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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

細見コレクション 琳派に見る能

国立能楽堂では細見コレクションの「琳派に見る能」展が開かれている。
はろるどさんの詳細な記事により、道を間違えることもなく、楽しみに出かけた。
先に挙げた「大倉コレクションに見る能面・能装束」展とは違い、こちらは主に琳派の作品に表れる、「能を思わせる」作品を集めた展示だった。

洛外図屏風  知恩院、三十三間堂、大仏殿から始まる屏風。耳塚は見当たらないが豊国神社はある。色もなかなか派手で人々もイキイキしている。いちゃつくのもいれば、ケンカするのもいる。お能を見る人々もいるし、食べ物屋をのぞく人もいる。お能は解説によれば「葵上」が演じられているらしい。ああ、布晒しの人もいる。

細見コレクションの中でも特別好きな工芸品・釘隠しがあった。
いずれも七宝の素晴らしい作品で「夕顔文」「梅枝文」それと「鳥兜文引手」。
鳥兜は雅楽に使用される被り物だが、能では「富士太鼓」という演目に使われる。
その「富士太鼓」は雅楽の家をめぐる物語なので、やっぱり雅楽から離れることはない。
(因みに「富士太鼓」は数年前に、染五郎と愛之助で歌舞伎「三国一夜物語」として演じられてもいる)鳥兜、カナで書いたら毒薬。

岩佐又兵衛作と言われる「俊寛図」があった。
大海原へ漕ぎ出す大船と、小さな小さな人間たちの図。肉眼では人物の表情を捉えることは大変ムツカシイと思う。
一人取り残される俊寛が波打ち際で身悶えて泣き崩れている。手には船と陸とを繋ぐ縄がちぎれたまま握り締められている。
船の舳先には赦しを受けた人々が見える。喜界が島に取り残される一人と、都へ戻る人々と。左端の汀から右手の海を眺めると、構図の巧さに感心する。
(平家物語には、後に有王という少年がはるばる俊寛に会いに行く物語がある)

伊勢物語のかるたも楽しい。絵を見ただけでも「ああ」と現代のわたしでも!と来るのだから、往時の人々は「ハイッ」とばかりにかるた取りに励めたろう。
実際には美しい絵が色もそのままに残るので、使われはしなかったろうが。

中村芳中「光琳画譜」  芳中らしい脱力系と言うか、ゆるキャラな人々の絵がある。
耳長斎(にちょうさい)とも共通するゆるさがとても楽しいし、親しみ感がある。
四拍子の人々、花を挿した車(シダが目立つ)の前の人々・・・

鈴木其一「白椿に樂茶碗花鋏図」  タイトルそのまま。白椿があり、樂茶碗があり、花鋏があるという図。何か三題噺にもなりそうな感もあるが、やっぱりそのままか。

其一「弓張月図」  タイトルだけを見れば為朝かと思ったがそうではなく、鵺退治の源三位頼政を描いたもの。右幅には、長い弓を置いて空を見上げる頼政が、左には卯の花にホトトギスと月が描かれている。叙情漂う作品。

市川其融「雪中常盤図」  常盤御前の立ち姿。その袖にかばわれる乙若がいかにも寒そうである。描き表装には雀が飛んでいる。

いよいよ神坂雪佳登場である。
大鎧図  空の鎧を立たせるための木が目に見えて、中に人がいるような感じがする。つまり「祟りじゃ??っ」な感じ。
住吉明神図  ここではヒトの姿で描かれている。白髯の老人である。
神楽図  ぽっちゃりした巫女さんが可愛い。
菊慈童図  雪佳は多くの菊慈童を描いたが、この菊慈童もとても愛らしい。髪は肩にかかる程度で、白菊に囲まれて座している。手には扇がある。深山幽谷に住まう中にも閑雅な趣がある。童子、というにふさわしい幼さがいい。
ほかにも「百々世草」から軒端の梅を描いたものなどが出ていた。

綺麗な装束や光悦の謡本などもあり、優雅な心持になる展示品が揃っている。
入替えもあるので、行けるときには行こうと思う。

展示室へ行くのにラクなのは、千駄ヶ谷駅・国立競技場駅から地上へ出て線路沿いに歩き、一つ目か二つ目の信号で向かいの道へ渡り、歩道が途切れたところにある近辺mapを右手にいきなり折れると、住宅街の中に能楽堂の施設が見えてくる。展示室入り口はそちらからがいい。
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コメント
No title
こんばんは。
洛外図屏風の解説ありがとうございます。全体的に楽しげな様子には見えましたが、ほとんど節穴でした。
遊行さんは能はご覧になりますか。僕は狂言しか見たことがなくて、今度、能楽堂に出かけてみようかと計画中です。ここで開かれていなければ能に関心を持つことはなかったかもしれません。
2010/01/11(月) 22:31 | URL | キリル #ZgLpcwNk[ 編集]
能より歌舞伎なんです
☆キリルさん こんばんは

みやすい展示ではないんで色々わたしも見残しがある気がします。

> 遊行さんは能はご覧になりますか。

謡曲を聴いたり自分で声を出したりするんは好きなのですが、見るのは歌舞伎が好きなんです。狂言も演者によっては見ることもあります。
でも展覧会は歌舞伎より能狂言の方が楽しいんですよね~

東京ですとここと渋谷にも能楽堂がありますし、「見所」というフリーペーパーもあるので気軽に楽しめそうですよ♪
2010/01/11(月) 23:31 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
No title
こんばんは。拙ブログへのリンクをありがとうございます。洛外図にもしっかりと能舞台が描かれていましたね。琳派と能はあまり接点がないような気がしたのですが、其一しかり、色々なシーンに描かれていて感心しました。意外なつながりです。

百々世草が出ていたので嬉しくなりました。いつかは全点揃いで見たいです。

>千駄ヶ谷駅・国立競技場駅から地上へ出て線路沿いに歩き、一つ目か二つ目の信号で向かいの道へ渡り、歩道が途切れたところにある近辺mapを右手にいきなり折れる

帰りはそちらのルートを使いました。正面ですと少し遠回りですよね。

昔、京都で狂言を一度だけ見たことがあります。いつかは能も鑑賞してみたいものです。
2010/01/13(水) 22:14 | URL | はろるど #l5HLehIY[ 編集]
☆はろるどさん こんばんは

現代では考えられないほど、能狂言が人々に浸透していた、という証拠のような展覧会でしたね。思えば着物の柄(能装束ではなく)にも源氏ゆかり伊勢ゆかりだけでなく、能を思わせる構図などもありますから、見落としていた現代人たる私らには、本当に新鮮でした。

> 百々世草が出ていたので嬉しくなりました。いつかは全点揃いで見たいです。

本で見るのとはやはり違いますよね。今回も一点だけとはいえとても嬉しかったです。
2010/01/14(木) 00:28 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
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