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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

妙心寺展

妙心寺展に行った。東京では評判の高かった展覧会。今は京都国立博物館で開催している。
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妙心寺じたいは京都の西北の方にある。塔頭が多いお寺なので、一言で妙心寺と言っても、と却って色々な事を考える。
友人のうちには妙心寺(の塔頭のどこか)で法事を行う家の人もいるし、毎月拝みに行く人も知っている。
関西に住まう限り、だいたいの有名な神社仏閣は、決して無縁な存在ではないのだ。
寺社はナマナマしくそこにある。
それで何を見せてくれはるのかと言えば、当然ながら伝来の古文書類、襖絵、代々の禅師の肖像画などなど。東京で既にご覧になった皆さんの記事を思い出そうとしながらも。

鎌倉時代から南北朝を経て室町時代へ至る流れの中で、この寺の重要さを教えられるような展示の数々。
書状の説明を読むだけでも時間がかかる。理解度が低いのでなかなか終わらない。

師から弟子へ継承される袈裟の重要さを知る。
禅と言うものは厳しいものだ。
しかし高僧の肖像画を見ても、あんまりわたしは楽しくないな?(←フラチモノめが)

工芸品の可愛いものをいくつかみかけた。
やっぱり目立つものはこうしてチラシにも選ばれる。
菊唐草文螺鈿玳瑁合子cam178.jpg
茶色とオレンジ色、というよりも琥珀色の濃い薄いのようで、とても綺麗。
桂春院蔵。ここは拝観可能。

禅寺だけに時代性もマッチして、南宋?元代の青磁の優品がいくつかある。
あいにくわたしの好みではないが、やはりこうした青いミルクのような質感の陶磁は、こうした場にふさわしい。砧青磁は多くの人に愛されている。

羅漢図を色々見た。
わたしはあんまり羅漢図てニガテ系なのだが、なかなかブキミな面白さがある。
そのうち面白かったものを少し。
・佛牙を捧げ持つ。巨大な歯。足下には仔犬のような白い唐獅子が牡丹を咥えながら、首が痛くなりそうなほど、見上げている。
こんな巨大な歯を見ると、石川淳「狂風記」のオシハノミコの話を思い出す。歯とは面白いものだ。
・見るからに賢そうな虎を控えさせている。その脇にはこれまたおばか系な童子がニャハッと笑っている。しかもその童子、カメラ目線でポーズを取っているのだ。

水墨画と禅寺は、私にとって1セットのような感じがする。
普通はちょっと小奇麗な様相で描かれる普賢菩薩が、ばっちぃオジサン風に描かれたものがあった。象に座るから普賢菩薩なのだろうが、うーんうーんうーん・・・ビミョ?。

達磨・豊干・布袋 この三幅対は元代の作で、作者がそれぞれ違う。豊干は例によって虎と一緒。布袋は腹をさすって笑うへんな浮浪者風じいさん、ハレ瞼の達磨は大輪のイヤリングをしている。
どうなのかなー、こういうのは。
ところでわたしは豊干を見ると必ず森鴎外「寒山拾得」を思い出す。
尻切れトンボなラストシーン、寒山が笑いながら走り去る。「豊干が喋ったな」このセリフ。

東方朔奪桃図  明代でも東方朔のエピソードは人気があるのか、なかなか面白い図だった。強い風が吹いていて鶴がキリキリ舞する。桃は見えない。西王母のもとから盗んだ桃はどこに?
画面右端にはその場を去ろうとする白鹿がいる。身を低めながら行く立派な角の鹿。なかなか可愛い。

ところで元代の羅漢像で凄いのがあった。胡人風の濃い濃い羅漢で、ある意味本当のアラハンの姿かもしれないのが色々。しかしこのシリーズ、屏風や襖として身近にあれば、ちょっと悪夢に魘されそうではある。

妙心寺は秀吉にも所縁が深い。
秀吉の最初の子・棄丸が遊んだおもちゃの船(めちゃ大きい)、彼のために作られた可愛らしい鎧なども展示されていた。
これらは以前にも別な展覧会で見ているが、正直言うて、怖い。
四百年前の夭折した幼児のための玩具船は、まるで補陀洛渡海のための小舟のように思われて仕方ない。舟は死に向かうためのものでもあることを思い起こさせる・・・

2体の棄丸坐像があって、一つは剥落の激しいもの・一つは胡粉も彩色もきれいなもの。
直したものなのなのだろうか、もしそうでないなら、やはり怖い。

蕭白が模写した福島正則像を見る。左右の目の大きさが違うのは、元絵がそうだからか、画家本人の工夫なのかは知らない。表情は静かだが、どこかに不思議な怖さがある。
蕭白の筆の怖さか、描かれた人物の怖さか。

明代の瑠璃天蓋が二つ来ていた。
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どちらもビーズがキラキラしている。手の凝ったもので、本当に綺麗。文琳型の中に五芒☆を見せるような拵えがあったり、軍配もモティーフにしたり。
仏具の中にこういうキラキラ系があるのが楽しい。

