FC2ブログ

美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

『ぐりとぐらとなかまたち』山脇百合子絵本原画展

山脇百合子と聞いてもわからない人もいるだろうが、『ぐりとぐら』『いやいやえん』と来れば「ああ!」「オムレツ!!」「赤いものがきらいな男の子!」と声をあげる人も多いだろう。
おねえさんの中川李枝子さんの文章と妹の山脇百合子さんの絵で繰り広げられる物語の数々。
mir798.jpg
うらわ美術館で『ぐりとぐら』を中心にした山脇百合子原画展が開催されている。
ぐりとぐらは双子の野ねずみの兄弟で、赤色と青色の色違いのお揃いの服を着て、いつも機嫌よく暮らしている。
現役の子供さんから、むかし子供だった人までが大好きなぐりとぐら。
mir799.jpg
色んなカタチで愛されるぐりとぐら。
まったく違う場所に不意にぐりとぐらは姿を見せることがある。
それはたとえば男性マンガ家の作中に小さく現れたりもする。
皆川亮二のヒロインは「グリトグラ」ホテルに宿泊し、車田正美では赤ん坊に与えられた絵本は「くりとくら」だった。
それがなんとなく楽しい。

・・・とここまで書いて正直なところを言うと、わたしは二十歳を過ぎるまで『ぐりとぐら』を知らなかった。
ある日、げっ歯類ぽい友人が、いきなりへんな歌を歌いだした。
わたしもよく作詞作曲ついでに既製曲の編曲&替え歌を歌いだすが、それにしてもやたらと♪グリトグラ?と歌うのがヘンだ。
そこで聞いてみると、ちゃんと原作があると言う。
それが『ぐりとぐら』だった。mir801.jpg

調べるとあの『いやいやえん』の絵の人の絵本だとわかり、嬉しくなった。
それで『ぐりとぐら』にも興味が湧いたのだが・・・
なぜか、どうしてもファンになれなかった。
きらいではない、しかしファンになれない。
これはどういうことなのか。

ぐりとぐらは日常の些細な幸せを、楽しみを、喜びを、描いている。
森の中の小さな家に住まい、手作りに勤しみ、そして友人たちと仲良く過ごす。
言ってみれば起伏の少ない、優しい物語。幸せのありか。
わたしが、そこからあまりに遠く離れて生きているからだろうか。
どうしてもわたしは森の外にいるヒトにすぎなかった。

それではわたしは無縁の人かというと、そうでもないらしい。
山脇百合子作品には『いやいやえん』がある。
いやいやえん―童話いやいやえん―童話
(1962/01)
中川 李枝子大村 百合子


創作童話『いやいやえん』1962年以来どれほど版を重ねているか想像もつかない。
7つのエピソードで成り立つ創作童話。リアルな日常と、そこから横滑りしたちょっとファンタジー要素のある作品。わんぱく園児しげるの経験するちょっと不思議な出来事。
でもどんなに遠くへ行っても、行ったきりにならず、必ず帰ることができる物語。
わたしは生活の知恵を身につけた賢いぐりとぐらより、何を仕出かすかわからないしげるの方が好きなのだった。
(物語の概要は『絵本ナビ』にある。リンクを貼っている)

話が横滑りするが、わたしは幼稚園の頃から物語性の強い読み物が好きで、絵本ではなく、挿絵のある読み本ばかりを読み耽っていた。当時から既にかなりの妄想癖があり、それで勝手に恐怖に駆られていたので、日常生活にちょっと困難があったりした。
それは今も実のところ変わってはいない。
一例を挙げると、団体行動が好きではない。嫌いでしないのではなく、出来ないから嫌いなのだ。
「普通になってくれ」とこのトシで上司にイヤ味を言われ懇願されもするが、その「普通」がわからない。(尤もうちの会社の女子社員は、伝統的に「強気」か「偏屈」かのどちらかで、わたしは後者の方に分類されるから、却って我が社的にはフツーなのかもしれない)

さてそんなわたしだから、ぐりとぐらに共感できないのかもしれない。
ぐりとぐらは森の友人たちと仲良く暮らしている。一緒にオムレツを作ったり、木の実を集めたり、パーティをしたり、お掃除をしたりする。
わたしはなんにもしない。
一方、しげる。しげるは幼稚園で大暴れする。先生の言うことを聞かない。行っちゃいけない場所に行く。お仕置きを受けてちょっと反省するが、翌日はやっぱりいたずらをする。
・・・わたしの日常ですか、これ。
mir802.jpg

