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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

やまと絵の譜

出光美術館の「やまと絵の譜」を見た。
前回の「水墨画」の好さがまだ意識に残っているが、出光のやまと絵の良さは以前から知っていることだから、これも楽しみだ。
二日目の朝に出かけたのだが、出足好調な感じ。
今回作品は36点、それからリストに載らない着物や工芸品がやはり同じくらいの数出ていて、それが花を添えている。
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チラシがまた巧いですな。
花見の時期は過ぎてるから、松の青々した美しさを見せ、それを楽しんでますよ、な人々を配置する。こういうセンスの良さがいよいよ期待を高めてくれるやないの。

第一章「うつつ」をうつす やまと絵と浮世絵
「うつつ」をぬかす、なら得意なんだがな。
この章では師宣、懐月堂、英一蝶、又兵衛らの作品が並んでいた。

二美人図 伝菱川師宣  屏風を背にした女が脇息に凭れ、その前で赤い着物の少女が墨を磨っている。姐さんは年嵩らしい着物を着ていて、それがよく似合っている。渋いねずみ色地に大きな桜の花柄。こういうセンス、いい。

立ち姿美人図 懐月堂の師弟の二枚が並ぶ。
安度はちょっと泥絵の具風な、民画風な趣があり、ぐっと迫るものがある。鼈甲の櫛を差し込んだ黒い髪も量感があり、女の体の匂いまでこちらに届きそう。
女の着物の柄は円の中に花が押し込められている。
度辰はそれに比べ、ずっと都会風な絵だった。茶から裾が青に変わる着物を見につけた女。花と茎とで円を描く柄。どことなく開放的。

凧揚げ図 英一蝶  ずいぶん細長い縦長の絵で、まっすぐな幹の松に奴凧がひっかかっている。松には桜も少し間近にあるらしい。下界を見下ろす奴凧。
これを見て大岡信の詩「凧の思想」を思い出した。
地上におれを縛り付ける手があるから おれは空の階段上ってゆける
・・・・・・なぜか「鳶と奴のつかみ合い」の句は思い出さなかった。

桜花紅葉図 英一蝶  双幅。桜花にはツバメが二羽描かれているが、その桜には短冊がつけられていて、短冊がツバメの背を包めとっている。
くるめとられたツバメは首を上げてギャッと声を上げている。
巻きつくものは本当に短冊か?どうもツバメ取り紙のような気がする・・・
その下を飛ぶお仲間もびっくりしている図。
紅葉には短冊を眺める静かなセキレイが描かれているが、構図的には面白くない。
思い出すのはハエ取り紙ツバメ取り紙にくるみ取られるツバメの図だな。
どちらもほっぺたぷっくりで可愛い。

野々宮図 岩佐又兵衛cam267.jpg
チラシの裏面に画像があるが、モノクロとはいえこれはイメージを損なわない。本物も実に淡彩で、却ってカラー印刷よりこちらの方がよいような。
風が強いらしく、草花も御幣もそよいでいる。光君とお供の少年とだけは風に逆らうように立ち尽くす。六条御息所への未練が彼を立ち尽くさせている。向かい風に逆らいながら。

在原業平図 又兵衛  昔男の絵も多く描いているが、これは業平の肖像画という風情。
狩衣に弓矢を持つ立ち姿。若くてキリッとして素敵。しかしそこには来るべき老いを思う薄暗い歌が書き込まれてもいる。

職人尽し図 又兵衛  珍しいことに、笑顔キャラが描かれている。場面換えがあるが、私が見たのは、大袋に子供ら乗せて引っ張って遊ぶ布袋さん、踊る黒大黒、体よりずっと大きいタイを持つ寿老人。けっこうタイの眼がコワイな。ジョーズみたい。

