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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

紙と語る Paper and Materials

大倉集古館の『紙と語る Paper and Materials』を見る。
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タイトルの意味についてはサイトに以下のように書かれている。
紙は今から2000年近く前に中国で発明されて以来、文字を記し、画を描くための支持体として、あるいは造形を容づくる材料として、人々の限りない活動の記憶を留めてきました。 仏典は外来の宗教である仏教の教えを形あるものとして伝え、また印刷技術の発展は膨大な量の知識を広範にすることを可能としました。そのほか、華麗に装飾された絵巻や草紙、かるたなどの遊びの道具類は日々を楽しませる娯楽の品として愛好されました。 人々の生活の中で最も身近かつ手軽な素材として親しまれてきた紙を媒介として生み出された美術の諸相を、館蔵品と共に特種製紙株式会社・Pamより新たにご寄託頂いた作品を中心に展観いたします。
☆Pam(Paper and Material)は特殊紙の専業メーカー特種製紙が研究開発・営業販売支援活動の拠点として2002年に設立した施設です。

たまたま見に行った日が北京五輪開会式の後だったので、あの長々しいショーが蘇ってきた。そしてここに書かれていることの大半が、なんとなくつながっている気もした。

「平家納経 模本」 田中親美筆 33巻のうち 大正時代
大正の田中の仕事を見る機会に、ここ数年恵まれているが、どれを見ても本当に綺麗だと思う。この平家納経の実物は奈良国立博物館などの展覧会『厳島社宝展』『美麗展』などで見ているが、その模本の美しさは本当に見事だ。綺羅を鏤める・・・その技巧に溺れるばかりだが、平成の現在では、この完璧な美しさは再現できないのではないか。
去年辺り、源氏物語絵巻を、作られた当初と全く同じ色で再現したものを見たが、それはちょっとばかり興醒めだった。絵だけでなく、彫塑もそう。
十二神将のフルカラーバージョンを見たときには逃げたくなった。
つまり褪色と剥落という時代の流れ(加齢現象)が日本人の美意識にそぐいすぎた結果、初期再現品に美を感じなくなる感性が培われたような気がする。
大正期の再現模写はその当時の現況を写し取ったわけだが、田中の技能がすぐれているからこその、名品なのだった。

「瑜伽師地論 巻第六十六」 1帖 奈良時代・天平16年 石山寺旧蔵
わたしは天平時代の文字が一番好きだ。だから書聖・王義之の文字より、弘法大師の文字より、天平時代の硬い楷書の並びが好ましい。普段は書の展示は見ないが、天平時代の書は眺める。意味を読み取ることはせずに。

「百萬塔陀羅尼経(附・百万塔)」 4巻 奈良時代
この百万塔は、キリスト教(特に新教)16世紀頃の遺品に形がよく似たものがある。無論こちらの方が古いので、もしかするとシルクロードを越えて西に流出したのかもしれないし、もしくは大航海時代に中国からあちらへ渡ったのかもしれない。
そんなことを考えながら容器を眺め、文字を見る。
実は陀羅尼という文字を見ると、すぐにわたしは友人が飲んでいた陀羅尼助丸を思い出すのだった。

薬師寺旧蔵の大般若経もあった。これは長屋王が写経させたものだが、長屋王は気の毒に謀られて悔し死にをした。祟りてきめんかどうかは別として、ライバルも一挙にあの世に行ったので、やっぱりこの時代の感情としては、怖いものだったろう。
後世の崇徳天皇といい、非業の死を遂げた雲上人の遺したお経はなんとなくこわい・・・

「古経貼交屏風」 6曲1双 奈良?鎌倉時代
どうもこういうのを見ると、横溝正史『獄門島』の屏風を思い出す。あの一枚の屏風に全てのナゾが込められていて、それを金田一が解読できなかったばかりに惨劇は起きたのだ。