最初に読んだのが幼稚園のときで、つい先日も再読したから、何十年も読んでいることになる。
しかし飽きない。飽きないし、面白くて仕方ない。
それでやっぱり、しげるの行動に共感したりする。
ええ加減オトナにならんかい、遊行!
でもやっぱり『ぐりとぐら』より『いやいやえん』がスキなのよ、わたし。

その意味では、『ぐりとぐら』は子供らの為だけの物語ではなく、むしろささやかな喜びを積み重ねて幸せを生み出す日常に属しようとする人々のための、絵本かもしれない。

たとえばターシャ=チューダーの世界と『ぐりとぐら』とには共通するコードがある。
緑の中で生きる、それが二者をつないでいる。
わたしはどちらも素敵だと思うし、憧れるが、その世界には半日しかいられない。
半日後には、元のざわめきの中に戻りたい。

色んなことを考えながら原画を眺めて歩く。
他にも多くの絵本を山脇百合子さんは描き続けている。
子供の頃、もし『いやいやえん』ではなく『ぐりとぐら』がわたしの手元にあったら、どうだったろう。わたしはもしかすると、今のわたしとは違う人になっていたかもしれない・・・

ありもしない姿を想像しながら、美術館を出た。ちょっと泣けた。展覧会は31日まで。
mir800.jpg


関連記事
スポンサーサイト



コメント
私は『ぐりとぐら』は子どもの頃大好きでしたが、『いやいやえん』は知りませんでした。
入院生活が長かった姉が『いやいやえん』を病院で読んでいたそうで、抑圧された病院生活のうっぷんを、この本を読んで晴らしてた(?)みたいです。
姉は遊行さんと似た性格のようで、わりと絵本より読み物が好きで、妄想癖があり、団体行動が嫌いというのも同じ。こういう性格の人は『いやいやえん』って共感できるのかも。
私は(今は違いますが)子どもの頃、絵本の絵しか見ない子だったので『ぐりとぐら』の方が好きだったようです。今なら、どちらも好きだろうなぁって、思います。
本当に好きだったわりに、大人になってから一度も手にした事がないので、こんな展覧会があると知ると、久しぶりに見たくなりますね。図書館でも行って、読んでこようかな?
2008/08/30(土) 19:50 | URL | えび #-[ 編集]
☆えびさん こんばんは
面白いですよね。
ぐりぐら派といやいや派。
へんなこと言うようですが、わたしは今でも情緒不安定型でして、静かな気持ち・落ち着いた心持ちというのにあんまりならないんです。
波風の立たない凪のような状態になると、何か楽しいのか?とマジで考えるときがあります。
やっぱり今でも日常からの離脱ばかりを狙ってるのかしら・・・

ところで「ももいろのきりん」ご存知ですか。わたしはこの絵本もとても好きでした。

2008/08/30(土) 23:16 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
私もけっこう、落ち着いた「癒し系」よりも、波風立っても、やってける気丈夫な主人公が出てくるお話の方が好きかなぁ。松谷みよ子さんの『ももちゃんシリーズ』とか、トーベ・ヤンソンの『ムーミン・シリーズ』など、好きです。
残念、『ももいろのりきりん』は読んだ事がありません。中川御夫婦の作ですよね。探して、読んでみよう!
2008/08/31(日) 09:22 | URL | えび #-[ 編集]
☆えびさん こんにちは
モモちゃんもムーミンも大好きです。
あと長靴下のピッピとか。
『ももいろのきりん』は今でも「巨大なピンクの紙が手元にあって、それをきりんの形に切り抜いたら、出てくるのではないかな」と思うことがあります。
2008/08/31(日) 11:29 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
人様の本棚
人様の本棚やレコード棚を、見るのが好きです。
自分のは勘弁だけど。

そうしたら、こんなサイトがありました。
http://woman.excite.co.jp/Culture/hondana/

http://www.flickr.com/search/?q=record%20shelf&w=all

本棚のサイトの「母と子の本棚」で、『ぐりとぐら』が
しかも、30年前の絵本
http://woman.excite.co.jp/Culture/hondana/sid_182301/

ちなみに、私の記憶には『ぐりとぐら』は、存在しません。
2008/10/12(日) 23:10 | URL | 鼎 #-[ 編集]
☆鼎さん こんにちは
色んな本棚がありますね。
3年くらい前のわたしの本棚は以下です。
http://yugyofromhere.blog8.fc2.com/blog-entry-308.html

ぐりとぐらは、実はわたしも長らく知らなかったのです。いやいやえん派だったからかなぁ。
どっちかに分かれるようです。
出た時代がありますからねえ・・・
2008/10/13(月) 11:19 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する
最近の記事
月別アーカイブ
カテゴリー
全ての記事を表示する

全ての記事を表示する

フリーエリア