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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

壷中天 正木美術館の中国陶磁コレクション

泉州・忠岡町の正木美術館に出かけた。
以前から行きたい古美術専門の館だが、ちょっと北摂からは遠くて諦めていた。
今回、ありがたくもチケットをいただいたので、気合を入れて出かけた。
「壷中天  中国陶磁を中心に」
こんなタイトルを見たら、やっぱり出かけなくてはなりませんがな。

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そもそも「壷天中」コチュウテンとは何か。サイトから。
壷中天とは、壷のなかに別天地あり、の意。昔、費長房という人物が薬売りの老翁(仙人)が所持する壷のなかに入ると、そこには別世界の仙境があったという話(『後漢書』)に基づいています。
中国にはこうしたパラダイスのエピソードが多々ある。(パラダイスの語源はペルシャ語の「閉じられた庭園」だから、やっぱり壷の中も「閉じられた庭園」も、斉しく<個の歓び>なのだ)

i 壷の神秘

青磁神亭壷 越州窯 東晋時代
チラシの壷は一目で明器とわかる。明器は冥界のお供のグッズ。大倉集古館・細見美術館などで以前に大きな展覧会が開催されている。
これはどことなくわたしには、ア・バオア・クーの後の、アムロの帰還を待つホワイトベースのクルーの群に見えていたりする。

他にも農園を象ったものなどがある。あの世のドールハウス。

青磁刻花蓮弁文六耳盤口壷 南北朝時代
色は赤みを帯びている。耳が6つある。青磁でもこんな色に焼成されるところが面白いが、やっぱりわたしは青みの濃い方が好き。

白磁貼花竜耳瓶 隋?唐時代
二匹の竜がまるで同時に水瓶に首を突っ込んで水を飲んでいるかのように見える。
白竜のしなやかなフォルムがとても魅力的だった。

ii 中国陶磁の美

青磁多嘴壷 越州窯 北宋時代
どうもあんまり好みではないが、これは実用に向いているのか?ナゾである。

青磁洗 龍泉窯 南宋時代
南宋時代の龍泉窯の青磁は色合いがどれもこれも濃すぎて、わたしは好まない。
同じ青でも好むところは異なるものだ。しかしこの手の青は日本の茶人たちからは愛されて「砧青磁」と呼ばれている。形もシンプルなものが多い。
シュミの問題とは言え、青磁に関しては、わたしは12世紀の高麗青磁が最愛なのだ。

白地劃花象嵌鹿文枕 磁州窯系 北宋時代cam161-2.jpg
カワイイ枕である。鹿の表情がいい。思わず描いたけど、私が描くと可愛くないな。
獏枕もあった。
持ってるから言うけれど、案外涼しくはない。最初はひんやりしているが、長く寝ると暑くなるのだ。

緑釉白地刻花蝶鳥文枕 磁州窯系 金時代
こちらの枕は花を生けた盤の前の小禽と、その鳥のくちばしの上で舞う蝶と言う構図。とても可愛らしく、好ましかった。

赤地金襴手宝相華文碗 景徳鎮窯 明時代
五彩金襴手宝相華文碗 景徳鎮窯 明時代
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どちらもとても愛らしい碗だった。好みではないが、こうしたものを見ると、明代の中華帝国の文化をまざまざと実感するのだ。
文化爛熟のときに生まれたものたちは、どれもこれも濃やかで美しい。

白地紅緑彩人物 磁州窯系 金時代
長衣をまとった女の像。どことなく伏見人形風な趣がある。

白地紅緑彩牡丹文碗 磁州窯系 金時代cam161-1.jpg
見込みに、花弁の細い牡丹が、目を見開くように咲いていた。
よくある構図だと思いながらも、その種の中ではこれまで見たうちで、最も愛らしいと思った。大きさも申し分なく、掌に納めてしまいたくなる。そして誰にも見せたくない、と思った。

iii 水墨画のなかの壷中

山荘図 室町時代
文人墨客の理想の地かもしれないが、わたしは世塵の中に生きていたいよ。
子供の頃から一貫して、こうした世界に「心遊ぶ」楽しみを知らないままでいる。それでいいのだ、とバカボンのパパ的発言をする。
しかし汀に立つこの小さな建物は、とても愛らしい。

