FC2ブログ

美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

大阪の「青春のロシア・アヴァンギャルド」

東京から大阪に来る間にタイトルと内容の変わった展覧会がある。
「青春のロシア・アヴァンギャルド」である。
mir880.jpg
夏にブンカムラで開催していた頃は副題が「シャガールからマレーヴィチまで」だった。
今は副題がなく、さらにお詫び文章まで出ている。
なんでも美術館側は本物だと認めている作品が、遺族がウソだと言い出したらしい。
真偽のほどは定かではない。とんだことになったが、シャガールもカンディンスキーもなくたって、十分楽しめる内容になっていた。

1-1 西欧の影響とネオ・プリミティヴィズム
どの政府も大抵200年で劣化し、それ以上長く続いたとしても途中で何がしかの変があったり乱が起こったりする。
帝政ロシアも末期になると欧州風になり、却って最先端のカルチャーが入り込んだりした。
プーシキン美術館に所蔵されているシチューキン・コレクションなどは以前展覧会も開かれた
そこにあったのは、当時最先端の印象派や野獣派の作品だったりする。
そんな中で欧州の影響を受けた作品が生まれだす。
ところでロシア・アヴァンギャルドと言えば4年ほど前、庭園美術館などで開催された「幻のロシア絵本 1920-1930年代展」が思い出される。
一方で、祖国ロシアの大地への回帰というか、ロシアが西洋ではなく東洋でもあるという意識を持って、制作した作家たちもいた。

ナターリヤ・ゴンチャローヴァ 杏の収穫mir881-1.jpg
第一次ロシア革命から3年後の作品だが、既にその時代性を飛び越えている。
百年前の作品とはいえ、なんとなく古臭さのない作品である。ただしネオ・プリミティヴィズムに根ざした作風なので、あかぬけてはいない。
ところが一方で、その三年後に彼女は印象派風な作品も描いている。

水浴する少年  背中を見せる三人の少年のか細さが愛しい。

ダヴィード・ブルリューク 三つ眼の未来派風の女  これを見て絹谷幸二を思い出した。ここから80年後に日本でその末裔を見出すとは、面白いような気がする。

アリスタルフ・レントゥーロフ 教会と赤い屋根のある風景
mir881.jpg
まだ革命1年前。色彩設計の連なりで構成されたような建造物たち。わたしとしては好ましい風景。叙情性を排した風景画にはフシギな明るさがある。
叙情性を排したと書いたが、むしろメルヘンチックに見えるところが面白くもある。ディズニーランド風。

ノーヴィ・エルサレム修道院の塔  こちらも同じくダンダンダンとリズムを刻んで描かれたような建物で、実際塔の段がそのような構成を見せているのが面白い。
mir882.jpg

ボリス・アニスフェリド 東洋の幻想  座禅を組む女のそばにはオウムがいる。和やかな暗さのある絵。色の集まり自体は暗いのだが、それが「東洋の幻想」風なのだと納得させられるムードがあった。

シュラミの娘  旧約の「雅歌」に現れる娘。赤い絵で、その赤を構築する細胞は必ずしも赤の因子だけを持つものではない、と言うことを知る。
物語の概要は良く知らないので何とも言えないが、娘の周囲にたむろする山羊やオウムたちかなんとはなしにこの世界の魅力を上向けている。
下腹のふくらみが豊かなのが目に付いた。

ところでなんでもそうだが、革命は成就するまでが素晴らしく、成就した瞬間から魅力を失い始める。そうして革命により失われたものこそが、美しさを得るような気がする。


1-2 見出された画家ニコ・ピロスマニ
グルジアで居酒屋の看板などを手がけていた画家で『百万本の薔薇』のモデルだそうだ。
以前から加藤登紀子が歌うそれは、わたしの好きな歌だが、絵の方は今回初めて見た。
今ではグルジアの国民的画家として愛されているそうだが、画家が存命中はちっとも認められなかったらしい。
グルジアはロシアとは文字も異なり、独自の文化を持つだけに、色々難しい問題も抱えているようだが、この画家の作品が多くの人に愛されているのは、幸いだと思う。
プリミティヴな、というよりそれこそ素朴な面白味がある。ヘタウマというか、しかし惹かれる何かがある。ちょっとパラジャーノフの映像が見たくなる色彩構造だった。

コーカサスから中近東にかけて広がる、居酒屋兼雑貨屋という形態。
そこの看板などを描いたが、なんとなくほのぼのしている。
宴にようこそ! mir881-2.jpg
葡萄がたわわに実り、見るからに豊饒なイメージがある。瓶にはワインだろうが、この葡萄がそのまま発酵したような気持ちになる。

看板絵が寒々しかったらあかんからなー。気取りの無さがいい。
一方、人間関係がうまくゆかないだけに、動物への愛情が深いヒトだったそうで、それを示す絵があった。
小熊をつれた母白熊mir881-3.jpg
東京でご覧になった方々も、この絵を随分喜んではった。わたしも楽しく眺めた。
白熊がやせているのを見て、温暖化の影響とか色々考えたりしたが、画家は無論そのことは考えてはいないだろう。
ところでサントリーミュージアムのサイトのトップページのバナーには、この展覧会で出品された作品が動画化されていて、それがひどく面白い。
同時代のロシア・アニメを見たことがあるが、あんな感じ。
子供の頃はともかく、成人してからは日本のそれよりチェコやロシア・旧ソ連の作品の方に惹かれている。


