FC2ブログ

美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

大観と栖鳳 東西の日本画

山種美術館の所蔵品はいつ見てもいいものが多い。
だからどんな展覧会でも楽しい気分で眺めている。
今回は「大観と栖鳳」ということで彼ら自身の絵と、彼らの周囲の作品が集められている。
チラシには栖鳳の大猫がいる。
cam360.jpg

先に大観の文字が見えた。
書ではなく篆刻したもの。「嶽心荘」とある。山崎種二の熱海の別荘の名前。
往時の写真もあり、画家とコレクターと言うだけでないつながりを感じたりする。

雅邦に不老門、長生殿と言っためでたい画題の絵がある。こうしためでたい絵はもう今では全くなくなったなぁ。絵としていいとかわるいとか言うよりも、かつての日本には「めでたさ」をありがたく思う心があったことを知る。

解説プレートに大観の言葉が抜書きされている。
自分ほど絵巻を描いたものはそうはあるまい、と言うている。
言われて思い出すのが「生々流転」や中国の風景を描いた作品などなど。
ここには「楚水の巻」「燕山の巻」が出ていた。
いいタイミングでどちらも見れた。
今の中国に関心はないが、大観らが生きた頃までの中国には深い関心がある。
だから絵巻を眺めると、とても楽しい。
絵巻の紙の枠の中に繰り広げられる様々な風景・情景。それらは全て<対岸>の景色なのである。絵を見ながら、見ているこちら側にも「何か」があるかもしれない、と思うのだ。

作右衛門の家  特定の個人としての「作右衛門」ではなく、お百姓さんらしい名として選ばれた「作右衛門」の家の風景を描いている。
つまり「太郎を眠らせ太郎の屋根に雪降り積む 次郎を眠らせ次郎の屋根に雪降り積む」と同じ太郎であり作右衛門なのである。
大観は小杉放菴と仲良しの時代があった。彼から影響を受けている。
だからかこの作右衛門は放菴的キャラの風貌を見せている。
マジメでヒトの良さそうな、ほのぼのとした農民・作右衛門。
これが樵さんなら「与作」という名を与えられていたことだろう。

喜撰山  ああ、現実の風景ではなく「日本の里山」のパブリック・イメージを描いた絵だ、と思った。これが別な名の山であっても一向に差し支えはないように思う。
日本人の心に生きる「里山」なのだから。

ミミズク  茅場町時代からこのミミズクのファンだった。可愛い可愛いミミズク。ちょっとトボケた表情がいい。
大観が酒飲みなのは知っていたが、動物好きなのはあまり知らなかった。
ミミズクどころかロバまで飼っていたとはビックリした。

玉堂 鵜飼  やたらと鵜飼の絵が多いヒトだと思っていたが、生涯に500点以上鵜飼を描いていたとは、それにもびっくりした。
好きだったのだろう、と思いながら絵の前に立つ。好きでないとこうはイキイキと描けまい、と思った。

歴史上の人物や事件を描いた作品が奥の壁面に集まっていた。
中でも特に好きな作品がある。

靫彦 平泉の義経  義経と秀衡。奥州藤原氏の長の膝下で成長した義経と、父を知らない彼の殆ど父に等しい秀衡との肖像。
慈父であったろうと思う。そして秀衡もこの流浪の貴種を愛したと思う。
そのことを思いながら改めて絵を見ると、十数年後の義経の滅亡と藤原氏の終焉が胸に迫ってくる。

異装行列の信長、出陣の舞の信長、腑分け、大原の奥・・・見慣れた絵でもこうして前に立つと、やはりじぃっと眺めるものだ。

古径の「河風」を見るといつも映丘「伊香保沼」の女を連想する。
こちらの女は暑い日に床机に座りながら足を河に浸して涼をとる姿、あちらは正体のわからぬ謎めいた女が沼の水に足をつけながら、じぃっとこちらをみつめる(或いはどこか遠くを見ている)図。向こうは多分もぉ秋なのだろうが。

