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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

赤塚不二夫とソルジェニーツィンへの追悼

赤塚不二夫とソルジェニーツィンへの追悼

日を近くして二人の作家が亡くなっている。
赤塚不二夫は闘病の末に亡くなり、ソルジェニーツィンは89才で亡くなった。

赤塚不二夫の作品はわたしの場合、主に『おそ松くん』を読み、『天才バカボン』をTVで見る、と言う状況だった。
もう今は散逸してしまったが、下の叔父が『おそ松くん』『バカボン』を揃えていて、わたしはそれを読んで育った。
『バカボン』はあの不条理さと暴力性と実験性についてゆけなかった。
TVも最初のは見たが『元祖』は嫌いだった。
それから『もーれつア太郎』はけっこう好きで、特にデコッ八にナジミがあった。
つまり隣家の従妹が立派なでこのヌシで、わたしはママになった彼女を今でも「デコッ八」呼ばわりしているのだ。彼女の赤ん坊も立派なおでこなので、もう少ししたらそう呼ばわってやろうと腹積もりしている。

『おそ松くん』は『バカボン』ほどのカゲキなギャグはなく、安心して読んでいられた。
子供だったわたしは不条理な暴力とかわけのわからない状況と言うのが怖かったのだ。
今でも不条理な話は嫌いである。

『おそ松くん』のエピソードの中には時々人情話もあった。
後年、それらが映画や物語を下敷きにしたものだと知り、その元ネタを求めたりもした。
例えばイヤミが主演の物語がある。確か3巻に収録されていたか、『イヤミは一人風の中』というタイトルだったと思うが、話の概要はチャップリンの『街の灯』を下敷きにしているが、無論それだけではない。
今思い起こしてもせつない物語だった。舞台は江戸時代に置き換えられている。
カネもないのにキザなイヤミが盲目の花売りトト子ちゃんと知り合い、手術費を稼ごうと江戸城の金蔵を襲い、当然ながら囚われる。しかしトト子ちゃんはそのカネで目が見えるようになり、茶店で働きながらイヤミを待つ。そこへ釈放されたイヤミが立ち寄るが、彼女はこのうらぶれた男が彼だとはわからない。何故ならイヤミは目の見えぬ彼女に自分は天下の美男だと嘘をついていたからだ。
トト子ちゃんに親切にされ、そしてその幸福を願いながらイヤミは一人、風の中を行く。トト子ちゃんはイヤミを待っているが、決して会うことはないだろう。
せつない物語だった。
ここにはチビ太も登場するが、ギャグよりもせつなさの勝った物語だった。
他にもそのチビ太主演『てっぺん物語』というのもあり、怪我をした小鳥が飛び立つまでの日々を綴ったものだったし、チビ太とイヤミがコンビを組んでの『賢者の宝物』(Oヘンリー作)もあった。さらには人柄のよいデカパンとハタ坊とだけが生き残る話もあった。島の守り神の目玉が赤くなると島が沈む、と言うあの伝説のパターンを使ったものだった。
そこに描かれた野菜のおいしそうなことは、いまだに忘れられない。
普段のギャグではありえない役を振られた彼らは、イキイキとその物語で活躍していた。
わたしはそのことをいつまでも覚えているだろう。

「テクマクマヤコン、テクマクマヤコン △△にな?れ」「ラミパス、ラミパス、ルルルルル?」いずれも『ひみつのアッコちゃん』の変身のときの台詞。
わたしは子供の頃『仮面ライダー』の勉強机と共に、アッコちゃんの鏡も買ってもらっていた。泣けるぐらい、懐かしい。

それから『バカボン』初期の頃にスキーに出かけた一家の泊った旅館の部屋の名前が「ほうれん草の間」だったのが何故か面白かった。今でも親戚がどこかの旅館に行くと言うと、「どうせ部屋はほうれん草の間に違いない」と妬んで笑うのだ。
あとは猫の毛皮を集めて造ったセーターなどに、憧れた。

これらはまぁファミリーギャグで可愛いが、子供心に「うわ・・・」だったのがいくつかある。
はっきりとは思い出せないが、たとえばこんな話。
ゲイの兄弟がいて弟はアーチストで兄がその生活全てを仕切り、仲良く暮らしている。ところがバカボンのパパの介入により、その幸せは幻影だと暴露される。兄にはよそに妻子がいて、弟の才能を食いつぶしていた。傷心の弟は北朝鮮に行ってしまう・・・
他にもウーマンリブの女闘士の話もあったりしたが、いずれも「うわ・・・」だった。
それがベストだと思って生きている世界を粉々に破壊されて、彼らはそれこそ「タリラリラ??ン」になるのだった。

これら誰もが思い浮かべるメジャー作以外の作品にも少し思い出がある。
いつくらいのか忘れたしタイトルも忘れたが、建築家志望の少年の建てる夢の家の話があった。一見して変な家だが耐震性の良い建物で、中には囲炉裏がある設定。
囲炉裏は正直いらんな、と思ったが子供心に「耐震性と言うのは大事なことだ」と感じたのだから、ある意味啓蒙してくれた作品だった。

