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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

ルノワール 伝統と革新

国立新美術館の「ルノワール」展に行った。春には大阪に来る。
東京のチラシは日本の団扇を持つ少女、大阪のチラシはイレーヌの横顔。そしてキャッチコピーも違う。
ルノワールの大掛かりな展覧会は何年かごとに開催されるが、いつでも繁盛し、見たヒトの多くはにこにこ。
二年ほど前の父子の「ルノワールxルノワール」、だいぶ前の’93年の展覧会でも満員御礼。普段展覧会に行かない人でもルノワールは見るのだ。
だいぶ前、芸術新潮で「好悪を越えたルノワール」という特集記事があった。
そこ。「好悪を越え」てやっぱりルノワールはいい。
ルノワールほど日本人に愛されている洋画家は、他にいないと思う。

開館前についたのにもぉ賑っている。
殆どは「いつかどこかで」見た作品。しかしそれがまた心地よいのだから、やっぱりルノワールはすごい。
私は元々がルノワールファンなので、「よくないところ」「いやなところ」が眼に入らない。「ちょっとあれね」なものでも「やっぱりいいよな」で収まるのだ。

ただ単にルノワールの名画をずらずら並べてもいいが、わざわざ展覧会を開くのだから工夫がある。章ごとのタイトルを挙げる。

第一章 ルノワールへの旅
第二章 身体表現
第三章 花と装飾画
第四章 ファッションとロココの伝統
そして最新科学で見出した、ルノワールの技法の秘密についてのコーナーもある。
どこもかしこも見どころ満載のいい展覧会だった。

第一章 ルノワールへの旅
展示された作品の内、実際に本物を見たものがいくつあるのかわからなくなった。
写真や印刷物だけで見たものも多いはずだが、脳がそれを判別しない。
記憶の混迷ではなく、いかに多くの作品が供せられてきたかの証明である。

団扇をもつ若い女10020801.jpg
チラシにもなった一枚。この絵はクラーク美術館所蔵だが、何度か日本にも来ているので馴染み深い。いつの展覧会かのチラシにも選ばれている。
(ルノワール展でなくとも近代フランス絵画とかどこそこ美術館展などの企画がある際、ルノワールの絵が多く使われるので、いよいよ親しみが湧く)
今回改めて眺めると、団扇に描かれた絵は浮世絵ではあるが、それも芝居絵ではないか、と思った。
そしてこの背景、左にピンクや白の菊、右に青緑と白の縦じま。色と配置は違うが、近藤ようこ「水鏡綺譚」の鏡子の着物と似ている。

読書する二人  仲良しさんな二人。地味な服だがいい感じ。これも見慣れた絵だが、今回「光と色彩の幸福論」というコピーを踏まえながら眺めると、女の頬の輝きが際立つのに気づく。ピカピカした頬はまるで陶器のように綺麗。

ルノワールはアルジェに行った。
行って影響を受けて、魅惑に満ちた作品を生みだした。

アルジェリアの娘  配色がなにより素敵。オレンジの服、膝掛けは緑に金色の布。ああ、日差しの強さ明るさを感じる。
寒い国に出かけたのでなく暑い国に行ったのは、本人の好みもあろうが、大正解だと思う。よかったなぁ。おかげで人類は素晴らしい遺産を受け取れた。

ロバに乗ったアラブ人たち  以前ポーラ美術館展で初めて見たが、これも日差しを感じる作品。ロバが妙に可愛い。

ブージヴァルのダンス10020802.jpg
これはよくグッズになる。私も一筆箋を持っている。踊るカップル(フランス語だからアベックと書くべきか)の女はヴァラドン。可愛い女だったのを知る。色の対比が目立つ。視線の先に地に落ちる吸い殻がある。もうこの時代、紙たばこがよく売れていたのだ。

数年前京都市美術館でマルモッタン美術館展があった。東京展ではどうかは知らないが、京都では<モ>がやたら目立ってアピールされていた。
モネのモ、マルモッタンのモ、ベルト・モリゾのモ。

ジュリー・マネの肖像10020803.jpg
ベルト・モリゾ、その娘の肖像。はっきりした顔立ちの少女。下がり眉がチャーム。黒い服を着るのは母譲りの趣味なのか。襟元のレースが綺麗。
ルノワールはこの子を可愛がったそうだ。

エッソワの風景、早朝  エッソワの地はルノワールの妻の故郷だった。通勤なのか散歩なのかわからない人々が遠くを歩いている。ルノワールが見た景色。木の影は紫色に映り、白い道にその姿をのばす。
梅原龍三郎の絵がルノワールに似ているのはよくわかるが、この絵を見ていると、若い頃の安井曽太郎が描いた「黄檗風景」を思い出す。安井はセザンヌの影響を受けたから若い頃にそんな絵があるのは不思議ではないが、この絵を見て「黄檗風景」を思うと、安井にもルノワールの影が差したことがあったのか、と考える。

カーニュの風景  綺麗な道がある。整備されていて街路樹も並ぶ。建物もいい感じ。
なんだか自分も行きたくなるような暖かそうな地。
ルノワールの絵には優しい心地よさがある。そして決してそこは孤独な地ではない。

面白かったのはリトグラフの「ロダンの肖像」。・・・ロダンはやっぱり誰が書こうと「ロダン」なのだった。カリエールが描こうとルノワールが描こうと、ロダンはロダン。自分の様式にはめ込もうと画家ががんばっても、ロダンのアクの強さには及ばなかったのかもしれない。

