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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

大倉コレクション 能面・能装束

大倉集古館の所蔵する能面・能装束は因州池田家、備前池田家に伝わるものが多いらしい。
池田家の売り立てにより、大倉コレクション・林原コレクションがある。
数年前、大倉と隣の泉屋分館とのコラボ展で大倉のお能のコレクションを色々見せてもらった。わたしは演能そのものにあまり関心がないのに、能面・謡曲などには深い愛着がある。昔の能役者の芸話なども、とても好きなのだった。

「新春を寿ぐ」として大倉コレクションの能面・能装束展が3/14まで開催されている。
新春、寿ぐと来れば必ず翁・三番叟が現われる。
^^こういう形の目をしたオジイサンの面である。
眉も髭も混じりのない見事な白い毛の、位の高い面。
そして「三番叟」として黒色尉という黒い顔のオジイサンの面がある。
どちらも旧い時代の日本の「笑い」を口元目元に見せている。

そして明治に描かれた大きくない屏風には、松と鶴が描かれているが、薄い日の出も見える。大倉鶴彦君古希、とあるからには大倉喜八郎の古希祝に描かれたものかと思う。

出目是閑を始まりに出目家代々が打った面が並んでいる。
いずれも桃山時代から享保年間のものなので、キャラメル色にやけている。
個性の強いものが目に残る。
小尉、邯鄲男、笑尉、平太、怪士、痩男、顰・・・
このうち「痩男」は映画にもなった「彼岸島」のキャラの一人が被っているものだと気づいた。その面が神社に奉納されていたというのも、なかなか意味深ではある。
「怪士」は頬高が目立ち、先の「痩男」と同じ洞水の作。
全く同時代でありながら作者名の伝わらない「顰」は、大変怒っているように見えた。まっかっかで歯と目が金色に光る。
後に出てくる「獅子口」もこちらに劣らず口をガーーーッと開けていた。

怖い顔ばかりみたところで「小面」が現われる。
この小面は愛らしいだけでなく、にっこりと楽しそうに見える。
機嫌の良い娘の顔を見ると、なんとなくほっとする。
そして以前やはり泉屋とのコラボ展で見た「萬媚」に再会する。とても綺麗だった。
実のところ「小面」のような若い娘の面より、やや年のいった女面が好きだ。
それは文楽人形でもそうで、娘よりは人妻の方に魅力を感じる。
驚いたのは「相生増」。元の面を写したこの面には、あえて入れられた傷がある。
傷は陶器の継ぎに似ていた。女の顔にそんなものを入れる神経がわからない。
「泥眼」より怖ろしいのが「近江女」だった。目に狂気が宿っている。しかも実際にこんな顔つきの女は世に棲んでいる。それが怖ろしかった。

神楽面と狂言面で同じ性質を持つものたちが並ぶ。乙とおかめ、嘘吹とひょっとこ。
どちらも神楽面の方が古様で、滑稽さを感じるよりはどことなく怖ろしさが潜んでいるように思えた。
狂言面では他に姫、大黒、福の神、鼻引、猿、白蔵主、狐があった。
よく能はシリアス、狂言はコメディと分けられるが、私は狂言面の方が能面よりずっと怖ろしく思われる。
笑顔を張り付かせた面というのは、怒っているそれよりずっと「含むところ」があるように思うのだ。
京都の壬生狂言の面なども間近で見たとき、その古様さに驚き、異様に惹かれる一方で、退きたいような何かを感じもしていた。
そしてその思いはやはり変わらない。

能装束も豊かなものが並んでいる。
特に惹かれたのは江戸時代中期に拵えられた「白地銀籠目花丸模様縫箔」。
この花丸がいい。歌舞伎の時代物に現われる御殿の襖絵に描かれる花丸、それと同趣。
菖蒲、紅葉、菊、牡丹などか色糸を変化させて縫い取られている。
他に鱗文様摺箔があり、「道成寺」に使われるときを想像して、ちょっとその前に佇んだ。

小道具のうち「弁慶頭巾」の実物を見たのは初めてなので、ちょっと面白かった。
絵では芳年も描いているが、実物はどうも見たことがなかったのだ。
ドラマ「坂の上の雲」で伊東四郎がかぶっていたのに似ている。

黒地金銀色蝶蒔絵鞘太刀  これがひどく気に入った。鞘を縦に六羽の黒揚羽が並ぶ図。
わたしは蝶がとても好きなので、嬉しくて仕方ない。いいものを見た。

幕末の狩野派の絵師が「通円図」を描いていた。宇治の通円。三幅対で、シンプルな絵。
能楽を絵にしたものはなかなかステキだと思う。
昭和51年には大倉集古館にいた繁岡鑒一(しげおか・けんいち)という人が能のキャラ絵を描いている。スタイルブックのようなステキさがある。
彼はライトの弟子で、川奈ホテル、赤倉ホテル、そしてホテルオークラのインテリアを担当していた。
資料しか知らない人の作品を見ることが出来、ちょっと嬉しい。

ヤクの毛で作った赤頭もあった。チベットあたりからの輸入は随分昔からあったのだ。

最後になり非常に美しい能面を見た。
「童子」面である。二重瞼の美しい少年。前髪も綺麗。
福本伸行「アカギ」から鋭さが取れたような風貌だった。
厳島神社所蔵の「童子」面と共に、ここの「童子」面は私にとって二大美少年像ということになる。

新春にふさわしい、いい展覧会を見た。
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