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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

立命館「近世春本とそのコンテクスト」を見る

立命館大学アートリサーチセンターで「近世春本・春画とそのコンテクスト」展が12/18までの平日開催されている。
詳しくは立命館のサイトにあるが、実に多岐に亘って江戸の「文化」が集められていることに、かなり感心した。
学術的な扱いをして、芸術品として眺めることが、今回以降の予定らしいが、そこらはどうなんでしょうね、ついついアタマの中で勝手に論争してみたりした。

読まれる方は以後、反転してください。
「英泉ゑがくなんぞはこどもに毒だぜ」 至福千年 石川淳
幕末を舞台にした小説「至福千年」の中で、さむらい上がりの宗匠・一字庵冬峨が言う台詞にこんなのがある。
作者の石川淳は丸谷才一に何かの場で、渓斎英泉の春画が一番いいと語っている。
理由は、純粋に煽情目的だからということだった。

わたしは黒いソフトに黒いサングラスに黒のコートといういでたちで会場に入ったが、先客たちは非常にマジメな「見学者」ばかりだった。ノートに延々と感想もしくはルポを書くヒト、連れに細かい説明をするヒト、外人・・・誰もが真摯な眼差しで絵を見つめている。

西川祐信から国芳までの本や図が詳しい解説と共に展示されている。
上方と江戸の違い、時代性の違いなどなど・・・比較しながら眺めると、これは確かにセンジョーもヨクジョーもなくなり、ついウッカリとマジメに眺めてしまう羽目になった。

祐信の絵本は男色もので、坊主と色子の関係が描かれていた。「城下の色子」が長持ちだか行李だかに隠されてどこぞの座敷へ連れて来られる。むろん納得済み。
振袖を乱すことなく、色子は坊主の相手を勤める。
この絵を見ていると、「山椒太夫」の厨子王が、追っ手から逃れるために高野聖の背負い籠に隠れて四天王寺まで来たことを思い出した。
厨子王はそれが元で足が萎え、やがてお大尽の梅津院に見出されて、養子になる。
思えば色っぽい話だ。

奥村政信の「虎の巻」はタイトルからわかるように、義経関係の<世界>を舞台にしている。ここでは弁慶とお女中が描かれている。
「弁慶と小町は馬鹿だ なぁカカア」という川柳もあるが、一方で芝居「堀川夜討」では若かった弁慶唯一度の相手・おわさとの間の娘を死なさねばならぬエピソードがある。
絵本に描かれた弁慶は破戒坊主風な感じで、コワモテでもあり、ちょっと面白い。

道鏡伝説に取材した絵本もあり、なかなか笑えた。道鏡伝説はあれとしても、女帝の死因を思うと、かなりお気の毒ではある。

今回初めて知ったが、月岡雪鼎は春画描きとしてはNO.1のヒトだったそうな。
彼のパロディ本が色々あった。軟体動物と大差のない何かがそこにある。

春信の絵はけっこう面白かった。柳の下で仲良くするカップルを見る二人連れの女。
台詞がまたいい。ここには書けないが、ちょっと笑った。

浄瑠璃本もあった。「長枕褥合戦」というイカニモなタイトルで、志道軒高弟悟道軒作とある。志道軒と言えば平賀源内「風流志道軒」というH系滑稽本の主役であり、実際に浅草でそういう講釈をして人気のあった人物。
(水木しげる「東西奇っ怪紳士録」の「平賀源内」エピソードに現れる)
これもどこぞでカタラレたのだろうか。

勝川春章と北尾重政のコラボ作品もある。春画研究家の林美一氏の考察によると、これは役者絵でもあり、男は春章・女は重政が描いたらしい。
参考画として芝居絵や役者絵も出ていた。

直接的な絵ではないが、私としては興味深かったのが、清玄櫻姫の別バージョン(原型かもしれない)の、宗玄折鶴姫もの。寺を追われてアタマもザバザバに伸びた、見るからに落ちぶれ果てた坊さん・宗玄が焚き火をすると、その煙の中に彼が恋焦がれた折鶴姫の幻が立つ・・・どうも私は子供の頃から「櫻姫」系の物語が好きで仕方ないのだった。

ところで書き手も絵師も春本作成時には、ふざけたペンネームを使っている。
国貞は「不器用又平(=浮世又平のパロ)」、国芳は「一妙開程由」などである。
悪疾兵衛景清、させな斎、暁鐘成などというのもいた。

国貞で仕掛絵があった。縦に数枚続きの塔の殺陣もので、花四天は女、隠しページをめくれば・・・でなかなか面白い。
体のあちこちにビスを打ち、関節をカクカク動かせる仕掛けものもあった。

勝川春潮の十二ヶ月絵はそれぞれの月の趣向もよく、カプの表情もよかった。
こういうのを本当の意味で風流と言うのかもしれないなと感心した。

国芳は自分の肖像には殆ど顔を描かないヒトだが(武者絵で売れ出した初期頃に口上に登場したのには、顔を描いている。ただし浪子燕青という見立てである)、ここでも背を向けて顔を隠す。でも絵師の周囲に猫がたくさんいるので、読者にはそれが国芳だとすぐにわかる趣向がある。

少しばかり飽きてきたが、ラストに非常にいいのを見た。
それは85歳の神官による本で、絵は古今の名画を影絵にして今の絵師たちに再構築させるもので、ここにあるのは背中合わせに座す二人の姿だった。
それが男は着流しで浪人風、女らしき相手はややうつむき加減で、劇画風な表現だった。
なんとなく、行為そのものを描いた作品より、こちらのほうが趣が深いように感じた。

今後はこの展示品だけでなく、他の作品も含めてサイトで公開するらしい。
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コメント
No title
先日、京都に行ったとき、立命に行こうかどうか迷ったんです。
青蓮院を出た時間が遅くなってしまったので、断念しました。
記事を拝読して、またの機会が楽しみになりました。
2009/12/10(木) 05:23 | URL | 一村雨 #-[ 編集]
惜しいですね
☆一村雨さん こんばんは
マジメに拝見されてる方々ばかりなので、
わたしもマジメに凝視して来ましたヨ。
描かれた皆さん、とても楽しそうでした。
いずれweb公開されるそうですから、
そのときをお楽しみに・・・
2009/12/10(木) 21:17 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
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