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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

生誕120年 小野竹喬展

小野竹喬展が大阪市立美術館で開かれている。
「見たい」という友人と共に出かけた。
既に前期展は終わり、後期展示に変わっていたが、深い満足があった。
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竹喬は今年生誕120年を迎える。1889年前後に生まれた人々は、歴史に名を残す人々が多いように思う。折口信夫、里見、奥村土牛、桜間弓川、ジャン・コクトー、夢野久作・・・
好きな人ばかり。いい気持ちで竹喬の世界へ入ってゆこう。

元々竹喬のおじいさんが南画家だと言うことでか、初期の作品は点描表現によるものが多く、南画風なおっとりした作品が多かった。
使う色もあっさりしたもので、後年の明るさとは全く違う趣がある。
渡欧して眼を養ったり、いい師匠や僚友に恵まれて、いい修行をしはってんなぁ、と感じた。

丁度百年前の「春の山」はモアモアした櫻と柔らかな土、草の表現がいい感じで、明治末ののんびりした山里の味わいを知った気がする。

数年前、御影の香雪美術館でも竹喬の回顧展があり、そのときは晩年の鮮やかな作品より、初期の山里風景などが多く出ていた。
こういうのを見ると、竹喬が京都画壇の人ではあるが、暖かな瀬戸内海の方の人なんだと思ったりする。
竹喬は実際に郷里の風景を多く描いてもいる。

三重県の波切を描いた「波切村」は大きな作品で、群青の海、緑茂る林、茶色い山肌、働く女たちの赤銅色の膚など、見どころの多い絵だと思う。
実際にそちらへ行ったことはなくとも、その雄大さを感じる。

90年前の「夏の五箇山」を見て、山登りをする友人が「ああ、五箇山や」と言った。
わたしは行ったことはないし、この先も行く予定は立ちそうにないので、そんなもんかと思うばかりだ。点々となにやら古い家が見える。
「ここの家は、合掌造りか何かなんか」
「そうやね、数は減ってるけど残ってるみたい」
「向こう行ったら、こきりこ節せんならんちゃうん?」
そんなこんなで明るい気持ちで眺めた。

歩を進めるにつれ、次第に私たちの持つ「小野竹喬」イメージを支える構図や色彩が現れ始める。
「秋陽(新冬)」 山の端が茜色に染まり、枯れ枝が神経細胞のように広がる図。
綺麗で、少しはかない。

どう見ても「ピカチュー」にしか見えない「残雪」を描いた一枚がある。これは絶対ピカチューだ。そんな大昔から目撃されていたのか。

「海島」とは鞆の浦の仙酔島のことらしい。緑の折り重なる島、玉虫色に光る海。画家の目に映る美しい風景は、画家の指を通じて美しく再現される。

「奥入瀬の渓流」 これは切手にもなったそうで、友人が喜んでいた。
わたしは奥入瀬も未踏なので、エエナーエエナーばかりである。
様式的な表現がなかなかいい感じでもある。
黄色い小さな花が愛らしい。

「春耕」  ルネサンス絵画の人物画の背景、そんな雰囲気がある。林がいい感じ。

「深雪」 '55年くらいからどんどん明るくカッキリした作品へ移ってゆく。
白雪がこんなにも明るいのか、と思う一枚。

「夕空」 柿が逆光になる。小さい星が出ている。明日も暖かう歩かせる星が出ている そんなイメージがある。しかしここにこの暗色の柿がなければ、ベツレヘムの星にも見える。
小さい星はなかなか大きな存在感がある。

「彩秋」 まんが日本昔ばなしに出てきそうな様々な色の集まった秋の山。実際こんな山を見たことがある。数年前、京都の衣笠。わら天神あたりからの景色がそう見えた。

こんな半ばでなんだが、昔わたしは竹喬の良さと言うものが全くわからなかった。
今もそうだが、作品に物語性があるものがわたしには尊く、平面な風景や抽象表現と言うものがどうもニガテだった。
しかしある時期から、福田平八郎、竹喬、徳岡神泉らの作品がたいへん好きになった。
それで近年は自室に平八郎か竹喬の絵柄のカレンダーをかけるようになり、楽しく過ごしている。
それらの作品にも今回ここで実物に出会えた。

「牡丹雪」  雪が空中で停止している。木々も雪を追う。この絵は「先生と弟子たち」展に出たのが最初らしい。なにやらいい集まりだな。それにしてもいい作品。

「鴨川夜景」 夏だから床が出ている。楽しそうでいいなぁ。わたしも床が好きだが、なかなか周囲は一緒に行ってくれない。

「樹間の茜」 やはりこの作品が一番有名ではなかろうか。この絵は可愛らしい絵で、眺めているとホンワカ・モードになる。果てのない空の一部を切り取った。そんな感じの一枚。

「奥の細道句抄絵」シリーズ10枚が出ていた。
実際に竹喬が好きになったのは、このシリーズを見てからだと思う。
そんなに言うほど芭蕉も好きではないが、句を思いながら絵を見ると、胸が広がるような心持になる。
特に好きなのは「五月雨を集めて早し最上川」 実はこの絵を見るまで「早し」が「囃し」なのか「早し」なのかわたしは知らなかったのだ。
やかましいから「囃し」かと思っていたくらいだから、国文科卒とはいえ多寡が知れている。へんなところで思い込みが強いからなー。

「まゆはきを俤にして紅粉の花」 濃い水色を背景に赤みがかった黄色い紅花が描かれている。なんとも言えずいい。花が三本だけ、と言うのがいい。

やがて最晩年の頃、竹喬は墨絵に心を移したようで、温和な墨絵の世界に遊んだ絵が並んでいた。
しかし絶筆作品「彩雪」は華やかな色調で、見るわたしたちには「竹喬らしい」絵だと嬉しくなるのだった。

本絵だけでなくスケッチも多く展示されていて、それらも見ごたえのあるものばかりだった。特にイタリアを描いたものに良いものが多かった。
友人の土田麦僊のスケッチも並んでいて、実景を前にして描いたものだと改めて知らされる。
今月まで開催中の「ボルゲーゼ美術館展」のそのボルゲーゼの庭を描いたスケッチがあるが、公園風でなかなか楽しそうな感じの場所だと思った。

12/20までは大阪、その後は巡回するそうだ。本当にいい展覧会だった。
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コメント
No title
こんにちは。「五箇山」は自分の出身地に近いので、エンジョイしました。その頃は観光地化していないこのようなノンビリとした景色だったのですね。
ボルゲーゼの庭は良い所です。私もあの椅子に腰かけて、美術館の予約時間がくるのを待っていました。
2010/03/07(日) 13:59 | URL | とら #8WYMted2[ 編集]
☆とらさん こんばんは
> 「五箇山」は自分の出身地に近いので、エンジョイしました。
その頃は観光地化していないこのようなノンビリとした景色だったのですね。

登山趣味の友人がこの五箇山の絵を見て「ああ、リアル」と言いました。
現在もまだちょっとナゴリがあるみたいですね。
わたしはこの山を見て「こきりこ節」をついつい。

> ボルゲーゼの庭は良い所です。私もあの椅子に腰かけて、美術館の予約時間がくるのを待っていました。

やっぱり本場に行かなあきませんね。
最近はアジアばかりに眼が向きますが、ちょっとがんばりたいなぁ・・・
2010/03/07(日) 19:06 | URL | 遊行 七恵 #-[ 編集]
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