三酸図 楊月 室町時代
この図を見ると必ず思い出すのは「八つ墓村」。この絵の屏風が重要なオブジェの一つとして現れる。だから小学生頃から、この三酸図のエピソードは知っていた。
この瓶には「第一酸」という貼紙が剥がれそうになりながらもついている。
人間たちの表情には酸っぱそうなものはなく、どことなく様式的なものに見えるが、この瓶から剥がれそうな紙がひどく印象深かった。

寒山拾得図 赤脚子 室町時代
正面向きの二人の屈託のない笑顔。これは出光で見た小杉放菴の愛らしい寒山拾得にも通じる笑顔良しの二人。べちゃっとした顔がなんだか愛らしい。

iv 茶道のなかの壷中

玳玻釉双鳳文天目茶碗 吉州窯 南宋時代
これは今では相国寺に入ってしまった旧萬野コレクションのそれと、兄弟茶碗ではなかろうか。たぶん、同じDNAがみつかるはずだ。
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今回、台は別な茶碗につけられていたが、この画像があった。
青貝松竹梅文台 綺麗な象嵌だと思う。

赤樂茶碗「武蔵野」 ノンコウ 江戸時代
ピンクで、見込みの貫入が途轍もなく繊細で、綺麗だった。これは武蔵野の夕暮れの景色なのかもしれない。男の背から眺めた夕暮れ。 それはこんな色なのかもしれない。

茶杓「鷹」 淀屋ケ庵 江戸時代
竹製の茶杓には様々な文様が浮かぶものがある。これは斑で、鷹の羽の文様に似ている。
(今のわたしは「鷹」と聞くと「グリフィス???ッッ」と叫ぶ傾向がある)


そしてここの展示コーナーの端に、どういうわけか雑草が生えているのを見て、ぎょっとした。どう見ても雑草である。
ビックリした目の端に白椿が入った。(わたしの視野は広いのだ。目前のものは見えずとも)その白椿は古信楽に活けられていたが、こちらは明らかに造花である。
ああ、と思った。
須田悦弘の作だった。雑草もまた。2008年の作。
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v 東洋陶磁の小さな世界

灰陶加彩辟邪形旗座 後漢末?三国時代
ヘキジャ君は、どうもそれ自体がブキミ系なのだった。どっちがアクかわからん、という風情が可愛い。
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褐釉雑技 後漢時代
二人の雑技者が何やらパントマイムのようなポーズを取っている。見ていた友人がそのポーズを真似するので、わたしもやってみた。なんとなく「ペトルーシュカ」を思い出した。

緑釉犬 後漢時代
張子の犬のような愛らしさがある。ただし口許は角ばっている。オスかもしれない。
後漢時代はこうした陶犬が多く作られているが、どれもこれも可愛らしい。

遠くまで来た甲斐のある展覧会だった。5/31まで。
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コメント
No title
壺天中というと、諸星の漫画か、NHK美の壷の
掛け軸を思い出しますね。
しかし、名品ぞろいですね~
2009/04/16(木) 20:58 | URL | 一村雨 #-[ 編集]
No title
> あの世のドールハウス。
前方後円墳を壷に例えた人が同志社にいますね。今は教授かな。
こちらは、実物大って言うところでしょうか。(大き過ぎるか?)
2009/04/16(木) 21:28 | URL | 鼎 #PgtEBqSc[ 編集]
☆一村雨さん こんばんは
>壺天中というと、諸星の漫画
全くそのとおり!あのシリーズは面白かったですね。
続編を何とか続けて欲しいです。

中国陶磁の名品には慣れているつもりでしたが、あの見込みに牡丹の美しさには衝撃を受けました。やっぱり宝はあるものだと思いました。


☆鼎さん こんばんは
ふふふ。実は私、前方後円墳って「鍵穴みたいやなー」とツネヅネ思うておりますのさ。
つぼ型で思い出しましたが、沖縄の亀甲型墓も、上から見れば壷を半分埋めたようにも見えます。
ちょっと不思議です。
2009/04/17(金) 00:24 | URL | 遊行 七恵 #-[ 編集]
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