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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

みんぱくx千家十職 牛年余春と樂歴代

千里の民博で「みんぱくx千家十職」という展覧会が開かれている。
これは千家十職の現当主と民博とのコラボ展覧会という趣向で、とても面白かった。
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千家十職家の歴代の名品と現当主の新作・旧作の展示・・・だけというのなら、在り来たりだ。
それならこの国立民族学博物館で行う必要性はない。
民博には世界各国の様々な生活用品が集まっている。(集まり続けている、と言うべきか)
その民博の蒐集品から千家十職の当主たちが、「家業」とリンクするような物品をチョイスし、更に自分の好みの何かを選んで展示し、そして・・・という内容なのだった。

これは非常に面白い試みだった。
元々千家十職とはお茶の家元・三千家に出仕し、それぞれの職能に沿った茶道具とその周辺とを拵えるのが仕事なのだ。
中には利休好み、宗旦好み、といった決まり物を作ることもあれば、先祖の業と個性とを髣髴とさせるものも作る。
それから自分の個性を押すこともする。
しかし甚だしくかけ離れたものは、決して作らない。
それがお約束なのだ。
今回の展覧会の面白味は、およそ茶道具とは無関係なものである世界各国の民具などが、
彼らの眼を通して千家十職の仕事とタイアップして展示されるところにある、と思う。
また現在の当主個々人の嗜好や志向などが見えてくるので、そこにも興味が湧いてくる。

更にそれら民具などをただ展示するのではなく、そこから得たインスピレーションによって拵えた新作も展示されるのだ。
これが前述の「そして・・・」の続き。
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会場は本館の隣の筒状の建物。
入ってすぐに今日庵の再現がある。落ち着くなぁ、と言いながらふと目を向けると、黒田家、土田家、奥村家の歴代の名品がある。上京区にいる気分になる。
利休四百年忌の際に三千家の家元が合作した書「西江水」がある。この字を見ると柳生石舟斎を思う。それから「懈怠比丘尼云々」ああ、茶道資料館で実物を見ている。
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アアエエナァと呟きながら、中川家、永楽家、大西家、樂家と眺める。
そう言えば水屋も再現されてたけど、あれは不審庵の再現やったなぁ。
巨大な鵞鳥の香炉、鶴が抱え込むような釜、干支の動物を縫い取った袋物、煌びやかな器・・・
歴代の業がそこにある。
中村家、飛来家、駒澤家と廻って次の半円へ向うと、途端に世界がガラリと変わる。

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このチラシがそのもう半円の景色。網の中に集められているのは、アフリカの仮面や瓢箪の民具、楽器などなど。これを選んだのは樂吉左衛門氏。
「アフリカンドリームをテーマにした茶碗を制作しました」
とのことだが、これらの所蔵品を見てビビビと来たのだろう。
以下、元ネタと家元の新作とを並べる。

ところで先のアフリカの向かいにはギョッとするものがあった。
チラシでは文字に隠されているからわかりづらいだろうが、<月12日[木]>の文字の背後にあるものがソレ。
ここの一隅は大西清右衛門氏のチョイスによるが、そこには実物よりやや大きな「死者の像」が設置されていた。
ミイラ、金縷玉衣、と死者の肉体を収める容器はこれまで見てきたが、こんな妙にリアルな(それでいて、ありえないような造形の)モノを見たのは初めてだった。
何なんだろうか、一体。
異様な気持ち悪さがあった。

二階へ上がると千家十職の職能をそのまま表したようなものが並んでいた。
ここのコンセプトは「手仕事を動詞で考える」 なるほど??!!
叩く、鋳込む、捏ねる、削る、描く、塗る、張る、組む、曲げる、切る、縫う。(11になったよ)面白いものが集められていた。
その中で一つビックリしたのが、ライオンの形をした棺桶。ガーナ製。
帰宅してその話をしようとしたら、TVのCMでそれが現われた。葬式会社のCMだが、ガーナのライオン棺桶だった。本当にビックリした。こういうのもアリなんだろう。

特別展の会場の空間が和の真髄+世界の民具でナゾな空間に変わっていたのを実感した。
茶道に無関心な向きでも、この展覧会は大いに楽しめると思う。
毎日新聞がこの展覧会と関わっているため、記事を色々挙げたりインタビューなども掲載しているので、より楽しむことが出来た。
会期は6/2までだったが延長して、6/14までになったそうだ。

イスラームのタイルをモティーフにして中村宗哲が拵えた角皿もいい感じだった。
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一方、それと同時に関西にある古美術を扱う美術館が連携して、千家十職と縁のある品々を展示してもいる。
先に挙げたチラシの裏には、各美術館の展覧会タイトルと優待事項などが書かれているので、いよいよ嬉しい。
春にはそれに参加している藤田美術館と湯木美術館とに出かけて、素敵な陶磁器を愉しんだ。

次はそこともエニシの深い北村美術館「牛年余春」と樂美術館「樂歴代」。
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宗達の牛が見たかったので、嬉しい。口許と目許に個性のある牛。ちょっとコッテ牛な奴である。
行った日は相客がなかったので、一人でジロジロと眺めた。
他に面白かったのは、白毫寺の鬼瓦。歯並びが可愛かった。
山本梅逸の「鴨東春雨図」も靄けていて、春の風情がよかった。

金海猫掻茶碗 cam249-1.jpg
朝鮮で日本用に作られたお茶碗。小さくて可愛い。猫の爪の引っ掻き傷ぽいところからそのように分類されるらしい。

いいものを見れて嬉しい。北村美術館では6/7まで開催。

北村から樂美術館へ。この間はバスに乗る。隔月刊で「今出川通りの美術館だより」というものがあり、そこには西から東へ向けて、堂本印象美術館、茶道資料館、樂美術館、北村美術館、橋本関雪記念館の展示案内と、各館をつなぐ交通機関が載っている。
北村から樂へは四つほどのバスが走っていた。

樂歴代。cam250.jpg
長次郎から当代までの名品が並んでいる。
わたしはとにかく三代道入(ノンコウ)が大好きで、「ノンカウ」と書かれた文字を見ただけで嬉しくなる。
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画像では深緑にしか見えないこの黒樂、実はキラキラキラキラキラキラキラ光っていた。
なんと綺麗で繊細なお茶碗だろう、とそれだけでも見に来た甲斐があった。

茶碗だけでなく香合も並んでいて、代を重ねる家の業というものを深く味わわせてもらった。
鶴が首をすくめて丸くなっている香合が特に可愛い。鶴の目つきがいい。
他に蛤形に白菊の胡粉が盛り上がったものがあったが、これはどことなく別なものを想起させた。

最後に当代の新作があった。赤樂。ワイン色が翳むような、そんな色合いの赤樂だった。

いい時期にいいものを見た。マスクをして出歩いた甲斐のある展覧会ばかりだった。

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