FC2ブログ

美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

フェルメール展

本当は8/10の朝一番に向うはずだったが、コロー、対決と見た後で道なりに都美に入ってしまった。
フェルメール展 光の天才画家とデルフトの巨匠たち。
mir774.jpg
「対決」よりは空いていたが、それは展覧会が始まり日がまだ浅いからか。
二階にフェルメールが集まっているそうだが、やっぱり流されるまま一階から見て回った。
昨秋ミルクメイドが来て、それで初めてフェルメールの描く「光」に目が開いた。
数年前大阪に青ターバンの少女が来たが、それよりはミルクメイドがいい。そして今回は7点も来るというのでびっくりした。
一階にはデルフトの巨匠たちの絵が並ぶ。
ネーデルラントは新教の国だから教会の内部構造も旧教のそれとは違うはずだ。
それを楽しみに建物の絵を見る。

ヘラルト・ハウクヘースト デルフト新教会の廻廊  白い柱が並ぶ。列柱の美と迫力に惹かれた。やはり教会建築にはこうした美が必要だ。
現実の写真をラストに見たが、やはり真白の列柱だった。
ここにはウィレム沈黙公の廟墓もあるらしい。こうした絵は建造物の記録としても、わたしにはとても興味深いのだった。

ヘンドリック・ファン・フリート オルガン・ロフトの下から見たデルフト新教会の内部
こちらも当然ながら白い列柱が見える。
しかし同じところから見た「旧教会の内部」にも白い列柱がある。そしてここでは、何をしているのかわからない人々がいる。地図を見て指差しているのか、それとも西洋コックリさんをするのかわからない人々。

カレル・ファブリティウス 楽器商のいるデルフトの眺望
mir775.jpg
これは絵と対面の壁になにやら仕掛けものがあり、それを覗くとこの絵が眼鏡絵というのかそんな種類だと知る。
で、改めて本物をもう一度みたが、そんな大仕掛けではないように思った。
仕掛け物が好きなので、この程度では喜べないのか、わたし?

ファブリティウス 歩哨08081402.jpg
街の一隅にこんな場所があると、ついついそこに行きたくなる。しかしそこには歩哨がいて、見張っているのか居眠っているのかわからぬが、どちらにしろそこに先にいる。黒犬が可愛い。蓄音機はないが、そんなタイプの犬に見えた。

去年のオランダ風俗画でもそうだが、犬や猫のいる風景画がとても多いように思う。

ピーテル・デ・ホーホ 幼児に授乳する女と子供と犬  この室内を見て妙な懐かしさを覚えた。
祖母がいた頃の台所にはこの暗さがあった。荒神さんが飾られ御札が貼られていた。
ここに大皿が置かれていて、なにかアーチ型のボックスも見えるが、懐かしい暗さは共通する。
奥にいる子供はあまり可愛くないが、この空間に行きたいような気がした。
08081401.jpg
デ・ホーホは『女主人への支払い』を二枚ばかり描いている。オランダの風俗を知らぬから、この意味を深くは読み取れない。

窓辺で手紙を読む女  中流階級の女なのか、いい感じの部屋にいる。テーブルに掛かる布地もステキだし、なによりその窓のグリッドも細工が綺麗だ。17世紀オランダの家具を見ることも出来る絵。

いよいよフェルメールとご対面である。
7枚も来るのは空前らしい。絶後になるかどうかは知らない。
意外と見やすくなっていた。ミルクメイドのような厳戒態勢ではない。
mir775-1.jpg

マルタとマリアの家のキリスト  この画題そのものには色々言いたいことがあるが、別にそれはフェルメールの主義思想とは別問題かもしれないので、省く。
中庸たることへの諌め、か。
キリストの青衣、白いテーブルクロス、マリアの赤ブラウス・・・見事な色の対比が目を惹いた。この画題ではマルタは気の毒な立場なので、背景色と変わらないような地味な色の上着に、くすんだ白しか与えられない。光は手前にしか当たらない。マリアの髪と頬杖をつく右手とが光る。

ディアナとニンフたち  際立った個性のない女たち。オレンジ、黄土色、赤い袖が並ぶが、色は対立することなく馴染みあっているように見える。
ディアナの足を洗う女の茶色い衣服の肩が光って見える。そこだけがまるでシルクのように。背を向けた一人を除き、全員がディアナの足をみつめる。
左端で控える斑柄のわんこがいい感じ。

小路  これは今でも絶対にあるだろう、と言う気がした。描かれていない部分には衛星放送のアンテナが立っているだろうが。当然ながら煉瓦はオランダ積み。一段一段を確認することは出来ないが、嬉しい気分になった。わたしは市中の建物が好きなのだ。

