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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

都下にて茶道具拝見仕りて候 泉屋分館「住友コレクションの茶道具」

泉屋博古館分館では「住友コレクションの茶道具」を見た。
ここは2つの展示室があるが、非常に機能性重視な展示ケースなので、情緒はない。
しかしその情緒を排した展示だからこそ味わえる良さというものがある。
作品それ自体の魅力、他を峻拒したところに活きる「美」というものを確かめることが出来るのだ。
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茶入にあまり関心が向かないが、それを包むお仕覆には強く惹かれる。
唐物文琳茶入「若草」のお仕覆は定家緞子 嵯峨桐金欄、笹蔓緞子などだった。
茶入は文琳、つまりリンゴ型ということだが、その形を包む布がこれらきらびやかな織物なのだ。まるで能役者のようではないか。
チラシには着物なしの茶入のなめらかな肌が、堆朱の盆に載せられている。

瀬戸肩衝茶入「真如堂」  大正六年に赤星家売り立てがあり、そのときに住友家に入ったらしい。春翠が購入したものか。
茶道具の来歴を知るのも楽しみの一つなので、もう少し説明があれば嬉しい。
モール裂、富田裂、八左衛門間道のお仕覆があるが、この八左衛門間道は初見。横縞。

茶入に関心が向かないとか言うてた舌の乾かぬうちに、こんなことを書く。

仁清 唐物写十九種茶入  これは以前に別な展覧会で見たが、可愛くて可愛くてならない。そのときに全部の名前を書いたが、今回は好きなものの名だけを挙げる。
瓶子、水滴、茄子、鶴首・・・
めでてみたい、と思うのはこうした小さいものか集まっているときだ。

青磁桔梗香合  明代の愛らしい香合。琵琶湖の博物館で現代作家の手による桔梗香合を見たが、本歌はこれかもしれない。

古染付荘子香合  荘氏=胡蝶の夢、と言ってもいい。だから小さな愛らしい蝶がそこにある。
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この香合は畠山の所蔵にもあるから、たいへん好まれたのだろう。
(そもそも古染付であること自体がそれを証明している)
わたしも好きだ。わたしは蝶と椿をモティーフにした工芸品を見ると、それだけでわくわくしてしまう。色でワクワクするのは山吹色(小判ではないぞよ)。
蝶の羽根の色合い(釉薬)は泉屋と畠山のものとでは、微妙に違う。
そこがまた楽しいのだった。

仁清の白鶴香合があった。これが本歌。よそで見かけた永樂の手による白鶴は、ここからの写しらしい。往時、春翠はそれに笹蔓緞子のお仕覆をつけて配る予定があったそうだ。

東方朔釜 大西清右衛門(淨長)  大正13年の作。桃枝を担いで横向きの爺さんがちょこんといる。とぼけた横顔。東方朔は武帝に仕えていたが、実は仙道修行のヒトだったらしい。桃を担ぐのは、彼の逸話の一つ「西王母の桃を盗む」ところから。
東方朔については陳舜臣「小説十八史略」と諸星大二郎「無面目」が面白く描いている。

古銅象耳花入「キネナリ」tou194-1.jpg
モノクロ画像だが実物も暗めの色なので違和感はない。
象さんの耳と鼻が取っ手として活躍する。それをベルトのように締めるのが饕餮くんという取り合わせ。これは南宋-元代の作品だから、饕餮くんは言えばレトロな文様として使われたのかもしれない。

他に明代の祥瑞、古染付などがあったが、どちらも鳥の絵柄。そして共に鳥がファンキーな表情を見せているのは面白い。ろくろ首もびっくりな鶴とか、茫然な鶉とか・・・

青磁浮牡丹花入  元代の青磁は色も濃く量そのものも多く、ゆったりしている。
頸の伸びたところへリングが何層も重なっているように見えるので、ちょっとシャムとビルマの間に住まう女のヒトのようだと思った。

これらの茶道具の多くを集めた春翠住友吉左衛門友純は、メセナのヒトだった。
住友は大阪に銅吹き所を持っていたし邸宅も庭園もいくつも所蔵していた。
なにしろ「住友営繕課」からは名だたる建築家が出ているのだ。

関西各地に残る住友家の別邸、住友に仕えた広瀬宰平、伊庭貞剛らの邸宅などをこれまで見てきているが、いずこもたいへん趣味のよい建物ばかりだった。
原則非公開なので場所は伏せるが、こちらはやはり住友家の邸宅の一つで、庭園を植治が拵えた素敵な空間がある。

また、大阪市立美術館のすぐそばの慶沢園は住友家の邸宅の一部だったが、四季いつでもその庭園の美しさが味わえるのは、大阪にその庭園を寄贈してくれたからだ。
そして中之島の景観を拵えてくれたのは住友春翠の力が大きいと思う。
図書館の荘厳な美貌は住友家の力あればこそだ。
(かつての日、中之島界隈に、その美しい図書館、対岸の日本銀行の勇壮な麗姿、さらに当時の市役所と控訴院の優雅な建物に囲まれた上、大正の「今太閤」岩本栄之助の寄付によって、中央公会堂という唯一無二の愛すべき建物が生まれたのは、全くすばらしいことなのだった)

茶道具から話が外れたが、大阪に住まうからこそ享受できる喜びをわたしはかみ締めている。
そしてその春翠の愛した茶道具が今、東京でも多くの人々の眼と心を楽しませているのが、ひとごとながらも嬉しくて仕方ない。
展覧会は6/20まで。
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