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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

神戸と兵庫のモダニズム

ようやく2009年度の展覧会見学が始まった。
今年最初の行き先は神戸市立博物館。
「神戸と兵庫のモダニズム 川西英えがく「兵庫百景」を中心に」を見た。
館蔵品の洋画・日本画・版画などだからか、常設展示料金200円での見学。
しかしこんな好い内容のものをそんな嬉しい値段で見せてもらい、ちょっとお年玉な気分になった。
展覧会の副題は「絵画の中の近代建築&神戸を写した写真・絵はがき」。
以前から言うように、大阪は洋画・京都は日本画・東京は版画で表現されるのが好ましいが、神戸は一体なにがふさわしいのだろう。
それを知ることが出来る展覧会かもしれなかった。
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タイトルにもある「兵庫百景」は1962-63年に新聞連載されたもので、これはチラシなど印刷物で見た限りでは、川西らしい明るい色彩の版画だと思ったが、なんとポスターカラーを使って色紙に描いた「肉筆画」だった。ちょっとびっくりしたなぁ。
百景は一室に集められて、地域ごとに分けられての展示だった。

「この沿線の風景は、北河内とは違って、六甲山脈とはいいながら柔媚な山と美しい街とのかもす気分は、日本で最も豪華な眺めであろう」 今東光「春泥尼抄」より。
川西の描く「兵庫百景」よりもう一昔以前の風景を、この小説ではそう表現していた。

1934年と1938年の神戸港の様子を描いた二枚の絵がある。
画家の名前も作品も初見だが、絵を見るとなるほどいかにも神戸港だという感じがする。
海から見た神戸港。小見寺八山。海と街と山と空と。
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神戸の人間は方向を示すのに「山側」「海側」と表現するが、大いに納得するところだ。
大阪は「北・南・東・西」と方位を使い、京都は「上ル、下ル、入ル」で理解する。
京阪神、隣接していてもこれほど県民性の異なるクニは他にないのではないか。
下はYコジマ「神戸港眺望」。明治初のワグネル辺りが描きそうな画風と構図。
ここから世界に向けて出たり入ったりしたのか。
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つい近年まで神戸には近代建築が多く残って、それらが活用されていた。
しかし阪神淡路大震災で多くが失われてしまった。
それ以前の神戸大空襲にも生き残れた建物も、失われた。
在りし日の姿を写した古写真たち。
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わたしはこういう風景が見たくて、全国をハイカイしているんだよなぁ。

別車博資「クレセントビル」 これも「兵庫百景」と同年の作。50年近い昔とは思えないモダンさがあった。外国旗だけでなく、停まった車が妙に可愛いからかもしれないのと、女の後について歩く男の姿がそう見せるのかもしれない。(下の画像、一番上の右から二枚目)

二代長谷川貞信「神戸港」 ‘39年の神戸港だが、スッキリしたモダンさが満ちていて、この絵師が最後の上方浮世絵師だと言う意味を、ふっと思い出させてくれた。
モダンで素敵な作品。わたしの大好きな商船三井ビルディングと海岸ビルが見えている。
(下の画像、左端一番下)

旧居留地界隈には、こんな建物が集まっていたのだ。
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今は改装しているが、やっぱり素敵な大丸が、こうして見てみると、なにやら船のようにも見える。
今ではそうは見えないなと思っているが・・・ 
市役所の展望レストランからの撮影がこちら。
IMGP5444.jpg
ランチしながら撮ったが、ちょっと面影があるではないか。素敵だなぁ。

いくら見ても見ても見飽きない。
しかしここに描かれた風景の大半は既に失われている。
経年のせいだけではなく、人災天災もあった。本当に惜しいことである。
だから今、こうして眺めることが嬉しくてならない。
見て記憶にとどめることで、自分の心の財産になる。
知った風景、知らない風景。
いくらでも見せて欲しいし、見ていたい。
今回、見ていてノスタルジィを懐かせる作品が多く、それだけでも貴重なコレクションだった。

わたしもこれまで北野以外のあちこちを撮影して廻ったが、それでもまだまだ足りない。
がんばって見て歩こう。

ところで神戸だけが兵庫県ではない。むしろ神戸はほんの一部分にしかすぎない。
昔の地図の感覚で言う処の「摂津」「播磨」「淡路」「丹波」「但馬」と5つの地域がある。
このうち「摂津」はわたしにはとても親しい。
わたしは大阪の摂津の地に住まうからだ。わたしは北摂の民。こちらは昔風に言えば「南摂」にあたる。
その一帯を川西英の「兵庫百景」で見る。
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あああ、どこもかしこも泣けてくる。
宝塚ファミリーランド、阪神パーク、灘の酒蔵(酒蔵めぐりをしたかつての日々よ!)・・・
本当にこの界隈はわたしの大好きな場所なのだが。

こんないい展覧会から始めることができて、本当によかった。
しかも小さい図録には川西の「兵庫百景」がmapつきで掲載されたオマケもある。
それで200円なのだ。

都市風景画や近代化遺産に惹かれる方は、ぜひともこの重厚な神戸市立博物館に行かれることをお勧めする。展覧会は2/8まで。

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