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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

今年のアートコレクション

夏恒例のホテルオークラの『アートコレクション』に出かけた。
このチケットには近辺の泉屋分館・大倉集古館の展覧会チケットもついている。
いつもの通りホテルの地下へ行くと、随分賑わっていた。
今回のタイトル『パリのエスプリ・京の雅・江戸の粋』。
まずパリのエスプリから。
mir793.jpg
モネと言えば睡蓮・アルジャントゥイユ・妻カミーユというイメージが湧く。
チケットにもなった『睡蓮』はアサヒビールの所蔵で、時々見かけることがあるが、ここに出てくるのが嬉しい。

顔がはっきり描き込まれた『カミーユ夫人』もある。この絵は何年前かのアートコレクションにも出ていて、それ以来の再会となる。
濃青紫の服を着たカミーユのちょっとしんどそうな顔。サファイアらしき指輪を嵌めた手には青い花がある。赤の勝ったソファ、カーテン、緑の壁紙・・・色の配置が綺麗だと思う一方で、カミーユの硬く閉ざされた口許が、なんとなく気にかかった。
mir793-1.jpg

ドービニー、ドガ、ピサロ、シスレー・・・近代パリのエスプリを表現した画家の作品に混じって、少し昔の画家の絵もあった。

ブーシェ『プシュケとキューピッド』  禁忌を破り闇の褥に光を差し込むと、そこには美しい男性がいる。・・・それだけではなく、青年キューピッドの他にちびっこキューピッドまでいる構図なのだった。
ブーシェには宮廷文化特有の官能性があり、それが発酵している。
可愛らしく、そして艶かしい人物たちの表情に惹かれる。

セザンヌ『庭にある大きな花瓶』  ブーシェから150年ほど経つと、全く違う世界が開かれる。
これは今回の展示の中でも一際目を惹く作品だった。
青色がとても心に響く。背景がなんで斜めに塗られているのかとか、青色が塗り重ねられているとか、そんな細かいことよりも、絵として心に刻まれる名品だった。
こんな作品に会えるから、この展覧会は好きなのだ。

珍しくティソのエッチングが三枚も出ていた。いずれも新潟・万代島美術館所蔵品。
'91年に大丸梅田で展覧会があり、パリの女たちの情景を多く表していた。
こうした風俗を描く画家の回顧展は、デパートでの展覧会がとても合うように思う。
つまり観客はそれを見てから時代が違うとは言え、オシャレさを味わい、そこから何がしかのサインを受け取り、そして購買欲をかき立たせる・・・
その意味では、彼の回顧展をデパートで観るのはとても楽しいことだった。
『野心を持つ女』 パーティでの一瞬。女の目がギラッと輝くのが捉えられていた。

続いて京の雅・江戸の粋。
冷泉為恭『鷹狩り・曲水宴図襖』 トラの毛皮を敷物にしているのが、贅沢さを示している。為恭らしい群青色が見受けられ、幕末において復古大和絵に精進した絵師の求めるものが何だったのかを、少しばかり想像した。

松村景文・田中訥言『江口の君図』  二人の合作で、象が景文。江口の君は遊女だが、実は普賢の化身であると言う説話が、中世以降広まり、近代に至るまで様々な画家が描いている。

宮川長亀『上野観桜図・隅田川納涼図』 夏の景色の方がよかった。屋形船には役者も乗り、遊楽気分が満ち満ちている。駒方まで向うご一行。宮川派の絵はあまり見ないが、こうして出会えるとなかなかいい作品が多くて嬉しくなる。

竹内栖鳳『虎』mir794.jpg
栖鳳は多くのトラを描いたが、このトラたちはとても可愛いトラたち。猫の親分たるトラたち。 四条円山派の、というよりも岸派のトラ。つまり岸竹堂―西村五雲―山口華楊の系譜と密接な関わりを感じさせるトラちゃんたちなのだった。

伊東深水『お手前』 高島田に結った婦人が赤楽を手にしている。世の中が落ち着いてきた頃の作。深水はこういう格の高い婦人を描くのも巧い、といつも思う。

今回あいおい損保から華岳と青邨の椿の絵が出ていた。あいおい損保は椿をモティーフにした作品のコレクションで有名だが、こうして二枚も出ているのが嬉しい。
わたしも洋画日本画工芸品にかかわらず、椿をモティーフにしたものがとても好きだ。

北斎『諸国名橋奇覧』 北斎のシリーズものでも、この橋シリーズはかなり好きなものなので、出てくれているのが嬉しい。むかしむかしは『大坂八百八橋』とも言われたが、いつの間にか大阪から橋が消えていったように思う。
わたしも水辺の土木として、近代の橋脚を見るのが好きだが、そんな気持ちでこのシリーズを眺めると、また違った感興が湧いてくる。

色々みるべきものが多く、楽しめる工夫もあり、毎度のことながら満足して会場を出た。
今年わたしの投票作品は・・・やっぱりセザンヌのあの作品だと思った。
今月末までの展覧会です。
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コメント
猫の親分
こんばんは。

>このトラたちはとても可愛いトラたち。猫の親分たるトラたち。
ほかの作品では猛獣らしい虎が描かれているんでしょうか。これがはじめてみた栖鳳の虎でしたので。

僕もセザンヌに一票入れておきました。
2008/08/26(火) 00:59 | URL | キリル #ZgLpcwNk[ 編集]
こんばんは。今年も名品が随所にちりばめられていましたね。私のベストはかの虎ですが、おそらく会場の投票での一番は遊行さんの挙げられたセザンヌになるのではないでしょうか。見事でした。

今年は名画の力押し一辺倒ではなく、版画などにもウエイトの置かれた、緩急の妙にも冴えた展示だったと思います。真夏の東京のアートの風物詩として末永く続けていってほしいものですね。(ところで遊行さんは何回目から御覧になられているのでしょうか。まさか初回とか…。)
2008/08/26(火) 01:14 | URL | はろるど #GMs.CvUw[ 編集]
☆キリルさん こんばんは
栖鳳の猛獣は獅子の方ですね。
トラはわりとかわいいというか、ゴロゴロしてます。
近所の京都市動物園へ弟子らを連れて動物の写生をしばしばしていたそうです。
その作品群は隣の京都市美術館に多く納められています。
なかなかいい感じですよ。


☆はろるどさん こんばんは
セザンヌvsトラ。対決ですね(笑)
仰るように緩急自在で、見る側に緊張と和みとを与えてくれますね。
こういうのが巧いなと思います。

ラジオ体操なら、皆勤賞がいただけるところですね。
第一回の時、大倉集古館から案内が来たのですが、こんなに隆盛になるとは思いませんでしたよ。
2008/08/26(火) 21:58 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
こんばんは。
今読んでいてすっかり思い出し、たのしかったななんて、4日前に行ったばかりなのに。あのトラさんには参りました、なんともふくよかな毛並み、触りたい衝動に駆られました。
2008/08/31(日) 23:45 | URL | すぴか #-[ 編集]
☆すぴかさん こんばんは
展覧会と言うより夏恒例のアート・イベント、という感じで楽しんでます。
あのトラちゃん、普段は宮内庁三の丸のどこかでお昼寝しているようです。
金毛の可愛いトラでしたね~~
2008/09/01(月) 22:04 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
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