京都画壇の方へ回ると、栖鳳の可愛い「班猫」のお出迎えがある。
二年ぶりのおでまし。二年前はお堀端で見た。小さいリーフレットがなかなかよかった。
日本画には色んな猫の名画があるが、番付をつけるとこの猫は横綱だろう。そして春草の焼き芋屋の黒猫は大関か。白地にキジ柄の立派な大猫。すばらしく立派で愛らしい猫。
猫嫌いの人も多いが、猫好きな人も多い。多くの観客がこの猫を飽きずに眺めていた。
わたしはそっとチッチッチッと呼んでみた。

城外風薫  蘇州を描いた作品。向こうに見える塔は虎丘か。ヴェニスを喜んだ栖鳳は、蘇州にも喜んだ。滲んだような墨絵にさっ と淡い色彩のついた作品はどれもこれもがとても魅力的だ。実際自分が中国へ行ったとき、目当ての上海より、蘇州や明代の名残を残した庭園などに深く惹かれた。栖鳳もたぶんそうだったろうと思う。

艶陽  死の二年前に描いた作品。マメ科の花が咲いている。絹さやのような身もついている。そこに青大将のようなほそい蛇が絡んでいる。
この絵を描いた意図はなんなのか。時々そんなことを思う。花と蛇、か・・・。

契月 紀貫之  先ごろ京都で契月展を見たが、やはり契月の描く貴人には品性の高さがある。いよいよ強くそう思う。この紀貫之は細い筆を手にしている。紀行文を書くための筆だろう。契月の手による三十六歌仙を見てもたいと思う。もしかすると佐竹本の彼らよりもずっと・・・・・
既に亡くなった画家であっても、そんな楽しい妄想を持つことが出来るのは、幸せだ。

わたしが山種美術館で最愛だ、と強く言える作品は三点ある。
そのどれが一番かと言われても、答えられないほどに深く愛している。
御舟「炎舞」、栖鳳「班猫」そして華岳「裸婦図」。
今回はそのベストのうちの二点に出会えた。
実は全く予想していなかったのだ。
チラシは手に入れていたが、表の猫にばかり気を取られていたのだ。
裏を見ていなかった、というのが正しい。
だから華岳の「裸婦図」が現われたとき、心臓が強く響いた。

好き過ぎて、何にも見えていなかったことなどがある。
肩や胸の丸みに比べ、足首は意外と細いということや、飾り物の質感など。
出会うたびに新鮮な発見があり、ますます愛が深くなる。

他にも多くの名画が並んでいた。
やはり山種美術館はまことにすばらしい美術館なのだった。
関連記事
スポンサーサイト



コメント
竹内さんのお宅
おはようございます。   去年、高台寺にある元お宅へ、ランチ行ってきましたよ。すっかりイタリアンスタイル。でもしっとり。雨がザーザーやったしかな~ 遊魚さんも是非.......スイスイ.泳ぎ..回った..はる感じ.しますので....       安田ゆきひこさんは好きな画家です。美しいですね。 信楽ミホ、「大和し美し」で味わいました。遠い遠いミホミュージアムで。
2010/02/25(木) 09:29 | URL | よし #-[ 編集]
Re: 竹内さんのお宅
☆よしさん こんばんは
そこにはまだ行った事あらしまへん。
三条の逓信病院前の今尾景年邸の日本料理のお店は行った事あります。
やっぱり昔の日本画家の方のお屋敷いうのは、たいへん良いですね。
もっとあちこち出なあかんなぁ、と思いました。

>「大和し美し」で味わいました。遠い遠いミホミュージアムで。
・・・その「遠い遠い」に負けて、千葉市美術館で展覧会を見た、大阪人のわたしです。

2010/02/25(木) 21:06 | URL | 遊行 七恵 #-[ 編集]
コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する
最近の記事
月別アーカイブ
カテゴリー
全ての記事を表示する

全ての記事を表示する

フリーエリア