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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

NIPPONの夏

夏に生まれたからか、特別夏と言う季節の風物が好きだ。
いちいち挙げていたらキリがないので挙げないが、その挙げないはずの『夏の好きなもの』が三井記念館で一堂に会している。
見ずにいられるはずもなく、いそいそ出かけたのは、上野で三つの大きな展覧会を見、小さな専門美術館で好きなものに溺れ、数百枚の小袖の絹の海を漂った後だった。
嬉しいことに出かけた日は8時まで開館していた。だからこそ出来た荒業かもしれない。

重厚な三井本館の佇まいを残す展示室1?3にはいつものように、三井各家の歴代当主らが愛しんできた茶道具の数々が並ぶ。
茶碗一つ・茶杓一つにしてもそこに物語があり、床しい趣が活きている。
長次郎の作った黒楽平茶碗を眺めた後、不思議な黒楽を見た。
慶入が拵えた黒楽平茶碗だが、それは不思議なキラメキを見せている。飛騨鹿間山鉱山鉱石釉楽と説明がある。
飛騨は岐阜県である。岐阜県は近代になり、大理石の替わりになる凄い石を産出し続ける土地だということを、思い出す。
そこは岐阜赤坂だったが、そことの距離もなんのその、やはり飛騨でも凄い石を出すのだろう。
一言で綺麗とは言えないが、しかし見たことのないキラメキが目を惹いた。

如庵写しの茶室には池大雅の書が掛かっていた。「打睡」明るい大きな文字。池大雅は画より書にいいなと感じる。
三歳のときに書いた「金山」の文字からしてなんだか面白かった。

さてNIPPONの夏 (こう来ればKINCHOの夏、と必ず言葉が続く)
展示にも工夫が凝らされている。
mir780.jpg

.朝の章
朝顔と涼の粧い
朝顔図 鈴木其一  この朝顔は乱れ咲きも狂い咲きもせず、一輪だけの花を見せている。其一の美意識が、ここでは一輪のみの構図を選ばせたのだと知らされる。
朝顔はやっぱり日本製の青紫や群青が途轍もなく、いい。

夏の朝 葛飾北斎  チラシにも使われる一枚絵。実はこの絵とは初対面ではない。’93夏の『江戸の女』展でも見ている。鏡に写る女の顔、という構図がいい。そして足元にある染付茶碗に朝顔、というのがステキだ。
北斎は「夏の女」を多く描いている。暑さよりも涼しさをその女たちから貰っている。
「夏の女は美しくない」と清方は言ったが、わたしは清方信者であるけれど、その点では北斎を信じている。

着物がいくつか出ていた。夏には夏の涼やかな着物がある。
白麻地松鉄線鶴模様帷子 (友人がこういうのを作っていた)
納戸絽地秋草模様単衣  (お納戸色と言うのもいいものだ。絽は見るからに涼しい)
納戸絽地菊蝶模様単衣  (柄はなかなか可愛かった)
これらが江戸時代の着物で、次は明治のもの。
紅絽地御簾瓢箪模様単衣

微妙な違いが面白かった。ところで大阪にはアッパッパという中高年婦人の夏衣がある。外では着ず専ら家の中で着用。それらはなかなか可愛い花柄の布地で作られている。
なんとなくそれを思い出した。

ガラス製の櫛簪類を見た。いや?涼しいし綺麗です。
ガラスと鼈甲とを継いで作ったものもあり、とてもキモチよさそうで綺麗。
これらはサントリーからの貸し出しらしい。ガラスはやっぱりサントリーなのか。

.日盛の章
 涼をもとめて水辺へ

鯉滝登図 高田敬輔  この鯉の顔にはちょっと笑ってしまった。蕭白のお師匠さんということなので、やっぱり奇想の絵師というところがあるのだろうか。鯉が滝登りするのは竜になるためということだが、この威勢のよさ・ツラツキからすると、なかなかコワモテの竜になりそうな気がする。

青楓瀑布図 円山応挙  天明7 年(1787)
瀑布図 円山応挙 安永2 年(1773)
mir781.jpg
二枚の滝図を見て、やはり天明の作の方が優れているように思った。薄い楓が差し掛かっていることで、絵に優美さが生まれている。
応挙には滝の絵が多いが、この作品は特に優美さでは一番だと思う。

水辺遊興図屏風  これはたばこと塩の博物館で見た。泳ぐ少年たち、舟遊びの女たち、邸でくつろぐ女たちと、料理に忙しい男たち。何とも言えず楽しい気分が湧いてくる図。

夏の祭礼と行事
京都名所十二月(四月兎道茶園、五月賀茂神事、六月四条納涼、七月金閣寺蓮)川端玉章
明治31 年の京都は、既にインクラインも引かれた後だが、それでも月次の行事は変わらなかった。
つい昨日は五山の送り火だったし。絵の中で金閣寺の蓮池を見て、あるマンガを思い出した。
水島新司の作中で、こんなシーンがある。
「これが昭和25年に焼けて再建された金閣だよ」
「こんなに周りに水があるのに使えなかったのか」
いつでも金閣を見ると、そのことを思い出してしまう。
他にも『祇園祭礼図屏風』があった。何と言うてもやっぱりこれですわな。

國貞の江戸自慢シリーズが3枚あった。
真崎みそぎ、仲の町灯籠、五百羅漢施餓鬼  このうちの羅漢堂はもしかしてサザエ堂のことのような気がする。真崎にはお稲荷さんがある。(剣客商売の秋山大次郎も住んでいる)、仲の町の灯篭は綺麗だとも聞く。他にどんな自慢があるのかは、知らないがまだ夷敵も来ない頃だから、最後の江戸文化を楽しんでいたのだろう。
 
