作集)ぐるんぱのようちえん (こどものとも傑作集)
(1966/12)
西内 ミナミ堀内 誠一


おそうじをおぼえたがらないリスのゲルランゲ (世界傑作童話シリーズ)おそうじをおぼえたがらないリスのゲルランゲ (世界傑作童話シリーズ)
(2000)
ジャンヌ・ロッシュ・マゾン山口 智子



ヒキコモリに近かった澁澤が旅好きになり、あちこち出かけるようになってからの、二人の往復書簡が楽しい。
澁澤は文のみ。堀内は絵描きだからカラフルな絵も添える。
フランス在住の堀内は時々他の国にも出る。
そう、今も続くボローニャ絵本原画展にでたり、チェコのブラティスラバ絵本原画展の審査員として東欧に入ったり。
そのときの手紙の内容から「ああ、あの絵本か!」とわかるものもあり、とても楽しい。
澁澤も「・・・『超男性』翻訳しました」などとお知らせを遣す。
翻訳して儲かったら嬉しいな、みたいなナマナマしいことも書かれていて、それがまたとても微笑ましい。
澁澤の友人で、パリに移った出口の近況についても互いに知らせあったりしている。
「あいつの融通の利かなさにはあきれました」などと書いているが、それは悪口ではない。
時間差のある対話、それが二人の往復書簡だった。

堀内の絵も綺麗なもので、サラサラッと描いているのに本当に実物のイメージが届いてきたりする。澁澤は手紙の中でそれを羨む。
文しか書けない者はやっぱり絵が描ける者を羨み、憧れるのだ、どうしても。

タイトルがまだ未定の状態の『玩物草紙』連載についての話もある。
加山又造が挿絵をつけてくれるのをとても喜んでいる。

二人ともどちらかと言えば人の良さ・育ちのよさを感じさせる手紙を書いている。
澁澤にはちょっと嘆きとか義憤や心配が混じることもあるが、堀内の丸まっちいカラフルな手紙には、あんまりそうしたことは書かれていない。
書いたかもしれないが、それが出ていないのか、それともそんなことを書くより澁澤をもっと喜ばせたい・もっと楽しませたい、という気持ちが大きくて、そのことに夢中になったのか。

行間から色んなことを読み取ろうとしたが、全ては想像に過ぎない。
しかしその行為は楽しかった。
どちらかと言うと他人の書いた書簡や日記を眺めるのは苦手なのだが(公開目的のものは別として)、二人の楽しそうなやり取りにはこちらの心も和んだ。

ギャラリーの壁には彼らの手紙が、そしてあちこちのテーブルには彼らの本が置かれていた。ただし初版本なので触れることは出来ない。
しかしその少し古ぴた本の表紙を眺めるだけで、中に封じられた言葉や物語がイメージとしてこちらの脳の中にあふれだす。
それらは外へは零れないが。

二階のテーブルには堀内の絵本が置かれ、それとコピーも一緒にある。触って眺めて、ということ。
TOMは眼の不自由な人々の触感による美術体験を推していることを思い出した。
わたしの少し後に来られたお客さんが白杖をついていた。このギャラリーのおなじみさんらしい。
幸せそうな笑顔でお連れさんとお話されていたのが印象的だった。

いい展覧会だった。
ところでギャラリーTOMは村山知義の子供さんが開かれたギャラリーで、だから名前の由来も童画家としての村山のサイン“TOM”からとったものだと聞いたことがある。
わたしは’20年代モダニズムがとても好きなので、その時代の童画もとても好きだ。
村山知義のモダンな作品も好きなものが多い。特に奥さんの村山籌子とのコラボ作品『三匹のコグマさん』シリーズがとてもとても好きだ。DVDを手に入れたときの嬉しさは今も忘れない。

このギャラリーは松涛美術館からまっすぐ歩いて一つ目の信号の手前にあるから、行きやすいと思う。わたしでさえ道を間違えなかったので、いい企画があればこの二つをセットに・・・戸栗をまぜて、たばこと塩にも足を向け、ハチ公バスで文学館へ向かうのもコミにして、廻るのが楽しいかもしれない。(ブンカムラを入れてないゾ)
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コメント
こんどは無事行けてよかったですね。
前回、「澁澤龍彦驚異の部屋展」 の時は、行き着けなかったんですよね? なぜ?(笑)

1階には、入って右側にも部屋があるのですが、はいりました?
関係図書が売られています。もちろん触れます。

TOM開館の経緯は、TOMのトップページに書かれています。
http://www.gallerytom.co.jp/
よく、ご存知ですね。社内では、時々、TOMの展覧会の紹介があるのです、わたしは、開館の経緯までは知りませんでした。

