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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

川越美術館で見たもの

川越市立美術館では、小村雪岱だけでなく岩崎勝平や相原求一朗の作品も見た。
岩崎は電力王・福沢桃介や画家・杉浦非水の甥で、挿絵画家・斉藤五百枝の娘と結婚したが、妻の急死やいろんなことがあったせいでか、晩年に至るまで孤独の中に生きた。
その生涯などについては、こちらへどうぞ。
cam103.jpg
チラシは雪岱のお傳と並んでのものだが、大きな違いを感じる一方で、やはりどちらも日本の絵だと言う実感がある。
雪岱の繊細な線描を見た後で、岩崎の洋画を見ることに大きな戸惑いを覚えなかったのは、岩崎もまた線描の人だからだった。

チラシの「赤い着物の女」はパステル画だから、そうそう輪郭線も細いものではない。
ざっくりした着物の着方、桃色の腕、花柄レースのショール、着物より濃い色の口紅、そしてややハレ瞼。実在を感じさせる女が、紙の上にいる。

見て回ると、パステルと油彩と、6Hと言う極度な鉛筆画の三種の技法が目に付いた。
そして油彩やパステル、木炭などで描いた女の大半は、ハレ瞼だった。
モデルがそうなのか、趣味なのかは知らない。
「眠る女」cam104-1.jpg
これは一見して、熊谷守一の亡くなった子供を描いた作品によく似ている、と思った。蒲団と顔の位置関係がそっくりである。
あちらは死者、こちらは生者。申し訳ないことに、先に守一の絵が強烈な印象として頭に刻み込まれているので、なんとなくこの絵を見てキモチよくないものを感じてしまった。

「青い着物の女」 その当時流行の銘仙風の着物を着ている。
「裸婦」 バストアップ。顔はどことなく女優の田畑智子似。
「湯上り」 鏡を見る後姿。
このあたりがなんとなく好ましかった。

「童女像」が幾枚かある。そのうちの一枚。cam105-1.jpg
元気そうな女の子。これらの額縁にも惹かれた。アールヌーヴォー風のデザインが施された、素敵な額縁である。
元の田中屋さんが誂えたのかもしれない。

従軍スケッチは全て鉛筆に水彩をつけたもので、中国各地の風景と、ちょっとした群像がある。
ここまでは全て戦前の作品。

「バレリーナ」 村松英子似のバレリーナが描かれている。
「花と少女」 可愛い。なんとなくほのぼのする。
そして様々な「横たわる女」 情景を選ばず描き方を選ばず。

困窮する岩崎を援助しようと川端康成らが彼の絵の頒布会を起こした。
それが6Hの鉛筆画「東京百景」シリーズだった。
執拗な、と言っていいほどの丹念な描写だった。とはいえ細密画とは違う。
「日大医学部並びに付属病院」 モダンな建物が緑に囲まれている。
「橘町問屋街」 こまかい??!
「慶應義塾大学」 少し色がつけられている。

「市長室のための川越風景」cam105.jpg
時の鐘やずっと向うに火の見櫓などが見える。蔵が所狭しと建て込んで、その隙間に緑が繁茂している。

晩年の作として、キャンバスに油彩と言うのが並んでいた。
みんなとても厚塗りである。
渦巻く炎を思わせる装飾の縄文土器に花を生けた絵があり、絵そのものより、その発想にちょっと感心したりした。
「沖縄の女」 立体感があるのは、やはり厚塗りだからか?

特に強く惹かれるものはなかったとは言え、知ることが出来てよかったと思う。

次に相原求一朗の特集展示などを見る。
・・・・・ずいぶん、北海道の風景の多い画家だった。没後十年なので、つい近年まで活躍していた画家なのだ。それにしても北海道の原野や自然風土を描いた作品が多い。
人のいない風景。しかしなんとも言えず魅力的な作品が多い。
北海道の寒さを感じる作品ばかりで、あの地がリゾート地だとは思えなくなってきた。

「宇登呂厳冬」 宇登呂と言えば武田泰淳の名作「森と湖の祭り」の舞台である。描かれたのは’93年。あの小説は50年前の作品、映画にしても40年以上前のものだが、この風景は泰淳が書き、内田吐夢が描いた「ウトロ」そのままのような気がした。
どこからか風祭一太郎が現れてきそうな・・・

「光る海」・・・灰色の「光る海」がそこにある。
同年に描かれた「石炭置き場」はどことなく小杉小二郎風な味わいがあった。

そこを出て常設室に行くと、中学生の団体がいた。みんな体操座りしている。絵を見るポイントや心がけなどをレクチャーされているようだ。
こんな頃は、カッタルイよな。でもそのうちの何人かが熱心にメモを取っていたので、やっぱり20年後には・・・とちょっと期待したりする。

日本画もあった。地元ゆかりの作家たち。
橋本雅邦「虎渓三笑」 静かな絵で、笑い声は響かない。これを見て初めて「三人が声を挙げて笑ったわけではない」と気づいた。ニンマリするのも笑いなのだし。

小茂田青樹「麗日」 白地に茶斑で梅を描いている。この画家の絵で一番好きなのは、「春の夜」である。夜梅の下を獲物を咥えた猫が行きすぎる、そして樹上にはふくろうがいる。
ああいう雰囲気は、ここにはない。

駒井哲郎の版画もあった。埴谷雄高の「闇の中の黒い馬」の作品。個人的思い入れが強いので、ちょっと泣けてきた。この本が出た当時、ジャケ買いした人が多かったそうだ。

なかなか見応えのあるコレクションだった。目当ては小村雪岱だったが、こうして他の作品にも出逢え、本当によかった。展覧会は3/22まで。

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コメント
No title
今回、相原求一朗の没後10周年の特集展示+相原展示室の両者を見られて、ちょっと興奮しました。わたしは相原の追っかけなのです。この直後に川越のデパートで相原の展覧会があり、帯広の作品が沢山来ることを知って、なんとか出かけようともがいたのですが、結局いけませんでした。
2009/03/13(金) 21:13 | URL | とら #8WYMted2[ 編集]
No title
☆とらさん こんにちは
この相原の好さにはちょっと驚きました。
本当に知らない画家でしたから、いいものを知ったなぁ、
そんな気持ちです。
デパート展、惜しかったですね。
それにしてもいい作品でした。
2009/03/16(月) 12:45 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
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