夏のデザイン

永楽和全の作品もいくつかある。三井家は永楽家を支援していたから、当然のことだが、改めて色々見せてもらうと、嬉しい。わたしは和全より保全の作品の方が好き。
乾山写色絵草花文小皿、菊谷焼十二ヶ月絵替茶碗・・・これらは以前からあちこちで見ているので馴染み深く、いいキモチ。可愛くて本当にステキだ。

櫛・簪・紙挟み・楊枝入  紙なのかなんなのかわからない素材の、小さい袋物が出ていた。江戸?明治時代らしいが、なかなか派手な柄。先日、坂本竜馬所蔵のそれらを見たところだが、丁度そんな感じ、やっぱりこういうのが流行っていたのだな。

染象牙果菜置物(無花果、茄子) 安藤緑山  大正?昭和にかけても、こんな技能を持つ職人がいたこと自体が凄い。いや、だからこその彼らか。どう見ても本物。惜しくも色の定着技術を隠したままだったので、今では滅びてしまった技術。凄いです、本当に。
他にも凄い職人はいる。

自在昆虫置物 高瀬好山  同時代人。自在と言うのは手足の関節が本物のように可動すること。以前科学博物館でも見たが、この技術はかなり古くからあるのだった。

色ガラス棒虫籠08081701.jpg
これはもう今回の展示物中でもわたしのベストの一つに選びたい。凄くきれいで涼やか。見るからにいい感じ。

 涼のうつわ
古染付と薩摩切子が色々出ている。見るだけで涼しいのだが、手に取るともしかして、水温を感じるくらいの涼しさがあるかもしれない。
わたしはコバルトの含有量は多い方が好きなので、ちょっとこの系統とは縁がないが、それでも涼しさと言うことを考えれば、こちらの方が相応しいだろう。ぼっぺんまであった。

.夕暮の章
夕立と夕涼み

寒泉浴図 喜多川歌麿  これは珍しいような背中からのヌードで、顔は見えない。表からのもさぞや、と思うが構図そのものにハッとなる。わ印ではなく市井風俗画。と一応書いておこう。
しかしまぁ他に見たことのないような構図だった。
春画より却ってこういう構図にときめくお客が多かったろうなぁ・・・

両国川開図 歌川国貞  行き交う舟の女たち。遊楽気分が湧いてくる。一度くらい両国の花火を見てみたいと思っている。隅田川を行く屋形船では遊んでいるが、あれも楽しいものだった。

.夜の章
 夏夜の楽しみ―舟遊び、花火、蛍狩

鵜飼図 円山応挙  鵜飼いといえば蕪村か玉堂というイメージがある。この川は応挙の故郷・亀岡の保津川か、その終点の嵐峡か。薄い墨の使い方が涼しくていい感じだった。
 
蛍蒔絵茶器 柴田是真  是真の蛍をモティーフにした作品は、逸翁にもある。グラスに蛍が止まっている構図。蛍の蒔絵は他にも色々見ているが、やっぱり是真の構図は一味違うように思った。

蚊帳美人喫煙図  これもたばこと塩の博物館で見ている。芝居や浮世絵に親しんでいるから蚊帳をどう吊るかはなんとなくわかるが、実際のところ使ったことがない。むかしむかし家にあったそうだが、いつの間に消えたのだろう。わたしもこの女のように蚊帳でくつろぎたいが、あいにくタバコを吸わないので、絵にもならないのだった。

かなり楽しめたが、さすがにぐったりした。「立て、立つんだジョー」と独り言を呟きつつ、ソファから立ったのが、丁度閉館5分前だった。
わたしみたいなムチャクチャなことをせずともよい方々は、ゆっくりとお楽しみください。既に後期が始まり、9/15まで続いている。(NIPPONの猛夏はまだまだ続きそうだが)

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コメント
こんばんは。
「NIPPONの夏」よかったですね。あそこに夜8時までいらしたのですか?凄いなあ。ほんとにいろんなところへ出かけられて、私など夏は出るのも億劫で不精をきめこんでいます。

もう後期がはじまってるので、そろそろ出かけなくてはと思っています。
2008/08/17(日) 23:43 | URL | すぴか #-[ 編集]
こんばんは。早速のTBをありがとうございました。もう後期の展示が始まっているのですね。なるべく早く拝見したいと思います。

応挙の青楓は抜群ですね。夏にかける軸としては最高の作品ではないでしょうか。また絵画だけではなく仰るように虫かごや、あと青く透き通った煙管など、工芸でも涼を楽しめるものが多かったのも嬉しかったです。色々と日常でも工夫して暑い夏をしのいだのでしょうね。

冒頭の樂もまた楽しめました。平茶碗はあまり見たことがなかったので面白かったです。
2008/08/18(月) 20:59 | URL | はろるど #GMs.CvUw[ 編集]
☆すぴかさん こんばんは
見応えのある展覧会でした。
わたしは遊びに行く間は、後先考えずに行動するので、後が思い遣られるんですよ。
毎度帰宅してはトホホです。
夏は比較的元気なので、どんどん出かけます。でも反動がコワイような(笑)。


☆はろるどさん こんばんは
夏の涼を十分に楽しませてもらいましたね。
展示にも工夫があり、よかったです。
機械的な冷房装置がなかった以上、気持ちだけでも涼しくあろうと言う和の心に感心しました。
やはりNIPPONの夏は最高ですよ。
2008/08/18(月) 23:10 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
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