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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

ナンバーズ・数をめぐって

千葉市美術館では『八犬伝』に因んで『ナンバーズ・数を巡って』展が併催されていた。
タイトルを見てピーター・グリーナウェイの映画『数に溺れて』を思い出したりする。
数に溺れて数に溺れて
(2007/06/30)
バーナード・ヒルジョアン・プロウライト


実はわたし、数に対して色々強迫観念があったりするので、こういう数合わせを見るのが好きなようなコワイような・・・

浜口陽三 『19と1つのさくらんぼ』『1つのさくらんぼ』  黒地に赤いさくらんぼがぼんやり浮かび上がるような、いつものカラーメゾチント。
これまで別にタイトルにも数にも無関心だったが、こういうコンセプトで対峙すると、色々物思いにふけることになる。

豊原国周 八犬士の肖像画がずらーーーっ。最後の浮世絵師の大首絵も芝居絵も、どれもがかっこいい。

しかしこちらは肖像画を並べましたという良さがあったが、芳年の『風俗三十二相』の展示法はどうかなぁ。8X4かなんかで見づらかったし、もしかすると、これは絵を眺めさせると言う意図ではないのかもしれない。それこそ、数合わせ。

末広がりの八揃いコーナーがある。
一番有名なのが「八景」シリーズ。
本歌は中国からだが、日本に来ると近江、江戸、座敷・・・色々バージョンが現れる。
ここでは英泉ゑがくところのちょっと色っぽい八景が並ぶ。
『辰巳八契』 辰巳芸者は他の地の芸者と違い、まず鉄火膚でないと勤まらず、名前も男名にする。米八や仇吉などと言う風に。
『弁天の暮雪』 柱に寄りかかる女。やはり英泉はこうしたアダな女がいい。
『佃の帰帆』 女が歯ブラシ(爪楊枝風)を咥えて立っている。英泉にしては珍しく、背が高い女。

大正新版画運動の頃、伊東深水も版画にハマッた。彼は同門の川瀬巴水と違い、自刻自摺だったそうだが。
『近江八景』シリーズ。これは滋賀近代美術館にも所蔵されている。
mir910-1.jpg
わたしの持つのはそちらの絵葉書。本場ですからね?。
深水は美人画の大家だが、風景版画もよくしたそうで、師匠の清方の随筆にとてもいい話が載っている。
疎開中の清方の見舞いに訪れた深水が、風景をスケッチするのを背後からじぃーっと清方が見守る。戦時中でもこうして絵を描くのに懸命な(しかも既に深水は大家である)弟子の姿に清方が感銘を受ける・・・
読むこちらの胸も熱くなってしまった。

恩地孝四郎『近代婦人八態』 このシリーズはこの千葉市美術館が企画した『日本の版画』シリーズで見て知った。昭和初期のモダンガールの生活がなかなかイケてる。恩地の女は口元に独特の艶かしさがあり、そこに惹かれる。

原在中 『草盧三顧図』 三国志(ここでは3と言う数字がポイントになるのだよな)で劉備が孔明をスカウトに来るエピソード。三度目の正直でやっとつれて出ることが出来た。

曽我蕭白 『虎渓三笑』 蕭白が好んで描く画題だが、ここではロングで描かれている。アップのじいちゃんらの笑顔も可愛いが、ロングだと山水画の良さを本当に感じる。

織田一磨 『東京風景 十二階』 浅草にあった名所。関東大震災でつぶれた。その裾には特飲街が広がっていた。
織田の風景版画は巴水のような叙情性は薄いが、揺らめくような人の心が陽炎のように画面の中にあり、そこがたまらなく好きだ。

橋本貞秀 『東都両国橋夏景色』 安政六年の作。橋はとっくに落ちそう。
この凄まじい人混みは川開きの花火見物の客だろうが、見た瞬間思い出したのは、諸星大二郎『生命の木』での「いんへるの」シーン。じゅすへるの子孫たちが死ぬことも出来ず地の底で蠢き続け、<きりんと参るその日まで苦しみ続け>、ついに「おらと一緒にぱらいそさ、行くだ!!」で一挙に昇天する。あれです、あれ。

この絵師は八世団十郎の死に絵もよく描いたらしく、百万遍の数珠繰りなどもあった。ちなみに彼の墓は大阪の一心寺にある。

川上澄生、恩地、平塚運一、藤森静雄らが携わった『新東京百景』が色々出ていて、嬉しかった。
mir910.jpg
‘96年の江戸東博『近代版画になった東京』でも色々見たが、やっぱり江戸や東京は版画で、京都は日本画で、大阪は油彩で描かれたのが、いちばんいいと思う。

岸岱 『群蝶図』 おお、見れて嬉しい。蝶々がいっぱい飛ぶ図はなんでこんなに楽しいのだろう・・・地の色はやや黄土色に見える。空の色がそう見えるのは蝶の燐分のせいかもしれない。

深澤幸雄 『骨疾F』 現代の版画家で好きな作家は少ないが、深澤はなかなか好き。独特の技法で作品を作っていたが、色調もいい。
見れて嬉しかった。

この展覧会も10/26までで既に終了した。
八犬伝といい、このナンバーズといい、気合の入った展覧会だった。
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