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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

柴田是真の漆X絵

三井記念館で柴田是真の展覧会が開かれている。
既に行かれた方々のステキステキという感想にワクワクしながら出かけた。
国内のコレクションもあるが、アメリカ・テキサス在住のエドソンさんと言う方のコレクションがメインだった。
近年、海外流出した名品の里帰り展が多く開かれ、新しいファンが生まれていくのは、本当にいいことだと思う。

柴田是真の作品はかなり前々からいくつか見知ってはいるが、それでもこんなに多くの数を見るのは初めてなので、喜んだり驚いたり感心するばかりになった。

是真は幕末から明治にかけて活躍した工芸家で、そのヒトトナリなどは鏑木清方「こしかたの記」に一章さかれているが、いかにも幕末の江戸の職人らしい皮肉さと洒脱さを持っているのが、よく伝わってくる。
中から抜き出すとこんなエピソードがある。
清方の祖母が向うから是真が来るのを見て、身を隠した。(有名人を避けようという、江戸人の性質がある)しかし目敏い是真は「ご新造、取って食おうとは申さぬ」と呼びかけてくるので、逃げようがなくなった。
まったく人を喰ったような皮肉さがあり、そのヒネリがそのまま作品に素敵に活きてもいる。
若い頃には浮世絵師・国芳とも付き合いがあったそうで、それだけでも幕末の江戸の市井人の味わいを思わせる。

特に気に入ったものばかり書く。
(尤も批判できるものなんか見当たらないし、こちらの眼もそこまで成長していない)

流水蝙蝠角盆  めでたい吉祥文様でもある蝙蝠。花蝙蝠と黄金蝙蝠とが飛び交っている。
こういう構図を見ると「江戸の粋さ」というものを痛感する。

青海波貝藻料紙箱  これにびっくりした。「青海波」塗りという技法で拵えられているが、本当に波が打ち寄せているようにしか見えず、視線の角度を変えると、潮騒まで感じるほどだ。この素敵な箱の前で、左右に体を揺らし続けてしまった。光の乱反射のようでもある。すばらしい・・・

宝尽文料紙箱  めでたしお宝尽くしの中に、宝珠がある。お稲荷さんのお印の宝珠文だが、火が燃える描写。狐火ですがな? おもしろい。

円窓雛人形印籠  竹窓の向こうに雛壇がのぞくと言う趣向。人に見られていることも気づかず、三人官女がおしゃべりしているような・・・

紫檀塗香合  一見したところ・・・凝視しても・・・どう見ても「紫檀」にしか見えないが、<だましもの>だった!ヤラレター!!イゃマジで紫檀とちゃうのか?と声を出してしまった。凄い技能があるもんだ。これは手の技術の問題だが、日本には古から「見立て」精神が活きてるから、ここへ行き着くこともありえるわけですね。
擬・紫檀というか、その<擬>の技術にずっかりハメられた。

砂張塗香合  これもそうよ、だましもの。これを観ていて思い出したが、動物園の擬木を拵えたり、ドラマの小道具・大道具を作る会社の仕事を見に行ったことがあるが、そのときもどう見ても革張りの上等なソファが、実は発泡スチロールせいだった、ということがあった。・・・時代は変わっても、こういう技能は活きてるんですねぇ・・・

虎図小箱  これは虎に見せかけて猫です・・・というだましは別にない。勇ましそうなとらのおるシガレットケース大の箱。

「この一枚」という気合の入る一枚看板ものの展示がある展示室2には、これまた凄いものがあった。
柳に水車文重箱  例の青海波塗の活きる構図。この技法のおかげで、波の動きは無限になる。角度が変わると盛り上がりを感じる。精妙巧緻な技法にただただ感心する。
浮世絵の毛彫りのような繊細さにクラクラした。オミナエシが可愛く彩りを添えていた。

お茶室のところにはお正月のおとそセットに組まれた器が集まっている。
杯は朱塗りにカササギが嬉しいそうに飛ぶ図、台には小さく蝶やトンボが飛ぶ螺鈿ものが。
本当にいい感じ。こういう什器が欲しい・・・使う当てはないけれど。

絵を見る。

猫図  白地にキジ柄らしき親子猫がいる。猫の耳の内側の描写がリアル。子供は可愛い。

四睡図  豊干、虎、寒山、拾得の四人がスヤスヤというパターンだが、この寒山拾得は子供な二人で、めちゃくちゃ可愛い。墨すろうとしてそのまま寝てるなんて、可愛くて仕方ない。虎もぐーぐー寝てる。ええ絵。

