美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

鶴清の床

ずっと以前から『床』に憧れていた。
ずっと以前から『鶴清』に行きたかった。
だから鶴清の床を楽しめたことは、とても嬉しかった。

うちの母から鶴清は行きやすいよと聞かされてはいたが、正直、敷居が高かった。カネの問題ではなく、トシの問題。
しかし誘った人のトシも悪くなく、私自身もナマイキだと思われるほどコドモではないので、機嫌よく玄関前に立てた。
とはいえ、その前に四条から五条上がるの鶴清までの道で、嬉しい建物を二つほど見かけている。
一つは『大傳』ここも近代建築で素敵だったが、工事中の人に『もしや・・・』と思いながら訊くと、やはり膳所漢ぽっちりさんだった。
建物の本来の良さを残し、それを味わわせてくれながら、おいしい中華料理を提供する。よいお店だ。それがここに生まれるとは、とても楽しみだ。
仏光寺まで来ると『きた村』発見。お餅のきた村だ。やっとみつけた。今度食べたい。

某・元料理旅館の今は多少勘違い系の店はスルーして、鶴清につく。
素晴らしい唐破風。鶴の紋。いかにも料理旅館な建物。近代和風建築の楽しさに満ちている。提灯に一文字ずつ『納』『涼』『床』『料』『理』と灯が入っている。
わたし達は予約より早い時間に来たのだが快く招じ入れられた。
建物に執着の深い二人組は、イブニングの女将さんにおねだりして、建物のあちこちを案内されて撮影し倒す。三階の二百畳敷きの大広間は折上げ格天井で、床の間も素晴らしく、外観・内観に共通する美意識もうかがわれ、感心しきりだった。他にもステンドグラスがキレイだった。
二箇所あったが、どちらもきれいだ。建具や桟もすばらしく、屋根と軒の重なり合う箇所など、わたしのツボもある。

さて、床。
そんなに暑くもなく、川風も吹き、心地よい。
ここから見た本館の壮大さにまたまたわたし達は喜ぶ。
お料理もよかった。
梅酒はすっきり、八寸の昆布締めも口当たりよく、イクラもおいしく、メインのハモシャブもダシからおいしい。
お造りも鱧の梅肉が大変おいしいし、鯛もシャッキリ、マグロも悪くないし、頼んだ冷酒にも良く合って嬉しい限りだ。
キンシ正宗かと思う。
ソーメンもシイタケ・小芋・温泉卵・青物・穴子が入ったところへ柚子ダシをかけていただく。おお・・・おいしいなあ。
魚は鮎。ちゃんと蓼酢が。私は蓼酢が大好きなのだ。手が器用に動けば鮎のアタマとホネと尻尾だけ取り外す妙技をご披露できるのだが、生憎そうもいかずに、崩してしまった。蓼酢もおいしく、飲んでしまいたかった。
てんぷらはえびの衣が霰と、もちっとの二つにお芋と素揚げのしし唐にこナス。抹茶塩がこれまたおいしい。幸せだな――
まだある。魚ソーメン。これは関西にしかないのではなかろうか。これとアンペイは。
とろろがすられているがダシと絡めて食べると本当においしい。
ご飯に私もツレも抹茶塩をまぶしてしまった。おいしいがな――
とり貝の酢の物もよかった。
デザートはスイカと葡萄。大好き。

ああ、とても機嫌よくわたし達は過ごした。
満員御礼なので他にも大勢のお客さんが来ていて、みんな楽しそうだ。
夕暮れも訪れて提灯の灯りもきれいだったが、旅館を出ると、もう暗くなっていた。唐破風の前でもう一度、床を見返る。本当に、楽しそう。
わたし達はその『楽しい』場所からさよならしていった。
良い気分を身につけたままで。
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