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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

丸木スマ展

丸木スマの展覧会に行った。
八王子から北浦和へ出たのだ。
丸木スマは50年ほど前に亡くなった。
70歳を迎えてから息子の嫁の丸木俊の勧めで絵を描くようになり、10年ほどの間に随分多くの絵を描いた。
埼玉近代美術館ではそのスマの回顧展をしている。
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彼女は嫁入ってから家業と野良仕事に精を出し、子供を多く育てた。
働きづめの女が閑になり、嫁からの勧めで絵を描き出すと、止まらなくなった。
きちんとした絵画教育は受けていないが、息子に位里、娘に大道あやがいることから考えても、絵の才能があったようだ。
どの絵を見ても明るい楽しさを感じる。

パースの狂い・事物の大きさの間違いなども大した問題ではなく、描きたいものを描きたいように描く。
その姿勢を貫いている。
その堂々とした態度が心地いい。
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チラシの植物と動物と鳥たちが渾然一体となった作品は『簪』というタイトルで、スマ作品で一番大きいものだそうだ。
細かに見て行けば石楠花が咲くことや、紫陽花も満開だとわかるし、猫だけでなく木の間隠れに鳥たちが力強く飛び交うのにも気がつく。わたしのニガテなトリも地を歩く。とんぼも蝶もいて、数だけでいえば若冲のイキイキ動物家族(勝手なタイトルをつけるな、遊行)にも匹敵するのだが、この絵はどの動物がどうの、というのを観る作品ではない。
スマの身近にある生命そのものを一緒に混ぜて寄せて、仲良しにさせた作品なのだ。
食物連鎖の環の中にあることすら遠い、みんなが集まりまぜこぜになった絵なのだ。
色がどうのとか線がどうのというのは、些細なことにすぎない。
「いい絵だなー」
この感情が一番大事なのだ。嬉しい、いい絵だった。

わたしは町の子なので身近な動物といえば猫と犬くらいしかいなかった。
そもそも祖母がネズミ嫌いで、猫を絶やさないようにしていたようで、家にも猫・近所の祖母の家にも猫、ご近所の猫たちゾロゾロ・・・という環境だったことで、猫が一番好きだ。
(今朝も通勤途中、ヒトサマの雑草生い茂る庭で集まる猫たちを見て、機嫌がよくなった)
ネズミも生きたのを見たのは数えるほどしかない。
あんまり好きではないネズミだが、ここにある『めし』に群がるネズミたちには、優しい気持ちが湧いてくる。ちょっとトボケたような顔つきのネズミたち。ごはん食べてんねんなぁ・・・としみじみ眺めた。

眺めてゆくうちに、自分が田舎に遊びに来てる気がした。
わたしは生粋の大阪人で、土着民なので田舎を持たない。
小学生の夏休みは大抵が、駅向うの祖母の家にいた。その祖母にしても田舎暮らしを知らない人なので、孫のわたしとはリカちゃん人形かままごと、もしくはレコードを聴いたり映画を見たりする他に、商業地に出たりして遊んだ。没落地主の成れの果てだから田畑もないし、あってもそれらは建物に姿を変えている。
そういうわけで自然と言うものと触れ合う機会が、子供の頃にはまず、なかった。
別にそれでいいと思う一方で、やっぱりちょっと田舎と言うものを経験してみたいような気もした(ただし数時間で撤退するが)。
それを今、スマの絵が並ぶ中で体感している。

『ひまわり』 mir789-1.jpg

葉が青いひまわりが存在しないことを、スマの言葉を読むまで完全に忘れていた。
「青のほうが色が張り合うていいじゃろう」
なるほど、それで群青色なのか。しかしその文を読むまで、わたしは何の不審感もなく眺めていた。
黄色が好きなのでそれに惹かれていたのと、黄色と青色の関係が「張り合う」ことを綺麗だとみていたからかもしれない。

ひどくいい絵があった。『花見』 桜の森の下でおばあさんが茣蓙をひいてニコニコ笑いながら皆を待っている。巨大なおばあさん。わたしも遊びに行きたい・・・

『柿』 大きな柿の実と、それより小さな人々。スマ曰く「柿を大きく描いたら人を描くのが小さい場所になった」・・・こういうのを天衣無縫というのだろう。

最後に『黄菊白菊』mir789.jpg
これを見て「オヨ?」と思った。
この前日に見た松坂屋所蔵の小袖にそっくりなものがあった。
mir776-2.jpgなんとなく嬉しくなった。

思えば前回この美術館へ来たのは、熊谷守一展だった。あのときも自然を多く味わった。
クマガイの自然とスマの自然。方向は違うが、いい気持ちなのは同じだった。
展覧会は915まで。



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コメント
位里さんと俊さんの原爆関連の絵はすごく有名ですが、スマおばあちゃんの絵心も、さすが位里さんのお母様!!って思いますよね♪
展覧会はまだ未経験なのですが、スマさんの豪快でのびのびした絵のタッチを見ていると、元気が出るというか、あたたかい幸せな気分になれますね。(^^)
ひまわりの絵の色合いは素晴らしいと思います。補色同士の刺激的な組み合わせなのになぜかしっくりくる、というのが、スマさんのセンスを感じますね。

☆以前にもお聞きしたかもしれませんが、遊行さんはどうして鳥さんが苦手なんですか?(^^ゞ
2008/08/23(土) 15:16 | URL | tanuki #s.Y3apRk[ 編集]
☆tanukiさん こんばんは
自然と共に生きる人のパワーを感じました。凄くよかったです。
スマさんは81歳で不慮の死を遂げるのですが、そんな事故にさえ遭わねばまだまだ長生きして、豊かな作品をどんどん生んでいたろうな、と思います。

トリ忌避は一種のアレルギーです。
説明のしようがないですねぇ。
2008/08/23(土) 23:09 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
熊谷の時も「天皇さんが私の絵をご覧になって子供の絵かと」
丸木スマも院展に入選したとき子供の絵かと間違われて、これは技巧に走る現代絵画へのアンチテーゼととらえられた。
そうみると子供の力というものはすごい。
子供を無垢で純粋な存在と祭り上げるわけにはいかないけどー。
僕も田舎がない、東京の人です。
ちなみに展覧会は8/31までです。
常設のタイガー立石はいかがでしたか?
2008/08/25(月) 21:28 | URL | oki #-[ 編集]
☆okiさん こんばんは
骨太ないい展覧会でしたね~
元気になる感じでした。

タイガー作品は別記事で挙げます。
ここの美術館はけっこう面白い企画が多いですよね。
2008/08/25(月) 23:16 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
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