第二章 身体表現
わたしがルノワールを好きだという最大の理由は、彼の描く肉付きのよい女の人に深いシンパシーを感じるからだ・・・ということはヒミツだ。

ルノワールの描く裸婦たちのつややかなオパール色の肌は何度にも亘る塗り重ねを経て生まれてくるものだった。
透明釉薬が塗られているのかと思うほどのつややかさには、いつみても蕩然となる。
彼が陶器の絵付け職人から出発したこととそれは

ここには多くの裸婦が並んでいた。
わたしが一番好きな裸婦は川村記念美術館の「水浴する女」。胸の綺麗さはちょっと他に比べることはできない。
近年、川村名品展として兵庫県立美術館で長く展示があった。
そのときのスターはやはりこの裸婦だった。他に名画が多く来ていたが、ルノワールの絵を目玉にしていた。
10020804.jpg

楽しい気持ちでこの第二章を何度も何度も見歩いた。

次の部屋へ歩むと、そこではポーラによる光学調査が大きく展示されていて、それがなかなか面白かった。
X線と赤外線との比較が並んでいるが、どうもX線はツタンカーメンのそれを思い出すので、ちと・・・
それにしてもとても詳しいし、素人のわたしにもわかるような書き方なのがいい。
そうなのかーそうなんやーと感嘆の声を上げながら、カシコくなった気がした。
先ほどの裸婦たちの光り輝く膚は全て、このルノワールの深い研究と熱意から生み出されたものだったのだ。
もう一度裸婦たちのもとへ戻り、教えられた知識をアタマに灯して改めて眺め歩いた。

第三章 花と装飾画
ここは展示空間が白壁ではなく、どこかのお屋敷のお部屋をイメージしたようなセッティングがなされていた。優雅で軽やかな空間に、花の絵と演劇的なイメージの作品が飾られていた。ここだけそのような設えがなされているのが、とても嬉しかった。

タンホイザーの舞台  2枚組みの横長作品。これは数年前のアート・コレクション展で見ている。とても好きな作品。ルノワールの作品にはあまり文芸性はないと勝手に思い込んでいるが、この作品や他にオイディプスを主題にした作品などもあることを思うと、ちょっとばかり認識を改めねばならない。
ここではタンホイザーが愛の女神の誘惑に絡め捕られて甘い夢を貪る情景と、その彼を救い出そうとする親友との葛藤の二つの絵がある。
タンホイザーはワーグナーの楽曲があるが、この絵にはワーグナーは似合わない。
中世の宮廷音楽が似合いそうな気がする。

イオカステー(神殿の舞)10020805.gif
丸紅コレクションの一枚。魅力的な小品。

オイディプスをモティーフにしたものは他にもある。コートールド美術館所蔵のデザイン画。動きがとても興味深い。ロダンのスケッチと共通するようなところがある。

花もまた豊かに描かれている。特に印象に残ったのは、ワシントン・ナショナル・ギャラリー所蔵の「花瓶の花」。暗い色で構成された空間に赤い花がひどく目立っていた。
その花があることで、この絵は活きていた。

第四章 ファッションとロココの伝統
おしまいの部屋に来てもやはり一枚一枚の絵に人気があった。
1890年代のルノワールのマイブームが帽子をかぶる少女を描くこと、だというのは楽しい。
その時代の帽子の実物を見たことがあるが、可愛い感じがした。

りんご売り10020806.jpg
  ルノワールの身近な人々のいる優しい風景。それぞれの人の配色がいい。
ルノワール自身も描いているとき幸せな心持ちだったのではないか。

「伝統と革新」は技術的な解明があったことでそれを実感するが、作品そのものからはまさに「光と色彩の幸福」があふれている。
東京では4/5まで。大阪は4/17?6/27まで。東京に現われなかったイレーヌをはじめ、何枚か素晴らしい作品が大阪だけでお目見えする予定らしい。
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コメント
No title
ルノワールの幅広い魅力を味わうことができました。
ブージヴァルのダンスのタバコにはまったく気付きませんでした。
遊行さん、裸婦にシンパシー・・・そうでした?
2010/02/09(火) 05:09 | URL | 一村雨 #-[ 編集]
フテブテしくニクニクしく
☆一村雨さん こんにちは

> ブージヴァルのダンスのタバコにはまったく気付きませんでした。

19世紀末になるともぉパイプだけでなく紙たばこが普及して、
多くの人が気軽に吸う時代になってたんやなーと感心しました。
ロンドンのホームズさんはカタクナにパイプでしたけど。

> 遊行さん、裸婦にシンパシー・・・そうでした?

もぉこのタイトル↑そのまま(笑)。
2010/02/09(火) 12:33 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
No title
こんにちは。
なぜかルノアールを敬遠していたわたしですが、今回はじめて、
すてきだなあと、つくづく思いました。それにルノアール展と銘打たなくても
けっこう見ていたんだとも。
実物の前に立つと、あっとうされます。タンホイザーの絵ははじめて
見ましたが、あの部屋は素晴らしかったです。
TBいただいたのに、わたしからはどうもうまくいかずすみません。
2010/02/10(水) 10:52 | URL | すぴか #-[ 編集]
☆すぴかさん こんばんは
メインテーマでなくても洋画の展覧会では必ずと言ってもいいほど、そこにルノワールがありますね。それで知らず知らず親しんだりしてきました、わたしなんぞは。
ルノワールはやっぱり幸福な気持ちにしてくれる画家だとしみじみ思いました。
2010/02/10(水) 22:50 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
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