江戸名所図屏風  ああ久しぶり。2003年秋に出光でこの屏風をメインにした展覧会があった。確か小学館からも詳細な画集が出ていたはずだ。
それ以来の再会のような気がする。
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これは本当に楽しい名所図で、キャラの顔も可愛いのだ。二千人ほどが描かれているが、顔だけ見ていると大正ロマンぽい。江戸初期頃だから京都の風俗も流れてきているし、湯女もいれば色子もいる。人形芝居もあれば野郎歌舞伎もある。面白い雰囲気。
江戸名所図屏風―大江戸劇場の幕が開く (アートセレクション)江戸名所図屏風―大江戸劇場の幕が開く (アートセレクション)
(2003/09)
内藤 正人


扇面法華経冊子断簡  平安時代のあれ。四天王寺にあるのは扇面形ノートで、あれは国宝。これは何の指定も受けていないが、わざと?
若女房と童子が水辺で戯れる図。平安時代の風俗画というものもなかなか面白い。人間、千年くらいでは、やることは変わらないような気がする。

第二章 「物語」をうつす 「やまと絵」絵巻の諸相
絵巻がぞろぞろ並んでいた。

絵因果経  奈良時代のもの。随分長い。湯木や芸大などで見てきたものよりずっと。
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お釈迦様を誘惑する悪魔たち。マーラVSブッダ。下の文中には「魔衆」と書かれている。
しかし妙に可愛い。特にアタマの上で吐いてる奴ら。可愛すぎ。

北野天神縁起絵巻  私が見たのは、胸をはだけて廊下を走る女のシーン。この元の話は盗みの疑いをかけられた女房が天神に祈って、真犯人がみつかって・・・というもの。
どの本だったか、「狂いの構図」の参考としてこの図があげられていた。

小柴垣草紙絵巻  鎌倉時代の絵巻で、庭先を眺める上臈の図。ここまでしか開いてはくれない。あとは延々と・・・・・・・・・ちょっと見たいよな。(実は以前に「芸術新潮」で見ているけど、その縁先で・・・)これは出光の所蔵品だったのか。知りませんでした。

長谷寺縁起絵巻  南北朝時代。かな交じりで多少読める感じもする。倒れた大木の上で天女が散華すると、その幹に蓮が咲く。継体天皇11年のとき。(この帝の愛人に照日の前がいたのだ)風雨に洪水で霊木流出。何しろ風神雷神が大活躍している。
いつもポーズをとるばかりだが(宗達、光琳、抱一、其一ゴメンね)、たまには働く姿も見なきゃね。
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でも、それで押し流されたら大変なので、天狗とかナゾの童子とか、皆さん総出で守りはる。大津にこの木は70年とどまって・・・ というところを見た。
まぁ本当に働くカミさま見たの初めて。

橘直幹申文絵巻  天徳四年の内裏炎上のときのエピソードがあるが、その炎上は岡野玲子の「陰陽師」九巻にも描かれていた。それを思い出しながらこの絵を見ている。
陰陽師 (9) (Jets comics)陰陽師 (9) (Jets comics)
(2000/03)
岡野 玲子夢枕 獏



これら鎌倉・室町・南北朝の時代に描かれた絵巻の中に、幕末の冷泉為恭の絵が並んでいる。しかも居心地良さげに並んでいる。

異形賀茂祭図巻 田中訥言  へんな黄色い獣が引くクルマ、牛飼童子はカエルに犬にキジ猫もいる。お琴を持つウサギもいた。こういうのは大好きなんだが、多分何かとメタファとかあるんでしょうな。しかしそんなこと関係ナシに好きな題材。

神於寺縁起絵巻断簡  これまで光忍上人絵伝と呼ばれていたもので、これがすごく可愛い。虎まみれ。とにかく虎虎虎虎虎虎・・・・・・(虎という字を連ねるとなかなかオシャレやな。初めて気づいた)元興寺の道照和尚の講じる法華経を聞く役行者と虎たち。くつろぐ虎たち。家族連れもいるし、カップルもいればグループもきている。おっぱい飲むちびっこもいる。豹柄はなし。みんなシマシマ。可愛くて可愛くて仕方ない。
なんしか虎同士で挨拶したり、雑談にふけってる感じもある。18虎。
じーーーっと見ている人も多かった。わたしもじーーーーーっと見た。

第三章 「自然」をうつす 「やまと絵」屏風とその展開
展示換えがあるので、全部見るには三回くらいか?