「孔雀経音義 巻上・中・下」 3帖 平安時代 高山寺旧蔵
虫食いが甚だしい。しかしそれがえもいえぬ魅力になる、と言うのはこれは日本の古美術独自の感性だろうか。

「石山切 貫之集・下」 平安時代・天永3年 1幅
文字を書く紙そのものが美麗であり、文字そのものも本来の存在意義を離れて、美しい装飾に見える。

「初期大津絵 青面金剛」 1幅 江戸時代
他にも藤娘、猫とネズミ、外法の梯子剃りなどがあった。素朴な味わいがいい。

「奈良絵本 忍びね物語」 3冊 江戸時代
これはなかなか面白い物語らしい。平安の世のことだから妻問い婚。男児にも恵まれたが男は去り、女は宮廷に出仕したところ帝の目に留まり、寵愛を受ける。生まれた男児はやがて帝位に上ることになる。再会した男と女は元に戻らず、男は遁世し、彼の息子は長じて後、これも世を捨ててやがて父に再会する。絵も綺麗だが、物語が気にかかる。

「源氏物語(附・富岡鉄斎画木函)」 40帖 江戸時代
ところが、裏しかなくて絵が見えないんですが。
「絵入 源氏物語かるた」 1組 江戸時代
小さい小さいカルタだが、絵も綺麗に描かれていて、とても雅。
源氏香のカルタもあり、木印もあった。小さくて可愛い。こんなハンコ欲しい・・・

百鬼夜行図巻 江戸時代 
オバケの楽隊が可愛い。チラシでもズンタカズンタカ歌い踊っている。色んなパターンがあるが、大体どれもこれも可愛い。

職人尽画帖 桃山時代
双六のばくち打ち、大原女、経師屋、刀研ぎに鍛冶屋・・・京都文化博物館には職人尽をジオラマ化した展示品があり、お客さんに愛されている。

丹緑本「いるか」 江戸時代 (入鹿誅殺の物語)
遊楽人物図 江戸時代
繋馬図 江戸時代

江戸名所四十八景 二代目歌川広重 万延?文久年間 
他に近松、西鶴の浄瑠璃本があった。こういうのを見ると、それだけで文楽に行きたくなる・・・わたしは芝居は世話物、特に生世話物が好きなのだ。

地味だが面白い展覧会だった。
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コメント
大変勉強になる展覧会でした。
確かに「源氏物語(附・富岡鉄斎画木函)」は箱裏の署名しか見られませんでした。
ばくち打ちが職人というのは、愉快ですね。
2008/09/03(水) 07:45 | URL | とら #8WYMted2[ 編集]
☆とらさん こんばんは
派手な展覧会もいいですが、こうした地味な、しかしとても内容のしっかりした展覧会は本当に勉強になると思います。
こういうところから色んなことを学んだり覚えたりしますものね。

長谷雄草紙でも賭博シーンがありますが、中世ではそれが職業として認識されていたのが面白いですね。
常民の中に納まってたんやなーと思いました。
2008/09/03(水) 23:11 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
http://blog.goo.ne.jp/harold1234
こんばんは。TBをありがとうございました。
アートコレクションの券がなければひょっとすると見逃していたかもしれませんが、
実際はなかなか見応えのある展示で楽しめました。
石山切あたりは読めなくても図像がきれいで素敵ですよね。
書と文様が美しく調和しているように思えました。

>百萬塔陀羅尼経

本当に百万を刷ったのでしょうか。数にまず驚きました。
2008/09/05(金) 22:57 | URL | はろるど #GMs.CvUw[ 編集]
☆はろるどさん こんばんは
石山切はどれもこれも見事なんですよね。
王朝継紙は優美で雅な和の美の真髄ですね。
鎖国したから生まれたものなのだと思うと、
なかなか感慨深いです。

>百万
日本人て不思議なことに「百万」という数字が好きなんですよね。
京都に百万遍という地名もありますし、その由来は近くの知恩寺での百万遍の数珠繰りから来てますし、「百万ドルの夜景」と表現するのも日本独特です。謡曲「百万」というのもありますし。
・・・本党に擦ったかはさておき、その数字そのものが魅力的です。
2008/09/05(金) 23:23 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
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