展覧会ですが、中京大学アートギャラリー C・スクエアの方が、規模としては若干大きかったと思います。ギャラリー四面の壁のうち二面の壁にずらりと手紙が展示されていました。ほとんど,全部読んできました。
TOMでも、客がもう帰ったのかと思っていると、階段から降りて来ると、言ってました。皆さん、熱心なようです。
2階にコピーありました?
気がつきませんでした。中京大学アートギャラリー C・スクエアでも、壁の手紙をほとんど読み終わってから、コピーに気がつきました。(マヌケです)

> 「なにでこの展覧会をご存知になりました」と訊かれ、
これは,毎度の事です。
今回は、案内がきました。

ところで、本は買いました?
2008/06/23(月) 23:47 | URL | 鼎 #PgtEBqSc[ 編集]
遊行七恵さん、こんにちは。
最初はフランスに行ったことのないフランス文学者だった澁澤さんですけど、旅行好きになってからは楽しい旅行記が多いですよね。
特に奥様のこと、関わり方が書かれている部分はとても好きです。

渋谷地区、とてもお詳しいですよね。
隣の新宿を本拠地にしているのに、お恥ずかしいかぎりです。
よく分かるのはブンカムラだけですよ(笑)
2008/06/24(火) 00:06 | URL | sekisindho #7JPwz3bk[ 編集]
☆鼎さん こんばんは
>行き着けなかったんですよね?
答=行き倒れそうになったから。
右側の部屋は三角部屋ぽかったですね。図録でなく出版社系の本は必ず近所の書店で買います。
文中にも書いたんですが、村山知義のファンなんですよ。
それと中一のときに『忍びの者』原作読んでハマリましてね。しかもマヴォでしょ。
こうなると周辺の本も読みますよ、そこから知ったんです。
大体一度のめりこむと中途半端なことはせず、徹底的に調べたい性格なんです。


☆sekisindhoさん こんばんは
凄まじい方向音痴なんで、地図や路線図を見るのがすきなんですね。
それで時間があればわざと彷徨もしますが、大抵時間はギリギリ。
自分の目的地以外は脇目も振らないから、行くルートが決定すると言う、内実が・・・(笑)。

奥さんが本当に内助どころか外助まで功績ありますよね。
実務面がしっかり出来てるから、旅も楽しめる・・・
いいですねぇ、ほんとうに。
2008/06/24(火) 21:42 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
TOMは展示面積が狭いのに六百円取るからあまりいきませんね。
僕が行った時も「どうやって知りましたか」と聞かれまして「あ・ら・かるちゃー」をもっていたので、ああそれでお知りになったのですね、と勝手に理解されていました/笑。
「あ・ら・かるちゃー」はたまたまもっていただけなんですがね。
遊行さんはBunkamura今回は朝日主催でサントリー天保山に回るから、無料でご覧になれますよね。

僕は多摩地域が詳しくなった、立川のほうにしょっちゅう行ってますから。
今日富士美術館の「大三国志展」チケットが入りました。
遊行さんからいただいた「ぐるっとパス」で夢美術館とはしごしてきます!
2008/06/24(火) 21:48 | URL | oki #-[ 編集]
遊行七恵さん、こんばんは
ご覧になられたとは羨ましいです。
仕方がないので、本で我慢することにします。(苦笑)
2008/06/24(火) 22:49 | URL | lapis #e8.b9ePc[ 編集]
☆okiさん こんばんは
ブンカムラのロシア・アヴァンギャルドは行き損ねたのを残念に思っていたので、大阪に来てくれるのでホッとしています。とらさんのところで見た限り、なかなかよさそうです。
楽しんできた下さい。


☆lapisさん こんばんは
これは楽しかったですよ。
一枚一枚読むのにかなり時間もかかりますが、本当に楽しいです。
枝豆を送った話とか、しみじみした話などもあり、「行ってよかったなー」と実感しました。
ご本でその実感を味わってください~
2008/06/24(火) 23:54 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
名古屋でもこの展覧会は開かれていたのですね!うう、行けばよかったです。。。(泣笑)
「ぐるんぱのようちえん」懐かしいです♪
この本の中に出てくるビスケットが食べたくて食べたくて仕方がなかった子供の頃の私を思い出しました(笑)
恥ずかしながら堀内さんのことはほとんど知りませんでした。
澁澤さんとの書簡のやりとり、読んでみたいです(^^)


2008/06/25(水) 23:29 | URL | tanuki #s.Y3apRk[ 編集]
☆tanukiさん こんばんは
名前と作品が一致しなくとも、ぐるんぱと聞いてすぐにビスケットが思い浮かぶのは、素敵なことですよ。
わたしは絵本作家としての堀内さんは知っていても、アートディレクターとしての業績は殆ど知らなくて・・・
書簡のやり取りは本当に仲良しさん同士の中身でした♪
2008/06/26(木) 22:58 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
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