リュートを調弦する女  なんとなく女の表情が不穏に見えた。丸いおでこに光が当たる。
テーブルのレースが古い。きっとどこかがほつれているに違いない。

ワイングラスを持つ娘  慣れ慣れしく近づく男、距離を取れないほどに入り込まれている。赤・・・というより朱色、ヴァーミリオンと言うべきか、その色。色鉛筆には赤の代わりに何故かこの色ばかりがよく残っていた。
ドレスの娘はちょっとわたしにはわからない表情を浮かべている。困惑で苦笑しているのか、それとも邪悪な愛想笑いをしているのか、にんまりしているのか。
こういうときにわたしは表情を測りかねるのだった。
それにしても窓の色ガラスが綺麗。

ヴァージナルの前に座る若い女  この絵が真作だと認められるまでのドラマティックな実話が、配布されていた新聞の特刷に書かれていた。
黄色いショールを見ていて思ったが、フェルメールは無地の衣服を好んだのか、柄物は見ないような気がする。しかしテーブルクロスなどはなかなか凝った織物だったり、綺麗な図柄を見せてもいる。同時代の他の画家の絵と比較すると、どちらの方が多いのだろうか。
この娘の髪型、なんとなく親しみがある。

手紙を書く婦人と召使  色ガラスから差し込む光で手紙を書いている。白い髪包み、うなじ、右袖に光が当たる。テーブルクロスの豪奢な織物と布張りの椅子と、市松柄の床。
床の白い板は大理石だろうか。
背後にはモーゼが拾われたときの情景の絵が掛けられている。
オランダの裕福な婦人は、一体誰に手紙を書くのか。
ブリューゲルあたりで、オランダのことわざを絵画化して一枚の画面に鏤めた作品があるが、なかなか楽しいお国柄だから、ここにもちょっと想像の余地があるだろう。
召使がにんまりとわけ知り顔なのも、にくめない。

対面の壁に絵の見どころが解説されていた。いいことだと思う。
そして別なフロアでは壁一面に世界中のフェルメール作品のパネルが貼られ、それも面白く思えた。なにしろこういうのを見ると、『ハンニバル』のラストを連想するのだ。
世界中のフェルメール作品を見ようと旅に出たバーニーが諦めた一枚のことを・・・

バウルス 中庭の女  中庭で働く女がいる。赤い布にハッとなる。柵にかかっている。
その絶妙なバランスがよかった。

フレル 子供と本を読む女のいる室内  おっネコ発見!茶色い大きなネコが小椅子でくつろいでいる。こういうのを見ると和むな?。オランダの絵画には犬だけでなく猫も多く出るのが嬉しい。

デル・ブルフ 士官と女  犬がいてくんくんしている。壁紙が素敵。

フェルコリエ 使者  恋人たちのもとへ「使者」が来る。男は去らねばならない。壁には恋人の死を暗示する「アドニス」の絵が掛けられている。ポインター犬は静か。
使者はふわふわした金髪の若い男だった。

楽器を持つ優雅な男女  あの「使者」らしき男と、残された恋人らしき女がいる。黄色い服が目を惹く。手を握り合う。ここにも犬はいる。

ウィッテ ヴァージナルを弾く女  タイトルどおりの女がいるが、彼女だけではない。彼女の左にはベッドがあり、そこに男がいる。そして奥の部屋では女が掃除をしている。
この絵が世に現れたとき、依頼主はどんな顔をしたろう。それを思うことも楽しい。

デ・マン カード遊びをする人々  女はこちらを向いている。男はその女をじっとみつめる。視る・視られる関係を観る。『ブリキの太鼓』の男と女を思い出した。

四百年前のオランダの人々や町の様子にときめいて、会場を後にした。
12月まで続く長い展覧会。どれほどの人がここへ来て、何を思うのだろうか・・・
関連記事
スポンサーサイト
コメント
こんばんは。
三つ続けてのご鑑賞とはすごいです。
私などどれ一つ続けてはみられず、
対決展など朝入って、5時の閉館の
知らせまで粘ってました。

オランダって不思議な国ですね。
フェルメール以外も結構面白かった
し、新教の国だからヨーロッパの
他の国より女性がいきいきしていた
なんて、説明もあり、教会の中も
面白かったですね。
2008/08/14(木) 23:43 | URL | すぴか #-[ 編集]
☆すぴかさん こんばんは
一つの展覧会に長居したいのですが、なかなかそうもいかず・・・これまでの最長記録はジュサブロー展に3時間でした。

