FC2ブログ

美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

「月百姿」を主に月岡芳年展

礫川も今ではすっかり皆さんの浮世絵の定点観測所の一つになったように思う。
昨夏に続き今年も芳年『月百姿』の展示。他にも色々。
万延元年(こう書けばフットボールと続けたくなる・・・)から明治24年までの色々。
芳年は豊原国周と同時代の絵師だから、役者絵も同じ役者を対象にする。
国芳門下と国貞門下の違いはあっても、役者絵にはあまり個性を発揮することはないようだ。
芳年はやはり病後の「大蘇」芳年名義からの作風がいい。
きつく震える描線の艶かしさには、ときめくばかりだ。

万延元年の『三人吉三廓初買』の芝居絵がある。
小団次が和尚、権十郎(後の九代目団十郎)がお坊、お嬢は粂三郎。
ラストの捕り手たちと闘う情景が描かれている。八百屋お七を思わせるお嬢は鐘楼の鐘を打ち叩く。
わたしは黙阿弥の芝居の中でもこの『三人吉三』は特別好きだ。
絵を見ただけで芝居が見たくなってきた・・・
ところで幕末の名優・小団次の一枚絵の和尚は、坊主ではなく髷を載せている。豆絞りを肩に掛けたイナセな姿で描かれていた。

慶応元年『通俗三国志』独角大王と戦う哪咤太子と孫悟空』  これは後世のコミックの直接的な先祖だと実感するような構図だった。関係ないが、諸星大二郎の『西遊妖猿伝』が11年ぶりに再開した。今度は第三部西域篇。嬉しいことだ。

大津絵で描いたのが『雨宿り』と『雪降り』 これは同工異曲で、色合いの変化だけで表現している。
駆け込む鬼坊主、鷹匠と藤娘も走りよってくる・・・なかなか面白かった。

明治19年『豹子頭林冲、於山神廟前 殺 陸虞候』 師匠同様水滸伝を描いているが、やはり劇画的。林冲は相手を槍で殺したらしい。血に濡れた剣を下げているが、相手の腹には長大な槍が立っている。

『芳流閣両雄動』 これも師匠同様八犬伝の名シーンを描いているが、かっこよさから言えば弟子のこの絵の方がいい。ああ、はやく『八犬伝の世界』にたどり着きたい・・・

さて『月百姿』。全部については書けない。とらさんが素敵な記事を挙げておられます。
『烟中月』 火消しの後姿は勇ましい。背景の煙の表現はまるで、王朝継紙のように綺麗だった。
『信仰の三日月』 下弦の月のついた兜をかぶる武人と言えば、山中鹿之助幸盛だ。「願わくば我に七難八苦を与えたまえ」と三日月に願って、主家・尼子家のために奮闘したが、ついに毛利家に敗れた。むかしむかし人形劇『真田十勇士』で、真田幸村が山中鹿之助を偲ぶという設定があった。(作者・柴田錬三郎はこの物語に色んな要素を加えていたな?)それでわたしは子供の頃に彼のことを知ったのだった。
『卒塔婆の月』 言わずと知れた卒塔婆小町。貴い身分の姫が年老いて流浪する伝承。破れ傘を背負った婆さんとして描かれているが、それでも生きているのだ。長く生きてくれ、と願わずにはいられない。
『孤家月』 これは一つ家の伝承。師匠は浅草奥山の細工見世物のために多くの絵を描いた。その中でも特にこの一ツ家がスキだったらしく、実に数が多い。国立演芸場の資料室にはその浮世絵が収蔵されているから、機会があればまた展示されるだろう。たぶん、来春早々にでも。

慶応元年『和漢百物語 清姫』 これは明治になっても『新形三十六怪撰』として描かれているから、好きなモティーフなのかもしれない。そちらのほうは’92年の夏、大丸の芳年展でチラシになった。清姫が日高川を前にして両髪を掴み上げている。情念の高まりは、しかし一見ひどく静かに見える。その分強く深く広がっているのだが。
これは後年の方の画像。mir898.jpg

他に『和漢奇談鑑』というオバケ絵シリーズがあり、なかなか面白かった。
ただ、師匠・国芳は同じようにオバケを描いても春画を描いても、どこか健全というか元気な明るさが満ち満ちていたが、弟子はそうはいかない。どことなく危ういように感じた。
ろくろ首を屏風で押さえると首がつきぬけ、怖い仁王と相撲を取ったり、笑い阿弥陀などはまだ明るく笑えるが、佐倉宗吾の蛇まみれ血まみれはよくない。卜部vsウブメもあった。

15年位前、原宿にDO!FAMILY美術館があり、国芳、芳年から小林清親あたりのコレクションを見せてくれていた。あれから芳年を定期的に見せてくれる場はなくなったので、礫川の存在は嬉しい。
色々面白い作品も多く、好きなものをじっくり眺めてから場を後にした。

関連記事
スポンサーサイト



コメント
月岡芳年
こんにちは。
この美術館はマニアの隠れ家のようです。
遊行さんの隠れ家記事は素晴らしいですね。
館長は、2年続いて「月百姿」を出すことをためらっておられたそうです。
このようにポピュラーなシリーズにこだわることの衒いでしょうか。
ところで、わたしの「月百姿メモ」のご紹介ありがとうございました。
2008/10/25(土) 11:33 | URL | とら #-[ 編集]
☆とらさん こんばんは
とらさんが『月百姿』をガイドしてくださるので、本当にありがたいです。
見たい月があればとらさんのHPへGO!です。

百一枚目として、トラが月に吠える絵が現れる予感が。
(山月記みたいですね)

こういう物語性がある絵って本当に好きです。

2008/10/25(土) 23:51 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する
最近の記事
月別アーカイブ
カテゴリー
全ての記事を表示する

全ての記事を表示する

フリーエリア