日月四季花鳥図屏風  不思議な光景としか言いようのない構図。月も日もはめ込み金属。コラージュとでも言うべきか。なんとなくシュールだった。
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それにしても見るべきものが揃った充実した内容だった。十分楽しんだ。
九谷焼や蒔絵にも面白いものが多かった。
そして出口付近に唐三彩の家型のものがあるのは必見。
遠目にはただの家型だが、こわいことに入り口の中に女の人形が立ち尽くしているのだ。
こういうのを置いてあるのもご愛嬌かもしれない。
展覧会は始まったばかり。7/20まで。
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コメント
No title
こんにちは。
今日見てきました。友人と一緒で、あれやこれやといいながら、(静かにですよ。)あっという間に1時間半。
又兵衛の表情と色気は独特ですね。鯛の目にも色香が!
長谷寺縁起絵巻の風神・雷神のハガキを買うこと、
すっかり失念。
様々見応えあり、江戸のマチをハイカイした気分でした。 
2009/06/10(水) 16:30 | URL | あべまつ #-[ 編集]
No title
私の場合、どうも人とは見ているところが違うのではないかと思う今日この頃です。
入口入って左側は、滞在時間が超短かったです(笑)。
> 野々宮図...
顔の作り(描き方)とか好きじゃないんですよね。
2009/06/10(水) 23:15 | URL | 鼎 #PgtEBqSc[ 編集]
同じものでも・・・
☆あべまつさん こんばんは
あのタイの眼、面白かったですね。
又兵衛にしては戯画風なところがいいです。
長谷寺の風神・雷神、よく働いてましたね~~
そのことに感心しましたよ。
水墨画もよく、やまと絵もよく、陶器もよく・・・
出光は本当にすごいと思います。


☆鼎さん こんばんは
>左側は、滞在時間が超短かったです
ほほー。趣味の違いというのは面白いものですね。
アゴナガも見慣れると、変さを感じぬどころか、
いいなーと思ったりしてます。
右も左も楽しんだっておくれやす~
2009/06/11(木) 00:06 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
No title
やはり、遊行さん、トラファンでしたね。
今、トラの借金はいくつでしょうか?
今シーズンは野球見る気もしません。
さて、私も又兵衛の豊頬長頤にぐっとくるのです。
もう条件反射みたいなものですね。
小柴垣草紙、続き見たかったです。

2009/06/15(月) 04:41 | URL | 一村雨 #-[ 編集]
☆一村雨さん こんにちは
トラの雨ってご存知ですか。
曽我十郎の恋人・虎御前にちなんだ伝承なんですけど、そんな神奈川県だけじゃなく、関西全域が虎の雨ですよ。
シクシクシクシク・・・

>私も又兵衛の豊頬長頤にぐっとくるのです
キャラの個性がピカピカしてますね。

>小柴垣草紙、続き見たかったです
・・・なさってましたよ~(芸術新潮で見ましたが)
2009/06/15(月) 09:16 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
No title
こんにちは。
やまと絵、絵巻の諸相ってこんなに面白いものがあった
なんて驚きです。どれもいきいきと、たのしいですね。
風神・雷神もこんな昔から、大活躍!
異形賀茂祭だって、日本民族がこんなに面白いとは、
おもしろいです。
2009/06/22(月) 17:15 | URL | すぴか #-[ 編集]
☆すぴかさん こんばんは

