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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

川喜田半泥子のすべて展

川喜田半泥子の展覧会が松屋銀座で開催されている。
今回の東京いきなりツアーは、この半泥子と高島屋の魯山人、三越のアンコールワット展を見るのが目的の大半を占めていた。

半泥子の展覧会を見るのは御影の香雪美術館以来。そのときは「魯山人と半泥子」展だった。おかげで「カワキタ・ハンデイシ」の名とその生涯、作品の大方は学ぶことが出来た。
とはいえ長い歳月が経っていたので、松屋では全くの初対面のような心持ちで楽しく眺めた。

半泥子は実業家としても活躍した人で、百五銀行の頭取として行員たちにハッパをかけた時の資料などもあって、それがなかなか諧謔に満ちていたりする。
やきものだけでなく、多方面にわたってキラキラしたものが迸っていた人なのだ。

会場に入ると、庵の再現があった。そのしつらえがとてもいい。
他方、面白いものがある。
庵を守るかのような狛犬がいるのだが、一匹はアタマの上に重たそうな陶板を乗っけられて困っているし、もう一匹もう?んう?んと困った顔をしている。どちらも吽くん。
コマイヌならぬコマッたイヌである。

「昭和の光悦」とも呼ばれ、好きなように生み出したやきものということだが、変な重たさのない、良い意味での軽快さがとても気に入った。

織部黒茶碗 銘「暗香」  まさに夜の梅の趣が活きた素晴らしい茶碗で、見飽きることなく眺めた。
こうした織部黒は作り手の恣意がいきるようだが、本当にしゃれていて、可愛らしい。

粉引茶碗 銘「雪の曙」10011301.jpg
白と薄桃色の二色がほのぼのと明け染める空、すなわち「曙」を思わせる。

井戸手茶碗  ‘41年の作。その白釉薬の掛かりを眺めると、金沢銘菓「柴舟」に似ている風に思う。どちらもとても優美。ガラス越しに眺めるだけだが、この茶碗に口を当て、少しばかり歯を立ててみると、きっと「柴舟」の味わいが蘇ってくるだろう・・・

染付茶碗 銘「初夏」  その銘にふさわしい爽やかさがある。薄い薄い青白磁。見込みの貫入の美しさは忘れられない。

片身替茶碗  淡青色と薄水色の片身替がとてもモダンで、本当に綺麗。透明度の高い空が深い湖に映るのを見たような、心持ちになる。

粉引茶碗 銘「たつた川」  楓の葉を貼り付けて白化粧し、とった上にも。
可愛くてきらきらしている。色々な「竜田川」を見てきているが、この「たつた川」はその中でも特に素晴らしいと思う。
そういえば、本当の「竜田川」近くに住まう人に聞いたところ、やはり秋の美しさは格別らしい。

技巧に技巧を重ねたものが好きなわたしは、やはり凝ったものに惹かれてしまう。

面白かったのは文匣。なかなか綺麗な造りなのだが、見ようによってはコフィンに見えるので、そのあたりに一人でウケてしまった。

作陶だけでなく茶杓も拵えている。
銘「角兵衛獅子」  竹生島の竹で、櫂は少し曲がっている。角兵衛獅子の子供が逆立ちする様子を思わせるのかもしれない。

教養豊かな趣味人らしく、他に建築や写真やパステル画もいいものが多かった。
特にモノクロ写真にいいものがあった。
まだ十代の頃に撮影したものだというから、明治の話である。
福原信三ら大正期の都市散策者らが撮りためた作品と通ずるものもある。
彼らの先達のような匂いがあるが、写真にはそこまで入れ込まなかったらしい。
光の採り入れ方がとても綺麗だったが。  
また、ハーフティンバーのステキな洋館を背景にした写真もあるが、残っていれば見てみたいところだ。
尤も非公開ながら彼が建てさせた千歳文庫は国登録有形文化財であり、写真で見る限りはモダ二ズムとアールデコとのどちらの影響も活きるステキな建物だった。
彼自身が設計した茶室などの写真を見ると、優美でそしてとても明るい居心地のよさを感じた。
ところで今回初めて知ったが、藤島武二は中学のときの先生だったそうだ。
だから半泥子の作った石水美術館に武二「桜美人」図があったのか。とても好きな絵だが、あまり出てこない一枚。
それでか、子息らとジャワツアーしたときのパステル画には明るいロマンティックさが活きていた。


