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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

長谷川等伯展

三年前、京都国立博物館で「狩野永徳」展を見た。
唐獅子の屏風と洛中洛外図上杉本が見たくて喜んで出かけて、機嫌よく出口を出た途端、
「三年後には長谷川等伯だ!!」
・・・すごい看板があった。
あれ見たとき「京都人には誰も太刀打ち出来んのぉ」と大阪人・遊行は思ったのだった。

三年後の今、東博と京博とで長谷川等伯展がある。
東博のチラシ。cam387.jpg
京博のチラシ。cam389.jpg

出遅れはいつものことだから、ネットの評判も新聞評もTVのアオリも全て含んでから出かけた。

夜間開館日に行っても並んだのはいつ以来だったかな・・・(遠い目)
とても繁盛している。会期が短いのもあって皆さん続々来られて絵にゾクゾクしている。
第1章 能登の絵仏師・長谷川信春
実はあんまり高僧の肖像に関心がない。羅漢図もこの数年でやっと楽しみになってきた程度だから、推して知るべし、という感じ。
そんなだから大したことは書けない。他もそうだけど。

十二天像 長谷川等伯(信春)筆 3面(12図) 永禄7年(1564) 石川・正覚院
色彩がたいへん綺麗なのに感心した。修復したのかどうかはわからないが、綺麗な色だった。

弁財天十五童子像 長谷川等伯(信春)筆 1幅 永禄7年(1564)
ところがこちらは折り曲げ癖が出ていて、それが残念だった。童子も弁天も白い顔。

釈迦多宝如来像 長谷川等伯(信春)筆 1幅 永禄7年(1564) 富山(高岡市)・大法寺
こういう仏画を見るといつも「あっホトケのツインタワー」とつぶやいてしまう。
去年辺りから多宝塔に2ショットな仏さんという絵をよく見るようになった。

鬼子母神十羅刹女像 長谷川等伯(信春)筆 1幅 永禄7年(1564)
こちらも上記と同じ所蔵。白い顔が優美な感じがある。緑色の輪が見える。あれは何か?
光背輪ではなさそうだが。
関係ないが「ひかりごけ」ラストシーンでみんなに「輪」が現われていたのを思い出した。

日蓮聖人という人は色んな「御難」に遭うてなおガンバッた宗教者で、意志の強さは伝記を読むだけでも凄まじいほど感じる。
その日蓮聖人の肖像画があった。弟子筋の肖像画もある。
あの髯題目もそうだが、似せ絵も像もみんな眉なんか跳ね上がっておる。
うちはフツーの日蓮宗だが、仏壇をのぞくと、気合みなぎる書体の軸が見える。
だからここでも眉の跳ね上がったお祖師像を見て納得した。
等伯は日蓮聖人の気合をよく描いている。

三十番神図 長谷川等伯(信春)筆 1幅 永禄9年(1566) 富山(高岡市)・大法寺
これは神さまカレンダー。毎日どなたかの神さまの縁日。
獅子と狛犬もついているが、雰囲気的にはクリスマスのアドベント・カレンダーぽい。

仏涅槃図 長谷川等伯(信春)筆 1幅 永禄11年(1568) 石川・妙成寺
これはなかなか綺麗な涅槃図で、後に出てくる巨大涅槃図の30年前の作品だが、華麗なのは変わらない。豹、虎、白地にキジ柄猫が右サイドにいる。ウサギも嘆いている。
ウサギのカップルは茶と白なのだが、どことなくイギリスの絵本に出てきそうな奴らに見えた。

法華経本尊曼荼羅図 長谷川等伯(信春)筆 1幅 永禄11年(1568) 京都・妙伝寺
床模様にご注目あれ、とはヒトサマに勧められないが、わたしは床模様に感心した。
抹茶と薄緑の菱形市松模様なのだ。そしてツイン仏もいる。

善女龍王像 長谷川等伯(信春)筆 1幅 石川県七尾美術館
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顔の白さが際立つ。美人。背景に説明的な描写がないので、どことなくシュールな様相にも見える。

愛宕権現像 長谷川等伯(信春)筆 1幅 石川県七尾美術館
真正面を向く馬の顔。葦毛の馬。「愛宕山には月詣で」か。その権現が乗るのは馬だった。

第2章 転機のとき―上洛、等伯の誕生―
博物館蔵になっている作品群、元はどこの所蔵だったかを知りたいものだ・・・

十六羅漢図 長谷川等伯(信春)筆 8幅 石川・霊泉寺
虎が待機してたり、サルが花を捧げていたり、烏天狗の子供みたいなのもいるし、なかなか面白い。

恵比須大黒・花鳥図 長谷川等伯(信春)筆 3幅 京都国立博物館
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右幅の白い花に蝶の図はどことなく明代の絵画に似ている。白い花は塗りこめての白と言うより、白抜きした白のような清楚さに似た空虚さがある。

信春筆梅に鼬雀図(模本) 岡田秀模  1幅 東京国立博物館
原画は失われたのかな・・・イタチがスズメがぶっっ!ちょっとなぁ。
これがスズメでなくネズミならイタチの名前は「ノロイ様」?