白隠のコーナーもあった。
宝暦五年(1755)の自画像が、晩年の谷崎潤一郎にそっくりなのには笑えた。
ちょっと『瘋癲老人日記』の主人公のようでもある。静岡の松蔭寺にあるそうな。

同じ寺に「すたすた坊主」という戯画に近いのもあり、それがなかなか可愛い。
道楽を過ぎた布袋が水桶を手にしてニコニコしている。
大体江戸も中期以降から幕末辺りにくると、色んな坊さんが出てくるものだ。
舞踊の「浮かれ坊主」なんて、わたしは大好きだ。踊りもいいが、歌の文句がまたいい。
あと住吉の「願人坊主」とか・・・・・・・

法具変妖之図 つくも神というか、百鬼夜行風な絵巻で、こういうのが好きなので面白かったが、実はここに白隠の「言いたいこと」が詰まっているそうで、それを踏まえて眺めるか、無関係に見て笑うかが問題だ。

白隠の偈があった。その字を見て、須田刻太の書を思い出した。なんとなく刻太が善財童子のような気がしてきた。

さて最後に障壁画のコーナーに来た。
等伯の中国の丸顔のお猿さんを見る。日本の猿は狙仙、中国の猿は等伯がいいのかもしれない。
実に手の長い猿。通臂公のようだ。
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寒山拾得、三酸図、虎渓三笑、寺に相応しいモティーフの絵が色々あった。
こうして眺めると、やはり禅寺と言うのは不可解な面白味があるようだ。

以前「知る楽」でも紹介されていたような気がする、メトロポリタン美術館所蔵の狩野山雪の老梅図襖を見る。枝振りが妙な迫力に満ち満ちている。枝ぶりは魁偉だが、ピンクの梅は満開、白梅も咲き誇り、そっと躑躅も姿を見せていたりと、花々は可愛く描いている。
それがいっそう魁偉な面白味を醸し出しているのかもしれない。
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しかし、面白かったのは実は中身もさることながら、見る人間だったかもしれない。
「イゃ、ここのお寺こんなん持ってはったんやわ」というような声が色々聞こえていて、それが面白くて仕方なかった。
実際、遠い存在ではないのだ、神社仏閣は。
もしかすると、法事のときや、拝観のときなどに、この展覧会で見たものを思い出し、「あれ、どこにありますのん」と話しのタネになるような気がする。

ところでわたしは柳生兵庫助のファンで、彼が最晩年はこの妙心寺に柳庵という草庵を結んでいたと本で読み、彼を葬った如雲塔が長らく諸国剣客の参詣があったと知った。
それで何か出るかなとちょっとだけ期待していた。
しかしなかなかそういうのは出ないものだ。今もその塔があるかどうかもわからないし。
今度妙心寺界隈に出かけたときには、ちょっと探してみようと思っている。

4/21から5/10まで後期展示。





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コメント
京博、ご無沙汰です
イゃ~、「老梅図襖」は刺激が強かったです。
これの画像を見ると一気に東博の会場に意識が引き戻されます。
関西の方にとって妙心寺が身近な存在だということが、「イゃ」のひとことでよくわかりました。
2009/04/22(水) 23:33 | URL | ogawama #SFo5/nok[ 編集]
イゃ~~♪
☆ogawamaさん こんばんは
>「老梅図襖」は刺激が強かったです。
あれにはキャハーッでした。
丁度こないだ日経新聞にもその絵が出てました。

> 関西の方にとって妙心寺が身近な存在だということが、「イゃ」のひとことでよくわかりました。
ふふふ、もぉ本当にナマナマしくって。ハハハ。
なんというか、日常の中に法事が組み込まれているんですよ、大小に関わらず。
2009/04/22(水) 23:52 | URL | 遊行 七恵 #-[ 編集]
No title
お世話になっております
東京国立で掛からなかったものを観に 先週末伺いましたが
夕刻の1時間前後でしたので なにぶん閑散
観覧の方々の会話には出会えず いささか残念でした
京都国立 作品脇の解説が丁寧で好もしかったですな
絵の配列も個人的にはしっくり来たし(書跡等で点数は絞っていた?)
期替わりもよさそうですな それではご自愛ご健筆を
追伸 福島正則像 中尾彬に似てましたな・・・
2009/04/25(土) 17:09 | URL | TADDY K. #fjJSDZ0o[ 編集]
No title
☆TADDY K. さん こんばんは
おーこっちでご覧になりましたか。キャッチコピーがこっちは派手で面白いですよ。
東京「虎穴に入らずんば虎児を得ず」
京都「看よ看よ これぞ禅の真骨頂」

>福島正則像 中尾彬に似てましたな・・・
うう~~む。そそそ、そうだったのか~
福島正則も首になんか巻いて、「これ美味いなぁ」とか言うてたかもしれませんね(ないない)。
2009/04/26(日) 00:09 | URL | 遊行 七恵 #-[ 編集]
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