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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

木田安彦の世界 木版画「西国三十三所」ガラス絵「日本の名刹」

昨秋、京都文化博物館で開催されたとき、どう言う理由か忘れたが、行けなかった。
それで会期末になってから汐留で見ている。
この人の絵、いつもどこかで見ている。
そんな風にひとりごちながらチラシを眺め、そして会場へ入った。
cam393.jpg

西国三十三ヶ所は近畿の人間にとってたいへん馴染み深いものである。
信仰心がなくともなんとなく知っている、ということである。
実際町なかにあるお寺もあるし、観光地として名高いお寺も多い。
東京ではどうか知らぬが、こちらではしょっちゅうバスツアーの企画も立っているから、やはり現在も人気なのだと思う。

木田安彦は京都人として生を受け、京都人として生きている。
京都の市中には六角堂、六波羅蜜寺、革堂などがあるし、むろん清水寺もある。
洛中をちょっと歩けば札所につくのだ。
馴染みは骨の芯にまで達しているだろう。

そんなことを思いながら会場へ入ると、版木が壁を埋めるように展示されている。
ピエゾグラフというものはエプソンの開発した複製技術だそうだ。
こちらはフルカラーである。
後で完成品をみるのだが、この色彩が何となく意識に残る。
とにかく大変に細密で、そのこと自体に感心する。
完成品にある白い女の顔が、版木や下絵を見ると、全く別な顔に見えるのも興味深い。

三十三カ所にはそれぞれ特徴があるので、一目見てコレハアレとわかる設えになっていた。
しかし完成品は下絵とは当然ながら反転される。
最初にカラフルな下絵をたくさんみたために、わたしのアタマは混乱している。切り替えが出来ないのが情けない。
cam394.jpgクリックしてください

第一番の青岸渡寺はご神体の那智滝が光っていた。滝のそばには観音が座している。
葛井寺の金剛力士像が可愛かったり、六波羅蜜寺の空也上人が口からメザシならぬ六文字を吐いていたり、革堂の山門に札を貼る人々がいたり・・・
中山寺は安産祈願で有名なお寺だから、妊婦さんとおばあさんが歩いている。
瓦屋根や人々の表情などが本当に繊細に彫り込まれている。
箕面の勝尾寺は赤く表現されている。箕面は北摂随一の紅葉の名所なのだ。
番外の寺も描かれている。
花山院は銀杏の山が描かれ、夕暮れの時間帯にさしかかっているのがわかる。

ただただ感心する。
彫りの細かさと色彩の美しさが、心に残る。
そしてこのシリーズをみた後には、現地へ出かけたくなった。
とりあえずいつも素通りしているお寺へ行ってみよう。

今度はガラス絵による「日本の名刹」が並ぶ。
ガラス絵は一度きりのライブ制作である。塗り間違えたらやり直しがきかないのだ。
浜松の美術館には浮世絵師による作品があるし、小出楢重もガラス絵に打ち込み、作品制作だけでなく技術書も残している。
またお風呂屋さんにもガラス絵を持つところがあるようだ。

木田安彦のガラス絵は版画作品とはまた異なる様相を呈していた。
強く胸を衝く作品がいくつもあった。
その作品を少しばかりあげる。

唐招提寺 夜。深閑とした空気の中、本堂の扉が開いている。そこから金色の仏と赤色の天部たちの姿が見える。しかしそれは外から眺めた景色ではなく、内側にいる仏たちが人界をみつめる様子を描いたものなのだった。

浄瑠璃寺 本堂の前には池が広がる。その水面に仏の姿が浮かび上がるように、この池は作られている。金色のススキの穂波。本堂の中は暗い。その暗い中に仏たちが浮かんでいる。そしてその影を水面もまた捉えているのだった。

歓心寺 以前からこの寺のみ仏の美貌については耳にしていた。しかしあまりに遠い道のりなので行く気にはなれないでいる。
その美貌のみ仏がこちらを見ている。煤け、剥落、それら経年を示すものがその美貌にまとわりついている。
しかしそれは決して美貌を損なうものではなかった。静かにこちらを見据える美貌のみ仏は、いよよ尊く、いよよ美しくそこに活きていた。

多くの名刹が描かれている中でも、特に心に刻まれたものばかりを書いた。
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