やまと絵は楽しいです♪
宗教色の濃い説話ものが題材であっても、どこかが楽しい。
あの風神雷神や働くお地蔵さんにはめちゃくちゃウケました。

明るい気持ちで楽しめましたよ。
ほんと、いいですよね♪
2009/06/22(月) 21:12 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
No title
七恵さま、こんにちは!家光美術館なんとか都合つけて本日行って参りました。色刷りのパンフ無くなってしまいましたということでもらえませんでした。ガックリ。最近他の美術館でもこういうケースが珍しくないんですよね。これをコレクションするのが愉しみなのですが、、、、、
ところで英一蝶の「凧揚げ図」なんですけど、表装の柄って???だと思われなかったですか?まさにウイリアムモリス風というか?えらくモダンな表装でした。館の方に聞いたら「うちでは表装をし直してません」勿論制作当時のままじゃないでしょうけど、どなたが表装をし直したんでしょうか?気になりました。
2009/07/10(金) 21:56 | URL | 亀 #-[ 編集]
☆亀さん こんばんは
わたしもチラシ大好きです。チラシ一枚のために無理に無理を重ねて出かけることも多いです。

表装ですが、この絵がどのような経緯でここに収まったかはわかりませんが、意外なくらい江戸時代でもモダンなものが多かったりしますよね。
たとえば近衛家煕の表装なんか密輸の舶来品を豪華に使ったりしてますし。
元禄の繚乱ぶりを示したいために派手にしたのかなぁと想像しています。
それにしても図録も表具や額縁まで入れてくれたら、さぞ楽しいでしょうね。
2009/07/10(金) 23:26 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
No title
遊行さんこんばんは。私も先日見てきましたが、持ち時間(?)をオーバーして楽しんでしまいました。
色々とやまと絵の起源を探ってはいましたが、
適度に名品展となっていたのがまた良かったと思います。時代も幅広くて目移りしますよね。

>特にアタマの上で吐いてる奴ら。可愛すぎ。

同感です。妙にリアリティがありました。
2009/07/15(水) 22:33 | URL | はろるど #GMs.CvUw[ 編集]
☆はろるどさん こんばんは
こうしたやまと絵系の展覧会は、思いがけないものに出会えたりするので、大好きです。
出光はやっぱりいいですね~

前期だけしか行けなかったのですが、後期も面白そうなのが出ていたようです。
あーまた行きたいもんです。
2009/07/15(水) 23:51 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
高烏帽子
七恵さま
小柴垣草紙 やはり気になって「ひらがな日本美術史2」でチェック?してみました。掲載されてたのは江戸期の写本で出光所蔵のものとは雰囲気がちがうような?何となく満足がいきません。笑えたのはアノ場面で男性が高烏帽子?を冠ったまま執り行なっているのでありました。女性は生まれたまんまになっているのにね。それとなんで縁先で執り行なわれるの?こんなこと学芸員の方に聞いても答えられないでしょうね。
まあ、これ以上詮索すると品が落ちそうなのでこれで止めておきます。またね。

2009/07/26(日) 09:08 | URL | 亀 #-[ 編集]
☆亀さん こんにちは

> 小柴垣草紙 やはり気になって「ひらがな日本美術史2」でチェック?してみました。
それとなんで縁先で執り行なわれるの?こんなこと学芸員の方に聞いても答えられないでしょうね。

室内だと(正式な)妻問いになるからかなぁ、と思いましたがここでも同じですよね。
やっぱり縁先だけに縁が先なのかしら、とかつまんないことをいっぱい考えました。

烏帽子ですけど、あれって宮廷内ではうっかり取っただけでアウト!だそうですね。
しかし違うことをついつい妄想すると・・・
いかん、自粛です。
2009/07/26(日) 11:54 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
No title
先日、江戸東京博物館に行って来ました。常設に江戸名所図屏風のコピーがありました。
博物館の偉いところは、「名所」を解説している(場所の特定)ところです。
一応、確認のためにデジカメで写して来ましたが、フラッシュをOFFにしていたので、ブレているかも知れない...
2009/07/26(日) 21:15 | URL | 鼎 #PgtEBqSc[ 編集]
偶然ですが、今そちらに行ってましたよ~
☆鼎さん こんばんは

> 博物館の偉いところは、「名所」を解説している(場所の特定)ところです。

場所の確認が出来るのは楽しいですよね。
それに多分、訊いてきやる人もいてはる、という想定があるのかも・・・
(わたしなんぞはそんな子供でした)
名所図会は、その後の状況確認も楽しみの一つです。
2009/07/26(日) 22:54 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
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