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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

片岡球子展

高島屋で片岡球子の回顧展が開始された。名古屋から始まりナンバに来て、岡山、東京へと巡回する。
元々は片岡球子の画風がニガテだった。
しかし数年前に貰ったカレンダーに、片岡球子の富士山シリーズがあり、それに惹かれた。
怪異な人物画はともかく、富士山には天衣無縫なヨサがあった。
それを廊下にかけると、なんとなく気宇壮大な心持ちになり、ちょっとファンになった。
だから高島屋にもいそいそと出かけた。
cam172.jpgリバーA石狩川

珍しくリストがあったので貰う。4会場それぞれ展示されるもの・されないものがある。
見たかった「幻想」は大阪には来ない。これは安徳天皇入水の図。
平家物語が好きなわたしには残念。

初期の頃は人物の入る風景画にもリアリズムがあった。そのリアリズムと言うのは絵画的リアリズムと言うより、社会的なリアリズム、そっち系のように思う。
「レースを編む少女」 1935年の作には初期の梶原緋沙子と共通するものを感じた。
銘仙を着た少女(というより娘と言うべきか)が熱心にレース編みをする。そばにある花瓶にはダリヤらしき花が生けられている。
銘仙とレースに触感がある。

「供花・散華・三昧」 三幅対に描かれた尼僧の姿。花を供える尼僧の横顔、立って華籠を手にする姿、ポクポク木魚を打つ様子。少し青坊主だというのが、却ってナマナマシイ。
すっきり白いアタマで描くことをせず、色を薄く置くことで、尼僧が<人間>だということを実感させる。生きているのだという実感。

「雄渾(祈祷の僧)」 下宿先の主人が御嶽教信者で、その縁で護摩炊きの様子を見て描いたそうだ。画家本人も禊をするよう命じられ、そこからの絵。

ここまでは戦前の作品だったが、次からは戦後に入る。
作品に、作者本人の言葉が入るのだが、ちょっとそれに対し、わたしはいやな気持ちになった。

「美術部にて」 cam176.jpg
某百貨店美術部の様子を描いている。電話を取る女性はそこに働く人で、若くはないがなかなか美人だった。というより、片岡球子の描く人物で、唯一の美人。
画家は書く。この年は他に何もいい絵がなく、こんなつまらない絵でわたしが院展の同人に推された・・・・・・ケンソンを通り越すとフカイですな。実名を挙げてもいるモデルに対しても失礼だと、思った。
続いて次の作品につけられた言葉には、腹が立った。

「火山(浅間山)」 cam175.jpg
真っ赤な浅間山と、その前に広がる平野と、そして人々の住む村が描かれている。
それを描いた動機に、こんな火山がいつ噴火するかわからないところによくも住む人々云々とある。
では出て行けとでも言うのか。住むのが悪いとでも言うのか。そこに住むのがその人たちの<みち>だから住むのだ。
展覧会に行ってこんなに腹が立ったのは久しぶりだ。
絵がいいとか良くないとか言う以前の問題。

「カンナ」 横長の画面にカンナがザクザク咲き乱れている。極楽と地獄とが同居しているような絵。

面構シリーズが出ている。これがニガテで忌避していたのだが、こうして一堂に会すると、中には好ましいのもある。しかしここでも画家本人の言葉が入って台無しな気分になる。
では読まないようにすべきなのだが、読んでしまい、アウト。
以前、院展を見ていたとき(丁度小倉遊亀さんが亡くなった直後だったか)、隣にいたご夫婦の会話が耳に入った。「奥村土牛も亡くなったし、残るは片岡球子だけか」「さぞ威張ってるでしょうね」その会話を聞いたとき、そんなこと言いなや、長生きして絵ぇも描ける、それがえらいやん、と思ったものだが。

絵だけを見てゆくと、やはり山を描いたものは天衣無縫な良さがある。
しかし考えようによっては、ゴーマンフソンだからこんなテンイムホーなものが描けるのかもしれない。

チラシに選ばれた「富士に献花」 花々も元気でいいが、雪の描写がいい。着物の鹿の子絞りのようで、それが引締めになっている。
cam171.jpg
富士を描いた中には、既に富士の裾野が宇宙につながっているようなものもあり、逸脱した面白味がそこに溢れていた。

最後に福永武彦が文を担当した「おおくにぬしのぼうけん」絵本原画があった。
黄色い顔のオオクニヌシ、白い顔のヤカミヒメ、ピンクの顔のスセリヒメ。
因幡の白兎のエピソードシーンなど、なかなか面白い表現だった。
cam177.jpg
しかしここには二人の妻を持つ男の苦衷(卑怯さ)が描かれている。
「ヤカミヒメは後から来たスセリヒメが威張っているので、因幡へ帰りました。」
白い女は振り向かず、ピンクの女は知らん顔をし、黄色い男は黙って俯いている。
エピソードの本質の面白さがよく出ていた。
わたしは福永武彦の抄訳した日本神話がとても好きなので、よけいに嬉しかった。

大阪では26日まで。あとの日程は知らない。
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