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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

プリンセスライフと殿様コレクション

プリンセスライフと殿様コレクション

目白の永青文庫と九段の千秋文庫とを廻った。
どちらも大名家のコレクションを一般公開する場。
永青は熊本の細川侯、千秋は秋田の佐竹侯の文庫。

まず永青での展覧会。『細川のお姫様 華やかなプリンセスライフ』 
大名家においては、“表”とよばれる公的な空間に対し、“奥”は大名が家族と暮らす私的な空間でした。表の道具として武器・武具や書院の飾り道具などがあるのに対し、奥の道具には鑑賞用の絵画、書跡、衣服や装身具、身の周りを整える調度類がありました。嫁ぎ先に持参する華麗な蒔絵の婚礼調度などは、奥の道具の最たるものだといえるでしょう。
本展では、初代細川幽斎夫人が書いた和歌扇面、2代細川忠興夫人ガラシャ手製の袱紗、8代細川重賢夫人所持の厨子棚・書棚、14代細川護久夫人宏子の描いた風炉先屏風、16代細川護立長女敏子が嫁ぎ先に持参した雛人形一式(熊本県立美術館所蔵)など、女性の生活を彩る品々50点余りを展示します。
ということなのでワクワクして展示室に入ると、いつもと違い先客が多い。
全員女性。
そうよな、庶民は貴顕にアコガレるものよな。特にこういう歴史の古い名家には。

基本的にここの所蔵品と熊本県立美術館などの所蔵品が並んでいた。
江戸時代中頃の蒔絵文具などに惹かれる一方、近代の宏子夫人の絵画や栄昌院という方がデザインした遺物などにも関心が湧いた。
いかにも大名のご正室という、大きな豊かさを感じるデザインなので、見ていて気持ちいいのだ。
抱一上人は姫路の酒井侯の弟君で江戸琳派を興したが、丁度あんな感じ。
デザインの巧さとか絵の良さとかもさることながら、とにかくせせこましさがなく、明るく華やか。
「閑を持て余した果ての」というのではなく「教養として身につけた」以上のなにかを感じさせた作品たち。
一生懸命、そして楽しく作っているのがわかるような気がする。
書画だけでなく、ミニチュアのカルタもあった。本当に愛らしい。

以前から好きな台が出ていた。白い螺鈿細工で網代に貝殻を鏤めた図柄の台。
これは夏になるとよく展示されるが、とても好きなもので、類品は他に殆ど見ない。

文具だけでなく小さな家具も全て姫君にふさわしい優美で可憐なものが多い。
違い棚の横部分を菊水の透かし彫りにしたものや、可愛らしい花鳥の蒔絵。

肖像画も多いが、一枚だけ幼女のものがあった。
こう姫像
わずか四歳で他界した姫を偲んだ父君。愛らしい盛りに愛娘を失くしたつらさを思う。
身分の高下に関わらず、等しき悲しみがそこにある。

近代の姫君の遺愛品のうち、いちばん心躍ったのはお雛様のお道具。
雛道具と言うだけでも可愛いのに、ここのは上方風の厨セット。つまりキッチン道具一式にお皿などなど。
それがもぉずば抜けて愛らしいし、立派なものばかり。染付にはちゃんと絵柄もあるし、銀製品もある。
臼や杵もあるし、台所の下駄もある。
姫君の雛道具とは言え、民家と同じものが並んでいるのだ。
江戸ではこうしたお道具はなかったようだが、上方から西ではやはり女の子のたしなみとして、ままごと道具が付随している。
ふと見れば台所の守りとしての小僧までいた。

護久氏の宏子夫人は絵画をよくし、騎龍観音や魚籃観音を描いていた。
三昧続きの応神天皇降誕図は、神宮皇后と赤子と武内宿禰が描かれている。

プリンセスライフに満足してから、半蔵門へ向かう。

今度は佐竹家の遺宝を見る。
秋田の佐竹家は細川家より更に古く、新羅三郎義光の裔だと言う。この数日前に佐竹家から出た新羅三郎の笙を、思文閣の図録で見たばかり。
なんとなく意気込んで出かけたが、時間配分を誤り閉館10分前に行ってしまった。
佐竹家には例の大正8年に分断された佐竹本三十六歌仙図もあり、秋田蘭画の系譜もあったから、期待していた。
今回は中国絵画をお抱えの狩野派の絵師らが模写したものを集めている。
牧谿の模写が多かったように思う。

