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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

インシデンタル・アフェアーズ うつろいゆく日常性の美学

サントリー美術館で開催中の「インシデンタル・アフェアーズ うつろいゆく日常性の美学」を見に行く。
副題は「現代アートを楽しむための17の扉」。
基本的に現代アートはニガテで、「写真と人形だけは別」という私でも楽しめそうなので、出かけた。
諸外国の17人の作家たちによる作品が展示されている。
1951?1983年生まれの作家たち。うち一人を除き、各自のコーナーがある。

ウォルフガング・ティルマンス ‘68?
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髪または光ファイバーのような細い線が拡散する構図がそこにある。色はピンクでまとめられたもの、緑色のものなど、白地に何かの色が集められている。
解説では「うつろいゆく日常性そのものが写し出されている」とあるが、一瞬「死んだままのような日常」は彼の手にかかればどのような形態を成すのだろう、と考えた。
そんなことを考えさせる余地のある作品だった。

佐伯洋江 ‘78?
シャーペンで形を作り、指先が色を拡げる。
遠目から見るのと、近くで凝視するのとでは、全く異なる味わいがある。
指紋の残る画面。指紋は描き手のもので、形状は決して変えられない。
「きれいはきたない、きたないはきれい」 これは「マクベス」の魔女のセリフだが、そんな言葉を不意に思い出した。

エリザベス・ペイトン ‘66?
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描かれたこの人物、女の人ではなく、少年だったのか。水彩の美しさが少年や青年を彩る。
エリザベス女王の戴冠式を描いた作品を見ると、女王の左右に美しい青年がいて、真ん中の小柄な女性をみつめている。むしろその女性の方が男性的な強さに満ちていた。
ロックスターの後姿などもあるが、綺麗なのかどうか判断の分かれるところだ。
わたしはデヴィッド・ボウイーが「いちばん綺麗な」ロックスターだと思っているので。
若い頃のデヴィッド・ホックニーの肖像もあった。「スプラッシュ 彼と彼 とっても大きな水飛沫」の頃だろうか・・・・・・

アニッシュ・カプーア ‘54?
アクリルの中に物体がやはり透明なまま浮かんでいる。正面から見ても、横から見ても、不思議な面白さがある。まるでSFのような。
バラード「結晶世界」、いや違う。藤田和日郎「からくりサーカス」のアクア・ウィタエのように思えた。

榊原澄人 ‘80?
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第9回文化庁メディア芸術祭大賞「浮楼」が流れている。小さな町の中心部を俯瞰する。
動き回る人々。何の変哲もない町。しかしよくよく目を凝らし、人々の動きを個別に追うと、思いがけない面白さがある。そこここで小さなメタモルフォーゼが繰り返されている。
グランマ・モーゼスの絵のような世界に、小さな漣が打ち寄せ続けているのだった。

横井七菜 ‘83?
美術館での展覧会の参加はこれが最初、ということらしい。繊細なイラスト。不思議な行動。見るものに妄想を抱かせる構図。
「水が引いたら」 森の中の一軒家の周辺に、大勢の人魚たちが打ちふし、斃れている。ある者は家のすぐそばのバラの木に引っかかり、地に落ちていたり。
家の中には彼女たちが日常着にしているらしき、ワンピースなどが見える。普段は森の中で、人のような生活をしていたかのように。
ただ一人生き残った少女が家の煙突のてっぺんに座している。膝には人魚の下半身が置かれている。
まるで末妹による、姉たちの虐殺のように見えた。
「無題」cam192-4.jpg
少年と少女が出会う。蛇のような胴体があちこちにのぞくのは、何かの徴かもしれない。

フランシス・アリス ‘59?
「預言者と蝿より」シリーズが10点、会場のアチコチにバラバラに展示されている。
政治的イデオロギーと密接な関わりのある作品。
そこにある絵のうち、水から上がったばかりの少年を待ち受ける、ピンクの二重写しの豚には、暴力的なものを感じた。

田中功起 ‘75?
インスタレーションというものが、こういうことを言うのなら、わたしにはダメだ。
非難されている気分になった。わたしはその場を逃げた。
けたたましいし、滅入ってきた。

宮島達男 ‘57?
世界的に有名なアーティストであろうと、代表作であろうと、実際には悪寒がした。
広い空間いっぱいに広がる点滅する青い光。デジタルカウンターの点滅がこんなに気持ち悪いものだとは、思わなかった。心臓がおかしくなった。なんだろう?
体調不良になったので、このまま帰ろうかと思った。
洗脳する方法にこうしたやり方もあるはずだ。眩暈と耳鳴りがする。
たしかポケモン事件もこんな状況ではなかったか。二度と体験したくない。

どうもますます現代アートが苦手になってきた。例によって、「それがどないした」と言いたくなるような作品が出てくるぞ、とののしる。
実際そんな作品がいくつも続いたので、本当にイヤになった。
しかし踏まれてばかり、というわけでもなかった。

さわひらき ‘77?
三面のスクリーンに映し出される優しい世界が、心を癒す。実際、座り込みたかったので、ここへたどりつけてよかった。体調不良はこの映像を眺めるうちに回復し始め、本当にホッとした。
小さな木馬の旅。小さなジェット機、小さなトンビ。オルゴールの柔らかなメロディ。
音階は古びたせいで、少しずれている。
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小さな素敵な家が世界の全て。その家の中で旅が始まる。
カーテンの揺らぎ、毛足の長い絨毯。風に吹かれながら旅をする小さな木馬。
時には一騎で、時には増殖して旅をする。
浴槽の大海原を行く。レトロな蛇口から溢れる何か。
背景の錯誤ではなく、それが「今の世界」だと知る。
行過ぎる時間、更紗のシーツ、ひずみを見せる木の階段。
                  cam192-2.jpg
ロングとアップの交互の映像。
登るラクダ、象に乗る人。
インダストリアの三角塔の背後から上がる打ち上げ花火。ビルは照らし出される。
その下で行き交う電車たち。全ての車窓に光が灯る。終わりのない花火、終りのない旅。

目を開かれたものと、背を向けるものと、二つの新しさを覚える展覧会だった。5/10まで。
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コメント
No title
なんと、宮島作品で体調不良!
田中功起は私も苦手です。
さわさんの映像で、救われて良かった。
読んでいて、心配になってしまいました。
2009/05/03(日) 19:59 | URL | meme #z8Ev11P6[ 編集]
☆memeさん こんばんは
ご心配おかけいたしました(汗)。
埼玉の展示とかは面白いのですが、
巨大な室内全体が点滅し続けるのは、
恐怖以外の何者でもありませんでした。
入室前に注意は受けましたが、予想以上でした。
参りました・・・
2009/05/04(月) 22:30 | URL | 遊行 七恵 #-[ 編集]
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