西王母図 長谷川等伯(信春)筆 1幅 京都・本隆寺
なかなか美人である。侍女が桃を持っているが、こちらもいい。花は桃ではなく梅にも見える。崑崙で穆王が彼女に会ったという説話もあるそうだが、それにしても穆王はお気に入りの小姓を流謫して仙人にしてしまうし、中国の帝王の中では仙道に親い人だったのだろうか。

参考写真 大徳寺三門壁画 長谷川等伯(等白)筆 原品:天正17年(1589) 京都・大徳寺蔵
再現ものがあり、天井を見上げたら巨大な竜がいたりで、なかなか演出が楽しいと思った。


第3章 等伯をめぐる人々―肖像画―
興味のある顔があった。

伝名和長年像 長谷川等伯(信春)筆 1幅 東京国立博物館
あごひげの目立つ武将。小姓が可愛い。畳に馬に遠近法に、とちょっと面白い構図。

千利休像 長谷川等伯筆 春屋宗園賛 1幅 文禄4年(1595) 京都・表千家不審菴
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利休の口の両端が下がっているのが、リアルだと思った。
むろん本当の利休の顔なぞ見たこともないし、この先も見る予定はないが、こうした肖像画で口の両端の下がり具合がはっきり描かれているのは、モデルが「実際に」そうだからそう描いたのだろう、と思う。
似てはいないだろうが、なんとなく志村喬で「利休」が見たいと思った。

第4章 桃山謳歌―金碧画―
いよいよ国宝のお出ましである。

楓図壁貼付 長谷川等伯筆 4面 文禄元年(1592)頃 京都・智積院
松に秋草図屏風 長谷川等伯筆 2曲1双 文禄元年(1592)頃 京都・智積院
どちらも展覧会以前から資料などで見知っていた作品。というより、実は子供の頃から「等伯といえば」この寺の絵ばかりが思い浮かんでいたのだ。
例の「松林図」を知らないまま大きくなった、と言うべきか。
後者の秋草の描写のうちススキは、その穂の乱れ具合が理知的で、住吉文様に見えた。
ところで東博も京博もチラシの表に「楓図」を選んでいるが、どうも京博のそれの方が華やかに、艶やかに見える。どちらも京都の日本写真印刷さんなのに。
東博のチラシは上に赤色を置いたのが、却ってつや消しになったのかもしれない。

柳橋水車図屏風 長谷川等伯筆 6曲1双 兵庫・香雪美術館
銀月は酸化して黒い月となり、宇治橋の水車が静かに動くのが見える。
どことなく天国を描いたテンペラ画を思った。他にも全く同じ構図の絵をよく見るが、それでもこの絵にはそんな雰囲気があるように思う。

萩芒図屏風 長谷川等伯筆 6曲1双 京都・相国寺
白萩が風になぶられている。ススキは剥落の美を感じた。光る風。
瓢唐草文様の表装がよく合う。

第5章 信仰のあかし―本法寺と等伯―
なにしろここは大涅槃図にヤラレてしまった。

仏涅槃図 長谷川等伯筆 1幅 慶長4年(1599) 京都・本法寺蔵
話には聞いていたが、本当に巨大。白キジ柄猫は左サイドにいる。これって実物大かも。ラクダもいる。大きな亀もいる。こっち向くフクロウが可愛い。
なんとなく柵のこっちから10Mx6Mの巨大絵画を見ていると、動物園を鳥瞰している気がしてきた。←怒られるわ。
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第6章 墨の魔術師―水墨画への傾倒―
ある時期まで水墨画がたいへんニガテだったが、等伯の水墨画は逃げ出したくなるようなものではないので、機嫌よく眺めた。

四愛図座屏 長谷川等伯筆 2基(4図) 京都・聚光院
中国の四人の高士が愛した花。「しかしここに花はなかった」と思うくらいに、花が見えなかった。とてもアッサリした絵。

豊干・寒山拾得・草山水図座屏 長谷川等伯筆 2基(4図) 京都・妙心寺
虎に乗る豊干、にこにこする二人組、その手の巻物がどうも日本手ぬぐいに見える。

禅宗祖師図襖 長谷川等伯筆 8面 慶長7年(1602) 京都・天授庵
あ゛―南泉斬猫やん。やたら嬉しそうなツラツキの南泉がイヤやわ。この話の続きが確か、それを見た人が「けっしょーむな?」と草履だか草鞋だかをアタマに載せてスタスタ去るというもので、さすがにそれは絵にならないらしい。
他にも変な人がいます。
火を熾すオヤジは可愛くないけど、その奥に立つ侍童がやたらと美少年だと思う。眉の下がり具合、睫毛、口元・・・ついつい写生したら、妙に色っぽくなりすぎた。