病に倒れる前から新作マンガを読む期待は持てなかったが、それでも子供の頃に楽しんだ記憶は薄れない。ありがとう、赤塚不二夫・・・

他方、ソルジェニーツィン。
わたしは彼の読者ではないので何をどうとも書けないが、家にあった本のタイトルを見ただけで、子供の頃震え上がった記憶がある。
うちの母は国会中継を見るのが趣味の人で、政治について文句を言うのが楽しみらしい。
それでかどうか、ソルジェニーツィンの愛読者だった。
家の本棚に『収容所群島』『ガン病棟』などのタイトルが並んでいた頃、わたしは父の愛読書『駿河遊侠伝』を読んでいた。
母は他に大江健三郎の著作も好きらしく、わたしとは全く傾向が異なる。
ラーゲリという文字にすぐソルジェニーツィン、という連想が働くほど、ソ連の体制下で抑圧された人、というイメージがあったが、十年以前か、ご本人が現在のロシアについてインタビューを受けているのを聞いたとき、なんとなく妙な安堵感を覚えた。
その安堵感の正体については巧く説明できないが、彼が最早危険人物ではなくなったことを感じてのことだと書けば、納得できるかもしれない。

母が再び『収容所群島』を読むかどうかは知らない。
わたしはたぶん、読まないままだろう。
しかしそれでもソルジェニーツィンという作家がいたことを忘れる日は、決して来ないように思う。
ご冥福を祈るばかりだった。
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コメント
赤塚マンガは、テレビでずっと見てましたが、マンガ本を読んだ記憶がありません。
天才バカボンというタイトルで、どうしてパパが主役なのかとずっと疑問を感じてました。
ニャロメ、ケムンパス、レレレのおじさんとか、脇役がとても好きでした。
合掌。
2008/08/06(水) 06:02 | URL | 一村雨 #-[ 編集]
イヤミとトト子ちゃんの話、雑誌で読みました。イヤミが通りすがりの野良猫をを抱いて歩いていく、センチメンタルなラストでした。

数年前、出版社のパーティで赤塚先生が両脇を支えられながら壇に上り、「まだ生きてます」とおっしゃったのが、「動く赤塚不二夫」を見た最後でした。


2008/08/06(水) 22:26 | URL | ひろすけ #-[ 編集]
思い出しました
ひみつのアッコちゃんも赤塚さんでしたね。
アッコちゃんのお父さんはたしか外国航路の船長さんだったような気が・・・。

あの、テクマクマヤコン、ラミパスラミパス、という呪文、どんな風に思いついた言葉だったのか、今となっては耳慣れた言葉ですけどよく考えてみると不思議な言葉です。
2008/08/06(水) 23:11 | URL | 紫 #-[ 編集]
赤塚会館、なぜか縁もゆかりもない青梅にあるんですよね、昭和三十年代の街づくりをめざしてつくったとか。
遊行さんまさか青梅に行かれたことは?
ところでチケット届きましたかな。
土曜日、携帯が急に反抗しましてあわててポストに手紙入れたか思い出せないのです、ううむ。
2008/08/06(水) 23:21 | URL | oki #-[ 編集]
☆一村雨さん こんばんは
>天才バカボンというタイトルで、どうしてパパが主役なのかとずっと疑問を感じてました

手塚『どろろ』、山本周五郎『さぶ』もそうですよね。ナゾなのだ。
わたし、いまでも日の出を「西から昇ったお日様は東に沈む」と歌ってからでないと、日は東から昇る、と認識できないんですよ。←ナサケナイ。
レレレさん、好きです。ついつい「お出かけですか~」と今もやっちゃいます。


☆ひろすけさん こんばんは
そうそう、猫を抱いて去って行く。おこもさんスタイルでしたね。
その街道の描写がまたせつない・・・
あの立派な出歯も確か抜け落ちてたような・・・

>「まだ生きてます」
・・・なんとなく捨て身のギャグ、渾身のギャグのような感じがしました。
今春、リハビリの新任の先生がチビ太そっくりで、大喜びされたそうです。
なんとなくいい話だと思いました。


☆紫さん こんばんは
アッコちゃんのパパは船長さんでしたね。なんだかかっこよかった。
昔は何故かお父さんが外国にいる、と言う設定のマンガが多かったように思います。
(リカちゃん人形もそうでしたね)

テクマクマヤコンはわからないんですけど、ラミパス・・・は逆から読むと、スーパーミラーなんですよ。わたしの持ってるのは反射の加減で絵が変わって見えるものでした。
家捜ししたら出てきそうな予感が・・・。
2008/08/06(水) 23:36 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
☆okiさん こんばんは
青梅は行った事ないんです。
川合玉堂記念館や澤の井櫛美術館とか、吉川英治記念館などがあるんですよね。
まさに昭和を造った一人ということで、ちょうどよいかと思います。

チケットいただきました。
ありがとうございます。
そういえばわたしは八王子から向うに行ったことがないです。
2008/08/06(水) 23:57 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
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