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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

イメージの魔術師エロール・ル・カイン展

京都のえき美術館で「イメージの魔術師エロール・ル・カイン」展に行った。
行ったとき丁度巨大なクリスマスツリーが点火されたところで、キラキラしくていい感じだった。
ル・カインは’41にシンガポールに生まれ、東洋で子供時代を過ごし、イギリスで名を挙げた絵本作家。惜しくも20年ほど前に若くして亡くなっている。
わたしはル・カインがそんな現代の人とは知らず、彼の生年が彼の没年だと思い込んでいたのだ。

2019.3.12追加 
イメージ (1799)

ル・カインの早い晩年に生まれた作品の黒猫を三次元化したオブジェがあった。
これはミュージカル「CATS」の原作をル・カインが絵本化したキャラだそうだ。
にやにや笑った黒猫は魅力的だった。’90年の作。
触るな触るなとオブジェの周囲に書き込まれているのが無粋だが、触りたくなるようなキュートさが、この黒猫にはあった。






シンガポールには今年の正月に出かけたが、とても心地よい場所だった。
近年ますますアジアへの親近感が湧き出していて、居心地の良さに惹かれるようになっているが、少年ル・カインもどうやらその傾向があったようだ。

シンガポール陥落後、祖母や母と共にタージ・マハールのあるインドのアグラに移住したときの思い出話はとても魅力的だった。
祖母の拵えるインド風なお人形たち。熱国で過ごすためのレトロな大羽の扇風機、アッパッパのような服を着た白人の女たち、そしてそこで本を読む少年。
彼は東洋の魅力を膚で体感した西洋人なのだ。

装飾性の強い作品がステキだった。
絵本の絵は装飾に縁取られた中に描かれる。
その装飾フレームは一緒に描かれるのではなく、別に拵えられていた。
描き表装を少し思いつつも、全く違う発想でもある。
その特集コーナーのところにさくらももこのエッセーがあった。
彼女のちんまり可愛い装丁本があって、それはル・カインへのオマージュから生まれたものだそうだ。とても納得した。
わたしもこんな装飾フレーム大好き。

それにしても実に多くの魅力的な作品を生み出している。
特に気に入った作品は多くがアジアを舞台にした不思議な物語だった。
邦訳は未だ予定がない、美しい絵本たち。

2019.3.12追加
イメージ (1800)

「王様の白い象」・・・世界に秩序を齎す力を得る僧(なにやら思わせぶりだ)
「アラジンの魔法のランプ」・・・とても美しい絵。

「フォーの仔犬」・・・the littledog of FO フォーが欧米でのシャカを指す呼び名とは知らなかった。ここでは雁皮紙のような紙に丸々した狛犬の子供が描かれていた。
この狛犬坊やは「本能のままにガゼルを襲ってしまった」ので、シャカから追放刑を受ける。とぼとぼと彷徨う仔犬は、ある寺院で盗人を退治し、それでシャカから許される。
彼はそのまま寺院にとどまり、やがて成長し、妻子を得て、家族総出で門番の狛犬として子々孫々栄えるのだった。

「魔法使いの娘」・・・物語だけ読んだ限りではそれこそ無国籍ものなのだが、絵を見るとなんだか日本風平安美女が描かれている。そしてこの物語は中国に伝わるものだということで、その方にびっくりした。
マルグリット・ユルスナール「東方綺譚」をル・カインの絵で見ているような心持になった。

プシケーとキューピッドの物語はモノクロで表現されていた。アールヌーヴォー調の美しくも恐ろしい世界。
この絵を見ていたから、わたしは彼を昔のヒトだと思ったのかもしれない。
キューピッドとプシケーキューピッドとプシケー
(1990/08)
ウォルター ペーター



ル・カイン展は12/27まで。
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