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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

生誕130年記念 菊池契月展

もう一度くらい行けるか行けないかわからないが、1/24まで京都のえき美術館で菊池契月展が開催されている。既に二度ばかり出向いたが、まだ見足りない気がする。
えき美術館にはリストがないので、自分でイチからメモを取らねばならないが、二度ともそれができない状況にあったので、完全にうろ覚えでの感想になる。
が、幸いなことに三重県立美術館がサイトに展示換えリストを出してくれているので、それを参考に出来る。ありがとう、三重県立美術館さん。

契月は信濃から京都に出た人で、師匠の芳文の婿養子になり、優美な人物画を多く残した。
その子息たちも芸術家になり、数年前には菊池家回顧展が京都で開催されたが、彼だけの展覧会はなかなか開かれなかった。
しかし生誕百三十年・没後五十五年という昨今となっても、彼の絵には静かな人気がある。
特に「敦盛」像は表に出るたびに新しいファンを獲得している。
わたしも初めてあの美少年像を前にしたとき、ときめいて苦しかった。
あいにく今回京都には敦盛さまはお出ましにならぬのだが、他の美しい人々が多く現われた。

明治の頃の旧い絵を見る。

那須宗高  控えるもののふ像。これは屋島で名を挙げた那須与一だと思う。
福原故事  平家が現在の神戸(福原)を開いたのは宋との貿易を考えていた体と言う話だが、ここでは落日の平家一門の姿が描かれるばかりである。急速な貴族化が一族の衰退を招くとは、誰が予測したろうか。
悪者の童  平家物語に現われる「かむろ」たち、即ち平家の悪口を言うものを監視し、六波羅に通報する子供らの姿である。愛らしいおかっぱの子供たちだが、やることは悪辣である。それが時々はツラツキにも出ている。
10011803.jpgクリックするとにくたらしいのやちょっと可愛いのも見える。

前述の「敦盛」は後年の作だが、契月は平家物語から材を採ることが多かったのかもしれない。

垓下別離  覇王別姫である。項羽に別れを告げられ嘆く虞美人。項羽は無念さに中空を睨む。
車匿童子訣別  しゃのく童子とは悉達太子(シッダールタ)の御者で、太子が出城した後もついてゆけると思いのほか、太子により帰れと命じられる。
義太夫で「檀特山の憂き別れ 悉達太子を送りたる車匿童子が悲しみも・・・」のそのシーンである。尤も「童子」と言うてもオジサンなのだが。

近藤重蔵  蝦夷地で現地のアイヌの人々と話し合う近藤と、村の人々を描いている。
女たちの口元には独特の刺青が施されている。

清潭  横顔の美しい舞妓を描いている。夏なのか、暑さよりむしろ涼しさを感じる美しさがある。
童女  ふっくらと愛らしい童女がひとり遊びをしている。ほっぺたが可愛い。
明治の頃には愛らしい童女の絵が多かったと思う。この子もその一人。

少しずつ明治の頃の作風から変化し、背景を簡略化して人物描写に重きをなす様式へ変わってゆく。

深窓  中国風俗の美しい女が机にもたれている。陶製の椅子に座り、艶かしい目をこちらに向けている。朱塗りの机には数冊の本と赤い花瓶にいけられた牡丹が咲き誇る。
女の赤い服が印象に残る。
郭子儀  こちらにも美しい女がいる。二人共に赤い服を着るが、色合いは微妙な違いを見せる。
契月は赤色を効果的に使う、と思った。

吉法師・竹千代  子供時代の家康と信長が描かれている。見るからに元気そうな子供と、子供ながらも落ち着き払った子供との対照が面白い。
観画10011802.jpg
二人の少年が巻物を見ている。鎧兜をつけた侍が現われる絵巻を見る。
以前この絵を京都市美術館でみたとき、結城の合戦での安王春王のようだと思ったが、今もそんな風に見ている。とても美しい少年たちで、彼らの未来を少し心配する。
小楠公兄弟  若き楠兄弟の端座する姿がある。どちらが兄なのかが少しわからない。
しかし共にとても凛々しい。

10011801.jpg
淡群青色を背景に二人の天平美人が立つ。欧州から戻って描いた作品。ルネサンスの影響があるということだが、この世ではないような背景描写がそれをいうのかもしれない。
光明皇后  手に巻物を持ちすっくと立った姿。数ある光明皇后図でも特に良い一枚。
国母と言うだけでなく自らを「藤三娘」と称した心持ちも伝わってくる気がした。

実は「麗人」「朱唇」「寵人」の三作が時々わたしの中で混ざり合うことがある。
それは「少女」「友禅の少女」「散歩」が並ぶのと同じ感覚で。
10011804.jpg 「朱唇」

「朱唇」は桃山時代の風俗の若い娘がぺたんと座り、なんとなく楽しそうな一人思いにふけっているような姿を描いている。袖から長く伸びる白い腕が柔らかく、組み合わされた手指が娘の心を表わしている。
かつて背景にも心を砕いていた日々は遠くなり、「人物を描く」そのことのみに収斂されていくのが、はっきりとわかる。

被衣  桃山風俗らしき婦人を描いているが、そのゆったりした落ち着き振りがいい。
若い娘にはない魅力がある。この絵は渋温泉・金具屋にあるそうだ。
わたしは渋温泉は歩いただけだ。手前の湯田中温泉・よろづやを愛しているが、金具屋にも行きたくなってきた・・・

楕円型に編んだ籠に熟れていない柘榴と、弾けて赤い実を曝け出す柘榴とが置かれた様子を描いた絵がある。「石榴」(ざくろ)。ざくろには様々な文字が当てられる。
文字の変相が多い分、ざくろの捉え方も多様になる。
その小さく煌く粒を歯に押し当て、尖った犬歯で引き裂きたくなる欲望と、はぜかかった硬い実を元のように鎖したくなる切なさとが、ざくろにはある。

もう少し見たい作品があるのだが、あいにくそれは今回現われなかった。
またいつか会う日もあるだろう。京都での展覧会は1/24まで。
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コメント
No title
この展覧会良かったです~。
菊池契月の作品にうっとりしました。
京都には作品リストをプリントアウトして持参します!
2010/01/18(月) 23:16 | URL | meme #z8Ev11P6[ 編集]
リスト
☆memeさん こんばんは
> 京都には作品リストをプリントアウトして持参します!

京都では元が京都の所蔵品の作品、ごっそり欠落してます。
図録で確認したらオヨヨでしたよ。

京大の博物館と共に見学ですか~。
2010/01/19(火) 00:26 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
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