竹林猿猴図屏風 長谷川等伯筆 6曲1双 京都・相国寺
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中国のお猿さんは丸顔で♪ア-イアイ♪なお猿さんたち。
エテキングの国。
これは後期展示の楽しみだけど、前期には出光所蔵の「デヘヘの虎」君がおったらしい。

松に鴉・柳に白鷺図屏風 長谷川等伯筆 6曲1双 東京・出光美術館蔵
仔烏たちがやたら可愛い。巣に入ってピーピー鳴く。烏も近代以前は人気者。

烏鷺図屏風 長谷川等伯筆 6曲1双 千葉・川村記念美術館蔵
二、三年前に兵庫県美に来たとき、本当にハマッた作品。鷺もいいがやっぱりカラスがいい。
動きが可愛い。しかし中世から近世にかけて、烏は画題にもなったのに、いつからああも憎まれるようになったのだろうか。

第7章 松林図の世界
東博の国宝室で初めてこの絵を見たとき、外は雪だった。
しんしんと降り積もる雪の日に出かけた先にこの絵があったのだ。
以来、「松林図」を見ると、音のない静かな世界に入り込んだ心持ちになるのだった。
この絵について様々な議論が交わされているが、あえて私はそのことに踏み込もうとは思わない。
作者が何を意図して描いたか、それは作者自身の胸のうちに収められているなら、それはそれでいいと思っている。
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松林図屏風 長谷川等伯筆 6曲1双 東京国立博物館
松林の美と言うものを考える。日本の風土に活きる松林を思う。
現代の我々が松林の中を歩むとき、不思議な心地よさを感じ取る。
唐津の虹ノ松原、天橋立、緑地・・・
四百年以前の日本人にとって、松林はもっと身近な存在だったろう。
そのことを思いつつ、松影を追い、白い空間のその奥を、思った。

檜原図屏風 長谷川等伯筆 近衛信尹和歌 6曲1隻 京都・禅林寺
近衛信尹はかなり好きで、三藐院とついつい呼びかけてしまうほどだが、ここでも等伯の絵より文字のほうに惹かれた。
「秋風」という文字がとても素敵だった。

例によって好き勝手なことをほざくばかりで、ううむな感想文になった。
最後までお付き合い下された方々、おつかれ様でした。 
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コメント
日本海育ち?
こんにちは。  四月の開催、楽しみです、 等伯さんの松林図て、海風にあおられた松て感じします。ああいう曇りが多そうな処でまれ育った景色のイメージが彼の絵と重なります。  来週は根来へ根来を捜しに行ってきます、おてごろな根来があればいいのですが!
2010/03/17(水) 16:24 | URL | よし #-[ 編集]
♪能登はいらんかいね~
☆よしさん こんにちは
>等伯さんの松林図て、海風にあおられた松て感じします。

なるほど・・・わたしは雪の日にあの絵を見たとき、ああこれは湿った風土でないと生まれない風景だなと思いましたが、風のことは考えなかったです。

>おてごろな根来があればいいのですが!

茶托やお盆なら老松町か新門前あたりでみかけますが、本場ではまた違うものがザクザク・・・
2010/03/18(木) 12:27 | URL | 遊行 七恵 #-[ 編集]
もうすぐ京都で公開です!
今月TVで等伯特集を見て一目ボレ。昨年、静岡県立美術館で見た「狩野派」と競合していたのを知り、驚き!!
今回は多少予習してから見るつもりです。松林図の切り貼りの不思議さや、仏涅槃図の巨大さを体感できるのが楽しみです★
2010/03/30(火) 22:48 | URL | 88 #-[ 編集]
☆88さん こんばんは

東京では120分待ちなどがありましたが、京都も混みそうです。
北野天満宮の絵馬とか京都onlyの展示もありますし。
巨大涅槃図はほんっっっとに大きかったです。

ぜひぜひお楽しみください。
わたしもいつ行こうか思案中です。
2010/03/30(火) 23:26 | URL | 遊行 七恵 #-[ 編集]
京都 行きました♪
日曜の15時、10分待ち程度で入館できました。のどを痛める程の熱気で大混雑でしたが、
作品感動です! 涅槃図デカすぎ!
5/9迄、等伯ゆかりの寺院(妙蓮寺・智積院 他)が特別拝観で、等伯作品を鑑賞できます。
時間に余裕があれば、ついででオススメですよ。
2010/04/26(月) 19:10 | URL | 88 #-[ 編集]
おつかれさまです~
☆88さん こんばんは
>涅槃図デカすぎ!
あれ、ついつい誰がどんな顔して嘆いているのか確認したくなりませんか。
わたしはついデキゴコロで「哀しみ方がこいつ、足らんな」なんてことを・・・

> 5/9迄、等伯ゆかりの寺院(妙蓮寺・智積院 他)が特別拝観で、等伯作品を鑑賞できます。

おーそれはそれはええ情報を。
京博から智積院は近いし、妙蓮寺は近所に茶道資料館も樂美術館もあるし、回り方を考えなあきませんね。
2010/04/26(月) 21:58 | URL | 遊行 七恵 #-[ 編集]
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