オランダの画家の絵には、裏に物語が隠されているのが面白いです。
無論それをきっちり押さえているわけではないのですが、想像の余地があるのが楽しいところです。
面白かったですね。
2008/08/14(木) 23:59 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
ホーホに開眼
こんにちは。

フェルメールを7点も同時に
観てしまうのは身体に悪いような
きもしないでもないですが、
折角来てくれているのですから
行かないでは居られません。

ホーホを今まで蔑にしてきた
自分が恥ずかしくなるほど
良品揃いでした。ホーホごめん。
2008/08/15(金) 10:07 | URL | Tak #JalddpaA[ 編集]
☆Takさん こんにちは
Takさんの新発見なんですね、ホーホは。
わたしはオランダ絵画に無縁子なんで、それこそホホー(オヤジギャグやなー)でした。
画像を探して、オランダ絵画ばかり集めた海外のWEBMUSEUMをみつけて、ううーむううーむとうなるばかりでした。ホーホいいですよね~
いい内容でした。
好きになりました。
2008/08/15(金) 17:19 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
企画力
私もミルクメイドはすごく好きな絵です。

最近の展覧会を見ていて思うことですけど、このフェルメール展も「よくぞこんな企画を」と思いますね。
一時の美術館設立ブームにのって次々と出来た物の中には入場者を集めるのに四苦八苦してるところも少なくない、と聞きますが展覧会も企画と宣伝やなぁ、と思います。
キュレーターさんの思い入れがどれだけあるか、それが伝わってくるような展覧会は間違いなく楽しめますね。
2008/08/17(日) 00:01 | URL | 紫 #-[ 編集]
☆紫さん こんばんは
企画力って本当に凄いと思います。
地元で言えば京都市美術館。
昔は死蔵するばかりで、よそのコレクションを大々的に展覧会するだけだったのが、このごろはその死蔵品をどんどん展示してくれるのですし。
目的がしっかりすればこうなる、見たいな見本ですものね。

今回のフェルメールで一番気に入ったのは「小路」でした。
2008/08/17(日) 13:21 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
今日(8/25)、朝日新聞のアスパラクラブの特別招待に行って来ました。
単眼鏡必須です。質感が高い作品が多く、よかったです。
個人的に、一番は「小道」、二番が「手紙を書く婦人と召使い」。

展示もよかったし、パネルを使った解説もよかったですね。
2008/08/25(月) 23:47 | URL | 鼎 #PgtEBqSc[ 編集]
☆鼎さん こんばんは
あの「小路」はたいへん良かったです。あれ一枚でも満足です。
今回自前の目でみただけですが、本当にきれいでした。
また行かれるんですか。行く価値のある展覧会でしたね。
2008/08/26(火) 21:46 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
監視員に聞いたら、比較的空いているのは、平日の9時~9時半だそうです。
もう、金曜の夜も混んでいるとか。
招待日は、空いていてよかったです。
10時過ぎから12時過ぎまで、2時間ほど居ました。

学生の夏休みが終わったら、また行きたいと思います。
もっとも招待日の客層を見ると、学生はあまり関係ないかもしれませんが。
2008/08/26(火) 22:38 | URL | 鼎 #PgtEBqSc[ 編集]
☆鼎さん こんばんは
わたしが入ったときは家族連れが多かったです。
フェルメールだけでなく、見応えのある画家の作品が多かったのが特徴的でしたね。
2008/08/27(水) 00:19 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
私が行ったのは金曜日の午後でしたが、入場まで30分待ちと掲示されていました。(実際にはそれ以上待ったと思います)
平日の日中のせいか客層は比較的年齢の高い方が多かったです。

それにしても17世紀のデルフト絵画だけでこれほどバラエティに富んだ内容になるのですね。教会の内部の景観など独自に発展した分野など大変興味深いものでした。
>黒犬
今回の展示作品の登場人物(動物?)の中で一番のお気に入りです。
2008/09/15(月) 22:07 | URL | 千露 #GyvMcuCk[ 編集]
☆千露さん こんにちは
人気(ニンキorヒトケ)ますます上昇ですね。
みなさん当初はフェルメールが目的でも、他の画家の作品に惹かれたようです。
わたしなんぞもそのクチで、どきどきしましたよ。
デルフト絵画には犬や猫が多いのも特徴だと思います。
市民生活、という意識がはっきりしていたからこその登場でしょうか。
満足した展覧会です。
2008/09/16(火) 12:38 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する
最近の記事
月別アーカイブ
カテゴリー
全ての記事を表示する

全ての記事を表示する

フリーエリア