何しろ時間がないので慌てて眺めた。
有名どころでは以下の絵がある。

牧谿 虎図 (狩野洞) 可愛い。模写もよくトラえている。
李迪 帰牧図 (不詳) 大和文華館に所蔵されている絵。つまりあの元の絵の出自が推理できるような。 

基本的に艶かしいか可愛いものしか目に入らない性質なので、そこのところを少しだけ。
観音図があり、それは海上の岩上に足を組んで座す姿で、やや艶かしい。
同じく美人を二人ばかり。
王振鵬 浣紗之図 (菅原虎三) この美人の物語は知らないが、彩色の少ない白い画面が、彼女の清楚さに合うように見える。
胡直夫 馬郎婦観音 (狩野秀水) こちらも豊かに美しい婦で、魚籃観音の別名。
霊照女 これは近代日本画でも画題に多い。籠を持つ美女。
官女 仇英 (菅原洞斎) いつも絵巻でしか見ていないので、大きい掛け軸は初めて。尤も元の絵の大きさは知らない。
琵琶を弾いたり琴を弾いたりの女たちを愉しむ眺める男。たぶん、皇帝。中国王宮の優雅な絵は、日本人にも好まれたのだ。

他にもいいものを見た。
呂紀 鯉 (不詳) 黒い鯉と赤い鯉がいる。・・・こいのぼりのようだ。
周臣 韓煕載夜宴之図 (菅原虎三) 芭蕉が大きな葉をそよがせ、奇岩が鑑賞されている。女たちはより集って楽しそう。
タイトルも画家も不明の絵がある。ロバの引く天の車に乗った男が、雲から現れた美女に桃を授けられている。
西王母の御使いなのかもしれない。
三酸図や琴棋書画図もあり、そして珍しいことに朝鮮民画風のトラの絵もあった。
奇童之図 これはなかなか面白い絵で、模写した絵師も楽しく思ったのではなかろうか。
唐子も浮世絵の子供らも共に可愛い。

今度はゆっくり見て回りたいと思う。なお実物の画像はとらさんのブログで、模写の元絵はすぴかさんのブログで見ることが出来る。

大名家の遺宝は旧領に行くか東京に行くかしないとなかなか見ることが出来ないので、とても楽しめた。
おかみを持たなかった上方人の素直な実感として、本当に興味深かった。
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コメント
> 千秋文庫
そう言えば、秋田の久保田城の城跡は千秋公園と、いいますね。
この公園は、佐竹の殿様の所有とか聞いた事がありますが、今はどうなんでしょう。

佐竹も細川ももとをたどれば清和源氏かな?
家系は古いですよね。
佐竹や島津は地頭でしたっけ?

質問コーナーになってしまいましたね(笑)。
まぁ、調べてみればわかる事なんですが。

殿様系のお宝は脈々と続く・・・・・
2008/06/27(金) 00:55 | URL | 鼎 #PgtEBqSc[ 編集]
佐竹家の文化水準の高さを今日に伝える千秋文庫の存在は貴重ですね。
日本絵画のルーツの一つである宋元画を系統だって見る機会が少ないので、模写であっても今回の展覧会はとても良かったと思います。
2008/06/27(金) 09:31 | URL | とら #8WYMted2[ 編集]
☆鼎さん こんばんは
細川は清和源氏系ですね。それが室町辺りからメキメキ。
佐竹家は新羅三郎だと言うのがなんだかカッコイイです。
島津の十文字、かくれキリシタンだという説もあるそうですね。

実はおばあちゃんちには地元の小大名から拝領した槍が竿竹と並んで物干し台にあります。
もぉボロボロ。
難波の隣の摂津にはちんまい殿様家がありましたのですよ。


☆とらさん こんばんは
模写をする以上、元絵はどうなんだとか思いました。
つまり本物なのか、それとも狩野派一流の模写のタネからの孫模写なのか。
狩野派からの持ち出しではないなら、やっぱり佐竹家に宋元画の本物があったのかな・・・
そんなことを考えるのも楽しかったです。
ここに入ったのは初めてなので、これからもいい展示があるなら通いたいです。
2008/06/27(金) 18:42 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
こんばんは
永青文庫と千秋文庫いい組み合わせです。両方いっぺんに回られるなんてすごいです。
永世文庫は宮本武蔵を見て以来行ってないし。でもあの界隈は小学生の頃結構歩き回っていました。雑司が谷に住んで目白近くの小学校でしたから、懐かしい、勝手に想い出にふけってごめんなさい。
2008/06/27(金) 23:56 | URL | すぴか #-[ 編集]
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2008/06/28(土) 23:10 | | #[ 編集]
☆すぴかさん こんばんは
>懐かしい、勝手に想い出にふけってごめんなさい。
とんでもない、そういうお話こそ聞きたいものなんですよ。
雑司が谷といえば今度副都心線の駅も出来ましたね。宣教師館もありますし。以前麹町を歩いたとき、地元在住60年の奥様から、戦前からのお話を伺って、とても興味深く思ったものです。
ぜひそんなお話を教えてください。
2008/06/28(土) 23:15 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
☆――さん こんばんは
その地にはあのお殿様の遺宝がありますよね。わたしも以前一部見ました。
さすがの内容でした。
伊達者だな~~♪(一人ツッコミ)

夏のお楽しみ、ぜひぜひ満喫されてください!わたしもそこのHP見てみます♪
2008/06/28(土) 23:23 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
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