最後に彼の戯画を楽しんだ。
蛙の親玉がいい。これはとても楽しい。そして五黄の寅生まれの半泥子はトラの絵をいっぱい描いているが、ガオーッと吠えるよりニャオーッな奴らに見える。
「非猫」といいつつも・・・・・(笑)。
(そういえば鏑木清方も半泥子と同い年で、だから戦時中には人に頼まれてトラの絵をよく描いていたそうだ。トラは千里を往復する、ということで)
竜虎図屏風などは、竜までが「ギャートルズ」のオヤジ風に描かれていた。

半泥子の自画像を最後に挙げる。10011302.jpg
なんとなく可愛い。
展覧会は1/18まで。

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コメント
こまったイヌ
川喜多半泥子って、名前が難しそうな陶芸じゃないか
というイメージがわきますが、ユニークですねぇ。
自画像がいいですね。う~ん、う~んと唸りながら
作っているみたい♪
2010/01/14(木) 21:54 | URL | えび #-[ 編集]
Re: こまったイヌ
☆えびさん こんばんは
自画像、ネクタイで陶芸してますが実写真もそんなのがありました。
風貌も立派で、昔の「実業家で芸術家(茶人)」の仲間だな~と思いました。
後世の観客たるわたしが「こまったイヌ」とダジャレを飛ばしてしまうのも納得なほど、ご本人もどうやらダジャレの帝王だったご様子で、ハシバシに諧謔精神があふれてるのが、とても楽しかったです。
2010/01/14(木) 23:21 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
No title
こんばんは。

じつに愉快な展覧で、最高に楽しみました。
こいつぁ春から縁起がいいワイ、とニヤニヤしっぱなしでした。
真面目に真剣に遊んでるので、憎む余地がありません。
どんなお話をされたのかと、今随筆を読んでにやけています。
欲のなさがまた紳士の香り。
才能ある素人の遊興ってかっこいいですねぇ。
2010/01/15(金) 17:37 | URL | あべまつ #-[ 編集]
No title
こんにちは。これだけの作品を全て趣味で作って売りモノじゃなかったっていうのが「華麗なる一族」ならではですよね~。半泥子について良く知らなかったので、今回はほんと勉強になったというか驚かせてもらいました。大夢出門...
2010/01/15(金) 19:58 | URL | noel #-[ 編集]
☆あべまつさん こんばんは
清方は「昔の人は黙って働き、よく遊んだ」と書いてますが、形を変えてこの人も「よく働いて、よく楽しんだ」ということかな、と思いました。
全くもってうらやましいし、かっこいい。
今ではこんな人、絶滅ですよ。(同じような暮らしぶりの元・殿様首相と違い、半泥子は実業も大きくさせた)
憧れますね。


☆noelさん こんばんは
大夢出門をはじめとしてダジャレの帝王だな~とそれだけでも微笑ましくなります♪
欲得はなれて作陶する、というのは誰でもが出来ることではありませんが、やっぱり「華麗なる一族」なのが大きいですね。
品の良さが作品にもよく出てるなぁと感心するばかりでした。
いいものをたくさん見せてもらい、楽しかったですね~
2010/01/16(土) 00:08 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
No title
こんばんは。はじめは名前も読めないほど未知の方でしたが、思いの外に魅力的で楽しめました。プロやアマチュアの垣根云々を通り越した良さがありますね。多様な器から和みの絵画まで、半泥子の創作の全てを知ることが出来て満足しました。

しかし銘もぶっ飛んでいましたね。銘を読んで思わず笑ってしまったのははじめてです。

それにしても松屋、大変混雑していました。時間が許せば巡回先の横浜でもまた拝見したいです。(三重の石水美術館も一度は行ってみたいですね。)
2010/01/19(火) 21:01 | URL | はろるど #sZuoGHFE[ 編集]
ナイスなセンス
☆はろるどさん こんばんは

> しかし銘もぶっ飛んでいましたね。銘を読んで思わず笑ってしまったのははじめてです。

本当の意味での粋な人ですよね。言語感覚がとてもユーモラスです。
当て字も一つ間違えると笑えますが、どこかがシャレてるので、やっぱりこちらも微笑です。

横浜そごうでしたね。あちらのほうが見やすいかもしれません。元からそんな構造ですしね。
2010/01/19(火) 23:31 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
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