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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

上方の画人・文人・蒐集家

近年、江戸中期の京都画壇人気が高いが、同時期から幕末、明治そして戦前あたりまでの大坂画壇の良さももっと表立てばよいのに、と思う。
いい展覧会があちこちで開かれていた。
一つ一つを挙げるのではなく、まとめて紹介したい。既に終了したものも含めて。

うまいもんと大坂画壇 浪花くいだおれの系譜 芦屋市立美術博物館
浪華文人蒐集家 辰馬考古資料館
上方ゆかりの絵師たち/大阪パック 花園大学歴史博物館

料亭・花外楼と関西大学、中之島図書館、ほかに大阪市立美術館、大阪歴博と個人蔵の名品が揃っていたのが「浪花くいだおれの系譜」だった。
大体が、本当の大阪人と言うものはエエ意味でも悪い意味でも「イヤシ」である。
イヤシは卑しではなく癒しでもない。
食いしん坊というだけの意味があるわけではない。同輩から目下にかけて「あんた、イヤシやなぁ」と言うても仲が悪くなければ「人のこと言えるんかぁ」と互いにハッハッハッと笑える程度のニュアンスもある。

生物はなにかしら食べないと生きてゆけない。
どうせ食べるんならちょっとはおいしいもんを食べたいやないか、という意識がある。
それが百年二百年の短さではなく、千年二千年単位でその意識が継続してるのではないか、と思う。
それもただおいしくいただく、いうだけではなく「楽しく」が入ってこそ「くいだおれ」になるのだと確信している。

花外楼は数年前にもそのコレクションの名品をお店のほうで見さしてもらったが、さすが史蹟だけあって素晴らしい作品が揃っている。
今回の展示ラインナップを見ても、栖鳳、鉄斎、景文、耕園、楯彦、観山らの絵のほかに店の名前をつけた伊藤博文の書などがある。

来月の♪九日十日十一日の三日間? の<えべっさん>を描いた景文、天神祭の船渡御を描いた中川和堂など、季節ものの絵のほかにも森周峯のイセエビ図、耳長斎のハマグリ取りや大石内蔵助遊興図が面白い。
浪華逸民を自称した菅楯彦の数々の風物詩を描いた作品、福原五岳の浪花料理本などなどいくらでも面白いものが出てくる出てくる。

こないだ若冲の「百老図」で笑ったところだが、玉手棠州「百奴図」もまた面白かった。
百人の奴がそれぞれ好き勝手に飲んだり食べたりケンカしたり奴凧を上げたりして遊んでいる。こういうのは観てて本当に楽しい。

近年になって発見された「花の下影」などは実に楽しい風俗画だった。幕末から明治にかけての浪花の食事情のあれこれアチコチを描いたもので、見てるだけでもわくわくするし「イや??ええなー」と思うものばかりだった。
こういう本を手にとってシミジミ眺めれば、「次は何を食べたろ」と言う気になるだろう。
ああ、面白かった。

花園大学では上方ゆかりの絵師たちと題して、呉春、森徹山、菊池芳文、須磨対水らの作品が並んだ。

鹿と仲良しさんな寿老人の絵を最近良く見るが、ここにある徹山のそれは、じいさんがくつろぎすぎて、鹿にもたれるの図である。でも鹿はイヤな顔をしない。

芳文 桜花小禽図  これはさすがに芳文らしい白い櫻と愛らしい小禽のいる図で、その鳥は鶯らしいところを見ると、大阪が舞台の「春琴抄」を思い起こさせる。

岡熊嶽 樹下二美人図  江戸時代の絵師で、わたしは初見。貴人らしき婦人と侍女が庭を散策しているらしい。侍女はお琴らしきものを抱えている。おっとりと美しい二人。

四条派の寄せ書き武将図が面白かった。絵師それぞれが一人ずつ行進する武将を描いているが、なんとなくみんなのんびりしていていい。武将の仮装をした絵師本人のような感じ。
丁度タイムリーなことに、今週号の漫画サンデーかゴラクかで、叶精作がかつての日の漫画家たちによる武将姿の行進図を描いているのを見たところだった。

武部白鳳 鯉図  威勢のいい鯉で、鯉こくにしたくなるような奴。この絵師も知らないが、武部本一郎の父だと今回知った。

あと他に謡曲「海士」と同じ物語の「大職冠図屏風」が出ていた。よく描けていて、竜宮の様子などが面白かった。

また雑誌「大阪パック」が展示されていて、これがかなり笑えた。
明治40年5月号ではこんなポンチ絵がある。
色んな人が大きく口を開けて、鯉のぼりのように風に舞う。
原内相?選挙は公平なりと口ばかり
伊藤候?モー女は止したと口ばかり
林外相?談判は良好に進捗したと口ばかり
軍人未亡人?操を守るとは口ばかり
平和会議は口ばかり
大阪市長?成功とは口ばかり
米国人、文明とは口ばかりで、日本人排斥

なんだか面白すぎる。余禄がまたすごい。笑えたなぁ。なんとなくラップぽいところがいいし、絵も面白かった。
4コマ漫画も楽しい。こういうのが明治末に刊行されている、と言う事実もよかった。


日本酒・白鹿の酒造家である辰馬家の持つ考古資料館では普段は瓦や銅鐸などを展示しているそうだが、今日までは「浪華文人コレクター」として、木村蒹葭堂や三宅吉之助というコレクターの蒐集品が並べられていた。
本草稿本を初めて見た。「浪花の知の巨人」として近年取り上げられることが多い木村蒹葭堂だが、確かに凄い人だと思う。並べられた展示品を見ているだけでも感心するばかりだ。
こういう凄い人が昔いたのだ。
う???ん、敵わない。

三宅と言う人は近代の人で、色んなものを集めていたようだ。
蔵書票などは夢二の手によるし、本も随分たくさんある。こういうコレクターがいてくれたからこそ、文化と言うものに厚みがあったのだ。
ああ、ここまでたどりつけるか?

やっぱり先人と言うのはエライもんやと思う展覧会だった。

花園大学は12/26まで、芦屋は12/13、辰馬は既に終了している。
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