映像が流れていた。
セルゲイ・エイゼンシュテインの1928年の作『十月革命』と1924年のヤーコフ・プロタザノフ『アエリータ』。先のは1917年の十月革命のドキュメント風作品、後のは火星の王女アエリータが主役のSFで、彼女が天体望遠鏡で地球を眺めようとする1シーンが出ていた。
アエリータの衣装は「80年前のSF」らしいなかなか素敵な飾りもついていたし、ロボットまでいるのには、ウケた。そしてやっと望遠鏡で地球を覗くと・・・市電にビルの立ち並ぶオフィス街だった。こっちの方がよっぽどSFだ。
セルゲイ・エイゼンシュテインの1928年の作『十月革命』


2 マレーヴィチと抽象の展開
ブンカムラでもサントリーでもマレーヴィチの『農婦』がチラシおもてに出ていた。
ブンカムラでは黄土色に黄色、サントリーは紺地に赤という縁取りでその絵を飾っている。
印象がかなり違って見えて、面白かった。
ここらあたりが本当の意味での「ロシア・アヴァンギャルド」だと感じる。

ところで、中学高校の頃、色々あってロシア革命にハマッていた。
(思想上からの共鳴ではなく、好きなマンガの背景がロシア革命だったのだ)
授業中でもロシア革命関係の本ばかり読んでいた。思えばへんな子供だった。
だからこのロシア・アヴァンギャルドは、中学高校の頃を思い出させて、懐かしいような感じで見て回った。
とは言え、今では革命前の帝政ロシア末期がなにやら慕わしく、愛しいくらいな気持ちが湧いていたりするのだが。

3 1920年代以降の絵画
白系ロシア人が内乱に負けて国外逃亡し、ロシアで生まれた概念は海外へ流出していった。
お菓子も海を渡り、神戸にはモロゾフさんやゴンチャロフさんが移り住んだ。
レーニンが生きていたならどうだったか、スターリンの独裁政権下においては、芸術もまた統制されていき、楽しむことの出来ない状況になってしまった。
ここらあたりの作品を見ていると、ちょっと哀しい。

なかなか面白い展覧会だった。
関連記事
スポンサーサイト



コメント
新聞に記事が載るたびに、笑ってしまいましたよ。こんな事もあるのですね~。
私が見たのは、7月末で、まだ平和な時でした。

マルク・シャガールの「女の肖像」ベラの肖像画も出展中止ですか?
この絵は、曰く付きですからね。ズラーブ・ツェンテーリ(モスクワ市近代美術館創設者)が、どこかで見つけて、シャガールに贈ろうとしたら、後妻の嫉妬でかなわなかった、とか。
ソヴィエト映画「アエリータ」も、面白かったですよね。
衣装も面白いし、火星から見た地球の雑踏(資本主義アメリカだ)にも、アイロニーを感じましたよ。
ちょと、某所で書き込んだ文章を再利用してしまいました(笑)。時差が大き過ぎて、既に忘却の彼方です。
2008/10/16(木) 00:17 | URL | 鼎 #-[ 編集]
えっ、シャガールだけでなく、カンディンスキーも撤去されたのですか、初耳だ!
ピロスマニは本当に神経が繊細なのですね。
新聞に幼稚だという批評が出ただけで、傷付いて描けなくなったとか。
ある程度の図太さは必要ですね。
無神経というのも困りますが。
芸術家は神経をやんだり、繊細な人が多いですね。
2008/10/16(木) 11:24 | URL | oki #-[ 編集]
☆鼎さん こんばんは
あの「アエリータ」は面白かったです。
わたしは大体ああいう作品好きなんですよ、レトロなSFって。
ソ連はソ連ぽいんですけど、どっちかというとドイツ映画風でしたね。
☆→☆の距離間はきっと四ヶ月だったですよ。
ブンカムラ☆とサントリーM☆とでは。


☆okiさん こんばんは
7点ほど撤退。なかったですよ。ははは。
ピロスマニは可愛いですね。
とにかく繊細すぎるのは困ります。
それで自分も苦しいでしょうが、周囲も困りますもの。
励ましても聴かないでしょうしね。
死後の栄光をどう思っているでしょう・・・
2008/10/16(木) 21:39 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
こんばんは。何やら大変なことになってしまいましたね。7点も撤退でしたか。真偽は不明ですが、こうした半分水掛け論のような話は、開催前に一応のかたをつけて欲しかったとは思います。

それはともかくも私としては、大好きなマレーヴィッチとピスマロニの発見があっただけでも満足でした。「宴にようこそ!」とは素敵ですね。思わず席に呼ばれたくなります。
2008/10/16(木) 22:14 | URL | はろるど #-[ 編集]
☆はろるどさん こんばんは
そうなんです、ゴタゴタはいやですね。
シャガールらしくない、というのが言い分だそうですが、ブンカムラでご覧になった皆さんの記事を読む分には、わるくない感じがしましたけどね。
しかしシャガールなしでも楽しめる内容でした。
ピスマロニは可愛いです。マレーヴィッチはやっぱりはろるどさんの好みでしたか。打ち立てた思想におお~~でした。

2008/10/16(木) 22:34 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
こんにちは。

ブンカムラのサイトから
この展覧会が無かったことのように
されているのに驚きました。
キャッシュ辿ってみると
確かに消したくなる気も。。。
それにしてもな~

サントリーさんが不憫です。
2008/10/19(日) 13:41 | URL | Tak #-[ 編集]
☆Takさん こんにちは
えっブンカムラ、「記憶にございません」しちゃいましたか。
ははは。まぁ確かに副題というか目玉でしたからねぇ。
ただ同時期に兵庫県美でシャガール展してるので、
そんなにもみんな口惜しがってないようです。

サントリーさんではシャガールなしでもけっこう集客してました。
マレさんとピスマさんが人気者でしたよ。
2008/10/20(月) 12:38 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する
最近の記事
月別アーカイブ
カテゴリー
全ての記事を表示する

全ての記事を表示する

フリーエリア