瀑布に鷹図  これぞ幕末お江戸の市井の人!この発想がいい。
対幅で、右幅 フォールざーざーの中にいきなり鷹の顔が浮かび、左幅には鷹の親子がいて、向かいの水中の顔は親の顔、それに子が気づいてビックリする構図になっている。

他にも瀑布図があり、そこの解説プレートには「面白味がイマイチ」とあった。ところがこの絵の展示の出口にコレクターのエドソンさんからのメッセージがあり、そこにはこんなことが書かれていた。
旱魃のテキサスに住まうから滝の絵が好き、と。
絵として面白味がイマイチかもしれないが、その絵を見て癒される人がいて、それで喜んではるのに、ちょっとその解説はどうなんかなー。是真の作品だから、と言うて全てにヒネリや何らかの趣向を求めるのはちょっとね。

蔓草小禽図戸袋  金地に赤いような小さい粒を実らせた蔓草が描かれている。
実はグラデーションの波を見せている。とても綺麗。メジロがいるのもいい。
戸袋の引き手は菱形で、中に二つ巴の丸文が三つばかりあった。

そして水彩ではなく漆画も見た。
色のにじみや発色がとても面白い効果を見せているなと思う。
また構図が途轍もなく面白いものが多かった。

自分から桃を出る桃太郎、見返り鯛、ブサカワ猫、破れ傘の内側に可愛いわんころたち、おいしそうな野菜の数々・・・
こういうのを観るだけでも楽しくなる。
コレクターの方は画帳を繰る楽しみがある。うらやましい。いいものを見せてもらった。
後になってから、山種所蔵の漆絵画帳が出てきたが、琵琶法師として独演会をする大蛙と聴衆たちの図が面白い。蛙は暁斎も好きだが、是真も好きだったのかも。

再び工芸へ。
狐の嫁入り印籠  木々の隙間にぽつんぽつんと火が見える。しかし繊細すぎて、それが狐の嫁入りかどうかが、わたしにはわからなかった。

蚊帳をのぞく幽霊図印籠  表に幽霊の怖い顔がある。光の加減で表情が変わる。顔の怖さが倍増するような塗り方。裏には蚊帳があり、そこには陰火が燃えている・・・・・

ふくら雀根付  かわいい??可愛すぎ??こういうのが欲しいのよ!なんか焼き物みたいな感じに見えたが、どちらにしろ可愛らしすぎ。

国内に留め置かれた名品も集まっていた。
烏鷺蒔絵菓子器  これは面白かった。根津やシアトルの烏を思い出した。鷺がどこにいるのかちょっとわからなかった。
観てると、隣に来た親子が「エッシャーみたい」と言うので、なるほどそういう目で見てみよう・・・烏の隙間に鷺を探すわたしだった。

とにかくどれを観ても何を見ても面白く感じた。1/13からは入替えもあるようで、そのときも見に行こうと思う。ああ、いいものを大事に守ってくれたエドソンさん、ありがとう。
江戸尊さん、と呼ばせてもらうつもりだ。楽しい展覧会だった。
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コメント
No title
こんばんは。

江戸尊さん

上手過ぎ!!
是真もにっこり。
2009/12/23(水) 00:52 | URL | Tak #JalddpaA[ 編集]
No title
エドソンさん、私のパソコンでは、江戸孫と変換されました。
是真は、やはり幕末の江戸っ子気質なんですね。
2009/12/23(水) 07:58 | URL | 一村雨 #-[ 編集]
江戸尊たる是真と江戸孫たるEDOSONさん
☆Takさん こんばんは
洒落っ気は江戸人から受け継いだかもしれません(笑)。
いい展示をいっぱい見れて楽しかったです。

☆一村雨さん こんばんは
名は体をあらわすって言うのはホントのような気が(笑)。
エドソンさんは目利きさんでしたね~
2009/12/23(水) 18:06 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
No title
こんばんは。

是真を見に後どれだけ行かれるか?ってくらい
はまっています。最高~に惚れてます。
こういう技術もあるが遊ぶ後ころてんこ盛りが
たまりません。
是真の前にいる、小川破傘もやって欲しいなぁ。
漆芸でだけではなく力作の絵もあって、
ひたすら尊敬でした。
江戸尊様さまです!!
根津でもいいものが展示されてましたね~
2009/12/23(水) 22:24 | URL | あべまつ #-[ 編集]
江戸尊さまさま
☆あべまつさん こんばんは
気合の入る展覧会でした。後期もメチャ楽しみですよ。破傘に倣ったのもありましたね。
'09年末~'10初のシアワセですね。
2009/12/23(水) 22:32 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
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